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プロローグ
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下腹部が熱い。
それに、どこからともなくかすかに水音が聞こえる。
「……っ」
眠っていたクルヴィスは二つの違和感に気がつき、ゆっくりと目を開けた。
灯りの消された部屋は真っ暗だ。にも拘わらず他人の気配がする。自分以外の何かが放つ熱を感じる。
ぼんやりとした意識のまま原因を探して視線を彷徨わせれば、違和感の正体はすぐに見つかった。下半身を覆うシーツがやけに膨れ上がっている。そして、注意して見れば分かる程度にもぞもぞと動いていた。
咄嗟に大声で叫ばなかったのは偏に訓練の賜物だろう。しかし身体の反応までは堪えられなかった。一瞬だけびくりと強張る。
起きたつもりでいたが、まだ夢を見ているのか。
状況が理解できずシーツを掴んだ。いやに心臓が激しく高鳴って仕方ない。シーツの下で何が起きているのか。未知の経験に恐怖を抱くやら好奇心が刺激されるやら、様々な感情を渦巻かせながらそっとシーツをめくり上げた。
(な……何が、起きてるんだ……。この子は一体……?)
目と鼻を覆うデザインの仮面をつけた女の子が、クルヴィスの下腹部に顔を埋める形で蹲っている。それだけでも意味が分からなかったが、さらに意味の分からないことに彼女はクルヴィスのそそり立ったものを口に咥えていた。
クルヴィスが起きたことに気がついていないほど夢中になっているのか。
いや、すっぽりと被ったシーツを剥がされたのだ。気がついていないはずがない。だとしたら気がついていない振りをしているのか。
どちらにしろ謎の強い意志の元、その小さな口での懸命な奉仕が中断される様子はなかった。
クルヴィスに恋人はいない。
泥酔していた昨夜ならいざ知らず、しらふだった今夜は誰かを連れ込んだ覚えもない。そもそも、恋人以外とこうした関係になりたいと思ったこと自体なかった。
ならばこの少女は、この状況は一体何なのか。
(やっぱり、夢か)
それ以外に考えられない。
重みも感触も匂いも、何もかもがやけにリアルではあるが、あまりにも疲れていて夢でなかった時のことを考える気力はなかった。
諦念と、完全にその気にさせられた快楽とが混じった息をつき、月明りもない部屋の様子を探ろうと目をこらす。
ただでさえ暗く、顔の半分以上は仮面で隠されていてよく見えない。仮面は縦にいくつもの筋が入っているようで、目の部分は正三角形の穴が開いている。時期を考えるとカボチャを象ったものだろう。
謝肉祭でお菓子をもらえなかったからいたずらをしている――そんな考えが頭をよぎったが、問いかけを聞いていないのだから彼女自身しか知りようのないことだ。
そして突如として現れた侵入者は外見で判断する限り、クルヴィスより一つ二つ年下くらいに見える。仮面の下に見える大きな目は、熱に浮かされて潤んでいる気がしないでもない。暗闇に溶け込んだ色は黒か深い緑色だろうか。大きな目の輝きだけが、今はこの部屋に存在する光だ。
背中に流した髪は長く、柔らかそうなウェーブを描いている。彼女が懸命に頭を上下させる度に右サイドの髪が少しずつ落ちて来て、それをかき上げるのが何だかひどくなまめかしかった。
完全に勃ち上がった剛直の根元に添えられた指はほっそりとしている。冷静さを失った猛獣を宥めるかのように時折、竿を撫でさするのが少しもどかしい。もっと強くしてもいいと口にしかけて咄嗟に噤んだ。
それでも健気ですらある奉仕を眺めていると、クルヴィスの息も上がって来る。
(このままだと、さすがに出るな)
どうするか。
理性を奮い起こしてやめさせるか、快楽に身を任せてしまうか。
迷ったのはわずかな時間だった。
夢だと結論づけたキュルビスは躊躇いもなく、白濁を小さな口に吐き出した。
罪悪感を抱かないわけではない。
だが快楽と、少女を汚したい征服欲とが罪悪感を上回ってしまった。強く吸われ、促されていると都合良く解釈するままに最後の一滴まで彼女に注いだ。
「クルヴィス様の……っ、ん、ぅ……、すごい……」
初めて少女の声が聞こえた。
やはりと言うべきか聞き覚えのない声だ。クルヴィスは彼女の名前どころか顔すらも知らないが、彼女はクルヴィスを知っているらしい。ならば少なくとも、人違いでこんなことをしているわけではなさそうだ。
一体何がどうすごいのかは分からない。ただそう評した少女の声は、陶然とした響きを帯びながらも愛らしかった。
わずかに眉根を寄せながらも咥内に出された白濁を飲み下し、ようやく離した唇を一舐めする。舌先がちらりとのぞき、あれが自分のものを淫らに這っていたのだと思うとぞくりとした。
「これは夢……なのか?」
あまりにも馬鹿げた疑問が口からすべり落ちる。
何を言っているのかすぐに後悔したが、少女は「どうでしょうか」と愛らしく小首を傾げた。
「クルヴィス様は夢である方が嬉しいですか?」
猫のような目をクルヴィスのそれと合わせ、くすくすと場にそぐわない無邪気な笑い声をあげる。
夢と現実、どちらが良いなんて答えられずにいると、時間切れとでも言うように笑うのをやめて色香の混じった表情を浮かべた。今度は媚びるような仕草で、クルヴィスのへその辺りを指先でそっとなぞりながら囁く。
「今夜は私が、クルヴィス様を襲いに来ました」
それに、どこからともなくかすかに水音が聞こえる。
「……っ」
眠っていたクルヴィスは二つの違和感に気がつき、ゆっくりと目を開けた。
灯りの消された部屋は真っ暗だ。にも拘わらず他人の気配がする。自分以外の何かが放つ熱を感じる。
ぼんやりとした意識のまま原因を探して視線を彷徨わせれば、違和感の正体はすぐに見つかった。下半身を覆うシーツがやけに膨れ上がっている。そして、注意して見れば分かる程度にもぞもぞと動いていた。
咄嗟に大声で叫ばなかったのは偏に訓練の賜物だろう。しかし身体の反応までは堪えられなかった。一瞬だけびくりと強張る。
起きたつもりでいたが、まだ夢を見ているのか。
状況が理解できずシーツを掴んだ。いやに心臓が激しく高鳴って仕方ない。シーツの下で何が起きているのか。未知の経験に恐怖を抱くやら好奇心が刺激されるやら、様々な感情を渦巻かせながらそっとシーツをめくり上げた。
(な……何が、起きてるんだ……。この子は一体……?)
目と鼻を覆うデザインの仮面をつけた女の子が、クルヴィスの下腹部に顔を埋める形で蹲っている。それだけでも意味が分からなかったが、さらに意味の分からないことに彼女はクルヴィスのそそり立ったものを口に咥えていた。
クルヴィスが起きたことに気がついていないほど夢中になっているのか。
いや、すっぽりと被ったシーツを剥がされたのだ。気がついていないはずがない。だとしたら気がついていない振りをしているのか。
どちらにしろ謎の強い意志の元、その小さな口での懸命な奉仕が中断される様子はなかった。
クルヴィスに恋人はいない。
泥酔していた昨夜ならいざ知らず、しらふだった今夜は誰かを連れ込んだ覚えもない。そもそも、恋人以外とこうした関係になりたいと思ったこと自体なかった。
ならばこの少女は、この状況は一体何なのか。
(やっぱり、夢か)
それ以外に考えられない。
重みも感触も匂いも、何もかもがやけにリアルではあるが、あまりにも疲れていて夢でなかった時のことを考える気力はなかった。
諦念と、完全にその気にさせられた快楽とが混じった息をつき、月明りもない部屋の様子を探ろうと目をこらす。
ただでさえ暗く、顔の半分以上は仮面で隠されていてよく見えない。仮面は縦にいくつもの筋が入っているようで、目の部分は正三角形の穴が開いている。時期を考えるとカボチャを象ったものだろう。
謝肉祭でお菓子をもらえなかったからいたずらをしている――そんな考えが頭をよぎったが、問いかけを聞いていないのだから彼女自身しか知りようのないことだ。
そして突如として現れた侵入者は外見で判断する限り、クルヴィスより一つ二つ年下くらいに見える。仮面の下に見える大きな目は、熱に浮かされて潤んでいる気がしないでもない。暗闇に溶け込んだ色は黒か深い緑色だろうか。大きな目の輝きだけが、今はこの部屋に存在する光だ。
背中に流した髪は長く、柔らかそうなウェーブを描いている。彼女が懸命に頭を上下させる度に右サイドの髪が少しずつ落ちて来て、それをかき上げるのが何だかひどくなまめかしかった。
完全に勃ち上がった剛直の根元に添えられた指はほっそりとしている。冷静さを失った猛獣を宥めるかのように時折、竿を撫でさするのが少しもどかしい。もっと強くしてもいいと口にしかけて咄嗟に噤んだ。
それでも健気ですらある奉仕を眺めていると、クルヴィスの息も上がって来る。
(このままだと、さすがに出るな)
どうするか。
理性を奮い起こしてやめさせるか、快楽に身を任せてしまうか。
迷ったのはわずかな時間だった。
夢だと結論づけたキュルビスは躊躇いもなく、白濁を小さな口に吐き出した。
罪悪感を抱かないわけではない。
だが快楽と、少女を汚したい征服欲とが罪悪感を上回ってしまった。強く吸われ、促されていると都合良く解釈するままに最後の一滴まで彼女に注いだ。
「クルヴィス様の……っ、ん、ぅ……、すごい……」
初めて少女の声が聞こえた。
やはりと言うべきか聞き覚えのない声だ。クルヴィスは彼女の名前どころか顔すらも知らないが、彼女はクルヴィスを知っているらしい。ならば少なくとも、人違いでこんなことをしているわけではなさそうだ。
一体何がどうすごいのかは分からない。ただそう評した少女の声は、陶然とした響きを帯びながらも愛らしかった。
わずかに眉根を寄せながらも咥内に出された白濁を飲み下し、ようやく離した唇を一舐めする。舌先がちらりとのぞき、あれが自分のものを淫らに這っていたのだと思うとぞくりとした。
「これは夢……なのか?」
あまりにも馬鹿げた疑問が口からすべり落ちる。
何を言っているのかすぐに後悔したが、少女は「どうでしょうか」と愛らしく小首を傾げた。
「クルヴィス様は夢である方が嬉しいですか?」
猫のような目をクルヴィスのそれと合わせ、くすくすと場にそぐわない無邪気な笑い声をあげる。
夢と現実、どちらが良いなんて答えられずにいると、時間切れとでも言うように笑うのをやめて色香の混じった表情を浮かべた。今度は媚びるような仕草で、クルヴィスのへその辺りを指先でそっとなぞりながら囁く。
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