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 自室に戻り、ビィリアスと共にもらった材料と本、レシピを確認する。
 いつも頼んでいた餌の材料には二人して目を丸くした。

「材料こんな感じだったんだ」
「これなら屋敷にあるもので揃いますね」
「まさか馬の餌が練り込まれているとはね……」
「あの果実が熱を加えることで強い香りを発するようになるとは」
「水の流れもあるんじゃない? 餌にしようと思ったことないから分からないけど」
「どちらにせよ、先にこちらの本をマスターする必要があるらしいですよ」

 すり鉢とすり棒を頼まなければ、と脳内メモに記してから錬金術師の初歩を手に取る。

 さらっと読んでみたところ、初歩としてマスターすべきアイテムとして並んでいたのはいずれも薬だった。

 調薬と錬金術は似たところがあるらしく、簡単な薬を繰り返し作ることで調薬スキルレベルを上げる必要があるらしい。


「調薬スキルなんてあったんだ」
「ありますよ。知らなかったんですか?」
「基本的なところしか知らなかったの。貴族だとあんまり伸ばすスキルじゃないし」
「釣りスキルも令嬢が伸ばすものではないですけどね」
「こっちは薬草とかが必要になってくるのね」

 ビィリアスの嫌みをスルーして、使用する材料をメモしていく。
 彼もドルティアの行動には慣れているのでそれ以上嫌みを続けることなく、最後にはため息を吐いてからメモを回収していった。


 二日後、釣りから帰ってくるとすでに材料が揃っていた。
 錬金釜が使えるようにと、外にたき火場も作ってくれたようだ。しかも屋根付き。キャンプ場の水場に似ている。

 木で作ったテーブルと椅子もあるので、ありがたく使わせてもらうことにした。

 しばらく釣りを自粛して、せっせと薬を作っていく。
 これがなければ魔魚が釣れないからと、屋敷中の人が応援してくれた。その間、妹は兄と共に釣りスキルのレベリングに励む。


「よっし、出来た!」
「水に入れてもしっかりと匂いが広がりますね」
「そう! 今すぐ釣りに行きたい……」
「学園入学準備が先です」
「ちぇっ」
「ただでさえ押しているんですから早くしてください」

 釣り餌が完成したのは、学園入学の十日前。
 公爵領から王都までは五日ほどかかり、入学の三日前には寮入りしなければいけないのでかなりギリギリだ。

 釣りに行く時間がないことくらい、ドルティアでも分かる。そして妹と兄が完成したばかりの餌を狙っていることも。

 ぶうぶうと文句を言いながらも、兄と妹に餌を託す。
 もちろんいつも魚を売りに行く店について教えるのも忘れない。色をつけてもらった分、還元しなければ。

 店の場所を記した地図を渡してから、入学準備を始める。

 といっても学園では基本制服で、教材は寮に置かれている。お茶会や夜会に必要なドレスは定期的に公爵家から送ってもらうことになっている。

 学園生活以外で着る服は家族が用意してくれた。ドルティアの普段着はどれも乗馬と釣りに適しているものだったので、貴族の令嬢として擬態するための服装が他に必要だったのだ。

 釣り道具はビィリアスが用意してくれるので、ドルティアは主に詰めた荷物を確認するだけ。半日もあれば終わる。



 そうして学園に入学した訳だが……。
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