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おまけ話色々

ベリルローズ公爵夫妻の淫らな一日 夜:お風呂にて 前  ☆

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「い、いいって言うまで、こっちは見ないで……」

 バスルームのドアが開く音が聞こえると同時に声をかけられ、カイルの視線は反射的にそちらへ向かった。

「まだ見たらだめって、言ったばかりなのに」

 長い髪を簡単に結い上げ、素肌にバスタオルを巻きつけたアリシアがそこにいた。一歩だけ足を踏み入れた状態で、頬だけでなく全身をも羞恥で真っ赤に染めている。そして、早速言うことを聞かなかったカイルに抗議の声をあげた。

「アリシアの身体はもう全部見てるよ」
「そ、それでもっ」

 大きな円形のバスタブの縁に背中をもたせかけるカイルが答えれば、バスタオルをぎゅっと握りしめて否定する。
 一緒にお風呂に入るのは結婚する前も、してからでも、これが初めての経験だった。何度か誘っては、その度に「恥ずかしいからだめ」と断られていた。

 今さら何を恥ずかしがることがあるのだろうと思いはするが、どんな心境の変化があったのか、今日ようやく了承を得られたのだ。あまりごねていて気が変わられても困るし、何よりこのままではアリシアが身体を冷やしてしまう。仕方なくカイルが妥協することにした。

「向こう向いてるから早く入っておいで」

 アリシアが入れずにいるのはカイルが見ていることが原因だということは、この際棚に上げておく。反対の方向に顔を向けると、少しの静寂の後に小さな足音がした。

 アリシアがバスタブの近くに来ている。
 横目で盗み見したい気持ちを堪え、おとなしく待っていると頭の横に折り畳んだバスタオルが置かれた。焦らされているようで逆に落ち着かない気持ちになるのだが、アリシアにとっては違うのだろうか。
 いや、きっと羞恥でそれどころじゃないのだろう。
 そう思っている間に身体をお湯で軽く流し終えたらしい。アリシアがバスタブに足を入れたのか、水面が揺れてカイルの下にさざ波が届いた。

「も、もう、いいよ」

 長かったお預けの時間がようやく終わり、正面に目を向けるとアリシアは両膝を抱えて座っていた。やはり裸体はできるだけ見せたくないらしい。

「こっちに来たら?」

 その提案は頑なに拒否された。
 カイルの正面ではあるものの端にいるまま、動こうとしない。
 二人でのんびり入れるようにと下心を持って広く作ったが、さすがに広すぎたようだ。

「そんなに身体を縮こませていたら、せっかくお風呂に入っていても疲れが取れないんじゃないかな」

 今日は特に疲れただろうし。

 そう続けると、アリシアはさらに頬を染めて膝に顔を埋めた。

「誰の、せいで……」
「誰だろうね」

 消え入りそうな声で反論が来たものの、その声に責めるような色はない。
 カイルがわざととぼけて答えると「――ばか」と拗ねた声が聞こえた。



 せっけんの泡で滑る指に撫で上げられる度、アリシアは恥ずかしそうに身をすくませる。そして柔らかなふくらみの先端を固くして行った。

 ただ身体を洗ってもらっているだけだと、だから感じてしまうことははしたないことだと思っているのだろう。
 けれど身体を洗うだけならこんな洗い方はしない。必死に声を押し殺すアリシアが唇を噛んでしまう前に、声を出してもいいと愛撫の意思を示すべく耳元に唇を寄せた。
 ほのかに赤く染まる耳朶を啄み、先端を指先でつまむ。

「そ、そんな、胸、ばっかり……っ」
「胸ばっかりってことは、他の場所にも触れて欲しいの?」
「っふ、触れるって……あ……洗ってくれてるんじゃ、ないの……?」
「だから洗ってるだろう?」

 強引に進めても、本当に嫌じゃなければアリシアは受け入れてくれる。だから多少無理やりな言い分になってしまっても、カイルはできるだけ押し通すようにしていた。

「ひぁ……っ!」

 とうとう嬌声をあげたアリシアは、違うのと言わんばかりに身を捩らせながら首を振った。

 その拍子に、右手がすでに屹立したカイルの剛直に触れる。

 鋭く息を飲んだのはアリシアだけではなかった。予期せぬ刺激にカイルもまた、思わず反応する。そしてそれは確実にアリシアに伝わってしまっていた。

 たちまちバスルームが重い沈黙に包まれ、時間も止まったような錯覚を覚える。
 アリシアには唇に傷がつくから噛んだらだめだと言っているが、カイルは唇を噛んだ。やけに熱く感じるのはアリシアの指先と、彼女を抱きたいと意思を持つ自らの剛直の、果たしてどちらなのだろうか。

「可愛いお嫁さんの肌に触れてるし、男としては仕方ない、と思う」
「う、うん」

 咄嗟に口をついた言葉は我ながらみっともない言い訳だった。
 アリシアも勢いで頷き返す。
 だが、可愛くて愛しくてたまらないのは事実だ。だから仕方がない。

 一呼吸置いて、アリシアの指がそろりと剛直を包み込んだ。しかし触れたはいいがそこから先をどうしたら良いのかが分からないようで――カイルが一度もしてもらったことがないのだから、詳しくてもそれはそれで困るが――固まってしまう。

 大胆な、けれど恥じらいを残した仕草にカイルは落ち着きを取り戻す。

「どうしたいの、お姫様」

 耳元に囁けば意を決したのか、指先にわずかな力が込められた。
 だが、それ以上踏み込んだ場所へはやはり動けないままだ。アリシアの手を上から強く掴み、その手の中のものをしごかせたい衝動をカイルは懸命にこらえる。

「どうしたいの?」

 もしかしたらという期待で自分の息が熱を帯びるのを抑えられない。再び問いかけるとアリシアは消え入りそうな声でようやく答えた。

「私、も……カイルに、してあげたいの……」

 何を、とはあえて聞かなかった。指を離させるとアリシアが泣きそうな顔で振り向く。

「してみても、いい……?」
「それで、だめだなんて俺が言えるはずがないと思うけど」
「じゃあ……っ、した、い」

 アリシアは身体ごとカイルに向き直った。

 あんなに素肌を見せることを恥じらっていたのに、もう良いらしい。あるいは、まだ恥ずかしいからどれだけ恥ずかしいか、カイルにも分かってもらおうとしての行動だろうか。そうだとしたら、カイルにとっては歓迎すべくものであってもいささか捨て身すぎるような気もしないではないが。

 繋がっているところは何度か見たことはあっても、その筋張った裏側を目の当たりにするのは初めてだった。
 アリシアは不思議そうにカイルの顔と凶悪な見た目をした剛直とを何度も見比べ、それが本当にカイルの身体の一部であることを確認している。

「そんなに不思議?」

 苦笑いを浮かべながら尋ねると大きく頷かれた。
 しかし先走りさえ滲むものを、いつまでも至近距離から観察されているというのも地味にこたえる。アリシアの両手を取り、ゆっくりとそれを握らせた。

 カイルの熱に直に触れ、アリシアがびくりと身体を強張らせる。
 したいと言ってくれたが、気持ちの準備はまだ完全にはできていないのかもしれなかった。ここまで来てやめさせるのを残念に思わないと言えば嘘になるが、また別の機会にしてもらった方がいいかもしれない。

 そう思って「もういいよ」と言おうとした、その時だった。

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