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第1部

7:出発

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洗礼式から2年という猶予をもらい、かーさま、とーさまが魔法、マナー、国学、宗教、と毎日厳しく教えてくれるようになった。




あのあまあまかーさまは、厳しく接することを渋っていたが、とーさまの「あの子は将来有望だ。ここでつぶすのはもったいない。」という説得により、レッスンの時だけなら、と了承していた。とーさまがここまで他人をほめるというのは珍しいことなのだという。




そして、なぜこんな普通の商会の娘がここまでよい、下級貴族のような教育を受けられ、ているのかというと、かーさまが元貴族令嬢だからなのである。

下級貴族で、10人兄弟の末っ子だったために、とーさまと恋愛結婚できたらしい。聞いた時にはさすがに驚いた。




そんなこんなで1年半。あと2か月で誕生日&国王様とご対面の日となる。

回避方法を考えて思いついたのは




①洗礼式の魔測定が間違っていた、故障していた、ということにしてもう一度隠蔽を強くしたものでやり直す。




②重い病にかかる




③家出をする




……碌なのがない




①が一見よさそうに思えるが考え付いたのが5つの属性の魔法を見られた後だった。時、すでに遅し。




②は家族をだましきれない。お医者様とか(医学は発達していないが、回復魔法とかでやってるらしい)呼ばれたら困る。前日にかかっても延期になるだけ。その場しのぎ。




③は、出て行ったところで生きていくすべがない。命がけ。







天才と呼ばれていたが、しょせんこんなものなのか!?




(……天才といわれないようにするのではなかったのか?天才のプライドみたいに聞こえるのだが。)




あ、あれ……。

まぁ、できなさすぎるというのも自分に嫌気がさす……。




(難しいものだな。人の心は時として理解しにくいものがある……。) 




「エレナちゃん、いるかしらー?」




かーさまの言葉の伸びがいつもの”~”ではなく、しっかりとした伸ばしであることに違和感を覚える。そういう時は、決まってよくないお知らせがあるのだ。




「かーさま、どうされたのですか?」




「前におばあ様のことは知っているかしら?」




「はい。会ったことはないですが、何度かかーさまからお話を伺っていましたから。」




「実はね、おばあ様にエレナちゃんのことは手紙で知らせてあったのよ。そうしたら、ぜひ会ってみたい、と言われたの。」




かーさまにとってはそこまでよくないお知らせではない。

私にとっては、おばーさまにまで広まっていたことがよくないお知らせである。

しかし、かーさまは、むしろ知ってほしいと考えているのだ。




「それでね、おばあ様の住んでいるところに、お泊りに行くことになったの。馬車で5時間くらいのところで、何日もかかるような旅にはならないけれど、森を抜けたり、がけにかかる橋を渡ったり、とにかく危険な道なのよ。おばあ様、隠居したらそれまでの別荘に住むと言い出してね…。」




かーさまが遠い目をしている…。




「本当なら私も一緒に行きたいのだけれど、出発の指定日に、王宮の方との打ち合わせのようなものがあるの。それでね、申し訳ないのだけれど、一人で行ってもらうことになるのよ…。」




あー。それでかーさまはおかしかったのか。は〇めてのおつかい、みたいな?




「大丈夫です、かーさま!」




精神年齢24+6歳・魔力人外だからね…







3日後、めちゃくちゃ心配するかーさまに見送られて、馬車は出発した。







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