転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 9 さすがに「おはよう。いい朝だね」……は、ナイ

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『俺』の記憶が正しければ、確かに第一王子たる『アースクエイク殿下』は、後宮ではなく自身の離宮を持っていた。

 しかし、その離宮に移ったのはこの世界の成人年齢とされる15歳になった時であるはずだ。

 確か……『俺』の覚えているゲームの年表によれば……。

 5歳で初お目見えの『帯剣の儀』

 10歳で精霊契約。王族の証とも言える金色つまり『光の精霊』との契約に成功。生まれた時から王太子扱いではあったが、仮ではあるが対外的にも王太子の称号を得て、この時から公でも王太子殿下と呼ばれる。この年、同年齢である侯爵家子女、フォスキーア・マルケーゼ・ゲイルと婚約。

 15歳の『成人の儀』と共に正式に王太子に任じられる。それと共に新たに作られた王太子宮に入る。この年、『アミュレット王立学園』に入学。

 16歳の時フォスキーア・マルケーゼ・ゲイルとの婚約を破棄する。……etc…etc

 のような流れだったはず……。因みにゲーム時間は15歳の学園入学から2年に上がるまでがチュートリアルなエチュード1作目で、2年次が2作目、3年次が3作目だったと…………。

 俺の人生経験なんて前世と合わせても20年ちょっと、そのうち丸っと5年は薄ぼんやり、だから、人を見る目なんてものがそう育っているとも思えないが、殿下として目覚めて数日、一応今自分の周りにいる人物は、心の中でどう思っているかは定かでないが、俺の知る限り表向き俺の味方だろう、と、腹を括って今の自我を見せることに決めたのだ、チョロチョロではなく思い切ってドバーッと。

 とか、なんとか理屈をつけたところで、つまりボケーっと過ごす毎日にもうこれ以上『俺』が我慢できなくなったのだ。色々聞かれても上手く答える事が出来なさそうなので、これはもう天下の宝刀『記憶喪失』で押し通す、そう決めて、そんな、新生『俺』爆誕の朝は、寝室のカーテンを開け、俺を起こしに来たリフルに、爽やかに朝の挨拶をすることから始めた。

「おはよう。いい朝だね」

 俺としてはこれ以上ないよ、ってくらいのスマイルをつけて挨拶をしたのに、俺のモーニングティーを枕元に運んで来ようとしていたリフルは、見事にお盆をひっくり返し、(紅茶の飛沫が少し顔に掛かってあつかったわ!)

「$%!%#$!!!」

 言葉にならない叫び声をあげると、脱兎のごとく寝室から出て行った。

「殿下が~ぁ、殿下が言葉を話された~ぁ!」

 なんて言葉を残して。

 失礼なただ挨拶しただけじゃん。……でも……そういえば俺も声変わり前のアークの声聞いたの初めてかもね。よくすんなり声が出たもんだ。

 そんなことに感心しつつ、ちょびっと濡れてしまったパジャマと床に溢れた紅茶をこのままにしていていいのか、ベットの上で悩む俺だった。

 ちなみに今朝の天気は……マーシュのリフルへの雷と共に、本物の稲光が目に突き刺さる、そんな空模様だった……。
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