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①オビツキ村
〈メモ1〉
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ここに書く内容は比較的重要なため、よく心に留めておいてほしい。
先ず、これを書くに至った経緯について記したい。
突然だが、これを受信した君はいずれいくつかの制約が課せられ、やがてすべての記憶が消し去られるという残酷な仕打ちを受けることになる。
君、つまり異なる世界線にいる僕は今、課せられた制約の内で最も厄介な『三回』というペナルティの最終段階に瀕している。
ペナルティの詳細は追って次のメモに記すか、もしくは親切なお姉さんが教えに来てくれるから心配しなくていい。
細かいことは抜きにして、すべての記憶が消えてしまう前に「すでに記憶のない僕」に向けて、何を差し置いても心に刻みこんでもらいたい内容だけを伝えたいと思いこれを書くに至った。
他でもない君自身が自信を持って書いたものだから、是非とも信用し切って以下の内容を記憶してほしい。
・木滝多嬉←最愛の人。文字通り最も大切な人。多嬉ちゃん。命を賭しても絶対に守るべき存在。恐らく君に関する記憶はもうない。
・多嬉ちゃんと関われるのは三回までである。三回目には記憶の残滓までもが消失し、君は別の何かになってしまう。
・君は幽体である。おいそれと人と関わろうとしないこと。時々チャンネルが繋がって、どんな影響があるか分からない。幽体や霊体に関することは他のメモを参照。
・根三田悠→僕。君自身。常日頃から日記を書く習性があるため、過去の出来事を知りたければ、自室の机を漁ってみること。ただし、見つかってはいけない書物も混在するため、漁る際は母累美、妹の美意が周囲にいないことを確認すること。鍵は制服の内ポケットか、クローゼットの扉側上部に貼り付けてある。父の源之助は基本的に酔っているから大丈夫だ。しかし危なくなったら手近の物を落として驚かせること。父は見掛けによらず小心者の幽霊嫌いである。
・『三回』のペナルティに縛られ過ぎないこと。
・三回の内、二回目になった段階で『必中の銃』を手にしておくことが望ましい。『必中』を冠する銃はあらゆる時間や空間を超越して因果を成立させる。もしも二回目にそれを手にしたならば迷いなく記憶を消した「僕」に向けて書いた〈メモ〉を弾に詰めて射出すること。話によると、弾丸そのものが狙った対象に届くこともあれば、書いた内容が記憶として流れ込むこともあるらしい。ペナルティによって消えるはずだった幽体を同じ世界に留めた例もあるらしく、僕はその例にあやかって君に弾丸を射出する(笑)。
とあるESP研究所所長の伍堂という男性に会うことがあれば、詳細も含めて彼に尋ね、銃を貸してもらえるよう交渉してみてほしい。
・旅先で出会う六神通を持つ能力者たちの内『天眼通』を持つ少女とは懇意にしておくこと。銃の力を最大限発揮するには彼女の協力が必須。
以上。
お互い悔いのない人生、幽生、霊生を送ろう。
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