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月のない夜
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意識を取り戻したレイジを待っていたのは、国王が内々の話をしたいとの通達だった。
彼らにとっては相変わらず、レイジの事情などどうでもいいものらしい。もっとも、気遣うような優しさを見せられたところで何を今さらと思うだけだ。
ある程度長い期間眠っていたようで、身体を動かすと節々が軋むような感覚はあれど痛みはない。回復を待つよりは国王の元へ向かった方が得策だ。何より、レイジには一刻も早く確認したいことがある。
指定された客室には国王がテーブルについているだけだった。衛兵は隅に控えてはいるが王妃も宰相も、アレクもいない。
「今日呼んだのは他でもない。レイジ、お前を王太子とする運びとなった」
レイジが席に着くなり、国王は労うことすらなく用件を切り出す。
内々の話など普段以上にろくでもない内容だろうと想像はついていたが、予想以上のひどさだ。嘲笑すら湧き上がらない。
「アレクがいるではありませんか」
「そのアレクがおらぬから言っているのだ」
「いない、とは?」
頭のどこかでは薄々と察していることをあえて尋ねる。
数日前、城内に突如として出現した黒い竜。何があったのかは知る由もないが、あの竜はアレクが変化したものに違いない。
国王は苦々しい面持ちで答えた。
「一週間前に死んだ。すでに国葬も済ませておる」
「死因をお聞かせ願えますか」
「――病死だ」
「アレクが死に至るほどの病を患っていたようには見えませんが」
仮にもアレクは王太子だ。その彼が何らかの病に罹っていたのなら専属の医師をつけて治療に当たっているはずだが、少なくともレイジは何も知らない。
だが若い王太子が不慮の死を遂げたとあっては、他の理由ではいらぬ波風が立つのも事実だった。
「事情は分かりましたが、それで私が次の王太子になるとあっては王位欲しさにアレクを暗殺したのではないかと、臣下の不審感を煽る結果に繋がるのではないでしょうか」
アレクが病死だと発表されたのなら、竜が現れたことを揉み消すつもりでいるのだろう。それで目に見えて得をするのは、王位が転がり込んで来るレイジだけだ。
「何より、私は子を成すことができません」
「どういうことだ」
「母が死んだ日から一週間ほど、高熱を出して伏せていたことはご存知かと思います。あの時に生殖機能を失っているのです」
国王はレイジが生殖機能を失っていることは知らなかった。もしかしたら、高熱を出したことすら知らなかったのかもしれない。知っていたら火種の原因にしかならないレイジを王太子に据えようなどと思わないはずだ。
彼が一度だけでもレイジに対し、国王ではなく父親として接してくれていたのなら。
レイジの母に対し、夫として接してくれていたのなら。
あるいは違う未来もあったのかもしれない。だが――詮なきことだ。
どちらにしろレイジは王位など欲しくもない。
餌のように目の前にちらつかされても煩わしいだけだ。ましてや、すぐに引きずり降ろされるであろう玉座に目を眩ませ、傀儡になると思われているのも不愉快でしかなかった。
「陛下は王妃殿下との間に、もう一人の王子をもうけていらっしゃるではありませんか。彼を王太子となされば解決する話です。私は王位など欲しくもないし、何の異存もありません」
「あれはまだ幼すぎる」
嫌悪を滲ませた表情に、レイジの胸に何かが落ちて収まった。
国王は第三王子を王太子に据えたくない理由がある。
それは何故か。
おそらく、第三王子は王家の生まれでありながら魔力をほとんど持っていない――つまり、国王の血を引いてはいない可能性があるからだ。
王妃が自らの不義を認めるわけがない。そして不義だと弾劾できない心当たりもまた、王にはある。
世継ぎに関わる問題だ。国王と王妃の間での白黒はついている。国王の反応を見るに王妃は黒なのだろう。
そして白でありながら弾劾できない理由は、妻を何者かに寝取られたと公言できない矜持の問題と、アレクの母親であることに変わりがないからだ。自分の保身の為なら国王がどんな手段でも取ることを、レイジはいやというほど知っている。
(どいつもこいつも、舐めやがって)
王子が二人もいるのに、なおもレイジを切り捨てずにいた理由もそれに関与していたのだ。
切り捨てたくても切り捨てられないのも納得が行く。万が一にもアレクに何かあった際、《英雄王》の血の入らぬ王子が次の国王となる。それは何よりも避けなければならない。
だが。
(そんなこと俺の知ったことか)
レイジは立ち上がった。
「まだ話は終わってはおらぬ」
「私にはもう陛下とお話ししたいことはありません。王太子の座は私ではなく、正統な血のみ引く王子が継ぐべきと考えます」
国王にはレイジを引き留める権利も力もない。
そしてこの国がどうなろうと、レイジにはどうでもいいことだ。
数日振りに戻る離宮は、レイジが最後に見た時と何も変わってはいなかった。
シーツに包まってレイジを待つ、美しい天使の姿はどこにもない。アレクに奪い去られた状態のまま、静寂だけがそこにあった。
黒竜の向こうにいたのが天使長ミハエルだろう。
兄が直々に迎えに来ていたのだ。帰らない理由がない。
最小限の荷物だけを持ち、あてもなく王都を離れる。金は持っていたし、母親の形見も換金した為に困ることは全くなかった。
そして朽ち果てた城に辿り着いたのは何日目のことだっただろうか。
あちこちに蜘蛛の巣が張ってはいるものの、雨風は凌げるしレイジ一人だ。使う部屋は多くない。だから深く考えることもなく、主を失って久しいであろう城に住むことを決めた。
幸い、近くには小さな村もある。
"勝手に廃城に住み着いた他所者の若い男"は噂になっているようだが、金払いをちゃんとしているからか歓迎はされずとも忌避されることもなかった。
見てくれだけは良いレイジに熱のこもった視線を送る若い娘もいるが、誰に応えることもしない。
ただ、金色の長い髪の女は無意識のうちに目で追ってしまっていた。
いるはずもない。
それでもあの月のない夜、木箱の陰で震えていたように、いるのではないかと思ってしまう。
いるはずも、ないのに。
弄んで堕とすつもりが堕とされて夢中になったのはレイジの方だ。
いつしか手放せなくなって、しかしその美しい羽で飛び立ってしまった。
もっと、別の形で出会えていたらと思う。
だが、別の形だったなら、出会うことすらできなかった。
喪失感が胸に広がっている。
名を呼ばせるんじゃなかった。
隣で眠るんじゃなかった。
他の女と同じように、一度だけ抱いて捨てれば良かった。
だがその無垢な魂に触れていたいと願ってしまった時点で、何もかもが手遅れだったのだろう。
小さな村にも、王都ほどではないが様々な情報は流れて来る。
いわく、王都では不穏な空気が漂いつつあるようだった。
レイジが生まれ育った王国は、今やもう滅びへの道をゆっくりと進んでいる。王位継承権を求めて有力な貴族たちが争い、国内は混乱し、その絶好の隙を近隣諸国が見逃しはしないだろう。争乱は少しづつ《下界》を飲み込み、やがて無に帰して行くに違いない。それが明日のことなのか、何千年も先のことなのかは分からないが、レイジにとってはどうだって良かった。
日々は淡々と過ぎて行く。
「王子様が、ずいぶんと質素な生活をしてるようだな」
変わり映えのしない毎日が続くのだと思いはじめた矢先、ずっと姿を見せずにいたリュシフェルがふいに現れた。
そういえば、まだ契約自体は残っている。
だが今日で終わりだろうと思った。
「まあお前は食にも財宝にも欲がなかったし、こんなものか」
リュシフェルは興味深そうに生活感のない簡素な部屋を見渡す。
もう聞く機会はないと、レイジは疑問に思っていたことを口にした。
「アレクを唆したのはお前だろう」
「ほう?」
「俺の魔力で鍵をかけた離宮にはアレク一人じゃ侵入できない。――相応の魔力を持つ何者かが協力していない限りは」
「では他の悪魔が契約を結んでいたのだろう」
嘯くリュシフェルに向け、レイジは首を振る。
「いや……。魔力が飽和してアレクは竜になった。竜は、お前の化身でもある」
「なるほどな。確信はあるようだし、しらを切ることでもない。お前の弟の心を少しだけ揺さぶったことは認めよう」
「――そうか」
自分を取り巻いていた霧が晴れて行き、レイジは穏やかな気持ちですらあった。
知らない間に心が疲弊しきっていたのだろう。これでようやく終わったのだと、安堵さえしている。
気がつかずにいたそれに気がついたのは、求めてもいなかった心地良い安らぎを与えて来た女のせいだ。
「お前が怒ることはないと思っていたが、予想以上に静かな反応をされても困るものだな」
これはリュシフェルの裏切りと言っても良いのかもしれない。
だがレイジはそう思わなかった。
元は悪魔の退屈凌ぎの為の契約だ。
力を得る代わりにレイジは代価を支払い、それが王国の崩壊に繋がった。
アレクが悪いわけでもない。
ただ、道を踏み誤った。
そして――フィーナがいなければ、レイジの魂も悪魔の糧となっていたに違いない。
「今まで面白いものをたくさん見せてくれた礼と、新たな旅立ちへの餞別をやろう。あともう少しで準備は整う。そうしたら受け取るがいい」
レイジの外した指輪を受け取ることはなく、リュシフェルは現れた時同様に忽然と姿を消した。
契約は残っている。だがもう二度と会うことはないだろう。いや、暇潰しの話し相手として喚ぶのも良いかもしれない。
再び一人になり、窓から外を眺める。
あの夜と同じ月のない夜だ。
わずかな期待を胸に城を出た。
手入れがされておらず荒れ果てた庭に、黄金に輝く一羽の蝶が舞う。
小さく円を描くと魔法陣に変化し、そして――。
「ただいま、レイジ」
天使が一人、柔らかな笑みを浮かべて立っていた。
彼らにとっては相変わらず、レイジの事情などどうでもいいものらしい。もっとも、気遣うような優しさを見せられたところで何を今さらと思うだけだ。
ある程度長い期間眠っていたようで、身体を動かすと節々が軋むような感覚はあれど痛みはない。回復を待つよりは国王の元へ向かった方が得策だ。何より、レイジには一刻も早く確認したいことがある。
指定された客室には国王がテーブルについているだけだった。衛兵は隅に控えてはいるが王妃も宰相も、アレクもいない。
「今日呼んだのは他でもない。レイジ、お前を王太子とする運びとなった」
レイジが席に着くなり、国王は労うことすらなく用件を切り出す。
内々の話など普段以上にろくでもない内容だろうと想像はついていたが、予想以上のひどさだ。嘲笑すら湧き上がらない。
「アレクがいるではありませんか」
「そのアレクがおらぬから言っているのだ」
「いない、とは?」
頭のどこかでは薄々と察していることをあえて尋ねる。
数日前、城内に突如として出現した黒い竜。何があったのかは知る由もないが、あの竜はアレクが変化したものに違いない。
国王は苦々しい面持ちで答えた。
「一週間前に死んだ。すでに国葬も済ませておる」
「死因をお聞かせ願えますか」
「――病死だ」
「アレクが死に至るほどの病を患っていたようには見えませんが」
仮にもアレクは王太子だ。その彼が何らかの病に罹っていたのなら専属の医師をつけて治療に当たっているはずだが、少なくともレイジは何も知らない。
だが若い王太子が不慮の死を遂げたとあっては、他の理由ではいらぬ波風が立つのも事実だった。
「事情は分かりましたが、それで私が次の王太子になるとあっては王位欲しさにアレクを暗殺したのではないかと、臣下の不審感を煽る結果に繋がるのではないでしょうか」
アレクが病死だと発表されたのなら、竜が現れたことを揉み消すつもりでいるのだろう。それで目に見えて得をするのは、王位が転がり込んで来るレイジだけだ。
「何より、私は子を成すことができません」
「どういうことだ」
「母が死んだ日から一週間ほど、高熱を出して伏せていたことはご存知かと思います。あの時に生殖機能を失っているのです」
国王はレイジが生殖機能を失っていることは知らなかった。もしかしたら、高熱を出したことすら知らなかったのかもしれない。知っていたら火種の原因にしかならないレイジを王太子に据えようなどと思わないはずだ。
彼が一度だけでもレイジに対し、国王ではなく父親として接してくれていたのなら。
レイジの母に対し、夫として接してくれていたのなら。
あるいは違う未来もあったのかもしれない。だが――詮なきことだ。
どちらにしろレイジは王位など欲しくもない。
餌のように目の前にちらつかされても煩わしいだけだ。ましてや、すぐに引きずり降ろされるであろう玉座に目を眩ませ、傀儡になると思われているのも不愉快でしかなかった。
「陛下は王妃殿下との間に、もう一人の王子をもうけていらっしゃるではありませんか。彼を王太子となされば解決する話です。私は王位など欲しくもないし、何の異存もありません」
「あれはまだ幼すぎる」
嫌悪を滲ませた表情に、レイジの胸に何かが落ちて収まった。
国王は第三王子を王太子に据えたくない理由がある。
それは何故か。
おそらく、第三王子は王家の生まれでありながら魔力をほとんど持っていない――つまり、国王の血を引いてはいない可能性があるからだ。
王妃が自らの不義を認めるわけがない。そして不義だと弾劾できない心当たりもまた、王にはある。
世継ぎに関わる問題だ。国王と王妃の間での白黒はついている。国王の反応を見るに王妃は黒なのだろう。
そして白でありながら弾劾できない理由は、妻を何者かに寝取られたと公言できない矜持の問題と、アレクの母親であることに変わりがないからだ。自分の保身の為なら国王がどんな手段でも取ることを、レイジはいやというほど知っている。
(どいつもこいつも、舐めやがって)
王子が二人もいるのに、なおもレイジを切り捨てずにいた理由もそれに関与していたのだ。
切り捨てたくても切り捨てられないのも納得が行く。万が一にもアレクに何かあった際、《英雄王》の血の入らぬ王子が次の国王となる。それは何よりも避けなければならない。
だが。
(そんなこと俺の知ったことか)
レイジは立ち上がった。
「まだ話は終わってはおらぬ」
「私にはもう陛下とお話ししたいことはありません。王太子の座は私ではなく、正統な血のみ引く王子が継ぐべきと考えます」
国王にはレイジを引き留める権利も力もない。
そしてこの国がどうなろうと、レイジにはどうでもいいことだ。
数日振りに戻る離宮は、レイジが最後に見た時と何も変わってはいなかった。
シーツに包まってレイジを待つ、美しい天使の姿はどこにもない。アレクに奪い去られた状態のまま、静寂だけがそこにあった。
黒竜の向こうにいたのが天使長ミハエルだろう。
兄が直々に迎えに来ていたのだ。帰らない理由がない。
最小限の荷物だけを持ち、あてもなく王都を離れる。金は持っていたし、母親の形見も換金した為に困ることは全くなかった。
そして朽ち果てた城に辿り着いたのは何日目のことだっただろうか。
あちこちに蜘蛛の巣が張ってはいるものの、雨風は凌げるしレイジ一人だ。使う部屋は多くない。だから深く考えることもなく、主を失って久しいであろう城に住むことを決めた。
幸い、近くには小さな村もある。
"勝手に廃城に住み着いた他所者の若い男"は噂になっているようだが、金払いをちゃんとしているからか歓迎はされずとも忌避されることもなかった。
見てくれだけは良いレイジに熱のこもった視線を送る若い娘もいるが、誰に応えることもしない。
ただ、金色の長い髪の女は無意識のうちに目で追ってしまっていた。
いるはずもない。
それでもあの月のない夜、木箱の陰で震えていたように、いるのではないかと思ってしまう。
いるはずも、ないのに。
弄んで堕とすつもりが堕とされて夢中になったのはレイジの方だ。
いつしか手放せなくなって、しかしその美しい羽で飛び立ってしまった。
もっと、別の形で出会えていたらと思う。
だが、別の形だったなら、出会うことすらできなかった。
喪失感が胸に広がっている。
名を呼ばせるんじゃなかった。
隣で眠るんじゃなかった。
他の女と同じように、一度だけ抱いて捨てれば良かった。
だがその無垢な魂に触れていたいと願ってしまった時点で、何もかもが手遅れだったのだろう。
小さな村にも、王都ほどではないが様々な情報は流れて来る。
いわく、王都では不穏な空気が漂いつつあるようだった。
レイジが生まれ育った王国は、今やもう滅びへの道をゆっくりと進んでいる。王位継承権を求めて有力な貴族たちが争い、国内は混乱し、その絶好の隙を近隣諸国が見逃しはしないだろう。争乱は少しづつ《下界》を飲み込み、やがて無に帰して行くに違いない。それが明日のことなのか、何千年も先のことなのかは分からないが、レイジにとってはどうだって良かった。
日々は淡々と過ぎて行く。
「王子様が、ずいぶんと質素な生活をしてるようだな」
変わり映えのしない毎日が続くのだと思いはじめた矢先、ずっと姿を見せずにいたリュシフェルがふいに現れた。
そういえば、まだ契約自体は残っている。
だが今日で終わりだろうと思った。
「まあお前は食にも財宝にも欲がなかったし、こんなものか」
リュシフェルは興味深そうに生活感のない簡素な部屋を見渡す。
もう聞く機会はないと、レイジは疑問に思っていたことを口にした。
「アレクを唆したのはお前だろう」
「ほう?」
「俺の魔力で鍵をかけた離宮にはアレク一人じゃ侵入できない。――相応の魔力を持つ何者かが協力していない限りは」
「では他の悪魔が契約を結んでいたのだろう」
嘯くリュシフェルに向け、レイジは首を振る。
「いや……。魔力が飽和してアレクは竜になった。竜は、お前の化身でもある」
「なるほどな。確信はあるようだし、しらを切ることでもない。お前の弟の心を少しだけ揺さぶったことは認めよう」
「――そうか」
自分を取り巻いていた霧が晴れて行き、レイジは穏やかな気持ちですらあった。
知らない間に心が疲弊しきっていたのだろう。これでようやく終わったのだと、安堵さえしている。
気がつかずにいたそれに気がついたのは、求めてもいなかった心地良い安らぎを与えて来た女のせいだ。
「お前が怒ることはないと思っていたが、予想以上に静かな反応をされても困るものだな」
これはリュシフェルの裏切りと言っても良いのかもしれない。
だがレイジはそう思わなかった。
元は悪魔の退屈凌ぎの為の契約だ。
力を得る代わりにレイジは代価を支払い、それが王国の崩壊に繋がった。
アレクが悪いわけでもない。
ただ、道を踏み誤った。
そして――フィーナがいなければ、レイジの魂も悪魔の糧となっていたに違いない。
「今まで面白いものをたくさん見せてくれた礼と、新たな旅立ちへの餞別をやろう。あともう少しで準備は整う。そうしたら受け取るがいい」
レイジの外した指輪を受け取ることはなく、リュシフェルは現れた時同様に忽然と姿を消した。
契約は残っている。だがもう二度と会うことはないだろう。いや、暇潰しの話し相手として喚ぶのも良いかもしれない。
再び一人になり、窓から外を眺める。
あの夜と同じ月のない夜だ。
わずかな期待を胸に城を出た。
手入れがされておらず荒れ果てた庭に、黄金に輝く一羽の蝶が舞う。
小さく円を描くと魔法陣に変化し、そして――。
「ただいま、レイジ」
天使が一人、柔らかな笑みを浮かべて立っていた。
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