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重なる罪 ☆
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! ヒロイン相手以外の、ヒーローとその近親者による絡みがあります !
レイジももう十八歳だ。
離宮でひっそりと暮らす生活の中にいても、男女の営みが何であるかは知っていた。
そして知っているからこそ、近親者同士でするべき行為ではないことも分かっている。
下腹部を這う母の――女の指が下穿きの中に入り込んだ。
レイジは咄嗟に息を飲む。
女はレイジの反応にも構わず、勃ちあがる気配もない性器を優しく握ると誘うように上下に擦りはじめた。理性をかき集めて腰を引いたりして逃げても、執拗に追いかけられてすぐに捕まり、何の意味もなさない。
「陛下……」
女は悲しそうに呟き、自らの胸元に忍ばせていた何かを取り出すと身を屈めた。
ほんの一瞬、口を手で覆ったかと思えば唇を重ね、舌と共に何かを押し込んで来る。小さな円形のそれはほの苦く、おそらくは薬物なのだと思った。
少なくとも毒物ではないだろうが、飲み込まない方がいい。しかし強引な女の舌に根負けし、嚥下してしまった。
自らの呼吸が少しずつ荒くなるのを感じ、レイジは首を振る。この場には不似合いな無邪気な笑い声が聞こえ、鮮やかな小さな赤い舌が胸板を掠めた。
「や、め……っ」
母上とは呼びかけられなかった。
"母親"が"息子"に何をしようとしているのか、認めるのが怖かったのだ。
女は妖艶な笑みを浮かべた。うごめく舌に嬲られ、胸の尖りが無様に固くなる。立場が逆転したかのようにそのまま女は強く吸いついた。唾液で湿らせ、水音をあげながら大きく舐る。背筋が震え、限界を訴えた。
「ふふ……。陛下……」
囁く女の声にあからさまな喜色が混じる。
手の中にあるものは完全に熱を帯びて硬くそそり立っていた。羞恥と屈辱とで顔が赤らむのが自分でも分かった。女は愛おしげに撫でさすり、下穿きの中からそれを取り出す。
「陛下の、尊い子種ですもの……。一滴も残らず、私の中に下さいませね」
そして身体をずらすと、足の間に先端を宛がった。愛蜜と先走りの液体同士がぬかるみながら混じり合い、女の部分がレイジを深く飲み込んで行く。
柔らかくて、温かい。
だがレイジを優しく包み込んでいて欲しいのはそれじゃなかった。
「あ、あぁ……っ!」
レイジは閨で女を悦ばせる術などまだ知らない。
男の味を知っている女が満足できるのか。冷静な頭は余計な心配さえ覚えた。
だが女はレイジではなく愛する男と情を交わしていると思い込んでいるのか、絶えず気持ち良さそうに腰を振るった。
「ご覧になって、陛下。ね……私が、陛下をお慰めしているでしょう……?」
促されるまま視線を向け、すぐに深い後悔と共に視線を背けた。
大きく開かれた足の間には鮮やかな秘裂があった。
白い足とは対照的なまでに濃い桃色は薄闇にも愛蜜で濡れ光っており、男を咥え込んで離さない。
気持ち良いか悪いかと言えば気持ち良かった。
レイジとて、初めては愛する女性と……などと甘い夢を見ていたわけではない。
だが、その快楽はあくまでも身体が得ているものだ。もう一人の自分が冷めた目をして、禁忌を犯す二人を見ている。
「陛下っ! 陛下ぁ……!」
女の秘所に絞られ、レイジのそれはあっけなく精を放った。
だが一度の吐精だけでは許されない。先程飲まされた薬物のせいか、身体は不自然に熱を帯びている。
経験はなくとも若さと体力が取り柄の熱杭は蠕動する蜜壺の刺激に抗えず、何度も白濁した体液を吐き出した。その度に女が歓喜の雄たけびのような嬌声をあげる。
「陛下……。ああ……陛下の子種が、私の中にたくさん……」
汗に塗れ、長い髪を素肌に貼りつかせた女はうっとりと吐息をこぼし、ようやくレイジを解放した。
レイジは口元を抑えてバスルームに駆け込む。
熱いシャワーで身体中を洗い流し、湯に打たれるまま膝をついた。
「うぁ……っ。っ、ぐ……」
嘔吐する度、優しかった母との思い出も失せて行く。涙と、穢れに満ちた吐瀉物と共にレイジの手の届かない場所へと流れ去った。
寒くもないのに身体の震えが止まらない。肌に当たる湯ですら細い氷柱の雨のように感じられた。
それからも母は夜になるとレイジを訪れては跨り、腰を振った。
最初の一週間こそレイジも抵抗や母の説得を考えていたが、やがて諦念に囚われてされるがままになった。
拒絶も抵抗もしない。もちろん積極的に動くこともない。女のしたいようにさせ、レイジが吐精さえすれば、それ以上を求めるでもなく身体を離す。最初の夜のように訳も分からず何度も吐精することはなかったが、自分の欲しい時に得られると理解したからか、一度の交わりでも女は満足そうだった。
淫らに腰を振る女は母とよく似た淫魔で、祓う為にはレイジの精液が必要なのだ。
そう思えば罪悪感も失せ、がんじがらめにされていた心も多少は軽くなった。
しかし嫌悪感の方は消えず、終わればすぐさまシャワーを浴びることだけは変わらない。
ただ、嘔吐はしなくなっていた。
そんな背徳の夜も、ある日あっけなく終わった。
明るい日の光の下で母と過ごす、変わらないはずの時間に変化が訪れた。
母の様子がおかしい。
何も映してはいない虚ろな目でレイジを見つめる。
「陛下……。どうして私にはお世継ぎを授けては下さらないの」
その言葉にレイジは状況を理解すると同時に安堵した。
母は月のさわりを迎えたのだろう。
レイジは深く息を吐く。
当然だ。実の母子間で子を成すなど、あってはならない。
だが母にとっては違う。血を分けた息子相手ではなく愛しい男との交わりだった。今もレイジの姿はかつて愛し合ったはずの男に見えているに違いない。そして、男の血を継ぐ子供を再び宿すことを強く望んでいる。
月のさわりが終われば、また最初からやり直しだ。
レイジの背筋を冷ややかなものが伝い落ちた。諦めたことが、その咎を背負うよう迫っている。母が望む未来が訪れるまで、ずっと。
「私だけのものにはなって下さらない陛下。それなら、どうしてあの日……私に愛を囁かれたのです。私に、決してお世継ぎにはなりえない御子を産ませたのです」
母は怒りや悲しみ、苦しみといったあらゆる負の感情を秘めた声を感情のままレイジに投げつけ、急に穏やかに微笑んだ。
「ねえ陛下。今も私を愛して下さっているのなら、どうぞ私と共に旅立ちましょう」
反射的にレイジの目は紅茶の注がれたカップに向けられた。
紅茶はいつも、母が淹れる。
今日もそうだった。その所作に何かおかしな――たとえば小さなビンに入った液体を注ぎ入れるような――動きはなかったはずだ。
だが、常に母を見ていたわけじゃない。
心なしか紅茶の色が普段より黒ずんで見えるのは、気のせいだろうか。
「愛しています、陛下。陛下が寂しい想いをなさらぬよう、先に待っておりますわ。ですからどうぞ、迎えにいらして」
「っ、母上……! 飲んではいけない!」
レイジは椅子から立ち上がり、声を荒げた。
そんなことでは止められないと、いつも通り優雅にカップを手にする母の手を掴もうとして、間に合わなかった。
白い喉が小さく動く。そのままひどくゆっくりとバランスを崩し、床に倒れた。
「レ、イ……ジ……」
最後の最後に、母はようやくレイジの名を呼んだ。
だが苦悶に見開かれた目は、どうして一緒に死んでくれなかったのか責めているように見えてならない。
レイジは顔を背けた。
これまで散々母に身体を弄ばれ、何故命までもその手中に収められなければならないのか。
声をかける前にカップを叩き落とすなりすれば、おそらくは止められた。頭の中では分かっていて止めなかった。心の中では母の死を望んでいて、母も分かっていたのだ。
紅茶は口にしなかった。だから毒物の反応ではなく、嫌悪から吐き気が込み上げて来る。
この期に及んで我慢するのもばかばかしい。部屋の中だろうとその場に手足をついて久し振りに嘔吐した。
いくら吐き出しても、本当に排出してしまいたいものはレイジの奥底に深く沈み、こびりついて浮かび上がりもしない。
どんな理由があれど実の母親と交わった。
その罪は烙印となって、レイジの中から消えることはないのだ。
「奥様……? オリヴィア様……?」
異変を察したのか、普段は顔をのぞかせることもない侍女が今日に限って様子を見に来る。あるいはもしかしたら母に何か言われていたのかもしれない。そんなタイミングの良さだった。、
侍女は倒れる母と嘔吐するレイジに悲鳴をあげ、脱兎のごとく逃げ出した。
侍女の姿と共に意識が遠ざかって行く。
高熱に浮かされ、毒は飲まずとも緩やかな死を覚悟した。
夢で悪魔の姿を見るようになったのは、そんな時だ。
まるで天使のような容貌をしながらも冷ややかな空気を纏うその男は、レイジに力を貸してくれると言う。
何の酔狂かと思ったが、母が死んだことでレイジにはもう何の後ろ盾もない。それに一度死んだも同然の身だ。悪魔の力を得ても構わないのではないか。
目が覚めた時、右手の中指には見慣れない指輪がはめられていた。
毒を口にしなかったことでレイジは母を殺害した咎人となった。
償いを建前に悪魔や天使を、時として人間すら手にかける天魔狩りの役割を担わされた。
実の母親と交わった。
実の母親を殺した。
そしてレイジは生き残り、人知れず悪魔と契約を結んだ。
新たな罪を重ねようと今さらどうだって良かった。
深淵に沈み行く穢れた魂に、何の価値があるだろうか。
母にとってレイジがそうであったように、レイジにとっては肉体の欲を満たす為だけの器でしかない女を抱く。
レイジ自身の器は空っぽのままに。
レイジももう十八歳だ。
離宮でひっそりと暮らす生活の中にいても、男女の営みが何であるかは知っていた。
そして知っているからこそ、近親者同士でするべき行為ではないことも分かっている。
下腹部を這う母の――女の指が下穿きの中に入り込んだ。
レイジは咄嗟に息を飲む。
女はレイジの反応にも構わず、勃ちあがる気配もない性器を優しく握ると誘うように上下に擦りはじめた。理性をかき集めて腰を引いたりして逃げても、執拗に追いかけられてすぐに捕まり、何の意味もなさない。
「陛下……」
女は悲しそうに呟き、自らの胸元に忍ばせていた何かを取り出すと身を屈めた。
ほんの一瞬、口を手で覆ったかと思えば唇を重ね、舌と共に何かを押し込んで来る。小さな円形のそれはほの苦く、おそらくは薬物なのだと思った。
少なくとも毒物ではないだろうが、飲み込まない方がいい。しかし強引な女の舌に根負けし、嚥下してしまった。
自らの呼吸が少しずつ荒くなるのを感じ、レイジは首を振る。この場には不似合いな無邪気な笑い声が聞こえ、鮮やかな小さな赤い舌が胸板を掠めた。
「や、め……っ」
母上とは呼びかけられなかった。
"母親"が"息子"に何をしようとしているのか、認めるのが怖かったのだ。
女は妖艶な笑みを浮かべた。うごめく舌に嬲られ、胸の尖りが無様に固くなる。立場が逆転したかのようにそのまま女は強く吸いついた。唾液で湿らせ、水音をあげながら大きく舐る。背筋が震え、限界を訴えた。
「ふふ……。陛下……」
囁く女の声にあからさまな喜色が混じる。
手の中にあるものは完全に熱を帯びて硬くそそり立っていた。羞恥と屈辱とで顔が赤らむのが自分でも分かった。女は愛おしげに撫でさすり、下穿きの中からそれを取り出す。
「陛下の、尊い子種ですもの……。一滴も残らず、私の中に下さいませね」
そして身体をずらすと、足の間に先端を宛がった。愛蜜と先走りの液体同士がぬかるみながら混じり合い、女の部分がレイジを深く飲み込んで行く。
柔らかくて、温かい。
だがレイジを優しく包み込んでいて欲しいのはそれじゃなかった。
「あ、あぁ……っ!」
レイジは閨で女を悦ばせる術などまだ知らない。
男の味を知っている女が満足できるのか。冷静な頭は余計な心配さえ覚えた。
だが女はレイジではなく愛する男と情を交わしていると思い込んでいるのか、絶えず気持ち良さそうに腰を振るった。
「ご覧になって、陛下。ね……私が、陛下をお慰めしているでしょう……?」
促されるまま視線を向け、すぐに深い後悔と共に視線を背けた。
大きく開かれた足の間には鮮やかな秘裂があった。
白い足とは対照的なまでに濃い桃色は薄闇にも愛蜜で濡れ光っており、男を咥え込んで離さない。
気持ち良いか悪いかと言えば気持ち良かった。
レイジとて、初めては愛する女性と……などと甘い夢を見ていたわけではない。
だが、その快楽はあくまでも身体が得ているものだ。もう一人の自分が冷めた目をして、禁忌を犯す二人を見ている。
「陛下っ! 陛下ぁ……!」
女の秘所に絞られ、レイジのそれはあっけなく精を放った。
だが一度の吐精だけでは許されない。先程飲まされた薬物のせいか、身体は不自然に熱を帯びている。
経験はなくとも若さと体力が取り柄の熱杭は蠕動する蜜壺の刺激に抗えず、何度も白濁した体液を吐き出した。その度に女が歓喜の雄たけびのような嬌声をあげる。
「陛下……。ああ……陛下の子種が、私の中にたくさん……」
汗に塗れ、長い髪を素肌に貼りつかせた女はうっとりと吐息をこぼし、ようやくレイジを解放した。
レイジは口元を抑えてバスルームに駆け込む。
熱いシャワーで身体中を洗い流し、湯に打たれるまま膝をついた。
「うぁ……っ。っ、ぐ……」
嘔吐する度、優しかった母との思い出も失せて行く。涙と、穢れに満ちた吐瀉物と共にレイジの手の届かない場所へと流れ去った。
寒くもないのに身体の震えが止まらない。肌に当たる湯ですら細い氷柱の雨のように感じられた。
それからも母は夜になるとレイジを訪れては跨り、腰を振った。
最初の一週間こそレイジも抵抗や母の説得を考えていたが、やがて諦念に囚われてされるがままになった。
拒絶も抵抗もしない。もちろん積極的に動くこともない。女のしたいようにさせ、レイジが吐精さえすれば、それ以上を求めるでもなく身体を離す。最初の夜のように訳も分からず何度も吐精することはなかったが、自分の欲しい時に得られると理解したからか、一度の交わりでも女は満足そうだった。
淫らに腰を振る女は母とよく似た淫魔で、祓う為にはレイジの精液が必要なのだ。
そう思えば罪悪感も失せ、がんじがらめにされていた心も多少は軽くなった。
しかし嫌悪感の方は消えず、終わればすぐさまシャワーを浴びることだけは変わらない。
ただ、嘔吐はしなくなっていた。
そんな背徳の夜も、ある日あっけなく終わった。
明るい日の光の下で母と過ごす、変わらないはずの時間に変化が訪れた。
母の様子がおかしい。
何も映してはいない虚ろな目でレイジを見つめる。
「陛下……。どうして私にはお世継ぎを授けては下さらないの」
その言葉にレイジは状況を理解すると同時に安堵した。
母は月のさわりを迎えたのだろう。
レイジは深く息を吐く。
当然だ。実の母子間で子を成すなど、あってはならない。
だが母にとっては違う。血を分けた息子相手ではなく愛しい男との交わりだった。今もレイジの姿はかつて愛し合ったはずの男に見えているに違いない。そして、男の血を継ぐ子供を再び宿すことを強く望んでいる。
月のさわりが終われば、また最初からやり直しだ。
レイジの背筋を冷ややかなものが伝い落ちた。諦めたことが、その咎を背負うよう迫っている。母が望む未来が訪れるまで、ずっと。
「私だけのものにはなって下さらない陛下。それなら、どうしてあの日……私に愛を囁かれたのです。私に、決してお世継ぎにはなりえない御子を産ませたのです」
母は怒りや悲しみ、苦しみといったあらゆる負の感情を秘めた声を感情のままレイジに投げつけ、急に穏やかに微笑んだ。
「ねえ陛下。今も私を愛して下さっているのなら、どうぞ私と共に旅立ちましょう」
反射的にレイジの目は紅茶の注がれたカップに向けられた。
紅茶はいつも、母が淹れる。
今日もそうだった。その所作に何かおかしな――たとえば小さなビンに入った液体を注ぎ入れるような――動きはなかったはずだ。
だが、常に母を見ていたわけじゃない。
心なしか紅茶の色が普段より黒ずんで見えるのは、気のせいだろうか。
「愛しています、陛下。陛下が寂しい想いをなさらぬよう、先に待っておりますわ。ですからどうぞ、迎えにいらして」
「っ、母上……! 飲んではいけない!」
レイジは椅子から立ち上がり、声を荒げた。
そんなことでは止められないと、いつも通り優雅にカップを手にする母の手を掴もうとして、間に合わなかった。
白い喉が小さく動く。そのままひどくゆっくりとバランスを崩し、床に倒れた。
「レ、イ……ジ……」
最後の最後に、母はようやくレイジの名を呼んだ。
だが苦悶に見開かれた目は、どうして一緒に死んでくれなかったのか責めているように見えてならない。
レイジは顔を背けた。
これまで散々母に身体を弄ばれ、何故命までもその手中に収められなければならないのか。
声をかける前にカップを叩き落とすなりすれば、おそらくは止められた。頭の中では分かっていて止めなかった。心の中では母の死を望んでいて、母も分かっていたのだ。
紅茶は口にしなかった。だから毒物の反応ではなく、嫌悪から吐き気が込み上げて来る。
この期に及んで我慢するのもばかばかしい。部屋の中だろうとその場に手足をついて久し振りに嘔吐した。
いくら吐き出しても、本当に排出してしまいたいものはレイジの奥底に深く沈み、こびりついて浮かび上がりもしない。
どんな理由があれど実の母親と交わった。
その罪は烙印となって、レイジの中から消えることはないのだ。
「奥様……? オリヴィア様……?」
異変を察したのか、普段は顔をのぞかせることもない侍女が今日に限って様子を見に来る。あるいはもしかしたら母に何か言われていたのかもしれない。そんなタイミングの良さだった。、
侍女は倒れる母と嘔吐するレイジに悲鳴をあげ、脱兎のごとく逃げ出した。
侍女の姿と共に意識が遠ざかって行く。
高熱に浮かされ、毒は飲まずとも緩やかな死を覚悟した。
夢で悪魔の姿を見るようになったのは、そんな時だ。
まるで天使のような容貌をしながらも冷ややかな空気を纏うその男は、レイジに力を貸してくれると言う。
何の酔狂かと思ったが、母が死んだことでレイジにはもう何の後ろ盾もない。それに一度死んだも同然の身だ。悪魔の力を得ても構わないのではないか。
目が覚めた時、右手の中指には見慣れない指輪がはめられていた。
毒を口にしなかったことでレイジは母を殺害した咎人となった。
償いを建前に悪魔や天使を、時として人間すら手にかける天魔狩りの役割を担わされた。
実の母親と交わった。
実の母親を殺した。
そしてレイジは生き残り、人知れず悪魔と契約を結んだ。
新たな罪を重ねようと今さらどうだって良かった。
深淵に沈み行く穢れた魂に、何の価値があるだろうか。
母にとってレイジがそうであったように、レイジにとっては肉体の欲を満たす為だけの器でしかない女を抱く。
レイジ自身の器は空っぽのままに。
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