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4章
32.祝 婚約解消 part.2
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「ところでウェスパルはサルガス王子に呼ばれているんだよな」
「うん。会って話したいことがあるらしくて、おやつ時に行くの」
「美味いおやつがあるに違いない。ミルクティーは必須だな」
「王家が用意した茶葉だったら絶対美味しいですよ。楽しみですね」
「うむ」
ルクスさんと顔を見合わせる。
イザラクはなんだか二人らしいなと頷いている。
私も呼び出された相手が王様とかだったら少しは焦るが、サルガス王子だし。緊張など毛ほどもない。
なんだったら王子がこっちに来てくれればいいのになとさえ思う。
もしもここが辺境の地なら彼も来てくれるのだろうが、さすがに王都では立場がある。難しいのだろう。
お茶菓子を気にするくらいには、サルガス王子との距離も近くなったのだ。
まぁ婚約解消はいつでも受け入れるという姿勢は変わらずだが。
そんなことを考えていたからだろう。
ルクスさんと一緒に王城に向かい、客間に通されて早々サルガス王子の口から飛び出したのは似たような言葉だった。
「ウェスパルとの婚約を解消することになった」
「そうなんですね。で、話したいことってなんですか?」
「美味いな。ウェスパル、あっちにある赤いのも取ってくれ」
「これですね。はい」
さすがにこれだけということはないだろう。
ルクスさんに渡したジャムクッキーを自分の口にも放り込む。
それにしてもこのお茶は美味しい。さすが王家。私も良いお茶を飲んでいると思っていたが、質が違う。
「話したいことはこれだ」
「え、じゃあ私、三週間も早く来ることなかったじゃないですか!」
「一応まだ正式に決定した訳じゃないからな。辺境伯の返事はもらっているが、二人にも私の口から伝えたかった」
「まぁいいですけど。お相手は誰なんですか?」
「サヴィエーラ王国の姫だ。数ヶ月前に打診が来た」
我が国との繋がりを一層強くしたいとか。
きっかけはやはりファドゥールのぶどう酒。味にも驚かされたが、あれほど多くの精霊と人間が共存する姿を初めて見たとのこと。
ファドゥールは無理でも諦めきれなかったらしい。
「サルガス王子ならスカビオ家とも仲良いし、良い具合のところを狙ってきましたね。それでどんな方なんですか? ばあやさん自慢にも耐えられる方ですか?」
私としてはイヴァンカとギュンタの仲を引き裂かなければそれでいい。
あちらの国、というか王様は私があまり王家との婚姻を重要視していないことにも気づいていたのだろう。
それより心配なのはお相手側である。
サルガス王子のばあやさん自慢はわりと長い。聞けば聞くほどに長くなる。
「それは問題ない。私がばあやを大事に思う気持ちもしっかりと受け入れてくれた。マーシャルの入学式にばあやが見に来てくれるから、その時に会ってもらおうという話で……ってそこが重要なのか!?」
「サルガス王子といえばばあやさんですよ。ねえ、ルクスさん」
「我は貴様がどんな相手と結婚しようが関係ない」
「そんなあっさりと……」
すでにお爺さまとお父様、ヴァレンチノ公爵家には話を通してあるが、私達の気持ちを尊重したいとのこと。
あちらにはすぐに承諾することはできないことは伝えてあるらしい。
だがばあやさんに会わせようと決めている時点で、ほぼ決まっていたみたいなものだ。
ちなみに砂漠の国から王族の双子の留学は決定しているそう。
王様の孫にあたるらしい。今後ともよろしくということだろう。
ワインを抜きにしても、我が国と仲良くしておくメリットはある。
「私は別にいいですよ。サインとかいります?」
「いや、いらんが……」
「ところでスカビオ領にある屋敷と、今後の薬の栽培はどうするんですか?」
問題はそこだ。
私、というかシルヴェスターにとって王家との婚約は大して重要ではない。だが王家にとっては色々と意味があるのではないか。
――なんてストレートに告げることは出来ないので、オブラートに包んでみた。
けれど王家側もそちらの対策を取っているらしい。
「婚約が決まった場合、屋敷は叔父上が住む。薬の栽培は続けるぞ。相手の女性は土いじりが趣味でな。城に専用の場所を作ろうかと考えているくらいだ。卒業してもギュンタやばあやとの文通も続けるぞ。出来ればウェスパル嬢とも……」
「それはいいですけど、毎年芋掘りに呼びつけますよ?」
「その時は夫婦で行くさ」
「一緒に行ってくれような相手なんですか?」
「ああ」
「それは良い縁になりそうでなによりです。あ、でもシェリリン様は……」
「シェリリン嬢がどうかしたか?」
「いくらマーシャル王子と上手くいっているとはいえ、サルガス王子の婚約者が何度も変われば面白くはないんじゃないかなって。なんか言われたらいってくださいね!援護しますから」
ゲームヒロイン レイミアさんは逞しくなったが、他の女性を標的にされたらたまらない。
乙女ゲーム云々を抜きにしても外交問題になる。
きっかけがきっかけだけに、イヴァンカに飛び火したら困る。
「うん。会って話したいことがあるらしくて、おやつ時に行くの」
「美味いおやつがあるに違いない。ミルクティーは必須だな」
「王家が用意した茶葉だったら絶対美味しいですよ。楽しみですね」
「うむ」
ルクスさんと顔を見合わせる。
イザラクはなんだか二人らしいなと頷いている。
私も呼び出された相手が王様とかだったら少しは焦るが、サルガス王子だし。緊張など毛ほどもない。
なんだったら王子がこっちに来てくれればいいのになとさえ思う。
もしもここが辺境の地なら彼も来てくれるのだろうが、さすがに王都では立場がある。難しいのだろう。
お茶菓子を気にするくらいには、サルガス王子との距離も近くなったのだ。
まぁ婚約解消はいつでも受け入れるという姿勢は変わらずだが。
そんなことを考えていたからだろう。
ルクスさんと一緒に王城に向かい、客間に通されて早々サルガス王子の口から飛び出したのは似たような言葉だった。
「ウェスパルとの婚約を解消することになった」
「そうなんですね。で、話したいことってなんですか?」
「美味いな。ウェスパル、あっちにある赤いのも取ってくれ」
「これですね。はい」
さすがにこれだけということはないだろう。
ルクスさんに渡したジャムクッキーを自分の口にも放り込む。
それにしてもこのお茶は美味しい。さすが王家。私も良いお茶を飲んでいると思っていたが、質が違う。
「話したいことはこれだ」
「え、じゃあ私、三週間も早く来ることなかったじゃないですか!」
「一応まだ正式に決定した訳じゃないからな。辺境伯の返事はもらっているが、二人にも私の口から伝えたかった」
「まぁいいですけど。お相手は誰なんですか?」
「サヴィエーラ王国の姫だ。数ヶ月前に打診が来た」
我が国との繋がりを一層強くしたいとか。
きっかけはやはりファドゥールのぶどう酒。味にも驚かされたが、あれほど多くの精霊と人間が共存する姿を初めて見たとのこと。
ファドゥールは無理でも諦めきれなかったらしい。
「サルガス王子ならスカビオ家とも仲良いし、良い具合のところを狙ってきましたね。それでどんな方なんですか? ばあやさん自慢にも耐えられる方ですか?」
私としてはイヴァンカとギュンタの仲を引き裂かなければそれでいい。
あちらの国、というか王様は私があまり王家との婚姻を重要視していないことにも気づいていたのだろう。
それより心配なのはお相手側である。
サルガス王子のばあやさん自慢はわりと長い。聞けば聞くほどに長くなる。
「それは問題ない。私がばあやを大事に思う気持ちもしっかりと受け入れてくれた。マーシャルの入学式にばあやが見に来てくれるから、その時に会ってもらおうという話で……ってそこが重要なのか!?」
「サルガス王子といえばばあやさんですよ。ねえ、ルクスさん」
「我は貴様がどんな相手と結婚しようが関係ない」
「そんなあっさりと……」
すでにお爺さまとお父様、ヴァレンチノ公爵家には話を通してあるが、私達の気持ちを尊重したいとのこと。
あちらにはすぐに承諾することはできないことは伝えてあるらしい。
だがばあやさんに会わせようと決めている時点で、ほぼ決まっていたみたいなものだ。
ちなみに砂漠の国から王族の双子の留学は決定しているそう。
王様の孫にあたるらしい。今後ともよろしくということだろう。
ワインを抜きにしても、我が国と仲良くしておくメリットはある。
「私は別にいいですよ。サインとかいります?」
「いや、いらんが……」
「ところでスカビオ領にある屋敷と、今後の薬の栽培はどうするんですか?」
問題はそこだ。
私、というかシルヴェスターにとって王家との婚約は大して重要ではない。だが王家にとっては色々と意味があるのではないか。
――なんてストレートに告げることは出来ないので、オブラートに包んでみた。
けれど王家側もそちらの対策を取っているらしい。
「婚約が決まった場合、屋敷は叔父上が住む。薬の栽培は続けるぞ。相手の女性は土いじりが趣味でな。城に専用の場所を作ろうかと考えているくらいだ。卒業してもギュンタやばあやとの文通も続けるぞ。出来ればウェスパル嬢とも……」
「それはいいですけど、毎年芋掘りに呼びつけますよ?」
「その時は夫婦で行くさ」
「一緒に行ってくれような相手なんですか?」
「ああ」
「それは良い縁になりそうでなによりです。あ、でもシェリリン様は……」
「シェリリン嬢がどうかしたか?」
「いくらマーシャル王子と上手くいっているとはいえ、サルガス王子の婚約者が何度も変われば面白くはないんじゃないかなって。なんか言われたらいってくださいね!援護しますから」
ゲームヒロイン レイミアさんは逞しくなったが、他の女性を標的にされたらたまらない。
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