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2章
24.想像の上を行く急成長
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ルクスさんの皮もお土産に持たせると二人は上機嫌で帰っていった。
ギュンタからはルクスさん専用の石けんをもらい、イヴァンカとはドライフルーツを送ってもらう約束をしたのでルクスさんもルンルンである。それに帰りがけに撫でてもらった亀蔵も。
みんなで馬車を見送る。
姿が見えなくなったのを確認してからグーっと身体を上に伸ばす。
「さてと、また二人に贈る用の魔結晶を作りますか」
「想像以上の大所帯だしな」
「かめぇ」
今日あげた分は瞬殺だろう。
周りにいる子達以外にも寄ってくるかもしれない。
私が持っていても貯めておくだけだが、二人の元に精霊が集まれば周りの人にも興味を持つかもしれない。
シルヴェスターでも精霊に興味を持つ人が出たらこちらの分も確保するけど、とりあえずは二人の領地の繁栄である。
何が二人の死に関わっているか分からない以上、ガンガン周りの状況を変えていきたい。
その一歩が精霊である。
これも精霊を利用することになるかもしれないが、二人のためだ。 そこは見逃してくれることを祈るばかりである。
それから私が以前にも増して魔結晶作りに精を出していると、スカビオとファドゥールでは次々と精霊召喚が行われるようになった。
なにせ領主の子ども達が複数の精霊を連れているのである。
スカビオ伯爵が率先して精霊召喚を行ったこともあり、精霊召喚が廃れたなんて考えはどこかへと吹き飛んだ。
困ったことがあってもルクスさんが翻訳してくれる。
初めは警戒していた人達も、精霊の反応を見ればルクスさんが嘘をついていないことは分かる。
彼に会った人が領に戻って噂をすると、ますます精霊に興味を持つ人が増えていく。かといって魔獣召喚を否定するわけではなく、共存という形が取れるのはあの二領ならではだろう。
ますます魔結晶作りに力が入り、作れば作るほど上達する日々。
材料の問題で結界を張るにはまだ時間がかかるそうだが、目的があるので全く気にならない。
そしてギュンタとイヴァンカが精霊を呼び出してから一ヶ月が経った頃には目に見えて二領の様子が変わっていた。
「うちで育った薬草と香草。あとこれは新しく作った薬草茶で、それから……」
「うちでも栗が取れたの」
「こ、これは……」
机の上に載せられた品に思わず声を失った。
量も多いが、何より栗は秋の食べ物だ。それ以外にも通常、この辺りの土地では育てられない植物が並んでいる。
季節感が狂ったわけではない。成長速度が異常なまでに早くなったのだ。
だからといって木や植物が急速に年をとるわけではなく、むしろ循環が早くなった分活き活きとしているのだとか。薬草に至っては効果が数段階アップしたとのこと。
これが精霊の力。
二人の後ろにいる精霊達は揃って自慢気である。
自分の胸をポンポンと叩いて見せたり、ニコッと微笑んでみたり。
けれど全員視線の先は同じ。私のポケットへと向いている。お礼を期待しているのがバレバレだ。
「ありがとう。これ、私達からのお礼」
袋を取り出した途端に精霊達は飛んできて、ペコペコと頭を下げたり踊ってみせる。そんなところも愛嬌があって可愛らしい。
「ちょっとみんな! これはこの前のお礼だって言ったでしょ!」
「いいのいいの。気にしないで」
「いや、気にするだろ。この前追加でもらったルクスさんの皮の効果も凄いんだぞ」
「そうなの?」
「こいつらに手伝ってもらっていろんな土で植物を育てているが、明らかに育ちが違う。実際、この中にある香草のいくつかは皮をもらってから植えたんだ」
「早くない?!」
ギュンタが持ってきてくれたものの中にはシナモンの他にもクミンやグローブ、バニラビーンズなどといった今までスカビオ領では見たことのなかったスパイスが混ざっている。
最近はもっと多くの植物を育てているのだとか。
そのうちスカビオ領だけで大陸中の植物を育ててしまいそうな勢いがある。
確かに周りの状況を変えていきたいと願ったが、想像の遥か高みを行っている。
精霊ってここまで急速に成長するものだっけ?
人数が多い分、仕事も早いのかな?
それとも久し振りに呼んでくれる人がいたから張り切っているとか?
「早い上に質もいい」
「鉱山の方も皮のおかげで魔物は寄り付かないから戦闘しなくて済むようになったって大助かりよ。それに精霊の力を借りるようになってからは掘るスピードも上がったの。お父様が鉱物が必要になったら遠慮なく言ってくれって」
「ウェスパルが錬金術を使えるようになったらいくつか工面してもらいたいものがある」
「任せてちょうだい! いくらでも用意するわ!」
グッと力こぶを作るイヴァンカと、俺の方も欲しいのあったら育てるからと言ってくれるギュンタ。
ドラゴンの皮を分け、精霊を呼ぶといいと助言しただけ。
だが確実に乙女ゲームにはなかった要素が加わってきていた。
ギュンタからはルクスさん専用の石けんをもらい、イヴァンカとはドライフルーツを送ってもらう約束をしたのでルクスさんもルンルンである。それに帰りがけに撫でてもらった亀蔵も。
みんなで馬車を見送る。
姿が見えなくなったのを確認してからグーっと身体を上に伸ばす。
「さてと、また二人に贈る用の魔結晶を作りますか」
「想像以上の大所帯だしな」
「かめぇ」
今日あげた分は瞬殺だろう。
周りにいる子達以外にも寄ってくるかもしれない。
私が持っていても貯めておくだけだが、二人の元に精霊が集まれば周りの人にも興味を持つかもしれない。
シルヴェスターでも精霊に興味を持つ人が出たらこちらの分も確保するけど、とりあえずは二人の領地の繁栄である。
何が二人の死に関わっているか分からない以上、ガンガン周りの状況を変えていきたい。
その一歩が精霊である。
これも精霊を利用することになるかもしれないが、二人のためだ。 そこは見逃してくれることを祈るばかりである。
それから私が以前にも増して魔結晶作りに精を出していると、スカビオとファドゥールでは次々と精霊召喚が行われるようになった。
なにせ領主の子ども達が複数の精霊を連れているのである。
スカビオ伯爵が率先して精霊召喚を行ったこともあり、精霊召喚が廃れたなんて考えはどこかへと吹き飛んだ。
困ったことがあってもルクスさんが翻訳してくれる。
初めは警戒していた人達も、精霊の反応を見ればルクスさんが嘘をついていないことは分かる。
彼に会った人が領に戻って噂をすると、ますます精霊に興味を持つ人が増えていく。かといって魔獣召喚を否定するわけではなく、共存という形が取れるのはあの二領ならではだろう。
ますます魔結晶作りに力が入り、作れば作るほど上達する日々。
材料の問題で結界を張るにはまだ時間がかかるそうだが、目的があるので全く気にならない。
そしてギュンタとイヴァンカが精霊を呼び出してから一ヶ月が経った頃には目に見えて二領の様子が変わっていた。
「うちで育った薬草と香草。あとこれは新しく作った薬草茶で、それから……」
「うちでも栗が取れたの」
「こ、これは……」
机の上に載せられた品に思わず声を失った。
量も多いが、何より栗は秋の食べ物だ。それ以外にも通常、この辺りの土地では育てられない植物が並んでいる。
季節感が狂ったわけではない。成長速度が異常なまでに早くなったのだ。
だからといって木や植物が急速に年をとるわけではなく、むしろ循環が早くなった分活き活きとしているのだとか。薬草に至っては効果が数段階アップしたとのこと。
これが精霊の力。
二人の後ろにいる精霊達は揃って自慢気である。
自分の胸をポンポンと叩いて見せたり、ニコッと微笑んでみたり。
けれど全員視線の先は同じ。私のポケットへと向いている。お礼を期待しているのがバレバレだ。
「ありがとう。これ、私達からのお礼」
袋を取り出した途端に精霊達は飛んできて、ペコペコと頭を下げたり踊ってみせる。そんなところも愛嬌があって可愛らしい。
「ちょっとみんな! これはこの前のお礼だって言ったでしょ!」
「いいのいいの。気にしないで」
「いや、気にするだろ。この前追加でもらったルクスさんの皮の効果も凄いんだぞ」
「そうなの?」
「こいつらに手伝ってもらっていろんな土で植物を育てているが、明らかに育ちが違う。実際、この中にある香草のいくつかは皮をもらってから植えたんだ」
「早くない?!」
ギュンタが持ってきてくれたものの中にはシナモンの他にもクミンやグローブ、バニラビーンズなどといった今までスカビオ領では見たことのなかったスパイスが混ざっている。
最近はもっと多くの植物を育てているのだとか。
そのうちスカビオ領だけで大陸中の植物を育ててしまいそうな勢いがある。
確かに周りの状況を変えていきたいと願ったが、想像の遥か高みを行っている。
精霊ってここまで急速に成長するものだっけ?
人数が多い分、仕事も早いのかな?
それとも久し振りに呼んでくれる人がいたから張り切っているとか?
「早い上に質もいい」
「鉱山の方も皮のおかげで魔物は寄り付かないから戦闘しなくて済むようになったって大助かりよ。それに精霊の力を借りるようになってからは掘るスピードも上がったの。お父様が鉱物が必要になったら遠慮なく言ってくれって」
「ウェスパルが錬金術を使えるようになったらいくつか工面してもらいたいものがある」
「任せてちょうだい! いくらでも用意するわ!」
グッと力こぶを作るイヴァンカと、俺の方も欲しいのあったら育てるからと言ってくれるギュンタ。
ドラゴンの皮を分け、精霊を呼ぶといいと助言しただけ。
だが確実に乙女ゲームにはなかった要素が加わってきていた。
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