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チュート殿下 12 新しい朝が来た希望の朝……か?
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まるで今朝の諸々が全て無かったと思えるぐらい、普段の朝と変わらない風景が目の前に広がっていた。ただ時間はもうすでに朝と言える時間ではないようで、今横になっている矢鱈とでかい寝台とは一番離れた所にある開けられていた窓から差し込む光の明るさが、すでに天中に近い角度から日が差し込んでいることを教えてくれた。そう、今朝の雷雨すら無かったかと思えるくらい強い日差しが風に靡くレースのカーテンのように見て取れるのだ。
直接この場に届かないように気を使ってくれているのはマーシュの差配か。
白い光から視線を巡らせると、普段とは違う光景が……。窓からの光が届かない廊下に近い部屋の隅に、侍従の二人が声もなくこちらを見つめて直立不動で立ち尽くしていたのだ。
一瞬息が止まったぞ!ちょっとホラー……。驚かすつもりは毛頭無かったが、今朝は随分と泣かせてしまったようだし。
二人とも、今朝の取り乱した姿を毛の先ほども残していない……、イヤ、リフルは目の下と鼻の頭に薄っすらと赤味が残っているかな。流石、侍従長は全くそんな気配も残していないけどね……。ヒール使えるのかな?
グー……グルグル……。
アークが声を上げる前に、アークのお腹の方が声を上げた。
「…………」
朝食食べてないもんな。アーク、まだ(体は)5歳だし!
気がついたら、常時発動型で魔力循環や、鑑定使っているみたいなんだよね。だから、お腹も空くんですよきっと……。
お腹の音を聞きつけたのか、次の瞬間リフルの方が忍者のように音も立てづに次ノ間の方へ移動していった。
マーシュは、ベットサイドに瞬間移動だね……。
「殿下今朝は失礼いたしました。朝食には時間が下がってしまいましたので、朝食と昼食を兼ねたお食事を次ノ間に用意致しました。お着替えはこちらです」
マーシュのその腕の中には本日の着替えも既に用意されていた。
「ありがとう」
一言そう言ってベットから降りると、目の前に差し出されていた着替えを持ったマーシュの腕が小刻みに震えている。
すわ、今朝の再来か?と少し身構えてマーシュの顔を仰ぎ見ると、いつもの無表情とは違う歯を食いしばって涙を堪えるようなそんなマーシュの眼差し。
うん。もう知っているよ。『僕』と『俺』が本当に一つになった今なら、どれだけマーシュたちに今まで心配を重ねさせていたのか。
『俺』の中では、ゲームの中のデーターでしか無かった人々が、『僕』の薄い意識の中でも、『僕』と共に生きてきた、体温を持つ生きた人間であって、データーではないってこと。
確かに『俺』は、これから起こりうるかもしれない出来事を、結構な確率を持って知っているかもしれない。その上まだ出会ったことがない人物の本人すら知らないかもしれない設定まで知っているかもしれない。
でも、既にアースクエイクすら、『俺』の知っていると思っていた内容と違っているのだ。
パーソナルデーターとしては基本中の基本と言える、髪や瞳の色や、この世界では途轍もなく大きな意味を持つ、魔力量やその属性についても、『俺』が知っていたものと大きく違っているのだから……。
今アークに起こっているこの差異が、この乙女ゲームによく似た、(いや今のところそのものかもしれない)と思われる世界の物語が進む中で、屁とも思われないぐらい何事もなく、ゲームの強制力でゲームの結末の中のどれかに突き進んでいくものなのか。
それとも、今ここで変わっているように、これからのアークに起こりうる諸々のことも、アークの考えや行動でいくらでも変える事ができるのだろうか、普通の人間が普通の人生を送るように……。
そりゃあ、アークは今ちょっとばかり普通でない身分の、普通でない魔力量を持つお子様であるみたいであるけれど……。
暫く、固まったように動かなかったアークを急かすわけでもなく、ただそのまま待っていてくれるマーシュの、その差し出された手を見つめる。
いま、『僕』と『俺』が本当の意味で一つに融合して初めて、自分の意思でその手に手を重ねる。
いつもと同じ動作のようで、『俺』……イヤ『アーク』にとっては、大きな第一歩であるその手を取る。
これから、この私にとってはとても生きやすそうで生き辛い乙女ゲームの世界で、自分なりに一生懸命生きていくことを心に、そして、きっとずっとアークの味方で居てくれる、この優しい侍従達に誓って。
直接この場に届かないように気を使ってくれているのはマーシュの差配か。
白い光から視線を巡らせると、普段とは違う光景が……。窓からの光が届かない廊下に近い部屋の隅に、侍従の二人が声もなくこちらを見つめて直立不動で立ち尽くしていたのだ。
一瞬息が止まったぞ!ちょっとホラー……。驚かすつもりは毛頭無かったが、今朝は随分と泣かせてしまったようだし。
二人とも、今朝の取り乱した姿を毛の先ほども残していない……、イヤ、リフルは目の下と鼻の頭に薄っすらと赤味が残っているかな。流石、侍従長は全くそんな気配も残していないけどね……。ヒール使えるのかな?
グー……グルグル……。
アークが声を上げる前に、アークのお腹の方が声を上げた。
「…………」
朝食食べてないもんな。アーク、まだ(体は)5歳だし!
気がついたら、常時発動型で魔力循環や、鑑定使っているみたいなんだよね。だから、お腹も空くんですよきっと……。
お腹の音を聞きつけたのか、次の瞬間リフルの方が忍者のように音も立てづに次ノ間の方へ移動していった。
マーシュは、ベットサイドに瞬間移動だね……。
「殿下今朝は失礼いたしました。朝食には時間が下がってしまいましたので、朝食と昼食を兼ねたお食事を次ノ間に用意致しました。お着替えはこちらです」
マーシュのその腕の中には本日の着替えも既に用意されていた。
「ありがとう」
一言そう言ってベットから降りると、目の前に差し出されていた着替えを持ったマーシュの腕が小刻みに震えている。
すわ、今朝の再来か?と少し身構えてマーシュの顔を仰ぎ見ると、いつもの無表情とは違う歯を食いしばって涙を堪えるようなそんなマーシュの眼差し。
うん。もう知っているよ。『僕』と『俺』が本当に一つになった今なら、どれだけマーシュたちに今まで心配を重ねさせていたのか。
『俺』の中では、ゲームの中のデーターでしか無かった人々が、『僕』の薄い意識の中でも、『僕』と共に生きてきた、体温を持つ生きた人間であって、データーではないってこと。
確かに『俺』は、これから起こりうるかもしれない出来事を、結構な確率を持って知っているかもしれない。その上まだ出会ったことがない人物の本人すら知らないかもしれない設定まで知っているかもしれない。
でも、既にアースクエイクすら、『俺』の知っていると思っていた内容と違っているのだ。
パーソナルデーターとしては基本中の基本と言える、髪や瞳の色や、この世界では途轍もなく大きな意味を持つ、魔力量やその属性についても、『俺』が知っていたものと大きく違っているのだから……。
今アークに起こっているこの差異が、この乙女ゲームによく似た、(いや今のところそのものかもしれない)と思われる世界の物語が進む中で、屁とも思われないぐらい何事もなく、ゲームの強制力でゲームの結末の中のどれかに突き進んでいくものなのか。
それとも、今ここで変わっているように、これからのアークに起こりうる諸々のことも、アークの考えや行動でいくらでも変える事ができるのだろうか、普通の人間が普通の人生を送るように……。
そりゃあ、アークは今ちょっとばかり普通でない身分の、普通でない魔力量を持つお子様であるみたいであるけれど……。
暫く、固まったように動かなかったアークを急かすわけでもなく、ただそのまま待っていてくれるマーシュの、その差し出された手を見つめる。
いま、『僕』と『俺』が本当の意味で一つに融合して初めて、自分の意思でその手に手を重ねる。
いつもと同じ動作のようで、『俺』……イヤ『アーク』にとっては、大きな第一歩であるその手を取る。
これから、この私にとってはとても生きやすそうで生き辛い乙女ゲームの世界で、自分なりに一生懸命生きていくことを心に、そして、きっとずっとアークの味方で居てくれる、この優しい侍従達に誓って。
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