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第三章
13. 後ろ向きで前に歩く覚悟
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ロゼリエッタはシーツに包まってじっとしていた。
ベッドに入ったのはどれくらい前のことだったろう。
眠ろうと努力はしている。けれど目を閉じてもすぐに薄闇の世界に戻って来てしまうのだ。
どれだけ足掻いたって、クロードとの婚約は解消の方向に進んでいる。
ロゼリエッタもそれを受け止め、そして変わらなければいけない。すぐにクロードへの想いを断ち切れないロゼリエッタでも、ダヴィッドは婚約者として受け入れようとしてくれていた。
でも。
だけど。
瞳に涙が潤んだ。堪え切れず涙をこぼすと嗚咽がとめどなく込み上げて来る。
「クロ……ド様。クロード様……っ」
縋るように名前を呼んでも誰も応えてくれない。
クロードの前で泣いたことなどなかったから、こんな時どう慰めてくれていたのか思い出すこともできなかった。
日が経つほどに気がついてしまう。
婚約者になってから、婚約者らしいことの思い出が何もない。
レオニールの友人として訪ねて来てくれていた時。婚約者になってから。どちらもクロードの態度は変わりなかった。ロゼリエッタはいつだって、あくまでも妹のような存在でしかなかったのだ。
そんなことは分かっている。
決して、同じ形の愛を返してはもらえない。
そんなことくらい痛いほど分かっている。
でも、それでも好きなのは仕方ないではないか。
もう忘れることを決めた。でも、そうすると決めただけだ。その程度で忘れられるはずなどないことは、それこそいちばん分かっている。
閉じた目に右手の甲を押し当てた。
光のない世界に、ロゼリエッタのすすり泣く声だけが響く。冷たい雫がとめどなく頬をすべり落ちた。
ロゼリエッタの決意など所詮この程度のものなのだ。
一人になると簡単にぐらつく。弱く臆病な心が恋を失って強くなれるはずもなかった。
(忘れたくなんてない。思い出さえも私から取り上げたりしないで)
もう一人のロゼリエッタが心の中で悲鳴をあげる。
子供のように泣きじゃくる彼女を慰めて宥める方法をロゼリエッタは知らない。いつか涙が枯れることを待つしかできなかった。
「おはようございます、お嬢様。お目覚めでいらっしゃいますか?」
ドアをノックする音と、アイリの声が聞こえる。
どうやら昨夜は泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。目を開けようとして、違和感を覚えて眉を寄せる。
「お嬢様?」
返事もせず、起き上がることもしないロゼリエッタに異変を察知したようだ。アイリの声に不安の色がわずかに混ざった。
緩慢な動作で上半身を起こし、ロゼリエッタは両手で目元を覆う。聞こえるか自信はないけれど懸命に声を振り絞って答えた。
「目が、とても痛くて開けられないの」
「まあ……! 少しだけお待ち下さいね」
泣きすぎたせいだろう。声も、上手く出せない。それでもアイリには状況が伝わったらしく、ばたばたと走る足音が遠ざかって行った。
しばらくして今度は足音が近づいて来る。ロゼリエッタの部屋の前で止まり、失礼します、と断りの後でドアが開く音がした。
「お待たせして申し訳ありません。こちらをどうぞ」
そっとロゼリエッタの手を包んで引き離しながら、代わりに柔らかな布を目元に押し当てた。
布はお湯に浸したようで、じんわりと温かい。感覚だけを頼りに自分の手で包み込むと、ロゼリエッタの心まで温められるようだった。
「ありがとう、アイリ」
「いいえ。当然のことをしたにすぎません」
「アイリはいつも、そう言うのね」
「私はお嬢様の為にお仕えする身ですから当然のことをしているだけです」
「ありがとう」
新たな涙が潤んで来る。目を温めるふりをして布に吸わせて誤魔化した。
「新しい布をご使用になりますか?」
「ううん、もう大丈夫」
布が冷えて来る頃合いを見計らって尋ねるアイリに首を振って答える。
最後に強めに布を押し当て、ようやく目元から離した。顔を上げてアイリを見つめると安堵したように微笑む表情と目が合った。
アイリは温かいレモネードまで用意してくれていたようだ。カップを受け取り、まだ湯気の立ち昇るそれに息を吹きかけて冷ましながら少しずつ口に含む。優しさに満ちた甘酸っぱい感覚が荒れた喉を癒やすのが心地良い。喉が求めるまま与え、気がつけば全てを飲み干してしまった。
「朝食は旦那様方とご一緒に召し上がれそうですか? もしお身体の具合がよろしくないようでしたら、お部屋までお運び致します」
「お父様にご相談したいこともあるし、食堂まで行くわ」
朝食の席で、王都を出ようと考えていることを家族に伝えると決めていた。
幸い、今日は日曜日だ。平日であれば切り出すことが躊躇われる、込み入った話を聞いてもらう時間は多少の余裕がある。
何しろ急な話だ。ロゼリエッタ自身もどのくらい離れているつもりなのか、ちゃんとしたことは考えていないに等しかった。一週間ほどかもしれないし、あるいは一生のことになるかもしれない。
まだ何の具体性もない計画だけれど、父の所有する領地でゆっくりしたいと言えば反対はされないだろう。
王都で暮らすには、つらい思い出が多すぎる。
思い出を取り上げないでと彼女は泣くけれど、それでも忘れて行かなければいけない。
「では急いでお顔を洗って、お着替えもなさいませんとね」
「うん」
ロゼリエッタは頷き、ベッドを出た。立ち上がる時に少しふらついてしまった身体を、アイリが咄嗟に支えてくれる。
大丈夫だからと離れてもらう。泣いただけで体力の半分以上を失い、一晩眠っただけでは回復もしない身体を叱咤し、一人で立った。それから、自分の力だけで踏み出す。
少しぐらついても歩ける。歩かなければいけない。
ロゼリエッタは顔を上げた。
大丈夫。
転びそうになったら助けてくれる人たちがいる。
ロゼリエッタは唇を引き結び、奥のバスルームへ向かった。
朝食が終わる頃を見計らって療養について打ち明けることは、想像以上に勇気を必要とした。でも両親も兄も反対派しなかった。話を聞き終わると、それがいいと賛成してくれた。特に兄は、グランハイム家から連絡が来て間もなくに同じことを両親へ進言していたようだ。
だからロゼリエッタが望めば、いつでも迎え入れられる手筈は整っているという。
何も言わなくても心配してくれていた家族の愛情に泣きそうになる。でも泣かずに笑った。強がる為にそうしたわけではない。嬉しかったからだ。
「それで、いつ領地へと出発なさるのですか?」
「今日が火曜日だから……今週の土曜日には向かうつもり」
アイリに尋ねられ、漠然と思っていた予定を伝える。
家族の同意を得た今となっては、本当は明日にでも出発したい気持ちはあった。けれどいつでも受け入れる状態にあるとは言え、さすがに早すぎるだろう。アイリに頼んだように、領地へ向かう為の準備だってしなければいけない。おそらくは今週末が実現しうるいちばん早い日だ。
「では金曜日までにご支度を整えておきますね」
「うん。お願いね」
「畏まりました」
それが彼女の仕事だと言えばそれまでではあるけれど、アイリは予定外の面倒な仕事も嫌な顔一つせず引き受け、ロゼリエッタを見つめる。
何を言いたいのか、自惚れではなく分かっているつもりだ。だからロゼリエッタは笑みを浮かべた。
「王都を離れることになるけれど、アイリも私のお世話係として一緒に来てくれる?」
「っ……! もちろんです!」
途端に表情を輝かせ、アイリは強く頷く。自分の見通しが間違っていなかったことに安堵を覚え、ロゼリエッタは言葉を足した。
「でも、まだどれだけ領地にいるかは決めてないの。もちろん、アイリがこちらに戻りたくなったらいつでも戻ってくれて構わないのだけれど……」
「とんでもありません」
アイリは力強く首を振ってロゼリエッタの言葉を遮った。
「お嬢様に不必要とされるその日まで、このアイリをどうぞお仕えさせて下さい」
「ありがとう」
何の迷いも感じさせない真っすぐな目と声で応えてくれるアイリに笑いかけ、あと数日で離れることになる室内を見やる。
新しい生活に、この部屋の全てを持ってはいけない。置いて行くものを選別する必要があった。
真っ先にベッドの脇へと視線が向かう。
クロードからもらった大切なカード。捨てることはできなくても、置いて行くことはできる。でも、ロゼリエッタはそれを実行できるのだろうか。
あのカードはクロードそのものに等しかった。大切な思い出がたくさん詰まっている。見たらどうしたってクロードを思い出す。そうしたらまた泣いてしまうだろう。でも手元になければ――きっと、不安になる。
「お嬢様、少し外へと用事を済ませに出掛けてもよろしいでしょうか」
「うん。行ってらっしゃい」
気を遣ってくれたのか、そう申し出るアイリに頷きを返す。
「ありがとうございます。夕刻までには戻って参りますね」
一人になれば、ロゼリエッタは立ち上がってベッドに歩み寄った。宝石箱を開けてカードを取り出す。
途端に涙が潤んで来る。
今はまだクロードを想い痛む胸も、王都を離れて療養することで癒える日が来るのだろうか。
分からない。
今はまだ、分かりたくない。
涙を拭うと箱にカードを戻した。
このまま想いごと閉じ込める勇気が持てない自分は、とても弱虫だ。
ベッドに入ったのはどれくらい前のことだったろう。
眠ろうと努力はしている。けれど目を閉じてもすぐに薄闇の世界に戻って来てしまうのだ。
どれだけ足掻いたって、クロードとの婚約は解消の方向に進んでいる。
ロゼリエッタもそれを受け止め、そして変わらなければいけない。すぐにクロードへの想いを断ち切れないロゼリエッタでも、ダヴィッドは婚約者として受け入れようとしてくれていた。
でも。
だけど。
瞳に涙が潤んだ。堪え切れず涙をこぼすと嗚咽がとめどなく込み上げて来る。
「クロ……ド様。クロード様……っ」
縋るように名前を呼んでも誰も応えてくれない。
クロードの前で泣いたことなどなかったから、こんな時どう慰めてくれていたのか思い出すこともできなかった。
日が経つほどに気がついてしまう。
婚約者になってから、婚約者らしいことの思い出が何もない。
レオニールの友人として訪ねて来てくれていた時。婚約者になってから。どちらもクロードの態度は変わりなかった。ロゼリエッタはいつだって、あくまでも妹のような存在でしかなかったのだ。
そんなことは分かっている。
決して、同じ形の愛を返してはもらえない。
そんなことくらい痛いほど分かっている。
でも、それでも好きなのは仕方ないではないか。
もう忘れることを決めた。でも、そうすると決めただけだ。その程度で忘れられるはずなどないことは、それこそいちばん分かっている。
閉じた目に右手の甲を押し当てた。
光のない世界に、ロゼリエッタのすすり泣く声だけが響く。冷たい雫がとめどなく頬をすべり落ちた。
ロゼリエッタの決意など所詮この程度のものなのだ。
一人になると簡単にぐらつく。弱く臆病な心が恋を失って強くなれるはずもなかった。
(忘れたくなんてない。思い出さえも私から取り上げたりしないで)
もう一人のロゼリエッタが心の中で悲鳴をあげる。
子供のように泣きじゃくる彼女を慰めて宥める方法をロゼリエッタは知らない。いつか涙が枯れることを待つしかできなかった。
「おはようございます、お嬢様。お目覚めでいらっしゃいますか?」
ドアをノックする音と、アイリの声が聞こえる。
どうやら昨夜は泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。目を開けようとして、違和感を覚えて眉を寄せる。
「お嬢様?」
返事もせず、起き上がることもしないロゼリエッタに異変を察知したようだ。アイリの声に不安の色がわずかに混ざった。
緩慢な動作で上半身を起こし、ロゼリエッタは両手で目元を覆う。聞こえるか自信はないけれど懸命に声を振り絞って答えた。
「目が、とても痛くて開けられないの」
「まあ……! 少しだけお待ち下さいね」
泣きすぎたせいだろう。声も、上手く出せない。それでもアイリには状況が伝わったらしく、ばたばたと走る足音が遠ざかって行った。
しばらくして今度は足音が近づいて来る。ロゼリエッタの部屋の前で止まり、失礼します、と断りの後でドアが開く音がした。
「お待たせして申し訳ありません。こちらをどうぞ」
そっとロゼリエッタの手を包んで引き離しながら、代わりに柔らかな布を目元に押し当てた。
布はお湯に浸したようで、じんわりと温かい。感覚だけを頼りに自分の手で包み込むと、ロゼリエッタの心まで温められるようだった。
「ありがとう、アイリ」
「いいえ。当然のことをしたにすぎません」
「アイリはいつも、そう言うのね」
「私はお嬢様の為にお仕えする身ですから当然のことをしているだけです」
「ありがとう」
新たな涙が潤んで来る。目を温めるふりをして布に吸わせて誤魔化した。
「新しい布をご使用になりますか?」
「ううん、もう大丈夫」
布が冷えて来る頃合いを見計らって尋ねるアイリに首を振って答える。
最後に強めに布を押し当て、ようやく目元から離した。顔を上げてアイリを見つめると安堵したように微笑む表情と目が合った。
アイリは温かいレモネードまで用意してくれていたようだ。カップを受け取り、まだ湯気の立ち昇るそれに息を吹きかけて冷ましながら少しずつ口に含む。優しさに満ちた甘酸っぱい感覚が荒れた喉を癒やすのが心地良い。喉が求めるまま与え、気がつけば全てを飲み干してしまった。
「朝食は旦那様方とご一緒に召し上がれそうですか? もしお身体の具合がよろしくないようでしたら、お部屋までお運び致します」
「お父様にご相談したいこともあるし、食堂まで行くわ」
朝食の席で、王都を出ようと考えていることを家族に伝えると決めていた。
幸い、今日は日曜日だ。平日であれば切り出すことが躊躇われる、込み入った話を聞いてもらう時間は多少の余裕がある。
何しろ急な話だ。ロゼリエッタ自身もどのくらい離れているつもりなのか、ちゃんとしたことは考えていないに等しかった。一週間ほどかもしれないし、あるいは一生のことになるかもしれない。
まだ何の具体性もない計画だけれど、父の所有する領地でゆっくりしたいと言えば反対はされないだろう。
王都で暮らすには、つらい思い出が多すぎる。
思い出を取り上げないでと彼女は泣くけれど、それでも忘れて行かなければいけない。
「では急いでお顔を洗って、お着替えもなさいませんとね」
「うん」
ロゼリエッタは頷き、ベッドを出た。立ち上がる時に少しふらついてしまった身体を、アイリが咄嗟に支えてくれる。
大丈夫だからと離れてもらう。泣いただけで体力の半分以上を失い、一晩眠っただけでは回復もしない身体を叱咤し、一人で立った。それから、自分の力だけで踏み出す。
少しぐらついても歩ける。歩かなければいけない。
ロゼリエッタは顔を上げた。
大丈夫。
転びそうになったら助けてくれる人たちがいる。
ロゼリエッタは唇を引き結び、奥のバスルームへ向かった。
朝食が終わる頃を見計らって療養について打ち明けることは、想像以上に勇気を必要とした。でも両親も兄も反対派しなかった。話を聞き終わると、それがいいと賛成してくれた。特に兄は、グランハイム家から連絡が来て間もなくに同じことを両親へ進言していたようだ。
だからロゼリエッタが望めば、いつでも迎え入れられる手筈は整っているという。
何も言わなくても心配してくれていた家族の愛情に泣きそうになる。でも泣かずに笑った。強がる為にそうしたわけではない。嬉しかったからだ。
「それで、いつ領地へと出発なさるのですか?」
「今日が火曜日だから……今週の土曜日には向かうつもり」
アイリに尋ねられ、漠然と思っていた予定を伝える。
家族の同意を得た今となっては、本当は明日にでも出発したい気持ちはあった。けれどいつでも受け入れる状態にあるとは言え、さすがに早すぎるだろう。アイリに頼んだように、領地へ向かう為の準備だってしなければいけない。おそらくは今週末が実現しうるいちばん早い日だ。
「では金曜日までにご支度を整えておきますね」
「うん。お願いね」
「畏まりました」
それが彼女の仕事だと言えばそれまでではあるけれど、アイリは予定外の面倒な仕事も嫌な顔一つせず引き受け、ロゼリエッタを見つめる。
何を言いたいのか、自惚れではなく分かっているつもりだ。だからロゼリエッタは笑みを浮かべた。
「王都を離れることになるけれど、アイリも私のお世話係として一緒に来てくれる?」
「っ……! もちろんです!」
途端に表情を輝かせ、アイリは強く頷く。自分の見通しが間違っていなかったことに安堵を覚え、ロゼリエッタは言葉を足した。
「でも、まだどれだけ領地にいるかは決めてないの。もちろん、アイリがこちらに戻りたくなったらいつでも戻ってくれて構わないのだけれど……」
「とんでもありません」
アイリは力強く首を振ってロゼリエッタの言葉を遮った。
「お嬢様に不必要とされるその日まで、このアイリをどうぞお仕えさせて下さい」
「ありがとう」
何の迷いも感じさせない真っすぐな目と声で応えてくれるアイリに笑いかけ、あと数日で離れることになる室内を見やる。
新しい生活に、この部屋の全てを持ってはいけない。置いて行くものを選別する必要があった。
真っ先にベッドの脇へと視線が向かう。
クロードからもらった大切なカード。捨てることはできなくても、置いて行くことはできる。でも、ロゼリエッタはそれを実行できるのだろうか。
あのカードはクロードそのものに等しかった。大切な思い出がたくさん詰まっている。見たらどうしたってクロードを思い出す。そうしたらまた泣いてしまうだろう。でも手元になければ――きっと、不安になる。
「お嬢様、少し外へと用事を済ませに出掛けてもよろしいでしょうか」
「うん。行ってらっしゃい」
気を遣ってくれたのか、そう申し出るアイリに頷きを返す。
「ありがとうございます。夕刻までには戻って参りますね」
一人になれば、ロゼリエッタは立ち上がってベッドに歩み寄った。宝石箱を開けてカードを取り出す。
途端に涙が潤んで来る。
今はまだクロードを想い痛む胸も、王都を離れて療養することで癒える日が来るのだろうか。
分からない。
今はまだ、分かりたくない。
涙を拭うと箱にカードを戻した。
このまま想いごと閉じ込める勇気が持てない自分は、とても弱虫だ。
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