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第1章
幕間〜ミクシと髪と櫛と猫
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お久しぶりです。
投稿が途絶えている間も、お気に入り登録や誤字報告ありがとうございます。
少しずつ復活していくつもりです。
どうぞよろしくお願いします。
———————————————
ボルカノ火山の降灰があると、髪の毛は潤いを失ってキシキシと絡む。
髪を丁寧に洗ったのち、宿の従業員専用の風呂(これも温泉であるが)に浸かり、ミクシは溜息をついた。
「まあいいよね、あとで手入れすればいいんだから」
適量の椿油と、それに漬け込んで手入れをしたツゲの櫛で丁寧に梳くことで、ミクシが密かに自慢にしている、コシの強い豊かな髪はツヤツヤになるのだ。
ついでに顔や手、肘や膝も手に残った椿油で包み込むように保湿することで、降灰のダメージもケアできる。
(うーん……お兄さんにも椿油とか馬油とか、お勧めするべきかな)
お兄さん=ギルドの立て直しに来たアレンダン。最近目に見えて日焼けして来た青年のことを思い出した。
(お肌のお手入れ品くらい持ってるとは思うけどさ。都会と同じものはボルカノだと高いんだよね)
自分の宿で扱っているスキンケア用品の中には、王都や近隣の都市から取り寄せたものも一応ある事はあるのだが、輸送費やらのコストが高すぎて定価の2倍近い値段にしないと利益が全く出ない。
そして、もうひとつ。王都ではどうやら数年前から肌を白くする効果がある、とたくさんの人に使われているらしい化粧品や化粧水の中には、ボルカノの温泉と相性の悪いものがある。
ボルカノの温泉成分が肌に残ったままそれを使うと、効果が出過ぎて肌がピリピリと赤くなるのだ。
(まあ、ターンオーバー?とかの効果があるとか無いとかだけど、そのまま日焼けすると跡が出て来るらしい……だったよね)
母が病死してから、そのあたりの商品管理までやるようになってからもう3年ほど。だいたい情報も頭の中に入って来た。ちなみにミクシは肌が強いのか、温泉入浴後にその化粧品を使っても、全く問題は出なかった。
「色白にもならなかったけどねえ……」
ぽつりと呟くと、磨りガラス張りの扉の向こうに、茶色の塊の姿が伸び上がり、カリカリと硝子を引っ掻く音がする。
「イコモチどうかしたの~?」
「うなーぉ」
返事をした猫のために、ザバリと浴槽から出た。髪の水気を軽く振り払い、裸身に大版のタオルを巻き付ける。
扉を開けてやると、もふもふ茶トラの猫は風呂場の中をうろうろと歩き回り、洗い場の鏡に伝う結露を舐めていた。これはこの猫の謎のクセのひとつ。足の裏が濡れるのは嫌らしいが、どうも結露が気になるようだ。
ラクシの目に、鏡に映る自身が見えた。やや小柄ではあるが、それなりに女性らしく出るところは出ているし、ツヤツヤと張りのある小麦色の肌は嫌いではない。
にぱ!といつもの癖で笑顔を作り、棚の中の化粧水で肌を整える。
(そうそう、明日のお昼のメニュー、変更だったな)
アレンダンがもらった食材を差し入れてくれたので、ちょっと豪華になる予定なのだ。
「ねえ、イコモチ。お兄さんは良い人だよねぇ」
「なーおぅ」
少し濡らしてしまったらしい尻尾をぶんぶん振り回していた猫は、その尻尾をピンとのばした。
投稿が途絶えている間も、お気に入り登録や誤字報告ありがとうございます。
少しずつ復活していくつもりです。
どうぞよろしくお願いします。
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ボルカノ火山の降灰があると、髪の毛は潤いを失ってキシキシと絡む。
髪を丁寧に洗ったのち、宿の従業員専用の風呂(これも温泉であるが)に浸かり、ミクシは溜息をついた。
「まあいいよね、あとで手入れすればいいんだから」
適量の椿油と、それに漬け込んで手入れをしたツゲの櫛で丁寧に梳くことで、ミクシが密かに自慢にしている、コシの強い豊かな髪はツヤツヤになるのだ。
ついでに顔や手、肘や膝も手に残った椿油で包み込むように保湿することで、降灰のダメージもケアできる。
(うーん……お兄さんにも椿油とか馬油とか、お勧めするべきかな)
お兄さん=ギルドの立て直しに来たアレンダン。最近目に見えて日焼けして来た青年のことを思い出した。
(お肌のお手入れ品くらい持ってるとは思うけどさ。都会と同じものはボルカノだと高いんだよね)
自分の宿で扱っているスキンケア用品の中には、王都や近隣の都市から取り寄せたものも一応ある事はあるのだが、輸送費やらのコストが高すぎて定価の2倍近い値段にしないと利益が全く出ない。
そして、もうひとつ。王都ではどうやら数年前から肌を白くする効果がある、とたくさんの人に使われているらしい化粧品や化粧水の中には、ボルカノの温泉と相性の悪いものがある。
ボルカノの温泉成分が肌に残ったままそれを使うと、効果が出過ぎて肌がピリピリと赤くなるのだ。
(まあ、ターンオーバー?とかの効果があるとか無いとかだけど、そのまま日焼けすると跡が出て来るらしい……だったよね)
母が病死してから、そのあたりの商品管理までやるようになってからもう3年ほど。だいたい情報も頭の中に入って来た。ちなみにミクシは肌が強いのか、温泉入浴後にその化粧品を使っても、全く問題は出なかった。
「色白にもならなかったけどねえ……」
ぽつりと呟くと、磨りガラス張りの扉の向こうに、茶色の塊の姿が伸び上がり、カリカリと硝子を引っ掻く音がする。
「イコモチどうかしたの~?」
「うなーぉ」
返事をした猫のために、ザバリと浴槽から出た。髪の水気を軽く振り払い、裸身に大版のタオルを巻き付ける。
扉を開けてやると、もふもふ茶トラの猫は風呂場の中をうろうろと歩き回り、洗い場の鏡に伝う結露を舐めていた。これはこの猫の謎のクセのひとつ。足の裏が濡れるのは嫌らしいが、どうも結露が気になるようだ。
ラクシの目に、鏡に映る自身が見えた。やや小柄ではあるが、それなりに女性らしく出るところは出ているし、ツヤツヤと張りのある小麦色の肌は嫌いではない。
にぱ!といつもの癖で笑顔を作り、棚の中の化粧水で肌を整える。
(そうそう、明日のお昼のメニュー、変更だったな)
アレンダンがもらった食材を差し入れてくれたので、ちょっと豪華になる予定なのだ。
「ねえ、イコモチ。お兄さんは良い人だよねぇ」
「なーおぅ」
少し濡らしてしまったらしい尻尾をぶんぶん振り回していた猫は、その尻尾をピンとのばした。
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