【R18】婚約者の浮気現場を見た令嬢が空き部屋に連れ込まれて色々とされてしまう話

瀬月 ゆな

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蕩けて行く  ☆

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「だ、め……」
「だめじゃないよ。今、全ての決定権があるのは蜘蛛の巣に囚われた君じゃない。巣を張って待ち構えていた僕にだけだ」

 今にも泣き出しそうな声で懇願する。
 憐れな声は多少なりとも同情を誘ったのか、男は宥めるようにメルディアナの耳朶を優しく食んだ。途端に身体が大きく跳ねる。懇願を聞き届けられない恐怖と――信じられない、信じたくないことに身体中に広がった、甘やかに痺れる感覚とで。

「許して、下さい。どう、か――」
「許しを乞うなら僕の方だよ。ひどく傷ついた君につけ込むことでしか触れられない、卑劣な僕を許して欲しい」

 自分のものではない手がドレスの胸元から滑り込む。きつく締めるコルセットの中にすらたやすく忍び、素肌に触れた。

「だめ……。そ、れ以上は……だめ、なんです」

 リチャードとは、一度も手を繋いだことすらない。ましてや素肌に触れられるなんて以ての外だ。
 それを素性の知れない男が暴こうとしている。年頃の令嬢にとって婚約者の有無に関わらず大問題だ。万が一にも公になれば不貞を働いたのはリチャードではなく、メルディアナだという烙印を一方的に押されかねない。

 いや、リチャードならきっとメルディアナに裏切られたと、不貞を理由にして自分に有利な形での婚約解消に動く気がする。
 自分の婚約者に対して思うことではないけれど、リチャードはそういう人物だ。お互いに愛情のない婚約者同士だからこそ分かる。彼にとって、より大きな利益をもたらすものがあれば、メルディアナなど簡単に切り捨てられるだろう。

 リチャードの婚約者という地位にすがっていたいわけではない。自分だけではなく家の為にも、不名誉を被せられて取り返しのつかない事態になる前に、何としてもこの場から逃げなければならなかった。

 だけど、目の前にドアがあるのに逃げる術がない。

「とても華奢だから小ぶりな胸かと思っていたけれど、想像していたよりもずっと大きいんだね」
「いや……。言わない、で」

 ふくらみを優しく撫でられ、いやいやとかぶりを振る。
 いっそ、辱めを受けるくらいなら舌でも噛み切って自害を図るべきなのか。

 覚悟を決めた途端、男の左手がメルディアナの小さな顎を包み込んで右を向かせた。
 唇を何かが掠め、もう一度触れる。
 これは――きっと。

「口づけはしたことがある?」
「あ、ありません……」

 やっぱり触れたのは男の唇だった。
 正直に答えると嬉しそうに笑うような気配がした。

「だったら僕が初めてなんだ。光栄だね」

 メルディアナは逆に全身から血の気が引くような感覚に震える。
 唇を奪われてしまった。
 今さらながら唇を固く引き結んでみたけれど、再び男は唇を重ねた。

 ドレスに忍んだままの手はふくらみの大きさや形を確かめるようにゆっくりと動く。
 嫌悪すべき行為であるはずなのに拒めない。抵抗したら何をされるか分からないせいだ。胸の奥がざわめくのだって怖いから。そうに、違いない。

「ん、ぅ」

 思わず声をあげようとして開いた口の中に、熱くぬるついたものが差し込まれた。メルディアナの小さな舌をたやすく絡め取ったかと思えば吸い上げる。くちゅりと水音が響き、聞いたことのない淫らな音に肩が跳ねた。

「っ……、は、ぁ……っ」

 初めての経験がメルディアナの思考を激しくかき乱す。
 男の手に自分のそれを添え、引き剥がそうと力を込めた。けれどびくりともしない。ただ唇が離れ、男はメルディアナの鼻先に口づけた。

「抵抗するの? ハニーは悪い子だね」
「そ、んな……」

 抵抗するに決まっている。
 すると反抗的な態度が男の感情を逆なでしてしまったのか、指先がふくらみの頂上を軽く弾いた。

「ひぁっ!」

 ほんの一瞬のことがメルディアナの全身を粟立たせる。先端がじんわりと痺れ、身体の奥が何故か波打った。何が起こったのか分からず、塞がれた視界越しに男を見上げる。

「いい子にしていないと、敏感すぎる可愛い果実をいじめてしまうよ」

 メルディアナは咄嗟に首を振った。

 男には危害をくわえる意思があるらしい。
 分かってはいたけれど、とうとう伝えられた事実にまたしても涙が潤む。でも声を出して泣けばますます怒らせてしまいそうで唇を噛んだ。

「そんなに噛んだら傷になってしまうよ。ごめんね、怯えさせたかったんじゃないんだ。でも無垢な君は、いじめるという言葉はそのまま素直に受け取ってしまうんだね」

 暗闇に目が慣れて見えているのか、男は慰めるようにメルディアナを抱きすくめると噛みしめる唇を指で優しく開かせた。

 いじめることに他の意味があるなんて知るはずもない。
 不服な思いを抱きつつもされるがままでいると、男はこめかみに口づけた。それから「怖がらせてごめんね」と小さく笑う。

「痛いのは、怖いです……」
「うん。痛くも怖くもしないよ」

 男は両手をドレスの中に忍ばせ、ふくらみを下から包み込んだ。
 そっと上下に揺らせば、その唇から吐息にも似たものが初めてこぼれ落ちる。

「すごい……。蕩けそうなくらい柔らかいね」
「っふ……。ぁ……」

 耳にかかる熱に身体ごと溶かされそうな錯覚を得た。
 お腹の奥が切なさを訴える。だけどその切なさの正体をメルディアナは知らない。立っていられなくて男の手に縋りつきかけ、そうしたら離れられなくなりそうな予感に今までとは違う恐怖を覚えた。それでも拠り所を求めてドアに両手をつき、指先に力をこめる。

「ドレス、良く似合っていて素敵だと思うけど、今は邪魔だね」

 男の言葉に息を呑む。
 意味するものはそれこそ一つしかない。ドレスが邪魔だから興が冷めた。そんな期待を抱けるほどメルディアナは子供ではないのだ。

「い、や……。だめ、だめ……」

 俯いたメルディアナはもう何度目か分からない拒絶を伝える。
 肩に口づけが落とされた。
 聞き分けのないメルディアナを諭す男の手段は一つではないらしい。そして、その甘やかな仕草を受ける度にメルディアナの心は満たされてしまう。

 耳触りの良い低めの声、ひどいことをしているのに優しく触れる細長い指、穏やかな香り。姿の見えない男から与えられる情報の数々がもたらす感情は、決して不快なものではなかった。

「あっ……!」

 コルセットごと、ドレスの胸元が勢いよく引き下ろされた。
 二つのふくらみが、ふるりと揺れながらまろび出る。
 たちまち頬が羞恥に染まって熱を帯びた。男の手が脇の下から中心へと肌を滑る。地中深くに眠っていた宝物を探し当てたかのような、よりいっそうと繊細な手つきだ。ひたすら優しく扱われ続け、自分の置かれている立場が分からなくなってしまいそうだった。

「恥ずかしがらないで。ハニーはとても魅力的なのだから、もっと堂々と振る舞えばいい。それで何かを言って来る者がいるのなら君の魅力に嫉妬しているだけだよ」
「そんな、こと……」
「ハニーは誰よりも可愛いよ。それは僕が証明できる」

 可愛いとか綺麗とか、リチャードが言ってくれたことは一度もない。
 夜会の為に、リチャードの為に着飾っても、つまらなさそうに一瞥するだけだった。
 親同士が決めた相手とは言え婚約者と、誰とも知れない男を比較するなんてどうかしている。
 けれど嫌悪感を抱いて沈み込む前に、ふくらみをやんわりと揉みしだかれ、甘い疼きに心が持っていかれた。

「あ……。んっ、ん……」

 手の動きに合わせて柔らかなふくらみの形が変えられているのに痛みはない。
 心ごと形を変えられてしまいそうでドアに額を押しつけた。指を握り込もうとしては上手く力が入らなくて開いてしまう。淡いパールピンクに塗られた長い爪が、かりりとドアを引っかく音だけが虚しく響いた。

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