上 下
14 / 42
第三章

13. 後ろ向きで前に歩く覚悟

しおりを挟む
 ロゼリエッタはシーツに包まってじっとしていた。

 ベッドに入ったのはどれくらい前のことだったろう。
 眠ろうと努力はしている。けれど目を閉じてもすぐに薄闇の世界に戻って来てしまうのだ。

 どれだけ足掻いたって、クロードとの婚約は解消の方向に進んでいる。
 ロゼリエッタもそれを受け止め、そして変わらなければいけない。すぐにクロードへの想いを断ち切れないロゼリエッタでも、ダヴィッドは婚約者として受け入れようとしてくれていた。

 でも。
 だけど。

 瞳に涙が潤んだ。こらえ切れず涙をこぼすと嗚咽がとめどなく込み上げて来る。

「クロ……ド様。クロード様……っ」

 縋るように名前を呼んでも誰も応えてくれない。
 クロードの前で泣いたことなどなかったから、こんな時どう慰めてくれていたのか思い出すこともできなかった。

 日が経つほどに気がついてしまう。
 婚約者になってから、婚約者らしいことの思い出が何もない。
 レオニールの友人として訪ねて来てくれていた時。婚約者になってから。どちらもクロードの態度は変わりなかった。ロゼリエッタはいつだって、あくまでも妹のような存在でしかなかったのだ。

 そんなことは分かっている。
 決して、同じ形の愛を返してはもらえない。
 そんなことくらい痛いほど分かっている。

 でも、それでも好きなのは仕方ないではないか。
 もう忘れることを決めた。でも、そうすると決めただけだ。その程度で忘れられるはずなどないことは、それこそいちばん分かっている。

 閉じた目に右手の甲を押し当てた。
 光のない世界に、ロゼリエッタのすすり泣く声だけが響く。冷たい雫がとめどなく頬をすべり落ちた。

 ロゼリエッタの決意など所詮この程度のものなのだ。
 一人になると簡単にぐらつく。弱く臆病な心が恋を失って強くなれるはずもなかった。

(忘れたくなんてない。思い出さえも私から取り上げたりしないで)

 もう一人のロゼリエッタが心の中で悲鳴をあげる。
 子供のように泣きじゃくる彼女を慰めて宥める方法をロゼリエッタは知らない。いつか涙が枯れることを待つしかできなかった。



「おはようございます、お嬢様。お目覚めでいらっしゃいますか?」

 ドアをノックする音と、アイリの声が聞こえる。
 どうやら昨夜は泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。目を開けようとして、違和感を覚えて眉を寄せる。

「お嬢様?」

 返事もせず、起き上がることもしないロゼリエッタに異変を察知したようだ。アイリの声に不安の色がわずかに混ざった。
 緩慢な動作で上半身を起こし、ロゼリエッタは両手で目元を覆う。聞こえるか自信はないけれど懸命に声を振り絞って答えた。

「目が、とても痛くて開けられないの」
「まあ……! 少しだけお待ち下さいね」

 泣きすぎたせいだろう。声も、上手く出せない。それでもアイリには状況が伝わったらしく、ばたばたと走る足音が遠ざかって行った。
 しばらくして今度は足音が近づいて来る。ロゼリエッタの部屋の前で止まり、失礼します、と断りの後でドアが開く音がした。

「お待たせして申し訳ありません。こちらをどうぞ」

 そっとロゼリエッタの手を包んで引き離しながら、代わりに柔らかな布を目元に押し当てた。
 布はお湯に浸したようで、じんわりと温かい。感覚だけを頼りに自分の手で包み込むと、ロゼリエッタの心まで温められるようだった。

「ありがとう、アイリ」
「いいえ。当然のことをしたにすぎません」
「アイリはいつも、そう言うのね」
「私はお嬢様の為にお仕えする身ですから当然のことをしているだけです」
「ありがとう」

 新たな涙が潤んで来る。目を温めるふりをして布に吸わせて誤魔化した。

「新しい布をご使用になりますか?」
「ううん、もう大丈夫」

 布が冷えて来る頃合いを見計らって尋ねるアイリに首を振って答える。
 最後に強めに布を押し当て、ようやく目元から離した。顔を上げてアイリを見つめると安堵したように微笑む表情と目が合った。

 アイリは温かいレモネードまで用意してくれていたようだ。カップを受け取り、まだ湯気の立ち昇るそれに息を吹きかけて冷ましながら少しずつ口に含む。優しさに満ちた甘酸っぱい感覚が荒れた喉を癒やすのが心地良い。喉が求めるまま与え、気がつけば全てを飲み干してしまった。

「朝食は旦那様方とご一緒に召し上がれそうですか? もしお身体の具合がよろしくないようでしたら、お部屋までお運び致します」
「お父様にご相談したいこともあるし、食堂まで行くわ」

 朝食の席で、王都を出ようと考えていることを家族に伝えると決めていた。
 幸い、今日は日曜日だ。平日であれば切り出すことが躊躇われる、込み入った話を聞いてもらう時間は多少の余裕がある。

 何しろ急な話だ。ロゼリエッタ自身もどのくらい離れているつもりなのか、ちゃんとしたことは考えていないに等しかった。一週間ほどかもしれないし、あるいは一生のことになるかもしれない。
 まだ何の具体性もない計画だけれど、父の所有する領地でゆっくりしたいと言えば反対はされないだろう。

 王都で暮らすには、つらい思い出が多すぎる。
 思い出を取り上げないでと彼女は泣くけれど、それでも忘れて行かなければいけない。

「では急いでお顔を洗って、お着替えもなさいませんとね」
「うん」

 ロゼリエッタは頷き、ベッドを出た。立ち上がる時に少しふらついてしまった身体を、アイリが咄嗟に支えてくれる。
 大丈夫だからと離れてもらう。泣いただけで体力の半分以上を失い、一晩眠っただけでは回復もしない身体を叱咤し、一人で立った。それから、自分の力だけで踏み出す。
 少しぐらついても歩ける。歩かなければいけない。

 ロゼリエッタは顔を上げた。
 大丈夫。
 転びそうになったら助けてくれる人たちがいる。

 ロゼリエッタは唇を引き結び、奥のバスルームへ向かった。


 朝食が終わる頃を見計らって療養について打ち明けることは、想像以上に勇気を必要とした。でも両親も兄も反対派しなかった。話を聞き終わると、それがいいと賛成してくれた。特に兄は、グランハイム家から連絡が来て間もなくに同じことを両親へ進言していたようだ。
 だからロゼリエッタが望めば、いつでも迎え入れられる手筈は整っているという。

 何も言わなくても心配してくれていた家族の愛情に泣きそうになる。でも泣かずに笑った。強がる為にそうしたわけではない。嬉しかったからだ。

「それで、いつ領地へと出発なさるのですか?」
「今日が火曜日だから……今週の土曜日には向かうつもり」

 アイリに尋ねられ、漠然と思っていた予定を伝える。
 家族の同意を得た今となっては、本当は明日にでも出発したい気持ちはあった。けれどいつでも受け入れる状態にあるとは言え、さすがに早すぎるだろう。アイリに頼んだように、領地へ向かう為の準備だってしなければいけない。おそらくは今週末が実現しうるいちばん早い日だ。

「では金曜日までにご支度を整えておきますね」
「うん。お願いね」
「畏まりました」

 それが彼女の仕事だと言えばそれまでではあるけれど、アイリは予定外の面倒な仕事も嫌な顔一つせず引き受け、ロゼリエッタを見つめる。
 何を言いたいのか、自惚れではなく分かっているつもりだ。だからロゼリエッタは笑みを浮かべた。

「王都を離れることになるけれど、アイリも私のお世話係として一緒に来てくれる?」
「っ……! もちろんです!」

 途端に表情を輝かせ、アイリは強く頷く。自分の見通しが間違っていなかったことに安堵を覚え、ロゼリエッタは言葉を足した。

「でも、まだどれだけ領地にいるかは決めてないの。もちろん、アイリがこちらに戻りたくなったらいつでも戻ってくれて構わないのだけれど……」
「とんでもありません」

 アイリは力強く首を振ってロゼリエッタの言葉を遮った。

「お嬢様に不必要とされるその日まで、このアイリをどうぞお仕えさせて下さい」
「ありがとう」

 何の迷いも感じさせない真っすぐな目と声で応えてくれるアイリに笑いかけ、あと数日で離れることになる室内を見やる。
 新しい生活に、この部屋の全てを持ってはいけない。置いて行くものを選別する必要があった。

 真っ先にベッドの脇へと視線が向かう。
 クロードからもらった大切なカード。捨てることはできなくても、置いて行くことはできる。でも、ロゼリエッタはそれを実行できるのだろうか。

 あのカードはクロードそのものに等しかった。大切な思い出がたくさん詰まっている。見たらどうしたってクロードを思い出す。そうしたらまた泣いてしまうだろう。でも手元になければ――きっと、不安になる。

「お嬢様、少し外へと用事を済ませに出掛けてもよろしいでしょうか」
「うん。行ってらっしゃい」

 気を遣ってくれたのか、そう申し出るアイリに頷きを返す。

「ありがとうございます。夕刻までには戻って参りますね」

 一人になれば、ロゼリエッタは立ち上がってベッドに歩み寄った。宝石箱を開けてカードを取り出す。

 途端に涙が潤んで来る。
 今はまだクロードを想い痛む胸も、王都を離れて療養することで癒える日が来るのだろうか。

 分からない。
 今はまだ、分かりたくない。

 涙を拭うと箱にカードを戻した。
 このまま想いごと閉じ込める勇気が持てない自分は、とても弱虫だ。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~

夏笆(なつは)
恋愛
 ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。  ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。 『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』  可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。  更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。 『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』 『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』  夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。  それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。  そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。  期間は一年。  厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。  つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。  この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。  あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。    小説家になろうでも、掲載しています。 Hotランキング1位、ありがとうございます。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...