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第三章
11. 仮面の騎士
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サロンへ姿を見せたレミリアは普段より一際人々の、特に年若い令嬢たちからの注目を集めていた。
何しろ今日の夜会では彼女の隣にマーガスがいる。あまり夜会に出ないロゼリエッタの記憶ではあるからあてになるものではないけれど、マーガスがこの国を訪れるのは婚約を発表した時を含めてもこれで四回目だ。
この国の人々の前にその姿を見せる回数は少なくとも、身分的にも容姿的にも釣り合いの取れた二人は人目を引く。令嬢たちの羨望を独り占めするのはなおさらだった。
「お付きの騎士はどなたなのかしら?」
「見慣れない方ね」
さらに令嬢たちの興味を惹くのはロイヤルカップルの存在だけではない。マーガスの後ろに影のように従う仮面の騎士もその対象になっていた。
仮面をつけているから、もちろん顔は見えない。けれどとても整った容貌をしているであろうことは、その口元と鼻筋の輪郭から窺える。
黒い髪は少し長めで、前髪が目元にもかかっていた。ただでさえ仮面に遮られて視界が悪い気がするけれど、変えることの出来ない目の色をよほど隠したいようだ。
ロゼリエッタの胸が軋みはじめた。
髪の色が違うのは染めているからなのだろう。あんなに綺麗な金色だったのに、今はもう見る影もなかった。
だけど他の人を騙せたってロゼリエッタには分かる。レミリアを見つめる時の横顔をずっと見て来たロゼリエッタは、仮面の騎士がレミリアに向ける視線がクロードと全く同じものだと分かってしまう。
(クロード様……)
クロードが生きていた。
その事実は嬉しくも、同時にロゼリエッタを激しく打ちのめす。
クロードはロゼリエッタの元に帰って来てはくれなかった。
隣国に発つ前に婚約を解消したから?
もしそうなのだとしても、友人関係は続いているはずの兄にすら連絡をしなかったのだろうか。
そして、あくまでも別人として皆の前で振る舞っている。
そんなに過去を捨てたかったのだろうか。
そんなにロゼリエッタとの婚約を解消したかったのだろうか。
そうまでして、レミリアの傍にいたかったのだろうか。
だったら、こんな遠回しな、手の込んだことなどせずとも良かった。たった一言を言うだけで良かったのだ。
『ロゼリエッタを愛してはいない』
それだけで、身を引いていた。
でもきっと、隣国へ旅立つ日さえ教えてはもらえなかったように、言葉ではロゼリエッタは身を引かないと思われていたのだろう。
婚約の解消を告げられた時、クロードからの言葉を受け入れなかったから。
(もう、いい。もう十分だわ)
はっきりと拒絶しないことが優しさだと思っているのなら、もうロゼリエッタからは近寄らない。
ましてやクロードはロゼリエッタに別れを告げ、別人となってまで完全に過去と決別していた。その事実をロゼリエッタも受け入れなければいけない。
ロゼリエッタはエスコート役を引き受けてくれたダヴィッドが着るジャケットの袖を、そっとつまんだ。
「ロゼ?」
「ダヴィッド様、私、少し気分が悪くなって来てしまいました。そろそろ――」
そろそろ帰りましょう。
ロゼリエッタがそう言い終わるより先に、サロンの空気が動く気配がした。
「畏れ多くもマーガス王太子殿下」
今夜はマーガスが顔を見せているからか招待されているらしい。スタンレー公爵が発言権を求めるよう右手を挙げながら一歩前に進み出る。途端にロゼリエッタとダヴィッドをも含むサロン中の視線が公爵へと集まった。
レミリアとマーガスに限らず、公爵が何を言わんとしているのか、この場にいる全員が分かってはいることだろう。マーガスと、その背後に控える仮面の騎士とをしきりに見やる。
気遣うような婚約者の視線に穏やかな笑みで応え、マーガスはレミリアを右手で制した。彼女を背後に庇う自然な動作にロゼリエッタは目を奪われてしまう。
羨望――否、もっとどす黒い感情であることを自覚している。
(レミリア殿下には愛し愛される婚約者がいらっしゃるのに、どうしてクロード様は――私ではなくレミリア殿下を選ばれたの)
ただの観客でしかないロゼリエッタの胸中をよそにマーガスが口を開いた。
「発言を許可しよう」
「ではご寛恕に甘えさせていただきまして早速。そちらに控えし騎士殿の素性を、この場で明かしていただけないでしょうか」
誰しもが固唾を飲んで見守り、静まり返っていたホールが一転してざわめきに満ちる。
「先の武力抗争で私を庇ってひどいやけどを顔に負ってしまったのだ。彼の名誉の為にもこのような人前で、深い傷を負った素顔を暴くのは遠慮していただきたい。その身分についてはこちらで保証出来るものであるし、追って正式な書面を公爵の下へ届けさせよう」
「なるほど。いかようにも誤魔化しが利くことですね」
その程度の返答では何の嫌疑も晴らすには至らない。スタンレー公爵が不満を持っているのは誰の目にも明らかだった。そのうえで挑発をも帯びた言葉に、それまで成り行きを静観していたレミリアが怒りをまとわせて柳眉を吊り上げた。
「私の婚約者を愚弄するつもりとあらば、この国の為に尽力してくれている貴公であろうと私も黙ってはおりません」
温和な王女の不興を買った公爵に周囲は様々な思惑のこもった目を向ける。確かに公爵はもう少し言葉を選ぶべきだっただろう。あれではレミリアが怒るのも当然と言えた。
一連のやりとりを眺める人々の表情は様々だ。それでも大別すると誰が王女側の人物で公爵側の人物なのか、その視線が物語っているようにも見える。
公爵はそれを知ってか知らずか、大仰に肩をすくめた。
「愚弄など滅相もございません。ですが私は母国を愛する貴族の一員として、いらぬ災いを呼び込む恐れのある要素は先んじて排除したいだけなのです」
ますますざわめきが大きくなった。
隣国の情勢は貴族なら誰しもが知るところだ。マーガスはこれまで正統な継承権を持つが故に、それを脅かされていることに同情的な目を向けられていた。この国の王女であるレミリアの婚約者なのだからなおさらだ。
けれど愛国心を盾に正義の刃を仮面の騎士へと向けるスタンレー公爵を、誰も咎めることはできない。思惑はどうであれ、騎士の素性を知りたいと皆が思っていること自体もまた事実だからだ。
「マーガスの護衛である彼が、我が国に災厄をもたらすと?」
「そうは申し上げておりません。とは言え、先日の夜会でも西門で不審な騒ぎがあったと聞き及んでおります。愛する祖国を憂いるのは貴族として当然のことでございましょう」
怒りに声を震わせながらも、レミリアは仮面の騎士の名は明かさなかった。見え透いた安い挑発に乗らなかったのは、まだ若くとも王女の矜持と言ったところか。
おそらくスタンレー公爵もそれを目的の一つにしていたに違いない。わずかに残念そうに眉をひそめた。
「ならば愛する民の為に私が今ここで、この名にかけて宣言致しましょう。彼は主たるマーガス王太子殿下に仕える身であり、決して我が国に災厄をもたらすような悪しき者ではありません。それでもなお彼を疑うのであれば、私を疑うに等しいことです」
レミリアが高らかに告げるとサロンは水を打ったように静まり返った。さしものスタンレー公爵も、これ以上の追及を続けては反逆罪に問われかねない。レミリアの前に片膝をついて頭を垂れる。
「このような華々しい場を乱すような振る舞い、大変失礼致しました。されどこの国を思ってのこと故、どうぞご容赦いただきますよう存じ上げます」
「その気持ちは理解すると共にとても嬉しく思っています。だからもう顔を上げて」
「恐れ入ります」
和解を経てスタンレー公爵が再び立ち上がると、張り詰めていたサロンの空気も少しずつ緩みはじめた。
けれど、心から夜会を楽しめる者はもういないだろう。投じられた小石が水面を震わせて波紋を描くのと同じことだ。自国の王女による保証はあれど、招待客は誰一人として仮面の騎士の素性を知らない。――ロゼリエッタと、確信を持ったであろうスタンレー公爵以外には。
「大丈夫かい、ロゼ。疲れているようだしもう帰ろうか」
「はい。ダヴィッド様」
ほんの一瞬だけ仮面越しに騎士と目が合ったような気がしたけれど、ロゼリエッタはダヴィッドの手を取って足早にサロンを後にした。
何しろ今日の夜会では彼女の隣にマーガスがいる。あまり夜会に出ないロゼリエッタの記憶ではあるからあてになるものではないけれど、マーガスがこの国を訪れるのは婚約を発表した時を含めてもこれで四回目だ。
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「見慣れない方ね」
さらに令嬢たちの興味を惹くのはロイヤルカップルの存在だけではない。マーガスの後ろに影のように従う仮面の騎士もその対象になっていた。
仮面をつけているから、もちろん顔は見えない。けれどとても整った容貌をしているであろうことは、その口元と鼻筋の輪郭から窺える。
黒い髪は少し長めで、前髪が目元にもかかっていた。ただでさえ仮面に遮られて視界が悪い気がするけれど、変えることの出来ない目の色をよほど隠したいようだ。
ロゼリエッタの胸が軋みはじめた。
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だけど他の人を騙せたってロゼリエッタには分かる。レミリアを見つめる時の横顔をずっと見て来たロゼリエッタは、仮面の騎士がレミリアに向ける視線がクロードと全く同じものだと分かってしまう。
(クロード様……)
クロードが生きていた。
その事実は嬉しくも、同時にロゼリエッタを激しく打ちのめす。
クロードはロゼリエッタの元に帰って来てはくれなかった。
隣国に発つ前に婚約を解消したから?
もしそうなのだとしても、友人関係は続いているはずの兄にすら連絡をしなかったのだろうか。
そして、あくまでも別人として皆の前で振る舞っている。
そんなに過去を捨てたかったのだろうか。
そんなにロゼリエッタとの婚約を解消したかったのだろうか。
そうまでして、レミリアの傍にいたかったのだろうか。
だったら、こんな遠回しな、手の込んだことなどせずとも良かった。たった一言を言うだけで良かったのだ。
『ロゼリエッタを愛してはいない』
それだけで、身を引いていた。
でもきっと、隣国へ旅立つ日さえ教えてはもらえなかったように、言葉ではロゼリエッタは身を引かないと思われていたのだろう。
婚約の解消を告げられた時、クロードからの言葉を受け入れなかったから。
(もう、いい。もう十分だわ)
はっきりと拒絶しないことが優しさだと思っているのなら、もうロゼリエッタからは近寄らない。
ましてやクロードはロゼリエッタに別れを告げ、別人となってまで完全に過去と決別していた。その事実をロゼリエッタも受け入れなければいけない。
ロゼリエッタはエスコート役を引き受けてくれたダヴィッドが着るジャケットの袖を、そっとつまんだ。
「ロゼ?」
「ダヴィッド様、私、少し気分が悪くなって来てしまいました。そろそろ――」
そろそろ帰りましょう。
ロゼリエッタがそう言い終わるより先に、サロンの空気が動く気配がした。
「畏れ多くもマーガス王太子殿下」
今夜はマーガスが顔を見せているからか招待されているらしい。スタンレー公爵が発言権を求めるよう右手を挙げながら一歩前に進み出る。途端にロゼリエッタとダヴィッドをも含むサロン中の視線が公爵へと集まった。
レミリアとマーガスに限らず、公爵が何を言わんとしているのか、この場にいる全員が分かってはいることだろう。マーガスと、その背後に控える仮面の騎士とをしきりに見やる。
気遣うような婚約者の視線に穏やかな笑みで応え、マーガスはレミリアを右手で制した。彼女を背後に庇う自然な動作にロゼリエッタは目を奪われてしまう。
羨望――否、もっとどす黒い感情であることを自覚している。
(レミリア殿下には愛し愛される婚約者がいらっしゃるのに、どうしてクロード様は――私ではなくレミリア殿下を選ばれたの)
ただの観客でしかないロゼリエッタの胸中をよそにマーガスが口を開いた。
「発言を許可しよう」
「ではご寛恕に甘えさせていただきまして早速。そちらに控えし騎士殿の素性を、この場で明かしていただけないでしょうか」
誰しもが固唾を飲んで見守り、静まり返っていたホールが一転してざわめきに満ちる。
「先の武力抗争で私を庇ってひどいやけどを顔に負ってしまったのだ。彼の名誉の為にもこのような人前で、深い傷を負った素顔を暴くのは遠慮していただきたい。その身分についてはこちらで保証出来るものであるし、追って正式な書面を公爵の下へ届けさせよう」
「なるほど。いかようにも誤魔化しが利くことですね」
その程度の返答では何の嫌疑も晴らすには至らない。スタンレー公爵が不満を持っているのは誰の目にも明らかだった。そのうえで挑発をも帯びた言葉に、それまで成り行きを静観していたレミリアが怒りをまとわせて柳眉を吊り上げた。
「私の婚約者を愚弄するつもりとあらば、この国の為に尽力してくれている貴公であろうと私も黙ってはおりません」
温和な王女の不興を買った公爵に周囲は様々な思惑のこもった目を向ける。確かに公爵はもう少し言葉を選ぶべきだっただろう。あれではレミリアが怒るのも当然と言えた。
一連のやりとりを眺める人々の表情は様々だ。それでも大別すると誰が王女側の人物で公爵側の人物なのか、その視線が物語っているようにも見える。
公爵はそれを知ってか知らずか、大仰に肩をすくめた。
「愚弄など滅相もございません。ですが私は母国を愛する貴族の一員として、いらぬ災いを呼び込む恐れのある要素は先んじて排除したいだけなのです」
ますますざわめきが大きくなった。
隣国の情勢は貴族なら誰しもが知るところだ。マーガスはこれまで正統な継承権を持つが故に、それを脅かされていることに同情的な目を向けられていた。この国の王女であるレミリアの婚約者なのだからなおさらだ。
けれど愛国心を盾に正義の刃を仮面の騎士へと向けるスタンレー公爵を、誰も咎めることはできない。思惑はどうであれ、騎士の素性を知りたいと皆が思っていること自体もまた事実だからだ。
「マーガスの護衛である彼が、我が国に災厄をもたらすと?」
「そうは申し上げておりません。とは言え、先日の夜会でも西門で不審な騒ぎがあったと聞き及んでおります。愛する祖国を憂いるのは貴族として当然のことでございましょう」
怒りに声を震わせながらも、レミリアは仮面の騎士の名は明かさなかった。見え透いた安い挑発に乗らなかったのは、まだ若くとも王女の矜持と言ったところか。
おそらくスタンレー公爵もそれを目的の一つにしていたに違いない。わずかに残念そうに眉をひそめた。
「ならば愛する民の為に私が今ここで、この名にかけて宣言致しましょう。彼は主たるマーガス王太子殿下に仕える身であり、決して我が国に災厄をもたらすような悪しき者ではありません。それでもなお彼を疑うのであれば、私を疑うに等しいことです」
レミリアが高らかに告げるとサロンは水を打ったように静まり返った。さしものスタンレー公爵も、これ以上の追及を続けては反逆罪に問われかねない。レミリアの前に片膝をついて頭を垂れる。
「このような華々しい場を乱すような振る舞い、大変失礼致しました。されどこの国を思ってのこと故、どうぞご容赦いただきますよう存じ上げます」
「その気持ちは理解すると共にとても嬉しく思っています。だからもう顔を上げて」
「恐れ入ります」
和解を経てスタンレー公爵が再び立ち上がると、張り詰めていたサロンの空気も少しずつ緩みはじめた。
けれど、心から夜会を楽しめる者はもういないだろう。投じられた小石が水面を震わせて波紋を描くのと同じことだ。自国の王女による保証はあれど、招待客は誰一人として仮面の騎士の素性を知らない。――ロゼリエッタと、確信を持ったであろうスタンレー公爵以外には。
「大丈夫かい、ロゼ。疲れているようだしもう帰ろうか」
「はい。ダヴィッド様」
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