第二部の悪役令嬢がシナリオ開始前に邪神の封印を解いたら闇落ち回避は出来ますか?~王子様との婚約解消はいつでも大歓迎です~

斯波@ジゼルの錬金飴②発売中

文字の大きさ
上 下
3 / 175
1章

3.悪役令嬢は二人いる

しおりを挟む
 ちなみに一部、二部、三部はヒロインの学年ごとに分かれている。

 入学直後から進級式までが第一部  レッドside。
 珍しい力を手にした平民の少女が男爵家の養子となり、学園ひいては貴族社会に馴染んでいくストーリーがメインである。

 攻略対象者は第二王子、宰相の息子の公爵令息、大商人の息子の三人。
 こちらでは第二王子の婚約者であるシェリリン=スカーレット公爵令嬢が悪役を務める。

 彼女は典型的なワガママ令嬢で、自分より目立つヒロインに嫌がらせを繰り返し、最終的に断罪される。
 極めてスタンダードな悪役令嬢である。


 それに対して、第二部  ブラックsideは少し様子が違う。
 二年次開始から二度目の長期休みまでと、一部と比べてやや期間が短いこちらでの悪役令嬢はヒロインに物理的な嫌がらせを一切しない。

 それどころかほぼほぼヒロインの前に登場しないし、攻略対象者との仲を引き裂くようなこともしない。

 では何をするかと言えば、ひたすらステータスを下げるのである。

 一年次は座学中心だったヒロインは、二年生に進学したことで実践に参加するようになる。

 攻略もとい学園生活を進めるためには好感度とともにステータス上げも重要となる。

 作業のごとくひたすら上げたステータスが、悪役令嬢の妨害により一気に下げられる。

 しかもランダムで。
 そのせいで何度イベントが発生せずにロード作業を繰り返したことか!

 最終的に補助アイテムゴリ押しで通過したプレイヤーも少なくない。
 実際、私の友人がそうだった。


 また悪役令嬢  ウェスパル=シルヴェスターは恋愛の邪魔をしてくることはないが、好感度が低ければ攻略対象者達は悪役令嬢を優先するのである。

 そもそもウェスパルはシェリリンとは違い、攻略対象者達から嫌われてはいない。むしろ彼らは幼い頃からほとんど領から出たことのないウェスパルを心配してさえいる。

 ほぼ全てのスチルでヒロインと悪役令嬢の差分が用意されていたほど。
 なんなら結婚式スチルまで用意されていた。

 ウェスパルの婚約者である第三王子のルートのみならともかく、なぜか彼女の従兄弟や彼女の兄の親友の弟のルートでまでも結婚するのである。

 ーーと、悪役令嬢としては大変イレギュラーな扱いを受けてはいるものの、ここまでならウェスパル=シルヴェスターに転生したところでさほど悩むことはない。


 問題はヒロインが攻略者の誰かと上手くいった際に発生する。


 ヒロインの持つ光の力とは対照の闇の力を持つウェスパルは、その力でシルヴェスター領に封印された邪神を解き放つのである。その後、魔王とも手を組み、国を滅ぼそうとする。

 第一部よりも殺意マシマシである。
 ちなみに好感度が高くてもヒロインのステータスが低いとヒロインと攻略者は死ぬ。場合によっては国どころか大陸中が焦土と化す。


 だが最後までなぜウェスパルがそこまでしたのか理由が明かされない。

 シェリリンのように嫉妬をしている様子もなく、邪神復活まではステータスを下げることしかして来なかったのである。

 これはのちにシリーズ最大の謎としてファンの中で語られたほど。
 一部ではヒロインのステータスを下げるために闇の力を使い続けた結果、自分でも制御できなくなり、闇に飲まれてしまったのではないかと言われていた。

 その他にもウェスパルの従兄弟ルートでは『本来ならウェスパルも幼馴染達と共に学園生活を送るはずだったんだがな……』と意味深な言葉が残されていたり、ウェスパルの名前に何かしらの意味があるのではないかとも言われている。

 だがシリーズ完結後も公式が頑なに口を噤み続けたため、真偽のほどは不明である。

 そんなわけでウェスパルは私のプレイした乙女ゲーム登場キャラで謎が残る人物、堂々の一位に輝いている。出来ればウェスパルにだけは転生したくなかった。

 だが、おーまいごっと!  と天に叫んだところで状況は何も変わらない。
 そもそもこんなところで神を呼んで邪神様がこんにちはしても困る。

「なんか頭痛くなってきた……。とりあえず芋食べて糖分とろ」
 大きなため息を吐き、屋敷に戻ることにした。
 料理長に蒸かし芋を作ってもらい、お皿と薬草茶を部屋に持ち帰る。


「今まで特に何も考えずに食べてたけど、この芋うまっ」
 ちなみにこの芋はシルヴェスター領で育てているものである。
 雑草すら育たないのになぜか甘藷だけ育つのだ。普通の芋は育たない。

 ご先祖様がいろいろ植えてみたようだが、甘藷以外は全て枯れてしまったらしい。そのため我が領土の半分近くが甘藷畑となっている。

 主食はもちろん甘藷。おやつも甘藷。
 肉は魔物の肉を食べているが、基本的に食事は他領土頼りとなっている。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

月が隠れるとき

いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。 その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。 という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。 小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

いきなり結婚しろと言われても、相手は7才の王子だなんて冗談はよしてください

シンさん
恋愛
金貸しから追われる、靴職人のドロシー。 ある日突然、7才のアイザック王子にプロポーズされたんだけど、本当は20才の王太子様…。 こんな事になったのは、王家に伝わる魔術の7つ道具の1つ『子供に戻る靴』を履いてしまったから。 …何でそんな靴を履いたのか、本人でさえわからない。けど王太子が靴を履いた事には理由があった。 子供になってしまった20才の王太子と、靴職人ドロシーの恋愛ストーリー ストーリーは完結していますので、毎日更新です。 表紙はぷりりん様に描いていただきました(゜▽゜*)

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

処理中です...