4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

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第三章 上層へ

55話 対峙

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「下位掌握」

 俺が鏡に向かってそう唱えると、鏡はゆっくりと開き始めた。
 俺とセレナスは顔を見合わせ、軽く頷いた後、前進した。

「ここが最深部か……?」

 作りは神輪の祭壇と同じ形状だった。
 だがその広さは倍ほどあり、中央にある石板は神輪の祭壇より4倍程の大きさだった。

 その石板の後ろには玉座があり、一人の女性が座っていた。

「フロストハート……何故ここにいる?」

 その女性は立ち上がり質問した。

「エルミラ……僕らはお前のやろうとしている、下層切り離しを止めに来た」

 セレナスは大声で言った。

「本当に愚か……何とずれた行為でしょう」

 エルミラは無表情のまま話続ける。

「フロストハートよ。貴方の一族は全員処刑しなければなりません。まずは貴方からです」

 そう言いながら魔装具を取り出した。
 そして、その魔装具は眩しく輝きはじめ、武器の姿へと変わっていった。

「あれが墜光刃(ついこうじん)……!」

 俺は思わずつぶやいた。
 黄色く光り輝く剣身は直視する事が出来ない程に眩しい。
 細い長剣で柄には白い大きな両翼が施されている。

 また、エルミラの周囲には白羽が舞っている。
 セレナスの雪のような効果があるのだろう。

 それと同時にセレナスも魔装具を取り出し構えた。

 エルミラはそれと同時位に、真っ直ぐに剣先をこちらに向けた。
 その瞬間、とてつもなく嫌な予感が脳をよぎった。

――ザンッ

「な! ロフル?!」

 エルミラの墜光刃の剣先が一瞬、より強く輝いた。
 その瞬間、俺の右足は吹き飛んでいた。

 エンハンスだけでは防ぎきれない……!
 直ちに闘気装を纏ったが、既に足は無い。
 どうする……!?
 そんな事は考える時間すら……一瞬たりともなかった。

――ザン! ザシュ

「――がッ!!」

 光る二本のブラストが、俺の腹部と左肩を貫いていた。

「ほう。突き刺さる程度で済むとは……ですがこれで終わりです」

 エルミラをそう言って剣を天に掲げ、魔量を貯め始めた。
 その隙にセレナスはワイドエリアリターンを俺に付け替えた。

「くそ! ここまでの相手とは思わなかった……ロフル、一旦引け。極光神輪の祭壇で十輪になって回復するんだ」
「セレナス……お前も一緒に引こう。この攻撃を避ける事は出来ない……!」
「大丈夫だ。防御に徹すれば辛うじて反応できる。今逃げたらもう二度と会えないかもしれない! チャンスはこの瞬間だけなんだ」
「だめだ……セレナス……!」

 そういう俺にセレナスは真剣な表情で、

「お前が戻るまで耐えて見せるさ。だから早く戻れ!」

 と言った。

「なるべくはやくもど……る……!」

 慢心していたのだろう。
 十輪じゃなくとも勝てるだろうと。
 実際相手は五輪で、魔法だけで言うと遥かに格下だった。
 しかし……魔装具の存在……これを軽視していた。

 その結果がこれだ……!
 極光神輪の祭壇だって、寄ろうと思えば寄れたかもしれない……!
 くそ、何て馬鹿なんだ……俺は……!

 後悔を胸に、俺はリターンを唱えた。

・・・
・・


「ロフル様!? 大変……大けがですわ!」
「ゼフィラ……!? なんで、ここは……」
「ここはゼフィラと勇者様と初めて出会った場所ですわ」
 
 なんでここに飛んできたんだ……もう一度リターンをしなければ……!

「ゼフィラが強くまたここで会いたいと願ったせいでしょうか……」

 そう思っているとゼフィラが少し気になる事を呟いた。

 思えば、最初にここへ飛んできた時も、祈っていたと言っていたな……。
 まさか本当にそういう効果があるんじゃないか……?!
 とにかく時間が無い。試す価値はあるだろう。
 意識が飛びそうになりながらも俺は何とか言葉を発した。

「極光神殿の祭壇って知っているか……?」
「え? ええ、知っていますわ。書物でしか見たことないですが……」
「そこへ行きたいって強く祈ってもらえないか……? 頼む……!」

 そういう俺に対し、ゼフィラは特に理由も聞かず頷き、祈り始めてくれた。
 すると、ゼフィラの手の甲の輪が光始めた。
 よくみると、ゼフィラのリングは通常の円では無い。
 ユニークリングの様だ。

「二輪、リターン」

 リターンはゼフィラを巻き込み、発動した。

・・・
・・

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