8 / 12
第1章
5.ボルカノダンジョン1階層〜予想よりたくさんの人が出入りしたようでした
しおりを挟む入り口は、一応それっぽく木の柱などが建てられていて、ダンジョンへ潜る際に、任意で提出するダンジョン入洞届の掲示板がある。一応予備の白墨を持ってきたので、幾つか置いておく事にした。残っているチビた白墨で、念のためにアレンダンの名前を掲示板に書き入れる。掲示板がわりの黒板は、あちこちに指で消された名前があって、正直ごちゃごちゃしていて読みづらいのだが、アレンダンの他には新しい名前は無いようだ。これが有名ダンジョンなどになれば、入場料を設けたり、出入りの際にギルドにあるような記録水晶を置いたりしている所も多い。
(これ、とりあえず入黒板と出黒板に分けた方がいいな。黒板に白線引いて、わかりやすくしとくのもアリかな……ダンジョン用の簡易記録水晶は、前の役曰く壊されたって事らしいけど…)
「ま、こればっかりは証拠がないとな。さあ、入ってみるか」
気合を入れるために独り言を言って、それでも普段通りの足取りで、アレンダンはボルカノダンジョンへ足を踏み入れた。
◇◇◇
(まあ、今日は1階層だけだな。マップチェックとか……)
ボルカノダンジョンは、頭に叩き込んだ情報が間違っていないのなら、トラップなどは少なめの自然派ダンジョンと言って良いだろう。ただ、トラップこそ少ないのだが、その自然が問題なのだ。
「やべぇ…初っ端から溶岩かよ……」
下の階層を覗ける空間から下に見えるのは、真っ赤な溶岩だ。かなり下にあるのだが、熱気は凄まじかった。そして、ちらりと見えた限りでは、もっと近い階層にも溶岩が近くまで来ている場所もありそうだ。
「あっつい……こりゃ、用意は慎重にしないとな」
それでも、アレンダンは詳細なマッピングをしながら歩く。ダンジョンは時折その姿を変えると言われはいるのだが、こんな浅い階層はあまり変わらないとされている。
(うん、広さとか形とかちょっと違うかな)
ギルド御用達のマッピング専用のノートに素早く書き込みながら、1階層を隈なくチェックした。この階層は、どうやら魔物の類はほぼいないようだ。ただ、鉄鉱石と稀に宝石出る区画があり、ダンジョンならではの恩恵で掘り尽くしても時間が経てば復活する事から、近くの住人が時々採りに来るようだ。
寄ってきた洞窟コウモリと呼ばれる小型の魔物を、双剣の片方で素早く壁に串刺しにして倒すと、コウモリは程なくして魔石と爪をその場に残して消失した。
「うんうん、レイヴァーンの神々、そしてボルカノダンジョンの恵みに感謝します♪」
手元のマップにコウモリが出た地点に印をつけながら、ドロップ品を拾い上げた。2つ出るとは縁起が良い。
冒険者と一口に言っても、護衛や魔物の討伐、賊討伐やダンジョンの探索など、仕事の種類は多岐にわたる。その中でもアレンダンはダンジョンに潜るのが1番好きだった。
(トーヤとアーニャは魔物討伐の方が好きだったっけか…)
準備や下調べ、一度潜れば風呂にも入りづらく、排泄の際も気を遣うダンジョンは、特に女性冒険者には不人気だ。
(生活魔法がうまく使えればそうでも無いけどな)
アレンダンに言わせれば、洗浄魔法を改造して、服を濡らさず汚れだけを取り除くようにアレンジすれば良いだけなのだが、細かな操作が求められるせいなのか、まだまだ不人気だ。アレンダンは、自身の持つスキルの特性も相まってか、特に面倒は感じないのだが……
(女だから細やかなのが得意、男だから大雑把とか言うわけでも無いもんな。性格だよな)
鉱石の地点で、いくつかの石を採掘してバッグに入れた。少し色が違う石を軽く眺めて、簡易的にスキルを発現させて……その石もバッグに入れた。
採掘のポイントから、50メートルほど進んだ先の下り坂の狭い通路を抜けると、そこから2階層だ。通路の途中に光虫が居たのでそれもメモしておく。
「ま、帰ったら作業する物もあるし……思ったより早いけど、今日はこれで良いや」
吹き抜けのようになっている場所の天井に、コウモリの群れがいる。コウモリは天井の穴に吸い込まれるように消えていくので、もしかしたらその穴から先程の地点に出るのかもしれない。
アレンダンの手元のマップは、3時間ほどで書き込みだらけになってしまった。
「案外1階だけでもそこそこ見所があるって言うか……地元民も使えるいいダンジョンだな」
アレンダンは独り言を言いながら、足元の薬草を何種類か摘み取った。
「そこそこ植生も豊富そうだ」
だからこそ、腑に落ちない事がある。このダンジョンに潜った冒険者や冒険者パーティーのうち、その後の行方が分からない者が、20人以上いるらしいのだ。しばらく行方知れずになり、その後離れた街で見つかった者たちは、すぐに廃業してしまってその後の行方はわかっていなかったり、分かっていてもボルカノダンジョンについては言葉を濁すばかりで要領を得ない。
(何かあるんだろうな)
アレンダンの口角がニヤっと引き上がる。
「だからこそ、ダンジョンだろ」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる