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2章
12.召喚獣と精霊
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「それにしても竜族を召喚しただけでも凄いのに、言葉もしゃべれるなんて凄いわよね~。こうして仲良さそうな姿を見てると私も相棒欲しくなっちゃう」
「契約なんてまだまだ先だと思ってたけど、まさか魔法が苦手のウェスパルが一番乗りとはな~。俺も召喚しようかな」
「そうだ、ドラゴンさん。ウェスパルとの契約の決め手ってなんだったの?」
「芋とウェスパルの態度だな」
「確かに食べ物とか相性って大事だって聞くよな」
「召喚において重要なのは、自分の力量を見定めること、それから無用に恐れないことだな。対等かそれ以上になりたいのならこの二つは必ず守れ」
「なるほど」
「呼ばれる側の意見ってなかなか聞く機会ないから勉強になるわ」
こくこくと頷く二人だが、多分決め手の八割以上は芋だ。
無用に恐れないって項目はクリアしていたと思うけど、やっぱり芋でゴリ押しした感はある。
まぁそもそもルクスさんって召喚獣じゃないし、二人にとっては為になる話をしてくれていることには違いない。
ここは突っ込まないでおこう。
代わりにかさが減っているカップにお茶を注いでいく。
「でもそれなら私はまだダメかな~」
「早いうちから呼び寄せて一緒に成長して行くのもありとはいえ、召喚獣は召喚時の怪我が一番多いっていうし。迷うよな~」
「なら精霊にすればいいのではないか?」
「精霊かぁ」
ルクスさんの提案にギュンタの表情が暗くなっていく。ギュンタの気持ちが分かる私とイヴァンカも「精霊はねぇ~」と続く。
「今後召喚獣を呼び出す際に相性の制限が付いてしまうが、一生涯のパートナーとして考えると魔物よりも精霊が優れていると思うが」
「それは分かってるんだけどさ。精霊召喚はあまりメジャーじゃないっていうか、成功率が極端に少ないというか。学園をトップで卒業した人ですらなかなか成功しない上に生涯に一度だけとなるとなぁ」
ギュンタがものすごく丁寧に包んだオブラートを剥がしてしまうと、精霊召喚はこの百年ちょっとで廃れてしまった。
精霊がなかなか召喚に応じなくなってしまったのだ。出てきてくれなければ契約は結べない。
結果、精霊との契約者が徐々に減っていき、契約を結ぶまで危険があるが確実に呼び出しに成功する魔獣召喚が主流となった。
それに精霊は曲者ぞろいと聞く。
使役をすることができない上に、契約が出来てもへそを曲げられてしまえば契約は一方的に解除される。
なら召喚獣が良い。
そう言いたいのだろう。私だって同じ考えだ。
だがルクスさんはくだらないと鼻で笑った。
「それはただ単にそやつらの自然に対する敬意が足りなかっただけだ。それに精霊召喚が生涯に一度だけなんて制限はない。何度やっても結果が変わらなかっただけだろう」
「自然に対する敬意? 精霊召喚に必要なのは魔法の質とか量じゃないの?」
「それらを重要視する精霊もいるが、どちらも今後の成長でいくらでも変わる。だから精霊は自ら愛するものもどれだけ愛してくれるか、今後自分と成長していくに相応しいかを見極める」
「一緒に成長していく、か」
「元より精霊が他種族と契約するのは成長するためだ。お前達なら精霊に気に入られると思うぞ」
話を聞く限り、確かに二人と相性が良さそうだ。
二人ともルクスさんが邪神だと知らないとはいえ、初めて会ったドラゴンともしっかりと向き合ってくれている。
相棒が出来たら間違いなく大切にするし、相手を尊重することだろう。
「精霊、ちょっと興味出てきたかも」
「召喚前にはちゃんと両親の許可をもらうのを忘れるなよ。家族が増えるわけだからな」
「寝床とか作っておいたほうがいい?」
「材料は用意しておいたほうがいいが、好みがあるからな。話し合って作れ。あと食い物が特殊な奴もいるから気をつけろ」
「帰ったら資料を取り寄せて調べてみる!」
「それがいい」
「ねぇ、私はどの種族が合うと思う?」
「やはり土だろうな。お前からは良い土の香りがする」
「精霊もファドゥールの土を気に入ってくれるかしら」
「気に入らなかったら見る目がないと笑ってやれ」
「そうね」
イヴァンカはパチクリと瞬きをして、柔らかく笑った。その笑みは数日前に見たファドゥール伯爵とよく似ていた。
シルヴェスターとスカビオとファドゥール。
三つの領は距離こそ近いが、土質が大きく異なる。ご先祖様達がそれぞれの地に合うように改良に改良を重ねてきた、愛情がたっぷりと注がれた土。
だからこそ土が褒められることが何よりも嬉しいのだ。
「契約なんてまだまだ先だと思ってたけど、まさか魔法が苦手のウェスパルが一番乗りとはな~。俺も召喚しようかな」
「そうだ、ドラゴンさん。ウェスパルとの契約の決め手ってなんだったの?」
「芋とウェスパルの態度だな」
「確かに食べ物とか相性って大事だって聞くよな」
「召喚において重要なのは、自分の力量を見定めること、それから無用に恐れないことだな。対等かそれ以上になりたいのならこの二つは必ず守れ」
「なるほど」
「呼ばれる側の意見ってなかなか聞く機会ないから勉強になるわ」
こくこくと頷く二人だが、多分決め手の八割以上は芋だ。
無用に恐れないって項目はクリアしていたと思うけど、やっぱり芋でゴリ押しした感はある。
まぁそもそもルクスさんって召喚獣じゃないし、二人にとっては為になる話をしてくれていることには違いない。
ここは突っ込まないでおこう。
代わりにかさが減っているカップにお茶を注いでいく。
「でもそれなら私はまだダメかな~」
「早いうちから呼び寄せて一緒に成長して行くのもありとはいえ、召喚獣は召喚時の怪我が一番多いっていうし。迷うよな~」
「なら精霊にすればいいのではないか?」
「精霊かぁ」
ルクスさんの提案にギュンタの表情が暗くなっていく。ギュンタの気持ちが分かる私とイヴァンカも「精霊はねぇ~」と続く。
「今後召喚獣を呼び出す際に相性の制限が付いてしまうが、一生涯のパートナーとして考えると魔物よりも精霊が優れていると思うが」
「それは分かってるんだけどさ。精霊召喚はあまりメジャーじゃないっていうか、成功率が極端に少ないというか。学園をトップで卒業した人ですらなかなか成功しない上に生涯に一度だけとなるとなぁ」
ギュンタがものすごく丁寧に包んだオブラートを剥がしてしまうと、精霊召喚はこの百年ちょっとで廃れてしまった。
精霊がなかなか召喚に応じなくなってしまったのだ。出てきてくれなければ契約は結べない。
結果、精霊との契約者が徐々に減っていき、契約を結ぶまで危険があるが確実に呼び出しに成功する魔獣召喚が主流となった。
それに精霊は曲者ぞろいと聞く。
使役をすることができない上に、契約が出来てもへそを曲げられてしまえば契約は一方的に解除される。
なら召喚獣が良い。
そう言いたいのだろう。私だって同じ考えだ。
だがルクスさんはくだらないと鼻で笑った。
「それはただ単にそやつらの自然に対する敬意が足りなかっただけだ。それに精霊召喚が生涯に一度だけなんて制限はない。何度やっても結果が変わらなかっただけだろう」
「自然に対する敬意? 精霊召喚に必要なのは魔法の質とか量じゃないの?」
「それらを重要視する精霊もいるが、どちらも今後の成長でいくらでも変わる。だから精霊は自ら愛するものもどれだけ愛してくれるか、今後自分と成長していくに相応しいかを見極める」
「一緒に成長していく、か」
「元より精霊が他種族と契約するのは成長するためだ。お前達なら精霊に気に入られると思うぞ」
話を聞く限り、確かに二人と相性が良さそうだ。
二人ともルクスさんが邪神だと知らないとはいえ、初めて会ったドラゴンともしっかりと向き合ってくれている。
相棒が出来たら間違いなく大切にするし、相手を尊重することだろう。
「精霊、ちょっと興味出てきたかも」
「召喚前にはちゃんと両親の許可をもらうのを忘れるなよ。家族が増えるわけだからな」
「寝床とか作っておいたほうがいい?」
「材料は用意しておいたほうがいいが、好みがあるからな。話し合って作れ。あと食い物が特殊な奴もいるから気をつけろ」
「帰ったら資料を取り寄せて調べてみる!」
「それがいい」
「ねぇ、私はどの種族が合うと思う?」
「やはり土だろうな。お前からは良い土の香りがする」
「精霊もファドゥールの土を気に入ってくれるかしら」
「気に入らなかったら見る目がないと笑ってやれ」
「そうね」
イヴァンカはパチクリと瞬きをして、柔らかく笑った。その笑みは数日前に見たファドゥール伯爵とよく似ていた。
シルヴェスターとスカビオとファドゥール。
三つの領は距離こそ近いが、土質が大きく異なる。ご先祖様達がそれぞれの地に合うように改良に改良を重ねてきた、愛情がたっぷりと注がれた土。
だからこそ土が褒められることが何よりも嬉しいのだ。
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