4 / 186
チュート殿下 4 目覚めてみれば……暗殺未遂⁉
しおりを挟む この町、名前はムウリカ。辺境に近いため城壁のような石積みの壁に囲まれた、この辺りでは中くらいの町。冒険者ギルドは町の中心よりも南に続く門に近い方にあった。
看板も町の中に溶け込むようにあり、建物に厳しい雰囲気はない。
町の中の食堂のような佇まいで、二階以上は宿屋のような作りに見える。
このギルドでは、森の中で倒した魔獣も何頭か買取に出すつもりだ。
扉は建物に対して少し大きめ。ドアノブはついてないタイプか、外からも内側からも押して開けるようになっている。
肩で扉を押して入る。
入ったのが昼前だったからか、そう広くないフロアーも閑散としていた。
どこでも看板が同じように、内装も同じなんだろうか、フロアーの奥にはカウンターが据えられていて、天井からは案内板がぶら下がっている。
意識しないで見ると模様に見える案内板も、意識してみるとその模様が意味のある文字として頭の中に入ってくる。
入り口に一番近いところには、「依頼窓口」と書かれている。その隣には1番、2番と書かれている。そして1番奥に「買取窓口」とあった。
今回の用事は、魔獣を売る事と、この辺りの依頼事情を探る事。
まず買取窓口に魔獣を売りに出す。ストレージから直接出すと驚かれることも多いので、この国でもそれなりに冒険者の中で出回っているらしいマジックバックと呼ばれるカバンを使っているフリをして、この辺りで中級と言われるくらいの冒険者がよく狩っている、魔獣を数匹カウンターに置いた。
この買取窓口の受付は、女の子ではなくガタイのいいおじさんだった。
「んっ!」
やたら無口なおじさんで、一言唸って手を出すだけ。
「?……あぁ、ギルドカードね」
今回買い取ってもらう魔獣はこの辺りで常時討伐依頼が出ているはず。ギルドランクをあげる時にも討伐ポイントは結構重要で、依頼を受けての討伐の方がポイントは高いが、常時討伐でもポイントはつく。
俺はともかくキールはこれ以上ランクを上げる気はないが、その気があるフリはしないと、駆け出しの冒険者でそれは変に目立ってしまうから。
無口なおじさんは何も言わずに俺が出した魔獣を、カウンターの後ろにある扉から外に出て行った。その際には引き換え用なのか模様が描かれた使い古された木札を渡された。
査定は少し時間が掛かりそうだ、その間に依頼票の確認をする事にする。
カウンターの対面の壁近くに依頼票を張り出す掲示板が設置されている。
どこのギルドでも依頼票はランク別に張り出されている。今の自分のランク以上の依頼は受けることができない。
この世界のギルドランクも日本でよく見たランク付と同じで、何故かアルファベットのA~FとS。王立学園でも1番上のクラス所謂特別クラスはSだった。
下からFEDCBAでS。アミュレット王国ではその存在が居ないようで聞いたことがなかったが、Sの上にはSSとかSSSとか、聞くと化け物のように強い冒険者が居る?居たらしい。
タリスマン帝国は勇者が造った国。その勇者は元々冒険者でSランク。悪魔だか魔王だかを倒したことで建国したそうだが、その魔王を倒した事で普通のSランクじゃ無いっしょ、って事でSSランクを正式に認証されて、亡くなった時にそれに栄誉が加わってSSSランクになったらしい。
この国の正史にそう記されてるとのこと。もちろんもっと勿体ぶった難しい言葉で長々と書かれているらしいのだが、キールがサクッと略して訳してくれた。
だから、この国では冒険者が他の国に比べて尊ばれているようだ。
そういえばサウスエンドでも国の運営に携わっていたいたのは冒険者ギルドを中心とした人々だったか。
キールは一応この世界の中で通用する身分として冒険者になることが1番手っ取り早いことだと言っていた。
日本と比べて戸籍制度のようなきちんとした考え方があまり発達していないようなこの世界でも、国の中を移動するときはもちろんのこと、ましてや違う国に行くのならば、ある程度自身のことを証明する手立てがないとスムーズに進むことはできない。
友好国の貴族であれば結構簡単に国境も超えられるが、それが敵対する国であれば逆に難しくなるし、同じ国の中でも、町や村がほぼ外部からの侵入に備えるために壁で囲まれて、外と隔絶されている内側に入るのに、人となりが分からなければ警戒されるのは必然だ。
そこでこの世界に張り巡らされている独立した組織として、それぞれの国の状況に左右されない、とされている冒険者ギルドが後ろ盾になって発行する身分証は、流浪する冒険者にとってなくてはならないものだし、それぞれの町や国にとっても、一々一人一人その人となりを調べないで済むことは、労力的にも大変有難いものなのだ。
その冒険者ギルドカード、そもそもギルドは仕事を斡旋する組織が発展したものであるから、仕事を割り振る時の、個人の能力を見る判断材料としてランクというものをつけたと考えられる。
仕事を受ける人のことをそもそもよく知っているならば、その様なものは要らないはずだが、全く知らない人物にその人の度量にあった仕事を斡旋する為に、どこに居てもわかりやすく判断する材料としてランクが付けられた。
だから、そもそも冒険者のランクは、冒険者ギルド内での仕事を割り振りする時の目安以外の何物でもなかったはずだが、そのランクが冒険者ギルドの外でも、知らない人物の信用度を図る材料として使われるようになったことで、より一層冒険者ギルドのカードは、ほかに身分の証明をすることが難しい者に取って、そのランクとともに重要な物となったのだ。
看板も町の中に溶け込むようにあり、建物に厳しい雰囲気はない。
町の中の食堂のような佇まいで、二階以上は宿屋のような作りに見える。
このギルドでは、森の中で倒した魔獣も何頭か買取に出すつもりだ。
扉は建物に対して少し大きめ。ドアノブはついてないタイプか、外からも内側からも押して開けるようになっている。
肩で扉を押して入る。
入ったのが昼前だったからか、そう広くないフロアーも閑散としていた。
どこでも看板が同じように、内装も同じなんだろうか、フロアーの奥にはカウンターが据えられていて、天井からは案内板がぶら下がっている。
意識しないで見ると模様に見える案内板も、意識してみるとその模様が意味のある文字として頭の中に入ってくる。
入り口に一番近いところには、「依頼窓口」と書かれている。その隣には1番、2番と書かれている。そして1番奥に「買取窓口」とあった。
今回の用事は、魔獣を売る事と、この辺りの依頼事情を探る事。
まず買取窓口に魔獣を売りに出す。ストレージから直接出すと驚かれることも多いので、この国でもそれなりに冒険者の中で出回っているらしいマジックバックと呼ばれるカバンを使っているフリをして、この辺りで中級と言われるくらいの冒険者がよく狩っている、魔獣を数匹カウンターに置いた。
この買取窓口の受付は、女の子ではなくガタイのいいおじさんだった。
「んっ!」
やたら無口なおじさんで、一言唸って手を出すだけ。
「?……あぁ、ギルドカードね」
今回買い取ってもらう魔獣はこの辺りで常時討伐依頼が出ているはず。ギルドランクをあげる時にも討伐ポイントは結構重要で、依頼を受けての討伐の方がポイントは高いが、常時討伐でもポイントはつく。
俺はともかくキールはこれ以上ランクを上げる気はないが、その気があるフリはしないと、駆け出しの冒険者でそれは変に目立ってしまうから。
無口なおじさんは何も言わずに俺が出した魔獣を、カウンターの後ろにある扉から外に出て行った。その際には引き換え用なのか模様が描かれた使い古された木札を渡された。
査定は少し時間が掛かりそうだ、その間に依頼票の確認をする事にする。
カウンターの対面の壁近くに依頼票を張り出す掲示板が設置されている。
どこのギルドでも依頼票はランク別に張り出されている。今の自分のランク以上の依頼は受けることができない。
この世界のギルドランクも日本でよく見たランク付と同じで、何故かアルファベットのA~FとS。王立学園でも1番上のクラス所謂特別クラスはSだった。
下からFEDCBAでS。アミュレット王国ではその存在が居ないようで聞いたことがなかったが、Sの上にはSSとかSSSとか、聞くと化け物のように強い冒険者が居る?居たらしい。
タリスマン帝国は勇者が造った国。その勇者は元々冒険者でSランク。悪魔だか魔王だかを倒したことで建国したそうだが、その魔王を倒した事で普通のSランクじゃ無いっしょ、って事でSSランクを正式に認証されて、亡くなった時にそれに栄誉が加わってSSSランクになったらしい。
この国の正史にそう記されてるとのこと。もちろんもっと勿体ぶった難しい言葉で長々と書かれているらしいのだが、キールがサクッと略して訳してくれた。
だから、この国では冒険者が他の国に比べて尊ばれているようだ。
そういえばサウスエンドでも国の運営に携わっていたいたのは冒険者ギルドを中心とした人々だったか。
キールは一応この世界の中で通用する身分として冒険者になることが1番手っ取り早いことだと言っていた。
日本と比べて戸籍制度のようなきちんとした考え方があまり発達していないようなこの世界でも、国の中を移動するときはもちろんのこと、ましてや違う国に行くのならば、ある程度自身のことを証明する手立てがないとスムーズに進むことはできない。
友好国の貴族であれば結構簡単に国境も超えられるが、それが敵対する国であれば逆に難しくなるし、同じ国の中でも、町や村がほぼ外部からの侵入に備えるために壁で囲まれて、外と隔絶されている内側に入るのに、人となりが分からなければ警戒されるのは必然だ。
そこでこの世界に張り巡らされている独立した組織として、それぞれの国の状況に左右されない、とされている冒険者ギルドが後ろ盾になって発行する身分証は、流浪する冒険者にとってなくてはならないものだし、それぞれの町や国にとっても、一々一人一人その人となりを調べないで済むことは、労力的にも大変有難いものなのだ。
その冒険者ギルドカード、そもそもギルドは仕事を斡旋する組織が発展したものであるから、仕事を割り振る時の、個人の能力を見る判断材料としてランクというものをつけたと考えられる。
仕事を受ける人のことをそもそもよく知っているならば、その様なものは要らないはずだが、全く知らない人物にその人の度量にあった仕事を斡旋する為に、どこに居てもわかりやすく判断する材料としてランクが付けられた。
だから、そもそも冒険者のランクは、冒険者ギルド内での仕事を割り振りする時の目安以外の何物でもなかったはずだが、そのランクが冒険者ギルドの外でも、知らない人物の信用度を図る材料として使われるようになったことで、より一層冒険者ギルドのカードは、ほかに身分の証明をすることが難しい者に取って、そのランクとともに重要な物となったのだ。
11
お気に入りに追加
1,706
あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?
キーノ
ファンタジー
私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。
ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?
自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?
私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ!
※紹介文と本編は微妙に違います。
完結いたしました。
感想うけつけています。
4月4日、誤字修正しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる