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3章
24.飲み比べ
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そして翌朝。
無事に完成したシロップの一部を避けて、残りは瓶に移す。
確か冷蔵庫に入れておけば十日ほど保存ができると言っていた気がする。とはいえ早めに飲むに越したことはない。
シロップをコップに移し、冷たい水をとくとくと注いでいく。くるくるとよくかき混ぜてからスライスレモン載せて完成である。
「あ、美味しい。でもやっぱり炭酸のしゅわしゅわ感は欲しいかな~」
「不思議な香りだな。味も……薬草茶ともフルーツ水とも違う。結構甘いな」
「薄めます?」
「いや、いい。我はあまり好かん味だ。芋と合わんだろう」
「んー、確かにうちの芋と合わせると甘い×甘いになっちゃいますね。コーラといえばポテチ。芋は芋でも馬鈴薯を揚げたものとならよく合うんですが」
「我は牛乳やロイヤルミルクティーの方が好きだ。牛乳が飲みたい」
芋優先のルクスさんからの評価はあまりよろしくない。
とはいえちゃんと全部飲みきってから牛乳をせびるあたり、優しさを感じる。
「好き嫌いはありますからね~。お父様達にも飲んでもらおうっと」
「かめぇ?」
「ごめんね、亀蔵は飲めないの。代わりに後で乾燥林檎あげる」
亀蔵に乾燥林檎をあげてから牛乳を用意してもらう。
その間にお父様とお母様のコーラを用意する。気に入ってもらえるかは分からないから気持ち少なめに。
苦手な味だと言われたら、その時はギュンタとイヴァンカには失敗しちゃったと手紙を出して、残りは私が少しずつ飲むつもりであった。
「気にいるかは分からないんだけど……」
おずおずとコップを差し出すと、二人とも不思議そうにそれを眺めてからゆっくりと口をつけた。
「あら美味しい!」
「スパイスと蜂蜜がよくあってるな~」
表情は明るい。
ルクスさんの反応とは打って変わって好評である。好みの問題だったらしい。ホッと胸をなで下ろす。
「実はこれ、お酒で割っても美味しいらしくて」
「お酒ですって!?」
「確かに合うだろうな」
「すぐに用意してちょうだい!」
「まだお昼前なのに、いいんですか?」
「一流の冒険者はお酒を飲もうとも剣を振れるものよ」
つまりは問題ない、と。
私はキッチンに戻り、シロップ瓶を。
使用人は地下に数種類のお酒を取りに向かった。
グラスを複数並べて、お父様とお母様による『コーラシロップはどのお酒と合うか選手権』が開催された。使用人達も固唾を飲み込んで見守っている。
飲み比べということで一杯ごとの量は少ないが、グラスの量は多い。それら全てにシロップを注ぐと、お父様達は次々にお酒を注いでいった。
厳正な審査の結果、見事勝ち残ったお酒はーー全てだった。
「全部あう」
お母様の力強い声に、控えていた使用人達が一様に唾を飲んだ。ごくりとはっきり聞こえてしまったからには、聞かずにはいられなかった。
「飲む?」
「いいんですか!?」
食い気味で返事した彼らに、グラスと他の使用人達への声かけを頼む。
すると凄まじい速さでリビングから立ち去った。よほど飲みたかったらしい。
試作品ということで大量には作っていない。
お父様とお母様がそこそこの量を飲んだこともあり、すでに瓶の中身は三分の一ほどしか残っていない。
これを駆けつけた使用人達で等分すると一人あたりはかなり少ない量となるだろう。とはいえここにいた人だけ、なんて良くない。
みんなこの家のために働いてくれているのだ。分けるなら平等に。
まだ材料はあるので、足りなければまた今日も作ればいい。作ってすぐには飲めないが、それでも明日になれば飲める。
さすがに朝からみんなで酒盛りはしないと信じたい。
素早く集まった人数を確認すると、並べられたグラスの数と合致する。均等になるようにシロップを注ぎ、右から順にグラスを手渡していく。
お酒はある。水もある。ついでにレモンスライスも用意してくれたらしい。いつのまにか机の上に置かれていた。
どれで割るかはご自由に。
全員にグラスが行き渡ったのを確認すると各々好きなお酒に手を伸ばした。
私は部屋の端から彼らの様子を眺める。
目を丸くする者も多いが、表情は明るい。少ないながらも分け合ったり、こちらにキラキラとした視線を向けてきたりとかなり好評である。
「シロップはもうないけど、材料はあるから。また明日」
そう伝えると、彼らは揃って頭を下げた。明日もすぐになくなりそうだ。
無事に完成したシロップの一部を避けて、残りは瓶に移す。
確か冷蔵庫に入れておけば十日ほど保存ができると言っていた気がする。とはいえ早めに飲むに越したことはない。
シロップをコップに移し、冷たい水をとくとくと注いでいく。くるくるとよくかき混ぜてからスライスレモン載せて完成である。
「あ、美味しい。でもやっぱり炭酸のしゅわしゅわ感は欲しいかな~」
「不思議な香りだな。味も……薬草茶ともフルーツ水とも違う。結構甘いな」
「薄めます?」
「いや、いい。我はあまり好かん味だ。芋と合わんだろう」
「んー、確かにうちの芋と合わせると甘い×甘いになっちゃいますね。コーラといえばポテチ。芋は芋でも馬鈴薯を揚げたものとならよく合うんですが」
「我は牛乳やロイヤルミルクティーの方が好きだ。牛乳が飲みたい」
芋優先のルクスさんからの評価はあまりよろしくない。
とはいえちゃんと全部飲みきってから牛乳をせびるあたり、優しさを感じる。
「好き嫌いはありますからね~。お父様達にも飲んでもらおうっと」
「かめぇ?」
「ごめんね、亀蔵は飲めないの。代わりに後で乾燥林檎あげる」
亀蔵に乾燥林檎をあげてから牛乳を用意してもらう。
その間にお父様とお母様のコーラを用意する。気に入ってもらえるかは分からないから気持ち少なめに。
苦手な味だと言われたら、その時はギュンタとイヴァンカには失敗しちゃったと手紙を出して、残りは私が少しずつ飲むつもりであった。
「気にいるかは分からないんだけど……」
おずおずとコップを差し出すと、二人とも不思議そうにそれを眺めてからゆっくりと口をつけた。
「あら美味しい!」
「スパイスと蜂蜜がよくあってるな~」
表情は明るい。
ルクスさんの反応とは打って変わって好評である。好みの問題だったらしい。ホッと胸をなで下ろす。
「実はこれ、お酒で割っても美味しいらしくて」
「お酒ですって!?」
「確かに合うだろうな」
「すぐに用意してちょうだい!」
「まだお昼前なのに、いいんですか?」
「一流の冒険者はお酒を飲もうとも剣を振れるものよ」
つまりは問題ない、と。
私はキッチンに戻り、シロップ瓶を。
使用人は地下に数種類のお酒を取りに向かった。
グラスを複数並べて、お父様とお母様による『コーラシロップはどのお酒と合うか選手権』が開催された。使用人達も固唾を飲み込んで見守っている。
飲み比べということで一杯ごとの量は少ないが、グラスの量は多い。それら全てにシロップを注ぐと、お父様達は次々にお酒を注いでいった。
厳正な審査の結果、見事勝ち残ったお酒はーー全てだった。
「全部あう」
お母様の力強い声に、控えていた使用人達が一様に唾を飲んだ。ごくりとはっきり聞こえてしまったからには、聞かずにはいられなかった。
「飲む?」
「いいんですか!?」
食い気味で返事した彼らに、グラスと他の使用人達への声かけを頼む。
すると凄まじい速さでリビングから立ち去った。よほど飲みたかったらしい。
試作品ということで大量には作っていない。
お父様とお母様がそこそこの量を飲んだこともあり、すでに瓶の中身は三分の一ほどしか残っていない。
これを駆けつけた使用人達で等分すると一人あたりはかなり少ない量となるだろう。とはいえここにいた人だけ、なんて良くない。
みんなこの家のために働いてくれているのだ。分けるなら平等に。
まだ材料はあるので、足りなければまた今日も作ればいい。作ってすぐには飲めないが、それでも明日になれば飲める。
さすがに朝からみんなで酒盛りはしないと信じたい。
素早く集まった人数を確認すると、並べられたグラスの数と合致する。均等になるようにシロップを注ぎ、右から順にグラスを手渡していく。
お酒はある。水もある。ついでにレモンスライスも用意してくれたらしい。いつのまにか机の上に置かれていた。
どれで割るかはご自由に。
全員にグラスが行き渡ったのを確認すると各々好きなお酒に手を伸ばした。
私は部屋の端から彼らの様子を眺める。
目を丸くする者も多いが、表情は明るい。少ないながらも分け合ったり、こちらにキラキラとした視線を向けてきたりとかなり好評である。
「シロップはもうないけど、材料はあるから。また明日」
そう伝えると、彼らは揃って頭を下げた。明日もすぐになくなりそうだ。
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