転生したら当て馬王子でした～絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい～

チュート殿下 ７ 神様どうかこの世界が全年齢でありますように

　姉鬼アネキのおかげ…で、このゲームをやりこみ、設定資料も読み込んだ『俺』であっても、アークの髪色が5歳の時から金髪だったとは、ただの一文もなかった。スチルはセピア色だったから、みんな同じ色だったし……

　だから、断言できる、決してこんな設定ではなかったはずなのだと。

　それから、この王子の性格だ。意識がクリアーになってからまだ短時間であるので、きっぱりと言い切れないが、ぼんやりして全く反応を返さなかった『俺』の行動に、何の反駁も見せずに対応する侍従達の様子に、これがいつもの王子なのだと判断できる。

　ゲームには、小さい頃の話はほとんどなかったが、性格については、『生まれた時からの俺様何様王子様』と、書かれていたことを記憶しているが……。

【傲慢な性格で、何事も自分の思い通りにならないとかんしゃくを起こす。顔面偏差値はとても高く、両親のいいとこどりで、誰が見てもイケメン。ただし、年齢を重ねるごとにその性格の悪さがにじみ出てきているといわれて、とても残念。頭脳については、王族の特徴として潜在能力は非常に高いのだが、性格が祟って努力をすることが全くなかったので、宝の持ち腐れといわれている。両親はとても忙しく、それにかまけて子供を顧みることがまるでなく、一人っ子である王子は、肉親からの愛情というものを与えられることなく育つ。そのためか、愛情という形のないものは信じていない。周りにいる人間は利害関係のある大人のみ、その子供もまた然り。心を許せる者は、子供の頃から近くにいる侍従達のみ。しかし、彼らも雇われている者、その一線を越えることがなく、それ故かなおさら信じていない愛情に飢えているともいえる。であるから、身分をきにすることなく（一見）利害関係の全くなさそうなヒロインに優しくされて、コロッといってしまう、可愛らしいところもある。】

　一作目『ドキドキ☆恋の王立学園♡貴公子達と恋のエチュード』の一枚目（二枚組）は彼のみが攻略対象という斬新な形で人気を得る。二枚目には王子以外の生徒会メンバーや教師（学園ものなので…）などイケメンてんこ盛りの攻略対象者が出てくるが、誰を攻略できるかは一枚目の王子攻略の一言一句の選び方で変わるという鬼仕様。一枚目はチュートリアル扱いの簡単に攻略できるディスクだが、それが本編といわれる二枚目の攻略の鍵になる。

　であるから、攻略本や攻略サイトを見なければ決して自分の希望するイケメンの攻略はできず、最初から最後までアークしか攻略できないなんてことも……。

　つらつらと思い出すゲームの内容と、攻略本や設定資料集のこと、ゲームから派生した小説や二次作品。恐ろしかったのは姉鬼が持っていた薄い本……。それを読むことだけは断固拒否した苦い気持ちも思い出した。

〈どうかこの世界は全年齢でありますように……神様……〉

　ネット小説に氾濫していたゲーム転生ものの中で、１８〇になっていたジャンルだけには、どうかなっていませんように。

　むなしい願い事を祈りながら、急激な記憶の波に頭を痛めながら、侍従が顔を見せるまで一人、これからの自分の来し方に思いを巡らせるのだった。