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第四章

21. 不確かな形と確かな形

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「私なら、王位継承争いの渦中にいて危険だからとレミリアとの婚約を解消したりはしない。たとえば――クロードと結ばれた方が君は幸せになれるからと自ら手を離すくらいなら、死を選んだ方がましだ」

 膝の上で両の指を組んで形の良い眉を寄せる。自らのことのように悲痛な色が浮かんでいた。

「もちろん君だってそんな覚悟くらいあっただろう。そして周りが自死を選ばせてなどくれないことも、私の言うことが理想を語っているだけなのも分かっている」
「殿下」
「正直に言えば私は、君には強い負い目がある。そんな私のエゴを満たす為に幸せになって欲しいと願っている」
「殿下が僕に負い目を感じられる必要はありません」

 シェイドは静かに首を振った。

「失礼ながら王弟殿下に野心がないのであれば、は十九年前に事故を装って殺されなかったはずです。そして父と母・・・が愛し合ったから僕がいます。僕でなければ彼女に会うことも、幼い彼女の無邪気さに恋をすることもなかったでしょう」

 初めて出会った日のロゼリエッタの姿は、ずっと目に焼きついている。
 自分より小さく、身体も弱い彼女は見たこともないほど眩しくて、あっという間にクロードの世界を明るい色に染め上げた。そうして、クロードの心のほとんどを占めたのだ。

「それでも今さらどんな顔をして、ずっと愛しているだなんて伝えろと仰るのですか」
「良いじゃないか。ずっと、なんだろう。今までも、そしてこの先も、彼女しか愛せないのなら結構なことだ。ありのまま正直に伝えて、手元に置いておけばいい。それを受け入れるかどうかはロゼリエッタ嬢が決めることだ。彼女の気持ちを君が型にはめる権利はない」
「――今さら、です」

 なおも頑ななシェイドをマーガスは鼻で笑った。
 普段の彼は決して権力を笠に着たり、人を見下すような言動は取らない。わざと炊きつけようとしているのだとシェイドにも分かる。だから当然、腹が立ったりもしなかった。
 マーガスは腕を組み、尊大な態度で告げる。

「今さらだとか、まだ成人も迎えてない若僧が何を言う」
「殿下もまだ二十二で若僧扱いされているではありませんか」

 腹は立てていない。
 だが反論はした。
 マーガスの言っていることは正しく、自分が意地を張っているだけなのは分かっていて、それを認めたくはなかったのだ。

「だが三歳の差は大きいだろう。君がロゼリエッタ嬢をいつまでも子供扱いしているようにね」
「それは、」
「案外、君より三歳年下のロゼリエッタ嬢の方が大人だったりするかもしれないな」

 マーガスが放つ言葉の矢は次々とシェイドの心を射抜く。

 ロゼリエッタは小さくて可愛くて病気がちで――だが、会う度にどんどん綺麗になって行った。
 うっすらとしたものではあるが化粧も覚え、ふとした弾みにどきりとさせる表情を見せるようになった。

 無邪気な少女と貞淑な女性がロゼリエッタの中に同時に存在し、どう接したら良いのか分からなくなっていた。自分の知るロゼリエッタと自分の知らないロゼリエッタに振り回され、だがそれも悪くはなかった。

 どんな彼女でも、愛おしいことに変わりはなかったから。

「――どちらにしろ」

 カップに残っていた紅茶を飲み干し、マーガスは表情を和らげた。おかわりが必要か尋ねれば、今度は冷たい紅茶が飲みたいと返って来る。
 形式的に聞いただけのつもりが、まだ色々と話したいことがあるとは微塵も思ってはおらずに驚きを隠せなかった。だが本人が欲しいと言った以上、シェイドは呼び鈴を鳴らした。

 しばらくして、グランハイム公爵家に長年仕える初老の執事がやって来る。マーガスに冷たい紅茶を、と頼めば手際良く淹れ、そのまま部屋を後にした。

 紅茶を頼んでいる間は止まっていた時間が、執事の退室と共に緩やかに流れはじめる。むしろシェイドにとって、頭を冷やす良い時間になったのではないか。マーガスがそれを目的としていたのかは分からないが。

「例の侍女とは別件でロゼリエッタ嬢もレミリアに匿ってもらうこともできた。それをしたくないと言ったんだ。何を思って自分が傍にいることを選んだのか、それは自分がいちばん分かっていることだろう」

 シェイドは頷いた。
 頷かざるをえなかった。
 そこは、クロードが譲らなかった部分だからだ。

「それとだな」

 マーガスは急に顔をしかめた。
 ひどく苦々しい面持ちで、盛大な溜め息と共に言葉を続ける。

「こちらの国では――同意書、と言う制度なのか? ともかく、君たちが婚約を解消したいと互いの署名を記した書類を見て、我が婚約者殿が非常にご立腹されておられる」

 ロゼリエッタは同意書に署名し、提出した。

 それを願っていたのに、実行に移されたと知ると胸が鈍く痛んだ。
 だがレミリアが腹を立てているというのはよく分からない。
 彼女は彼女なりにロゼリエッタを妹のように思っていたようではあるが、婚約解消の後押しをしたのは王家だ。

「正直に申し上げて、それに関しては八つ当たりかと思いますが」

 このままでは年若いロゼリエッタの人生を縛りつけてしまう。

 グランハイム公爵家の建前を飲み、カルヴァネス侯爵家に婚約解消を勧めた。王家からの進言がなければ、あるいは婚約は続行されたままだったかもしれない。

 だがそれこそ、シェイドの八つ当たりだ。

 大切な存在を、もう守り切れないと判断したから遠ざけた。
 その判断を下したのは"クロード・グランハイム"だ。
 自分だけの手で突き放す強さもなくて王家すら巻き込んでおいて、なのに未練を断ち切ることもできずに今こうして彼女を手元に置いている。
 姿や名を偽ったところで、してあげられることなど何もないと言うのに。

「クロード」

 マーガスは決してシェイドとは呼ばない。
 一度だけそう呼びはしたものの、彼の中でやはり納得が行かなかったのかそれきりだ。以降は人前では話しかけること自体をしないし徹底していた。
 それも偏に"クロード・グランハイム"の痕跡を完全に決してしまわないよう、彼なりに配慮してくれているのだろう。
 なのに従兄の気遣いにすら、誠意で応えられない。

「婚約者殿からは、同意書は自分が預かっておくと言伝も承っている」
「それは、一体……」

 意図が掴めずに疑問も不確かな言葉になった。
 レミリアが預かるとは、ロゼリエッタとの婚約解消は受理されず宙づり状態になっているという認識で良いのだろうか。
 しかしそれではロゼリエッタがダヴィッドと幸せになれない。ただその一方で、彼女の幸せを願いながらも繋がりが切れていないことに安堵する自分もいた。

「一方的な解消すぎて、婚約者殿はどうしても納得が行かないのだそうだ」
「納得が行かないと申されましても」

 やはりシェイドの歯切れは悪いままだ。

 一方的だとそしられようと、形として二人の婚約は解消となった。破棄ではない。ロゼリエッタの――主にカルヴァネス侯爵家の――同意を得てのことだ。
 だがマーガスは追及の手を緩めなかった。

「では本当に、ロゼリエッタ嬢に真実を伝えないまま、愛などどこにもないから解消したと思われたままでも良いのだな」
「そういう言い方は、些か卑怯ではありませんか」
「卑怯? どこが?」

 苦々しく声を振り絞ったシェイドに対し、質問で返す。

 分かっている。
 同意を得たんじゃない。同意しかできないよう、無理やり外堀を埋めたのだ。

「この生活がいつまで続くのか私には分からない。ただ少なくとも、そうすることを選んだのは全て君の意思だ。かつての婚約者だった少女とやり直す為でも、最後の思い出作りの為でも、どんな終わりを迎えたとして、後悔だけはしてはならないと思う」

 マーガスの言葉は耳に痛い。

「主ではなく従兄として言わせてもらおう。クロード、君は幸せになっていい。人を好きになってもいいんだ」

 そしてその力強い言葉は、心の深い場所へと沈み込むようだった。

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