転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 27 良い子の俺は何も知らないフリをする

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 結局、あの後しばらくしてから俺の部屋にやってきたマーシュは、特に今日起こったことを報告することなく、いつものように一日が流れていった。

 俺と同じく何も聞かされることがなかったリフルは、流石に何か察することはあったのだろう、寝る挨拶をするまでどこか不安そうな顔をしていた。明日になり、この離宮から出て用事をすることになれば、きっと何かしらの情報を得る事にはなると思うけど。それが、リフルに対して悪意を持っていない人からもたらされる事を願うよ。

 事態が大事になれば、マーシュも当たり障りない、嘘ではない内容を話すだろうけど。

 『人の噂も七十五日』あと三月もすれば充分世間は落ち着くだろう。9月からはそれぞれの学校が始まるし。

 『日本製の~』なのにここがちょっと変わっっていたところ、桜の季節の入学がではなくて、秋桜の季節の入学だった。精霊契約が夏至の時だから、それから後となると春の入学設定は無理だからね。

 これからはゲームの俺の次作の攻略対象者が徐々に初級学校に入学してくることだろう。

 俺の2歳上の異母兄 ヴォーテックス・カウント・ウインド。

 一歳上の宰相の息子 クリフ・マークイス・ゲイル。

 そして同い年の騎士団長の息子 トレント・カウント・トルネード。

 あと、一人か二人攻略対象がいたような……。これから思い出せるかな……。

 初級と中級の学校は、この王城の中にある。貴族専用の学校であるからね。

 俺の居るこの離宮とは一番遠い西南の位置に。

 ここは東の一番端、真ん中から見れば東北の位置に……アァ、鬼門じゃん。

 高等学校に当たる王立学園は、貴族以外も通う設定だからか、独立性を持たせるためか、ストーリー上大人の介入を遅らせるためか、王都とは少し離れたわざわざ造られた学園都市にあったはず。

 馬車、移動手段が馬車……これも何とかしないとなぁ……で、一日はかかる距離に学園都市はあるのだ。

 

 俺も何も気づかない知らないふりをして、一か月が過ぎた。

 帯剣の儀の後の全く存在がないような扱いとは少し違う、のどに刺さった小骨のような存在になったのか、ちょこちょことこの離宮を探る者の姿が見られるようになった。

 マーシュの結界は以前にも増して分厚くなり、離宮の中に入ることができる人員もより厳しく精査されるようになっている。

 っていうか、ほとんどこの離宮内に入ることのできる人は居ないといってもいいかもしれない。

 陛下の方から派遣される近衛騎士は無論のこと、城を守るためにいる衛士達など論外で敷地内に入れることがない。

 三年前の暗殺未遂があった時に派遣されるべき、俺の身を守るための騎士たちが、その時に派遣されることがなく、今このタイミングで派遣されるというのは、誰からにしても信じられるものではない。

 とある所の大臣が、如何にもこちらの味方ですという顔をしながら、自分のところの私兵を護衛として派遣いたしましょうとか言ってきたらしいが、マーシュが、返事をせずにスルーしていたら、逆切れし城の前まで私兵を連れて来たというのだから、開いた口が塞がらない。

 王都に私兵を連れてくるだけで謀反を疑われるということがわからないのだろうか。

 そんな頭の足りない大臣……大臣、この国大丈夫なのかと心配になった……。

 そんな大臣は、それを「殿下が依頼されたのです」とか言って、俺の所為にしようとしたとか。

 馬鹿じゃねぇ。

 流石に俺のことをネグレクトしている陛下も、この言い分には頷くことはできなかったようだ。

 このような、余りにも大っぴらな行動以外にも、こちらの気持ちなどまるで考えない、自分勝手で押しつけがましい申し入れも後を絶たないようだ。

 どれもこれも、次の王太子は陛下の子供ということが立証されたヴォーテックスである事を前提とした行動なのだ。

 中には、俺が本当は死んでいるか、もしくは意識不明のままこの離宮に押し込まれていると思っている者も少なくないらしい。

 マーシュは、これらのことを全く俺に知られないように処理しているのだが、そこはほら、索敵魔法に手を加えて、諜報魔法とでも言っていいのかな、まだ音声だけだけど、この城内であればどこの誰の声でも聞くことが可能になったのだよ。

 情報は大切だからね。
 
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