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獄(シェラフィリア視点)
出会い
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シェラフィリアが欲しいと思ったものは、全て手に入る。
――いや。
それは正しい表現ではなく、訂正するべきことだろう。
シェラフィリアが欲しいと思ったものは、全て手に入らなくてはいけない。
□■□■□■
「シェラフィリア嬢、よろしければ今宵は僕と一曲踊っては下さいませんか」
「今日のドレスもとても素敵ですわ。耳飾りとネックレスのルビーもよくお似合いです」
「目元を彩る化粧品はどちらの商品をお使いですの?」
シェラフィリアがひとたび夜会に姿を現せば、それだけで場の視線は全て彼女の元に集まる。
居合わせた令息たちは競い合うように我先にと足元に傅いてダンスのパートナーに誘い、踊り終えたシェラフィリアを待ち構えていた令嬢たちがドレスや使っている化粧品の話を聞きたがった。
周りには常に人が集まり、シェラフィリアという大輪の花を讃え、あるいは女王蜂に仕える働き蜂のごとく傅く。
シェラフィリア・ラドグリスは、王都でも屈指の名門侯爵家に生まれた。
侯爵家でありながらも名門を名乗り、今もなお栄華を誇るのはひとえに初代国王を建国時から支え、その後も代々優秀な高官を輩出し続けているからだ。だからこそ、ラドグリス家は決して王家とは婚姻関係を結んではいけないという不文律もある。
そんな中、シェラフィリアは何不自由なく育てられて来ていた。
両親は結婚して早々に跡継ぎとなる男児に恵まれたが、女児も欲しいという夫人の願いはなかなか叶えられなかった。それでも夫人は諦めきれず、結婚十一年目にしてようやく授かった女児が、シェラフィリアだ。
「ここ数日はお身体を悪くして臥せっていらしたと伺っておりますわ。大丈夫ですの?」
一体誰だっただろうか。
今日の夜会の招待主の令嬢が声をかけて来る。
けれど名前を覚えてすらいないから思い出せるはずもなく、シェラフィリアはにっこりと微笑んでみせた。
「まあ。ご心配をおかけしてしまったのね。季節の変わり目に少し体調を崩してしまっただけなの。ご心配には及びませんわ」
「そのような中、足をお運び下さるだなんて……」
令嬢は感激したように瞳を潤ませる。
素直な、貴族らしからぬ成長を遂げた様子がある意味羨ましくもあった。
念願の女児が生まれたのは良いが、シェラフィリアは生まれつき心臓が弱い。だから家族だけでなく、関わった者全てから大事にされるのも当然と言えば当然だ。
心臓を患っていることを知っているのは両親と十歳離れた兄以外では、身の回りの世話をしてくれるごく一部の使用人だけ。けれど皆がシェラフィリアに甘く、我儘もほとんど聞き入れられた。
幼い頃は体力もなく、長時間の外出も満足にはできなかった。
それでも十四歳になり、兄に連れられて正式に社交界へのデビューを果たせば、シェラフィリアはたちまち大勢の注目を集めた。
兄は今でこそ妻子のいる身だが、かつてはその貴公子然とした容貌と物腰とで数々の令嬢を虜にしていたという。
そんな人物の、たった一人の妹だ。
関心の対象となるのもまた至極当然の成り行きだった。
母親譲りの美しいプラチナブロンドと、サファイアの瞳。
大貴族の娘としての誇りと矜持からの立ち振る舞い。
誰よりも美しく優雅に、決して芯を折ることなく堂々と立つ。
シェラフィリアには恐れるものなど何もない。社交界での羨望を一身に集めるに十分相応しい存在だろう。
「どうぞごゆっくりして下さいませね」
「ぜひそうさせていただくわ」
シェラフィリアは〝病み上がりに来ている〟のだ。いつまでもこんな場所にいては身体に障る。
本当はすぐに帰るつもりでいても、本心はおくびにも出さないのが淑女の嗜みだ。
でもシェラフィリアの心など知りもしない令嬢は嬉しそうにはにかみ、深々と一礼して他の客への挨拶へと向かった。
必然的にシェラフィリアの元には連日のように夜会の招待状が届く。
でも招待されたところでその全てに顔を出すことはできない。
出席する夜会はシェラフィリアの気まぐれで決められて、今日の夜会もその一つにあたる。
けれど、時には家同士の繋がりを深める為に出席しなければいけないこともあった。
往々にしてその手の夜会は退屈なもので、シェラフィリアは気乗りしないのだが、父の顔を立てなければいけない場合もあるから仕方ない。そうした大人の事情が分からないほど我儘な小娘でもないつもりだ。
そしてメイディア伯爵邸で開かれた夜会も、そんな取るに足りない何の面白味もない夜会――そのはず、だった。
□■□■□■
「かの社交界の白百合・シェラフィリア様においでいただけるとは、誠に光栄に存知ます」
「お招き下さってありがとう、メイディア伯爵」
「恐れ入ります」
招待状を出しておいて、本当に来るとは思っていなかったのだろうか。
しきりに額の汗を手の甲で拭いながら緊張した様子で出迎える伯爵にも、シェラフィリアはあくまでも表面的はたおやかに微笑んでみせる。
メイディア家は政略結婚を繰り返し、徐々に力を蓄えて来た家だ。爵位こそ伯爵だが、誇れるものと言ったら古さばかりで権力を失いつつある下手な高位貴族より、よほど栄華を極めている。
もちろんラドグリス家を脅かすほどではなく、先方も盾突くつもりは毛頭ないようで賢明な判断と言えた。
だけど親交は深めたいとの名目でシェラフィリアに夜会の招待状が送られた。
政略的な場に駆り出されることは好きではない。だから最初は渋ったのだが父と兄に言いくるめられてしまった。
そして案の定と言うべきか。
シェラフィリアにとって何ら魅力も感じられない夜会は退屈なだけの時間になった。
「少し夜風に当たって来ますわ」
シェラフィリアがそう言えば、下心を見せた令息たちがこぞって供をすると言い出した。今は鬱陶しいだけの申し出をやんわりと微笑で断り、口々に残念がる彼らには目もくれずに場を後にする。
(今日もこのまま帰ってしまおうかしら)
喧噪とはほど遠いテラスに足を運び、そんなことを考えた。
伯爵に顔見せはしたし何人かの令息とダンスも踊った。
令嬢とも他愛のないお喋りをした。
シェラフィリアがこの夜会で果たすべきことは済ませたと言ってもいいはずだ。
何故か気持ちがめずらしく沈みがちで、それに影響されたわけでもないだろうが、二連のブレスレットの鎖が壊れていることに気がついた。
今日の為に用意したものでも、特別思い入れがあるでもない。
だけど夜会はつまらないうえにブレスレットは壊れてしまうとは、何て最悪な一日なのだろう。思わぬ屈辱に、つい目頭も潤んで来る。
「本当に、最悪ね」
壊れたのは手首側の鎖だけだから落ちることはない。
だからと言ってデザインが崩れたものをつけておくなど、そんなみっともない真似ができるわけもなかった。
(ここに捨ててしまえばいいわ)
そうしてブレスレットを外した時。
「美しいお嬢さん、どうかしましたか」
ふいに横から声をかけられた。
さっきまでシェラフィリアもいた場に限らず、社交界では見た覚えのない顔だ。明るい茶色の髪を軽く後ろに撫でつけ、同じ色をした目が心配そうにシェラフィリアを見ている。穏やかな声音は人が良さそうな性格を窺わせた。
でも、その素朴で誠実そうな様はシェラフィリアの周囲にはいないタイプだったし、いくら姿形が整ってはいても周囲にいないのであれば視界には入らない。様々な打算を含んで覚えている貴族子息の面々の中に、同じ顔をした青年の記憶は全くなかった。
「……お気に入りのブレスレットの鎖が切れてしまって」
当たり前のように、お気に入りでも何でもないものをお気に入りだと嘘をつく。
その方が、このつまらない時間が少しでも面白くなると思ったから。
――いや。
それは正しい表現ではなく、訂正するべきことだろう。
シェラフィリアが欲しいと思ったものは、全て手に入らなくてはいけない。
□■□■□■
「シェラフィリア嬢、よろしければ今宵は僕と一曲踊っては下さいませんか」
「今日のドレスもとても素敵ですわ。耳飾りとネックレスのルビーもよくお似合いです」
「目元を彩る化粧品はどちらの商品をお使いですの?」
シェラフィリアがひとたび夜会に姿を現せば、それだけで場の視線は全て彼女の元に集まる。
居合わせた令息たちは競い合うように我先にと足元に傅いてダンスのパートナーに誘い、踊り終えたシェラフィリアを待ち構えていた令嬢たちがドレスや使っている化粧品の話を聞きたがった。
周りには常に人が集まり、シェラフィリアという大輪の花を讃え、あるいは女王蜂に仕える働き蜂のごとく傅く。
シェラフィリア・ラドグリスは、王都でも屈指の名門侯爵家に生まれた。
侯爵家でありながらも名門を名乗り、今もなお栄華を誇るのはひとえに初代国王を建国時から支え、その後も代々優秀な高官を輩出し続けているからだ。だからこそ、ラドグリス家は決して王家とは婚姻関係を結んではいけないという不文律もある。
そんな中、シェラフィリアは何不自由なく育てられて来ていた。
両親は結婚して早々に跡継ぎとなる男児に恵まれたが、女児も欲しいという夫人の願いはなかなか叶えられなかった。それでも夫人は諦めきれず、結婚十一年目にしてようやく授かった女児が、シェラフィリアだ。
「ここ数日はお身体を悪くして臥せっていらしたと伺っておりますわ。大丈夫ですの?」
一体誰だっただろうか。
今日の夜会の招待主の令嬢が声をかけて来る。
けれど名前を覚えてすらいないから思い出せるはずもなく、シェラフィリアはにっこりと微笑んでみせた。
「まあ。ご心配をおかけしてしまったのね。季節の変わり目に少し体調を崩してしまっただけなの。ご心配には及びませんわ」
「そのような中、足をお運び下さるだなんて……」
令嬢は感激したように瞳を潤ませる。
素直な、貴族らしからぬ成長を遂げた様子がある意味羨ましくもあった。
念願の女児が生まれたのは良いが、シェラフィリアは生まれつき心臓が弱い。だから家族だけでなく、関わった者全てから大事にされるのも当然と言えば当然だ。
心臓を患っていることを知っているのは両親と十歳離れた兄以外では、身の回りの世話をしてくれるごく一部の使用人だけ。けれど皆がシェラフィリアに甘く、我儘もほとんど聞き入れられた。
幼い頃は体力もなく、長時間の外出も満足にはできなかった。
それでも十四歳になり、兄に連れられて正式に社交界へのデビューを果たせば、シェラフィリアはたちまち大勢の注目を集めた。
兄は今でこそ妻子のいる身だが、かつてはその貴公子然とした容貌と物腰とで数々の令嬢を虜にしていたという。
そんな人物の、たった一人の妹だ。
関心の対象となるのもまた至極当然の成り行きだった。
母親譲りの美しいプラチナブロンドと、サファイアの瞳。
大貴族の娘としての誇りと矜持からの立ち振る舞い。
誰よりも美しく優雅に、決して芯を折ることなく堂々と立つ。
シェラフィリアには恐れるものなど何もない。社交界での羨望を一身に集めるに十分相応しい存在だろう。
「どうぞごゆっくりして下さいませね」
「ぜひそうさせていただくわ」
シェラフィリアは〝病み上がりに来ている〟のだ。いつまでもこんな場所にいては身体に障る。
本当はすぐに帰るつもりでいても、本心はおくびにも出さないのが淑女の嗜みだ。
でもシェラフィリアの心など知りもしない令嬢は嬉しそうにはにかみ、深々と一礼して他の客への挨拶へと向かった。
必然的にシェラフィリアの元には連日のように夜会の招待状が届く。
でも招待されたところでその全てに顔を出すことはできない。
出席する夜会はシェラフィリアの気まぐれで決められて、今日の夜会もその一つにあたる。
けれど、時には家同士の繋がりを深める為に出席しなければいけないこともあった。
往々にしてその手の夜会は退屈なもので、シェラフィリアは気乗りしないのだが、父の顔を立てなければいけない場合もあるから仕方ない。そうした大人の事情が分からないほど我儘な小娘でもないつもりだ。
そしてメイディア伯爵邸で開かれた夜会も、そんな取るに足りない何の面白味もない夜会――そのはず、だった。
□■□■□■
「かの社交界の白百合・シェラフィリア様においでいただけるとは、誠に光栄に存知ます」
「お招き下さってありがとう、メイディア伯爵」
「恐れ入ります」
招待状を出しておいて、本当に来るとは思っていなかったのだろうか。
しきりに額の汗を手の甲で拭いながら緊張した様子で出迎える伯爵にも、シェラフィリアはあくまでも表面的はたおやかに微笑んでみせる。
メイディア家は政略結婚を繰り返し、徐々に力を蓄えて来た家だ。爵位こそ伯爵だが、誇れるものと言ったら古さばかりで権力を失いつつある下手な高位貴族より、よほど栄華を極めている。
もちろんラドグリス家を脅かすほどではなく、先方も盾突くつもりは毛頭ないようで賢明な判断と言えた。
だけど親交は深めたいとの名目でシェラフィリアに夜会の招待状が送られた。
政略的な場に駆り出されることは好きではない。だから最初は渋ったのだが父と兄に言いくるめられてしまった。
そして案の定と言うべきか。
シェラフィリアにとって何ら魅力も感じられない夜会は退屈なだけの時間になった。
「少し夜風に当たって来ますわ」
シェラフィリアがそう言えば、下心を見せた令息たちがこぞって供をすると言い出した。今は鬱陶しいだけの申し出をやんわりと微笑で断り、口々に残念がる彼らには目もくれずに場を後にする。
(今日もこのまま帰ってしまおうかしら)
喧噪とはほど遠いテラスに足を運び、そんなことを考えた。
伯爵に顔見せはしたし何人かの令息とダンスも踊った。
令嬢とも他愛のないお喋りをした。
シェラフィリアがこの夜会で果たすべきことは済ませたと言ってもいいはずだ。
何故か気持ちがめずらしく沈みがちで、それに影響されたわけでもないだろうが、二連のブレスレットの鎖が壊れていることに気がついた。
今日の為に用意したものでも、特別思い入れがあるでもない。
だけど夜会はつまらないうえにブレスレットは壊れてしまうとは、何て最悪な一日なのだろう。思わぬ屈辱に、つい目頭も潤んで来る。
「本当に、最悪ね」
壊れたのは手首側の鎖だけだから落ちることはない。
だからと言ってデザインが崩れたものをつけておくなど、そんなみっともない真似ができるわけもなかった。
(ここに捨ててしまえばいいわ)
そうしてブレスレットを外した時。
「美しいお嬢さん、どうかしましたか」
ふいに横から声をかけられた。
さっきまでシェラフィリアもいた場に限らず、社交界では見た覚えのない顔だ。明るい茶色の髪を軽く後ろに撫でつけ、同じ色をした目が心配そうにシェラフィリアを見ている。穏やかな声音は人が良さそうな性格を窺わせた。
でも、その素朴で誠実そうな様はシェラフィリアの周囲にはいないタイプだったし、いくら姿形が整ってはいても周囲にいないのであれば視界には入らない。様々な打算を含んで覚えている貴族子息の面々の中に、同じ顔をした青年の記憶は全くなかった。
「……お気に入りのブレスレットの鎖が切れてしまって」
当たり前のように、お気に入りでも何でもないものをお気に入りだと嘘をつく。
その方が、このつまらない時間が少しでも面白くなると思ったから。
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