ありそうでない話。

てつや

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プレゼント

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 「ごめーん!!!待った?」

 2019年12月。その日も、アヤのキャリアウーマンぶりは健在であった。

 1時間の遅刻でアヤは到着する。聖なる夜を祝うために、シュンとアヤは、2人が出会った駅前で待ち合わせしていた。

 駅前は幻想的な光に包まれ、辺りは幸せそうな男女で溢れている。

 「いや全然!!」

 シュンはここでも自分を殺す。殺すというより、これが彼の持ち味であり本心なのかもしれない。実に優しい男性だ。

 

 そして予約した高級レストランへ光の道を歩き出す。

 2人で過ごす初めてのクリスマス。

 

 「今日は手繋ごうか。」 

 シュンは照れ臭そうに話しかける。奥手な彼にしてはよくやった方だ。

 「え~」

 アヤはやむなしに手を握る。そんな言葉を発しつつも、彼女は幸せそうな表情をしていた。

 絶世の美女を隣に置いて歩いている、そんな自分をシュンは誇らしく思った。

 こんな日常が永遠と続く。

 この2人と同じように、それは誰もが考え疑わなかった。



 

 レストランで食事を終え、シュンの自宅へ向かう。今日の夜は、2人で過ごすことを決めていた。

 玄関を開け、先にアヤを通す。

 「えっ!!!なにこれ!!」

 下駄箱の上には、ラッピングされた箱が置いてあるではないか。

 アヤはプレゼントだと感づき、手も洗わず箱を持ってリビングへ急ぐ。

 シュンも遅れまいと、慌てて靴紐に手をやる。こういう時に限って、紐は固く結ばれていた。



 「やったーーーー!!!!!これだよ、これこれ!!!!」

 やっとの思いで紐との格闘を制した瞬間、部屋の奥で歓喜の雄叫びが聞こえてくる。

 

 アヤは時々、幼い子供のように感情を露にする。仕事のストレスでもあるのだろうか。職場では絶対に見せない姿であろう。

 「これを見れるのも、俺だけなんだろうな。」

 彼女の意外な一面が、シュンにとっては溜まらなく愛しかった。

 靴を揃えリビングに目をやると、ピンクの腕時計を自慢するアヤが、まだかまだかとシュンを待っていた。





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ

 2026年、4月。

 シュンは、2人で始めて過ごしたクリスマスを思い出す。

 あの時のように、今にも部屋の奥から歓喜の声が聞こえてきそうだ。

 靴を履き終え家の鍵に手を伸ばす。同時に片手でポケットの中身を確認した。

 「やっぱり鍵は置いていこう」

 彼は決意を固めた。


続く

※ この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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