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第4章 この手の届くところ
7.聴こえた声は
しおりを挟む紋様から、3Dホログラムのように画像が立ち上がった。どこかで見た映画に似たようなものがあったなと今更ながら思い出す。
『もうこれ以上は、この地を維持できない…』
風の精霊王の声が、今度ははっきり聞こえた。
『この声が聞こえた人がいるなら、お願いです…た…』
そこで声が、精霊王の姿が崩れる。
「……え…」
何度も繰り返される、精霊王の姿と声。十数回繰り返されたところで、やっと、私はホログラムに手を伸ばして…触れた。
『お願いです…たすけて』
(やっぱり、そう聞こえる)
ホログラムを切って、思わず椅子に座り込んだ。無意識に手で顔を覆っていた。胸の辺りにヒュウヒュウと乾いた風が吹き込むような、見えない手で心臓を掴まれるような嫌な感覚を覚えて、ひとつ、大きく深呼吸をした。
「主様…主様…」
はっとして振り向くと、精霊達が微動だにせずこちらを見ていた。表情が強張るを通り越して今にも割れそうなくらいに、ショックを受けているようだ。
「みんなおいで」
声をかけると、わらわらと私に密着して来た。ひとりひとりを撫でる。
(私なんかよりも、よっぽど関係が深そうだもの…悪いことしたな)
「ごめんね、もっと気を付けておけばよかった」
「いいえ!秘密にされる方が嫌ですよ!」
「そうなの!」
「ビックリしたけど、主様がいてくれたからよかったの!」
「……うん」
口々にそういう子、黙って私の服を掴んでスリスリしてくる子それぞれだが、何となく意思は同じなのが伝わって来た。彼らが落ち着くまで、しばらくこのままでいよう。
(さて…)
精霊たちの動揺を見たからか、私の方はある程度落ち着きを取り戻していた。
(もちろん助けてあげたいけれど…)
おそらく、『この声が聞こえれば』となっていたのなら、このメッセージを理解できる時点で第一段階はクリアなのだろう。
(次は、まずどうやったら助けられるのか、つまりはなにが起こっていて、どうやったら助けられるのか…状況を把握しないとね)
とりあえず、精霊たちがある程度動けるようになるのを待って、休憩にすることにした。自然と話題が先程の精霊王のことになるが、精霊たちも上手く言葉にならないようだ。
「主様、主様、精霊王さまは……」
「…うん」
言い淀むイシュの頭を撫でてやると、ハルもイシュの頭を撫でていた。イシュもやっと笑顔になってハルの頭を撫で始めた。そんな精霊達の姿を見ていると、あの精霊王の姿が頭の中にチラつく。
(もしかして、1人で耐えているのかな)
精霊王は精霊の集合体だとは聞いているけれど、その位に就いている間は、「1人」なのだと先日教えてもらったばかりだ。
(……まずは、この子達に色々と聞いてみるべき、かな)
『この地を維持する』という言葉の意味からだろうか。『この地』が何処で、『維持する』とはどういう事なのか。
(そして、風の属性だけが異様に高かったという事は…もしかしたら、風の精霊王以外は、もっと困った事になっているのかも…?)
「主様、主様は…」
「うん?」
カルラがおずおずと話しかけて来た。
「……精霊王さまを助けてくださるんですか?」
いつも快活なカルラの顔は、今は強張って、泣きたいのを堪えているような表情だ。私は、手を伸ばして小さなカルラを優しく抱きしめた。
「…うん。約束はできないけれど、やれるだけやってみるよ。手伝ってくれる?」
「はい!」
「僕も!」
「もちろんですの!」
「やったー!」
腕の中にヒョイヒョイと後から後から飛び込んでくる精霊達を抱きしめたりなでたり、なでられたり…カルラのいつもの調子が戻って来たのを実感して、少しだけホッとした。
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