4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

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第三章 上層へ

54話 潜入、改めて開始

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「ここが1位専用の個室か……」

 勝利したその日の夜、俺は早速1位の個室へと移動させられた。
 その部屋は十畳一間ほどの部屋だが、壁と床は石造りで手入れが届いている。
 布団も、硬いシングルでは無く、すこしふかふかのダブルベッドが用意されている。
 出てくる食事は観客が食べる食事と同じらしく、肉やらスープ、パンが用意された。

 ここで暮らすのも良いな……!
 そんな事を考えていると、食事を持ってきた1位世話係が、

「ロフル様、この部屋に女性を招く事が出来ますが、如何いたしましょう」

 と言ってきた。
 まぁ男女でこの部屋に入る……普通ならやる事をやれって感じなんだろうけど……
 俺はそんな気はない。
 でも、この場所ではかなり優遇されるし話もしやすい。

「ならゼフィラを呼んで欲しい」
「彼女は来月の誕生日までは選択できません。他の方にしてください」

 そうか、一定の年齢を越えなければダメなんだっけ……。

「来月ならもうすぐだろう? 一度呼んでみてくれないか。断られたら諦める」

 そういうと、渋々世話係は了承してくれた。
 そして、30分程経った後……

「ロフル様!」
「ゼフィラ、来てくれたんだね」

 ゼフィラは相変わらず抱きついてくる。

「あの……ゼフィラは初めてですの……その……」

 そして顔を赤らめもじもじし始めた。

「ゼフィラ! ここに呼んだのにはお願いがあるからなんだ」
「ふえ?」

 そういって俺が二週間の休みの間、こっそり抜け出す事を伝え、
 その間、俺が部屋で休んでいる事にしてほしいとお願いした。

「休みの間なら騒ぎにならないはずだ。バレなければだが……」
「わかりましたわ! しかし……抜け出すって一体どうやって……!」

 ゼフィラがそう言っている間に、コンコンと扉を叩く音がした。

「来たか。思っていたより早いな」

 そういって俺は扉を開けた。
 するとそこには看守の姿をしたセレナスが立っていた。

「セレナス! よく来たな」
「まったく、どこに転送されたかと思ったら……ここまで来るのに苦労したぞ。さぁ早く行くぞ」

 ゼフィラは看守が来たと思って委縮していたが、
 俺はこいつが言っていた助けに来る仲間だと説明した。

「ゼフィラ、事が終わったら必ず助けに来るからな! 2週間俺の部屋頼んだ!」
「わ、分かりました……!」

 そうしてセレナスはワイドエリアリターンを再度唱え、俺と共に転送されていった。
 ゼフィラはその光景をただ茫然と眺めていた。
 そして、

「……ロフル様が居ないのは寂しいけど、こんな広い部屋! 2週間たのしみますわ!」

 と気持ちを切り替え部屋の掃除をし始めた。

・・・
・・


「次は二人とも同じ場所に転送できたな」
「ロフル、いいから早く来い。こんな時間だが、巡回が来ないとは限らない」

 そういって、転送装置を離れ、人の出入りが殆どない森の方へと走っていった。

「ここまでくればサーチを使われても大丈夫だろう」

 セレナスは一息ついた。

「セレナス! 助けに来てくれると信じていたぞ!」

 俺はセレナスのハグしようとしたが、手で拒まれてしまった。

「馬鹿な事をしている場合ではない。このままソヴリンスター大聖堂を目指すぞ」

 俺はそれに頷き、森の奥へと突き進んでいった。

「エルミラの場所は分かるのか?」
「1ヵ月も時間があった。全て下調べ済みだ」

 そういってセレナスは道中で場所の説明をし始めた。

 今歩いている森は、ソヴリンスター大聖堂よりかなり下に位置しており、このまま大聖堂の近くまで行く事が出来る。
 その場所まで行くと、大聖堂の白い石垣の下に到着する。
 その高さは5km以上あり、見晴らしがよい。
 石垣を登る事自体は可能だが、途中で見つかってしまうリスクが高い。

 セレナスは最初はここをどうやって登るかという事を考えていたが……
 登る必要がないとの結論となった。

 その結論の理由は、この先にある巨大な真っ直ぐ上に続くパイプにあった。
 そのパイプは直径10m程の巨大なパイプで大聖堂に直結しており、下は地面に突き刺さっている状態だ。

「このパイプ……大聖堂に繋がってるのか?」
「そうだ。このパイプで魔力を各地に運んでいるらしい」

 そして、このパイプの中に入り、下へ向かうと魔力炉に辿り着き、
 その中のパイプの一つにエルミラの居る最深部まで続くものがあると言う。

「1ヵ月でよくこれだけ調べたな……」
「ああ、正直ロフルを放って行くつもりだったが、大々的に宣伝されていたからな。闘技場最強戦士ロフルってね」
「なんか恥ずかしいな!」
「調子に乗って馬鹿な事を言い出す前に、回収しにきたって訳さ」
「そんな言い方は無いだろう……」

 そんな会話をしつつ、セレナスが事前にパイプに開けた穴の前へ来た。

「魔力が濃すぎて生身だと皮膚が焼きただれるが、エンハンスを纏っていれば問題ない」

 そう言いながらセレナスが先に穴に入っていった。
 パイプは3m程垂直になっていたが、途中から45度ほどの傾斜になった。

 セレナスはこんな所に一人で入って調査していたのか……。

 しばらくすると、複数のパイプが連結した場所へ到着した。

「なんか、息がしずらい場所だよなここ」
「まだ出来るだけましだぞ? 昼間とか魔力が多くつかわれる時間帯は息が出来ない程の濃度だった」
「そうなのか……」
「このパイプだ。行くぞ」

 セレナスは迷いなく突き進んでいく。
 このパイプの移動……最良の作戦だと言える。

 大聖堂はとてつもなく広く、もちろん人も大勢いただろう。
 このパイプ移動は誰かにバレてしまう可能性は非常に低い。

「ここだ」

 セレナスはパイプのサイドにある、小さめの穴を指した。
 それは人一人がぎりぎり通れるほどの排気口のような場所で、セレナスはその中へと入っていった。

 パイプには所々こういった穴が開いていた。
 多分魔力をさらに分岐させて巡らせているのだろう。

 そこを出ると、幅3m程の通路が出てきた。
 左側には制御盤のような者が設置されており行き止まりになっており、右側には自分以外が写る鏡の壁がある。

「……この鏡の先に、エルミラが居るはずだ」
「いよいよか」

 俺とセレナスはその鏡の前で、気を引き締めた。
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