127 / 175
5章
3.食べ慣れたものが良い
しおりを挟む
「うむ。美味いな」
「林檎のジャムもあるぞ。亀蔵にはカットした林檎を」
「かめぇ」
昨晩、林檎の酵母が出来たとの知らせを受けた。
今日は朝から外でイザラク特製林檎酵母パンをご馳走になっている。
精霊王への捧げ物も別に用意してあるのだとか。
部屋に置いてきたそうなので、今頃この辺りに住んでいる精霊達が王の元へと運んでいることだろう。
淹れてもらったロイヤルミルクティーを飲みながらほおっと息を吐く。
「それはファドゥール産か?」
「我が家で使う林檎は全てファドゥール産。ジャムだけではなく、酵母もファドゥールの林檎を使用している」
「ならもらおう」
「ルクスさんって産地にこだわりあったんですね」
「美味さが違う。他を食べる気にはならん」
ルクスさんははっきりと言い切った。気持ちは分かる。
私も昔からファドゥールの林檎を食べて育った。他の産地のものを食べたことがない訳ではない。
お茶会でも何度か林檎のおやつが出されていた。普通の林檎も魔林檎も。
でもどれもしっくりこなくて、他の場所で採れた林檎はかれこれ何年も食べていない。
「林檎もそうだが、魚もファドゥールのものとこの辺りで流通しているものとではまるで違うんだ」
「そうなの!?」
「知らなかった?」
「お肉しか食べたことなかったから」
ヴァレンチノ公爵屋敷に最後に来たのは五年前。お兄様が学園に入学する少し前のこと。
その前にも何度か足を運んだことはあるものの、毎回並ぶのは同じものばかり。どれも私とお兄様の好物だった。
てっきり歓迎の意味を込めて選んでくれているのだとばかり思っていたが、そんな背景があったとは思わなかった。
イザラクも気にしたことはなかったようで、驚いている。
「確かにうちで食べたのは指で数えられるほどだったな……。お祖父様が嫌がるんだ」
「私が知らないだけで味が違うものって多いのかな。今まで社交に出てもそんなことなかったのに……」
「王都だと各方面から食材が入ってくるから、その影響もあるのかもしれない」
お祖父様も隠居するまではほとんどシルヴェスターで過ごしていたと聞く。
根っからの辺境暮らし。私とルクスさん同様に、あの土地の料理に慣れている。
若い頃から外に出れば慣れることは出来たのだろうが、年を取ってからではなかなか慣れることは出来なかったのだろう。
いや、若い頃から外に出ても慣れたいと思うかはまた別か。
私はあの味から離れようとは思わない。あの味こそが故郷の、私を育んでくれた土地の料理だ。
シルヴェスターに限らず、他の二領も故郷愛は強い人が多い。適応するのはなかなか難しいのかもしれない。
お兄様が度々抜け出していたのはご飯もあるのかな、なんて今さらながらに思う。
パンにジャムを載せてかぶりつく。ふっかふっかで、食べ慣れた味が口いっぱいに広がっていく。
「……学園のご飯って決まったものが出されるの?」
「食堂かカフェでお金を払って注文するか、お弁当持参か選べたはずだ。といっても弁当は平民が食費を抑えられるようにといったもので、貴族のほとんどは前者だが」
「弁当一択だな。一食だって口に合わん飯は食べたくない」
「ですね。自国内で食のカルチャーショックとか受けたくないですから」
「なら俺も弁当にするかな。ダグラス兄さんが食堂は人が多くて嫌になるって言ってたし」
「王都は人が多いのよね……」
スカビオとファドゥールも数年でかなり人が増えた。だが王都はその比ではない。三領合わせても王都の人口には勝てないのではないかとさえ思う。
面積はどこか一つ分くらいしかないのに、人口密度が高すぎて嫌になってしまう。
しかも三領で過ごしている間はどこを見ても知り合いしかいなくて誰もが親切だったのに対して、外は知らない人ばかり。
悪意を向けられたら、なんてもうそんな心配をするほど弱くはない。
その悪意が私以外の、ルクスさんや亀蔵、イヴァンカやギュンタに向けられたら即臨戦態勢に入ることだろう。
それでも出来れば争いたくないし、嫌だなぁという気持ちがなくなる訳ではない。
「亀蔵のことを考えると、食事くらいはやっぱり外の方がいいわよね」
「授業中はほとんどハウスの中だろうからな」
「かめええ!!」
「なら敷物も用意させておこう」
「ごめんね。色々頼んじゃって」
「こんなの迷惑ですらないよ。ダグラス兄さんの時もそうだけど、お祖父様が来たばかりの頃も屋敷で出す料理がかなり変わったんだ。といっても当家の使用人は辺境三領の出身者かその身内しかいないから皆喜んでいるみたいだが」
お兄様もお祖父様も自由すぎる。
それほど二人にとって耐えがたいことがあったということなのだろうが。
幸い、イザラクもヴァレンチノ公爵家の人もさほど気にしていないようだ。
慣れているのだ。そうでなければお兄様がシロを召喚した時やアカを連れ帰った時に辞めてしまっていることだろう。
いや、稀にとはいえ、こういうことがあるからヴァレンチノ家の使用人は三領の出身者で固められているのかな。肝の強さが違う。
「あ、話変わるんだけど」
「何?」
「王都のギルドにお兄様と仲の良い冒険者がいるって本当?」
王都に来る少し前のこと。
お兄様から『王都のギルドに行くことがあったらとある冒険者パーティーを頼るように』と言われた。
お兄様が信頼出来る・親切な人達と言い切るほどの人物。
てっきりライヒムさんのような友人かと思ったが、一緒に行動していた訳ではないのだと。それでもいい人達だとお兄様は繰り返し強調した。
自分の手が貸せないような緊急時でも、あの人達ならウェスパルを任せられると。
シルヴェスターのような辺境出身者でかなり肝が座っている人か、よほどの変わり者の二択だと思っている。
前者ならいざという時のために今から会っておきたいが、後者なら可能な限り手を借りたくはない。
ゲームではそんな人いなかったから少し警戒してしまっている。
けれどイザラクは「アンドゥトロワさんだね。うちでも何度か仕事を頼んだことあるよ」とあっさりと教えてくれた。
「どんな人達なの?」
「真面目で堅実で、お人好しな人達かな」
「……そんな人がどうやったらお兄様と仲良くなるの?」
「何度かアドバイスしてもらったってダグラス兄さんが言ってた」
「アドバイス……」
ライヒムさんもいい人だとは思う。ロドリーの兄だし。
それでもお人好しだから一緒にいた訳ではない。あの人は戦闘を楽しむタイプの人で、いわば同類だ。
しかもアンドゥトロワなんて適当な名前を付けておきながら、真面目で堅実……。
余計にお兄様とどんな関係なのかますます分からなくなる。
「詳しくは聞いていないけど、いい人達だよ。冒険者に仕事依頼をした時に、指名依頼をするなら彼らだと勧められるくらいには」
「ギルドからも信頼されているのね。それは信頼出来るかも」
「心配だったらダグラス兄さんが来た時に一緒に行ってみれば?」
「それもそうね」
私達が王都に来てから二週間が経ったが、ほぼ毎日アカが来ている。
お兄様を乗せてきたり、お父様を乗せてきたり。かと思えばアカだけで来てお祖父様を乗せて行ったり。
三日ほど前、お父様に「ホームズ一家の誰かを乗せても良いか? 私達がいけない時の伝言や遠方への採取を頼みたいのだが……」と聞かれた。彼らが嫌がらなければと許可を出したので、後々ホームズ一家の誰かがアカに乗ってやって来るのかもしれない。
週末や錬金釜が使いたくなったら帰ってくるといいと言われている。
暇なのかと喉元まで出かかったが、多分心配してくれているのだろう。
謎の冒険者を頼れと言うのもその一環で。過保護すぎるほどに過保護なのだ。
「林檎のジャムもあるぞ。亀蔵にはカットした林檎を」
「かめぇ」
昨晩、林檎の酵母が出来たとの知らせを受けた。
今日は朝から外でイザラク特製林檎酵母パンをご馳走になっている。
精霊王への捧げ物も別に用意してあるのだとか。
部屋に置いてきたそうなので、今頃この辺りに住んでいる精霊達が王の元へと運んでいることだろう。
淹れてもらったロイヤルミルクティーを飲みながらほおっと息を吐く。
「それはファドゥール産か?」
「我が家で使う林檎は全てファドゥール産。ジャムだけではなく、酵母もファドゥールの林檎を使用している」
「ならもらおう」
「ルクスさんって産地にこだわりあったんですね」
「美味さが違う。他を食べる気にはならん」
ルクスさんははっきりと言い切った。気持ちは分かる。
私も昔からファドゥールの林檎を食べて育った。他の産地のものを食べたことがない訳ではない。
お茶会でも何度か林檎のおやつが出されていた。普通の林檎も魔林檎も。
でもどれもしっくりこなくて、他の場所で採れた林檎はかれこれ何年も食べていない。
「林檎もそうだが、魚もファドゥールのものとこの辺りで流通しているものとではまるで違うんだ」
「そうなの!?」
「知らなかった?」
「お肉しか食べたことなかったから」
ヴァレンチノ公爵屋敷に最後に来たのは五年前。お兄様が学園に入学する少し前のこと。
その前にも何度か足を運んだことはあるものの、毎回並ぶのは同じものばかり。どれも私とお兄様の好物だった。
てっきり歓迎の意味を込めて選んでくれているのだとばかり思っていたが、そんな背景があったとは思わなかった。
イザラクも気にしたことはなかったようで、驚いている。
「確かにうちで食べたのは指で数えられるほどだったな……。お祖父様が嫌がるんだ」
「私が知らないだけで味が違うものって多いのかな。今まで社交に出てもそんなことなかったのに……」
「王都だと各方面から食材が入ってくるから、その影響もあるのかもしれない」
お祖父様も隠居するまではほとんどシルヴェスターで過ごしていたと聞く。
根っからの辺境暮らし。私とルクスさん同様に、あの土地の料理に慣れている。
若い頃から外に出れば慣れることは出来たのだろうが、年を取ってからではなかなか慣れることは出来なかったのだろう。
いや、若い頃から外に出ても慣れたいと思うかはまた別か。
私はあの味から離れようとは思わない。あの味こそが故郷の、私を育んでくれた土地の料理だ。
シルヴェスターに限らず、他の二領も故郷愛は強い人が多い。適応するのはなかなか難しいのかもしれない。
お兄様が度々抜け出していたのはご飯もあるのかな、なんて今さらながらに思う。
パンにジャムを載せてかぶりつく。ふっかふっかで、食べ慣れた味が口いっぱいに広がっていく。
「……学園のご飯って決まったものが出されるの?」
「食堂かカフェでお金を払って注文するか、お弁当持参か選べたはずだ。といっても弁当は平民が食費を抑えられるようにといったもので、貴族のほとんどは前者だが」
「弁当一択だな。一食だって口に合わん飯は食べたくない」
「ですね。自国内で食のカルチャーショックとか受けたくないですから」
「なら俺も弁当にするかな。ダグラス兄さんが食堂は人が多くて嫌になるって言ってたし」
「王都は人が多いのよね……」
スカビオとファドゥールも数年でかなり人が増えた。だが王都はその比ではない。三領合わせても王都の人口には勝てないのではないかとさえ思う。
面積はどこか一つ分くらいしかないのに、人口密度が高すぎて嫌になってしまう。
しかも三領で過ごしている間はどこを見ても知り合いしかいなくて誰もが親切だったのに対して、外は知らない人ばかり。
悪意を向けられたら、なんてもうそんな心配をするほど弱くはない。
その悪意が私以外の、ルクスさんや亀蔵、イヴァンカやギュンタに向けられたら即臨戦態勢に入ることだろう。
それでも出来れば争いたくないし、嫌だなぁという気持ちがなくなる訳ではない。
「亀蔵のことを考えると、食事くらいはやっぱり外の方がいいわよね」
「授業中はほとんどハウスの中だろうからな」
「かめええ!!」
「なら敷物も用意させておこう」
「ごめんね。色々頼んじゃって」
「こんなの迷惑ですらないよ。ダグラス兄さんの時もそうだけど、お祖父様が来たばかりの頃も屋敷で出す料理がかなり変わったんだ。といっても当家の使用人は辺境三領の出身者かその身内しかいないから皆喜んでいるみたいだが」
お兄様もお祖父様も自由すぎる。
それほど二人にとって耐えがたいことがあったということなのだろうが。
幸い、イザラクもヴァレンチノ公爵家の人もさほど気にしていないようだ。
慣れているのだ。そうでなければお兄様がシロを召喚した時やアカを連れ帰った時に辞めてしまっていることだろう。
いや、稀にとはいえ、こういうことがあるからヴァレンチノ家の使用人は三領の出身者で固められているのかな。肝の強さが違う。
「あ、話変わるんだけど」
「何?」
「王都のギルドにお兄様と仲の良い冒険者がいるって本当?」
王都に来る少し前のこと。
お兄様から『王都のギルドに行くことがあったらとある冒険者パーティーを頼るように』と言われた。
お兄様が信頼出来る・親切な人達と言い切るほどの人物。
てっきりライヒムさんのような友人かと思ったが、一緒に行動していた訳ではないのだと。それでもいい人達だとお兄様は繰り返し強調した。
自分の手が貸せないような緊急時でも、あの人達ならウェスパルを任せられると。
シルヴェスターのような辺境出身者でかなり肝が座っている人か、よほどの変わり者の二択だと思っている。
前者ならいざという時のために今から会っておきたいが、後者なら可能な限り手を借りたくはない。
ゲームではそんな人いなかったから少し警戒してしまっている。
けれどイザラクは「アンドゥトロワさんだね。うちでも何度か仕事を頼んだことあるよ」とあっさりと教えてくれた。
「どんな人達なの?」
「真面目で堅実で、お人好しな人達かな」
「……そんな人がどうやったらお兄様と仲良くなるの?」
「何度かアドバイスしてもらったってダグラス兄さんが言ってた」
「アドバイス……」
ライヒムさんもいい人だとは思う。ロドリーの兄だし。
それでもお人好しだから一緒にいた訳ではない。あの人は戦闘を楽しむタイプの人で、いわば同類だ。
しかもアンドゥトロワなんて適当な名前を付けておきながら、真面目で堅実……。
余計にお兄様とどんな関係なのかますます分からなくなる。
「詳しくは聞いていないけど、いい人達だよ。冒険者に仕事依頼をした時に、指名依頼をするなら彼らだと勧められるくらいには」
「ギルドからも信頼されているのね。それは信頼出来るかも」
「心配だったらダグラス兄さんが来た時に一緒に行ってみれば?」
「それもそうね」
私達が王都に来てから二週間が経ったが、ほぼ毎日アカが来ている。
お兄様を乗せてきたり、お父様を乗せてきたり。かと思えばアカだけで来てお祖父様を乗せて行ったり。
三日ほど前、お父様に「ホームズ一家の誰かを乗せても良いか? 私達がいけない時の伝言や遠方への採取を頼みたいのだが……」と聞かれた。彼らが嫌がらなければと許可を出したので、後々ホームズ一家の誰かがアカに乗ってやって来るのかもしれない。
週末や錬金釜が使いたくなったら帰ってくるといいと言われている。
暇なのかと喉元まで出かかったが、多分心配してくれているのだろう。
謎の冒険者を頼れと言うのもその一環で。過保護すぎるほどに過保護なのだ。
0
お気に入りに追加
471
あなたにおすすめの小説
月が隠れるとき
いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。
その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。
という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。
小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください
シンさん
恋愛
金貸しから追われる、靴職人のドロシー。
ある日突然、7才のアイザック王子にプロポーズされたんだけど、本当は20才の王太子様…。
こんな事になったのは、王家に伝わる魔術の7つ道具の1つ『子供に戻る靴』を履いてしまったから。
…何でそんな靴を履いたのか、本人でさえわからない。けど王太子が靴を履いた事には理由があった。
子供になってしまった20才の王太子と、靴職人ドロシーの恋愛ストーリー
ストーリーは完結していますので、毎日更新です。
表紙はぷりりん様に描いていただきました(゜▽゜*)
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる