転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
上 下
37 / 186

チュート殿下 23 8歳になりました!

しおりを挟む
 『俺』が目覚めて『僕』と一つになり、新生の俺が爆誕してから、ゆるゆると月日は流れて、3年。つまり、帯剣の儀暗殺未遂事件から、3年たって8歳になったということだ。

 結局あの時の犯人も、俺の社交界?デビューもうやむやになって、この離宮にこもって3年ということだ。

 身体は相変わらず小さいサイズのままだ。元の世界の年齢の時を思い出しても大きくないのに、この世界の人間はすべからくサイズが大きいように思える。

 つまり、非常にちんまいサイズだということだ。ゲームでは小さいことはなかったと記憶しているから、心配することはないと思う、このことに関しては……。

 とにかく、ここは『剣と魔法の……』であるわけであるし、将来の俺は帯剣していた、と思うし、きっと剣は使えていると思うから、武器を使えるようになることに拘った。

 でも、無かったんだよね~この身体で扱える武器が……。子供サイズにしても難しかった。スチルにあったあの腰に差したものは何だったのか。模造刀?この世界にも身体強化魔法とかあるのかな?

 魔力の制御に関しては、いっぱい頑張った。『僕』ができていたことができなくなっていたので、このことにチートは働かないのか心配していたのだ。

 無詠唱にもこだわったから、少し時間がかかったけど、上級精霊と契約しているマーシュからもお墨付きがもらえるほど上手に操れるようだ。唱えないけど詠唱のセリフは全部覚えたよ、偽装するためにも。

 でも、どうも俺の使う魔法はこの世界にある普通の魔法とは色々と違っちゃってるようなのだ。詠唱通りの魔法が出ないらしい、威力とか形とか効果とか……。第一にこの年齢で魔法を行使すること自体おかしいことなので、この離宮の中でもマーシュとリフル以外の前で使うことは禁止。

 それに、この世界で確認されている全ての属性の魔法を使える、みたい……。というか、この世界の属性では考えられないような魔法も使えるようなので、はっきりと言えないようだ。

 簡単に言えば、俺が想像したことを、スキル君がなんかして、魔法を創造してくれるので、こっちの形に当てはめようとすると、そのようなことはできないよということになるらしい。

 でも、やはり得意なのはこっちでいうところの光属性のもののようで、治療系のものは、自分に対して意識しないで使っているようだ。(なのになぜ、成長促進魔法を自分にかけていないのだろうか……解せぬ……)

 隠蔽系も得意になった。隠して化けるの。髪の色や目の色も息をするように変えられるようになったよ。

 この世界では、魔力の有り無しとか強さ、属性が何かとかが、髪の毛や瞳の色で判断されるので、体に関する色を変える魔法は存在してないそうだ。魔法だけでなく、髪を染めるとか、カラコンを入れるとかも無い。

 だけど、できちゃった。

 今も俺は髪も目も茶色に見えるように偽装している。この離宮に全く人が訪ねてこないこともないからね。

 今日も今日とて離宮の中庭で、自分なりのストレッチなんかしている。

 この前、「何の踊りをしていらっしゃるのですか?」と、真顔のリフルに聞かれたけどな。

 走り込みもしたいけど、そこまでこの離宮は広くないし、建物の裏側に回ることを侍従たちが嫌がるから、この日の当たる中庭でできることをすることにしたのだ。

 魔法に関しては、どの魔法も発動は離宮の地下に作られた訓練場でのみ許されている。

 この離宮の結界は結構すごい代物らしいのだが、魔力察知能力の高い人には感づかれる可能性もあるということで、地下でこそっと行うことになっている。

 魔法を使っているときは、隠蔽魔法が解かれてしまうので、どの道隠れて行うしかないのだけどね。

 魔法にしても剣術もどきにしても、訓練や練習のみで実践は全くできないので、自分の実力がどのくらいのものなのか全く分からない。

 学校に行くのも、ギルドに登録して冒険者になるのも、とにかくこの国では10歳の精霊契約の儀式が終わらないと始まらないのだ。

 平民に関してはこのような取り決めはなく、家の事情で7歳くらいになればなにがしかの奉公に出る者も少なくないらしい。

 そのような話を、座学の途中リフルから聞いたので

「じゃあ、平民の振りをしてギルドに登録したら実践もできるかも」

 と、聞いてみたが

「ギルドの登録に年齢制限は無かったので、行けると言えば行けるかもしれませんけど……」

 何とも歯切れの悪い返事しか帰ってこない。

 もっと強く聞いてみたら、イヤイヤリフルが答えてくれた所には

「一応暗黙の了解として、登録年齢の最年少は8歳以上となっていますし、年齢の制限はなくとも、身長の規定はあったと……」

 なんですと⁉

「種族によって違いますが、人族は130㎝はなければいけなかったと……」

「へっ……⁈」

 リフルのこの一言に、引っかかることがたくさんありすぎて、プチパニック!

 長さの単位はやっぱり日本製の……だとか、普通8歳で130㎝以上あるってことだとか……。

「種族ってなに?」

 『ドキ恋』に人間以外全く出てこなかったから、この世界が剣と魔法の国だとしても、そこまでファンタジーだと思ってなかったよ⁈

 「あぁ、殿下はまだそこまでお勉強してませんでしたか」

 うんうんと頷きながら、リフルは得意げに自分の知識を披露してくれた。

「この国は人族の王様で貴族に人族以外いないので、この王都でほかの種族の方を見かけることはほぼ無いですが、この国に全くほかの種族の方が住んでいないわけでもありませんよ」

 この国のミスリル鉱山にはドワーフ族が少なからず住み着いているし、隣の国との境に広々と横たわる森にはエルフも暮らしているということだ。獣人は定住している者がほぼいないらしい。

「ファンタジー……」

 俺は身長のことは忘れて、まだ見ぬファンタジーの住人に思いをはせるのだった。

 
しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...