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5章
9.入学式とパッションピンク
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ルクスさんとイザラクと共に講堂に足を踏み入れる。
すると学園の職員と思わしき男性に声をかけられた。
「あなた達の席はこちらです」
そのまま他の生徒達が進むルートとは別の道に案内された。
一区画だけ明らかに席の配置が違う場所があった。
どうやら魔獣を連れている生徒や精霊を連れている生徒は一緒に式に参加出来るようにと配慮されているらしい。
ただし入学前試験を受けたグループで分けているのか、パートナーがいないイザラクも同じエリアに連れてこられた。
先に到着していたファドゥール・スカビオ組とロドリーは、パートナーと共に非常にリラックスをしていた。
なので私も遠慮なくハウスから亀蔵を出させてもらう。
右から順にルクスさん、私、亀蔵、イザラクの順番だ。といっても用意されていた椅子の通りに座ったらこうなったのだが。
亀蔵が端っこじゃなくて良かった。他の生徒達から離れているとはいえ、近くに人は歩いている。亀蔵の高さだと視線に入らないかもしれないし、通路側だと蹴られるかもと少し心配だったのだ。
「かめぇ?」
「一緒に入学式に参加していいんだって」
「かめっ!」
「嬉しいね~」
前方に座っている一般の生徒達からチラチラと見られているが、騒いでいる訳ではないのだ。良識の範囲内の声量でお話をしているだけ。
視線など無視して、亀蔵に良い子にしているように説明しておく。
時間になるとブザーが鳴った。
入学式開始の合図だ。
学園長の挨拶から始まり、入学生代表であるマーシャル王子の挨拶、と続いていく。堅苦しい話ばかり並び、私もルクスさんも寝そうになる。
だが『留学生』というワードに意識が一気に浮上した。
前方に座っていると聞き、頭は固定したまま視線だけで姿を探す。すると最前列に制服を着ていない人達が数人並んでいた。
なるほど、留学生は制服ではないのか。避けるべき相手がいる私としては見つけやすくて助かる。
留学生は全員で四人。
サヴィエーラ王国からは王子と姫が一人ずつ。姫様はサルガス王子の婚約者なのだろう。後ろ姿しか見えないが色素の薄い金色の髪の持ち主が並んでいる。
二人とも髪飾りを付けている。距離が離れているのではっきりとは分からないのだが、いずれもファドゥール鉱石が使われているのではないか。
まだ顔も見ていないけれど、私の中で二人への好感度が少しだけ上昇する。
次にグリードニア王国からは伯爵令息。
グリードニア王国は緑の国と呼ばれ、薬学が非常に発達した国である。以前ギュンタとサルガス王子が二人で仲良く研究発表会に行ったのもこの国だ。
しかも彼の家は代々宮廷薬師を輩出している家系だったはず。
以前ギュンタから名前を聞いたことがある。まさかそんな家の令息が他国に留学に来るとは思わなかった。
彼は薬学以外に興味があるのだろうか。
そして最後がランブルング王国の第四王子。
ランブルング王国はかつて獣神を信仰していた国であり、彼こそが亀蔵を狙っているという例の王子である。
服装は我が国のものと似ているが、髪色がパッションピンク。一度認識したら今後目印として役立ちそうな、かなりパンチの効いた色である。
亀蔵にもあの人には近づいちゃダメだよと伝えやすい。
サヴィエーラ王国の王子が三年生、姫様が二年生に。他の二人は一年生に混ざって授業を受けるらしい。
警戒すべきランブルング王国の王子が同じ授業を受ける可能性があるということだ。なんとも厄介な……。
私が敵を確認している間にサルガス王子の見せ場である在校生代表の挨拶がやってきた。
今年はひと学年の人数が歴代で一番多いらしく、特待生も多い。学園だけではなく、ますます国も発展していきそうだなんだと話していた。
毅然とした態度で立派である。
さすが王子様。保護者席に座っているばあやさんもさぞ喜んでいることだろう。
「最後に入学前試験での成績優良者を発表する。呼ばれた生徒は前に来るように」
そんなものあるんだ。実技では知っている人、選ばれそうだなぁ。ぼおっと聞いていると「座学一位 ルクス=シルヴェスター」と知っているような知らないような名前が呼ばれた。
「ルクスさんっていつの間にシルヴェスター家に養子入りしてたんですか? 聞いてないんですけど」
「知らん。試験の時の座席表にはすでにそう記載されていた」
サルガス王子は結婚はどうするのかと聞いてきた。
だがすでにルクスさんはシルヴェスターの籍に入っていたようだ。便宜上、養子にしただけかもしれないけれど。
どちらにせよ戸籍上も家族と認められたようで嬉しい。
前方からニヤニヤとした視線が送られた。イヴァンカとギュンタである。おめでとうと口だけを動かしてお祝いしてくれる。
そんなことをしているうちにルクスさんと、三位に呼ばれたイザラクが壇上へと向かっていった。ちなみに二位はレミリアさんの隣の男子生徒。多分彼女の恋人である。
そして武術一位はもちろんレミリアさん。二位が私で、三位はスカビオ領の男の子。
魔力は同率一位が三人。私とルクスさんとレミリアさん。
全く同じという訳ではなく、多分測定出来なかったのだろう。ルクスさんは「我の方が強い」とブツブツ文句を言っている。
人型で来るようにとわざわざ手紙を送ってきたのは、これがあったからかと今更ながらに理解したのだった。
すると学園の職員と思わしき男性に声をかけられた。
「あなた達の席はこちらです」
そのまま他の生徒達が進むルートとは別の道に案内された。
一区画だけ明らかに席の配置が違う場所があった。
どうやら魔獣を連れている生徒や精霊を連れている生徒は一緒に式に参加出来るようにと配慮されているらしい。
ただし入学前試験を受けたグループで分けているのか、パートナーがいないイザラクも同じエリアに連れてこられた。
先に到着していたファドゥール・スカビオ組とロドリーは、パートナーと共に非常にリラックスをしていた。
なので私も遠慮なくハウスから亀蔵を出させてもらう。
右から順にルクスさん、私、亀蔵、イザラクの順番だ。といっても用意されていた椅子の通りに座ったらこうなったのだが。
亀蔵が端っこじゃなくて良かった。他の生徒達から離れているとはいえ、近くに人は歩いている。亀蔵の高さだと視線に入らないかもしれないし、通路側だと蹴られるかもと少し心配だったのだ。
「かめぇ?」
「一緒に入学式に参加していいんだって」
「かめっ!」
「嬉しいね~」
前方に座っている一般の生徒達からチラチラと見られているが、騒いでいる訳ではないのだ。良識の範囲内の声量でお話をしているだけ。
視線など無視して、亀蔵に良い子にしているように説明しておく。
時間になるとブザーが鳴った。
入学式開始の合図だ。
学園長の挨拶から始まり、入学生代表であるマーシャル王子の挨拶、と続いていく。堅苦しい話ばかり並び、私もルクスさんも寝そうになる。
だが『留学生』というワードに意識が一気に浮上した。
前方に座っていると聞き、頭は固定したまま視線だけで姿を探す。すると最前列に制服を着ていない人達が数人並んでいた。
なるほど、留学生は制服ではないのか。避けるべき相手がいる私としては見つけやすくて助かる。
留学生は全員で四人。
サヴィエーラ王国からは王子と姫が一人ずつ。姫様はサルガス王子の婚約者なのだろう。後ろ姿しか見えないが色素の薄い金色の髪の持ち主が並んでいる。
二人とも髪飾りを付けている。距離が離れているのではっきりとは分からないのだが、いずれもファドゥール鉱石が使われているのではないか。
まだ顔も見ていないけれど、私の中で二人への好感度が少しだけ上昇する。
次にグリードニア王国からは伯爵令息。
グリードニア王国は緑の国と呼ばれ、薬学が非常に発達した国である。以前ギュンタとサルガス王子が二人で仲良く研究発表会に行ったのもこの国だ。
しかも彼の家は代々宮廷薬師を輩出している家系だったはず。
以前ギュンタから名前を聞いたことがある。まさかそんな家の令息が他国に留学に来るとは思わなかった。
彼は薬学以外に興味があるのだろうか。
そして最後がランブルング王国の第四王子。
ランブルング王国はかつて獣神を信仰していた国であり、彼こそが亀蔵を狙っているという例の王子である。
服装は我が国のものと似ているが、髪色がパッションピンク。一度認識したら今後目印として役立ちそうな、かなりパンチの効いた色である。
亀蔵にもあの人には近づいちゃダメだよと伝えやすい。
サヴィエーラ王国の王子が三年生、姫様が二年生に。他の二人は一年生に混ざって授業を受けるらしい。
警戒すべきランブルング王国の王子が同じ授業を受ける可能性があるということだ。なんとも厄介な……。
私が敵を確認している間にサルガス王子の見せ場である在校生代表の挨拶がやってきた。
今年はひと学年の人数が歴代で一番多いらしく、特待生も多い。学園だけではなく、ますます国も発展していきそうだなんだと話していた。
毅然とした態度で立派である。
さすが王子様。保護者席に座っているばあやさんもさぞ喜んでいることだろう。
「最後に入学前試験での成績優良者を発表する。呼ばれた生徒は前に来るように」
そんなものあるんだ。実技では知っている人、選ばれそうだなぁ。ぼおっと聞いていると「座学一位 ルクス=シルヴェスター」と知っているような知らないような名前が呼ばれた。
「ルクスさんっていつの間にシルヴェスター家に養子入りしてたんですか? 聞いてないんですけど」
「知らん。試験の時の座席表にはすでにそう記載されていた」
サルガス王子は結婚はどうするのかと聞いてきた。
だがすでにルクスさんはシルヴェスターの籍に入っていたようだ。便宜上、養子にしただけかもしれないけれど。
どちらにせよ戸籍上も家族と認められたようで嬉しい。
前方からニヤニヤとした視線が送られた。イヴァンカとギュンタである。おめでとうと口だけを動かしてお祝いしてくれる。
そんなことをしているうちにルクスさんと、三位に呼ばれたイザラクが壇上へと向かっていった。ちなみに二位はレミリアさんの隣の男子生徒。多分彼女の恋人である。
そして武術一位はもちろんレミリアさん。二位が私で、三位はスカビオ領の男の子。
魔力は同率一位が三人。私とルクスさんとレミリアさん。
全く同じという訳ではなく、多分測定出来なかったのだろう。ルクスさんは「我の方が強い」とブツブツ文句を言っている。
人型で来るようにとわざわざ手紙を送ってきたのは、これがあったからかと今更ながらに理解したのだった。
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