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3章
2.移住者
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「錬金術師についての資料を取り寄せれば挿絵が残っているものもあるのではないか?」
「あ、そっか。今度お父様にお願いしてみます」
「それらは錬金術を極める上で良いアイディアの源になるだろう」
具体的にどんな材料を使うかは分からないけれど、搬入のことも考えると錬金スペースは玄関から近い方がいいのかな?
その辺りを検討していくためにもルクスさんの言うとおり、挿絵付きの資料は欲しいところだ。
錬金術師の生活なんかも知っておきたい。
魔結晶みたいな、普通に暮らしていたら知る機会のなさそうなアイテムもありそうだ。乙女ゲームシナリオに突入するに当たって役立つアイテムもあるかもしれない。
お役立ちアイテムといえば、ゲーム内で登場する好感度上昇アイテムやステータス上昇アイテムの作成方法は習得しておきたい。
光の魔法を使うことの出来るヒロインの作ったアイテムだけが強力な力を持つものの、作成自体は一般生徒にも可能である。なので私も作れるはずだ。
好感度上昇アイテム・ステータス上昇アイテムは当然ながらそのままの名前で登場するはずもなく、それぞれ『リラックス効果のあるキャンディ』と『やる気の出るドリンク』として登場する。
といっても材料が特殊なのか、ゲームにある程度の制限をつけるためか、常には作ることができない。
作成できるのはランダムで発生する特別授業中のみ。発生は五回。毎回どちらを作るか選択できる。
ちなみこのランダム仕様だが、〇週目までに必ず一度はある、なんて生易しい仕様ではない。プロローグからエンディグまで全ての期間で五回起きるといったもの。
ゲーム序盤で連続したり、かと思えば終盤に五日間連続開催だったりとSNSには多くのプレイヤーの悲鳴が流れていた。
そんな悩みを解消するのが課金要素である。
未課金と課金とではラベルの色が違うだけで基本的な効果は同じ。また未課金アイテムは周回持ち越し不可だが、課金アイテムはルートを跨いでも使用することが可能だ。
この課金要素は第一部では必要性を疑問視されていたが、第二部では大活躍であった。第三部での利用者も多かったとのこと。
といっても私は周回する予定はない上に課金コンテンツも使えない。普通に作る一択である。錬金術やなんとか手に入るアイテムで作成できれば嬉しい。欲を言えばレシピも早めにゲットしたい。
攻略したいキャラはいないが、いざとなったらそのアイテムをヒロインに使ってイザラク・ロドリールートに入ることを止めさせるという手もある。
出来る限り人の心なんて操りたくなんてないけれど、闇落ち回避のためなら致し方ないと割り切るつもりだ。
「亀蔵は……何してるの?」
「かめぇかめぇ」
亀蔵の意見を聞こうと視線を下げれば、ドアにゲシゲシと頭をぶつけている。外に出たいのかとドアを開けたが、今度はその場で地団駄を踏み出した。
「もしかして専用のドアが欲しいの?」
「かめぇ!」
猫のドアみたいな小さなドアか。
確かにあったら便利かもしれない。『亀蔵専用ドア』と紙に記して、文字の前に二重丸を付け足す。
亀蔵が自由に動き回れることを考えると、なるべく段差はない方がいい。マット引く時も気をつけないと。
逆に亀蔵が入ってくると危ないところ、例えば錬金釜の周りとかは段差やら縁を付けてもらうといいかもしれない。
魔法の練習や勉強の空き時間の会話でいいなと思ったものを、真っ白だった紙にちょこちょこと継ぎ足していく。
風が冷たくなり始めた頃、ようやく洞窟の結界が完成した。
必要なアイテムが届いてからやけに早かったのは、王家から魔法使いが何人も派遣されたから。
対魔物戦ならシルヴェスターの人達はとても心強いが、結界ともなれば専門知識が必要となる。やはり慣れている人達が来てくれるのはありがたい。
ルクスさんは「遅いくらいだ」と吐き捨て、さつまいもチップスを摘んでいたが、あちらにもあちらの事情があるのだろう。
宿泊場所はスカビオ領とファドゥール領が提供してくれた。
その際、魔法使いが揃って二領の成長に言葉を失ったのはいうまでもないだろう。
彼らが帰ってから一週間と経たず、数人が移住してきた。
全員が魔法使いである。なんでもスカビオとファドゥールの人達が精霊と共存する姿を見て胸を打たれたのだとか。
今はそれぞれの領で働きながら、精霊召喚に備えて勉強しているらしい。
どちらの領も急激な成長により、人手不足に悩んでいたので、優秀な人手が増えたことを喜んでいた。
「あ、そっか。今度お父様にお願いしてみます」
「それらは錬金術を極める上で良いアイディアの源になるだろう」
具体的にどんな材料を使うかは分からないけれど、搬入のことも考えると錬金スペースは玄関から近い方がいいのかな?
その辺りを検討していくためにもルクスさんの言うとおり、挿絵付きの資料は欲しいところだ。
錬金術師の生活なんかも知っておきたい。
魔結晶みたいな、普通に暮らしていたら知る機会のなさそうなアイテムもありそうだ。乙女ゲームシナリオに突入するに当たって役立つアイテムもあるかもしれない。
お役立ちアイテムといえば、ゲーム内で登場する好感度上昇アイテムやステータス上昇アイテムの作成方法は習得しておきたい。
光の魔法を使うことの出来るヒロインの作ったアイテムだけが強力な力を持つものの、作成自体は一般生徒にも可能である。なので私も作れるはずだ。
好感度上昇アイテム・ステータス上昇アイテムは当然ながらそのままの名前で登場するはずもなく、それぞれ『リラックス効果のあるキャンディ』と『やる気の出るドリンク』として登場する。
といっても材料が特殊なのか、ゲームにある程度の制限をつけるためか、常には作ることができない。
作成できるのはランダムで発生する特別授業中のみ。発生は五回。毎回どちらを作るか選択できる。
ちなみこのランダム仕様だが、〇週目までに必ず一度はある、なんて生易しい仕様ではない。プロローグからエンディグまで全ての期間で五回起きるといったもの。
ゲーム序盤で連続したり、かと思えば終盤に五日間連続開催だったりとSNSには多くのプレイヤーの悲鳴が流れていた。
そんな悩みを解消するのが課金要素である。
未課金と課金とではラベルの色が違うだけで基本的な効果は同じ。また未課金アイテムは周回持ち越し不可だが、課金アイテムはルートを跨いでも使用することが可能だ。
この課金要素は第一部では必要性を疑問視されていたが、第二部では大活躍であった。第三部での利用者も多かったとのこと。
といっても私は周回する予定はない上に課金コンテンツも使えない。普通に作る一択である。錬金術やなんとか手に入るアイテムで作成できれば嬉しい。欲を言えばレシピも早めにゲットしたい。
攻略したいキャラはいないが、いざとなったらそのアイテムをヒロインに使ってイザラク・ロドリールートに入ることを止めさせるという手もある。
出来る限り人の心なんて操りたくなんてないけれど、闇落ち回避のためなら致し方ないと割り切るつもりだ。
「亀蔵は……何してるの?」
「かめぇかめぇ」
亀蔵の意見を聞こうと視線を下げれば、ドアにゲシゲシと頭をぶつけている。外に出たいのかとドアを開けたが、今度はその場で地団駄を踏み出した。
「もしかして専用のドアが欲しいの?」
「かめぇ!」
猫のドアみたいな小さなドアか。
確かにあったら便利かもしれない。『亀蔵専用ドア』と紙に記して、文字の前に二重丸を付け足す。
亀蔵が自由に動き回れることを考えると、なるべく段差はない方がいい。マット引く時も気をつけないと。
逆に亀蔵が入ってくると危ないところ、例えば錬金釜の周りとかは段差やら縁を付けてもらうといいかもしれない。
魔法の練習や勉強の空き時間の会話でいいなと思ったものを、真っ白だった紙にちょこちょこと継ぎ足していく。
風が冷たくなり始めた頃、ようやく洞窟の結界が完成した。
必要なアイテムが届いてからやけに早かったのは、王家から魔法使いが何人も派遣されたから。
対魔物戦ならシルヴェスターの人達はとても心強いが、結界ともなれば専門知識が必要となる。やはり慣れている人達が来てくれるのはありがたい。
ルクスさんは「遅いくらいだ」と吐き捨て、さつまいもチップスを摘んでいたが、あちらにもあちらの事情があるのだろう。
宿泊場所はスカビオ領とファドゥール領が提供してくれた。
その際、魔法使いが揃って二領の成長に言葉を失ったのはいうまでもないだろう。
彼らが帰ってから一週間と経たず、数人が移住してきた。
全員が魔法使いである。なんでもスカビオとファドゥールの人達が精霊と共存する姿を見て胸を打たれたのだとか。
今はそれぞれの領で働きながら、精霊召喚に備えて勉強しているらしい。
どちらの領も急激な成長により、人手不足に悩んでいたので、優秀な人手が増えたことを喜んでいた。
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