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第三章 上層へ
49話 リターンした先は……
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「じゃぁ行ってくるよ」
俺とセレナスはいよいよ上層へ向かう。
道場の人達に見送られながら、
セレナスのリターンで転送されていった。
・・・
・・
・
「本当に一緒にリターン出来たな……」
周囲を見渡すと薄暗く、岩と土でできた自然洞窟のような場所だった。
「あれ、セレナス……?」
そういえばセレナスの姿が無い。
てっきり真横に転送されてくると思ったんだが……。
そう思っていると、前方から明かりが見えてきた。
誰かがこちらへ向かってきているようだ。
「おいセレナス! 先に行くなよ」
と明かりへ向かうと……
「だ、だれですの!?」
と髪が紫色で肩まで程の長さの少女が驚いた表情を見せた。
まずい。セレナスじゃないし、誰かにバレたら終わりじゃなかったか!?
しかし、紫の髪……? 神徒じゃない。転送は失敗か?
色々な感情が渦巻く中、少女は目を輝かせて俺に向かって、
「もしかして、勇者様ですの!?」
と抱きついてきた。
「え、どういう事だ?」
「ゼフィラはずっと信じていたのです! 勇者様がここから救ってくれると! そしていずれ二人は恋に落ちて……」
何だか不思議な子だな……とにかくのんびりしている場合ではない。
急いでセレナスと合流しなければ。
「ゼフィラさん、すまない。少し急いでいるんだ。ここは何処か教えてくれないか? 早く外へ出ないと行けないんだ」
俺は抱きついてきたゼフィラを引き離しながら質問した。
「ここから出る方法何て、分かるわけありませんわ。貴方もこの前新しく来た奴隷の一人ですか?
変わった服装なのでてっきり勇者様かと思いましたわ……」
ゼフィラは少し涙目になりながら言った。
出る方法が分からない……?
というか奴隷……もしかしてここは……!
「あれ、君は洞窟の外から来たよね?」
「もちろんこの洞窟からは出れますわ。でも、そこから逃げ出す方法は分かりませんわ……」
ゼフィラはそう話始め、この場所について説明してくれた。
どうやら俺の予想は当たっていたらしい。
ここは上層の闘技場だった。
日々紫髪の戦士たちが決闘を行う、神徒の娯楽施設の様だ。
基本的には木の武器を用いて戦うが、定期的に真剣での決闘があると言う。
その試合では毎回多くの死者がでるようだ。
今いる場所は奴隷用の宿舎の裏庭にある隠れた小さな洞窟だそうだ。
ここはゼフィラしか知らない場所らしい。
外への出入り口は闘技場の観客席の所にしかなく、ゼフィラ達奴隷はこの宿舎と闘技場の舞台しか行き来は出来ない。
「ゼフィラも捕まってここへ来たのか?」
そう質問すると、
「ゼフィラはここで生まれ育ちましたわ」
と言った。
ゼフィラは俺の3つ下の年齢でもうじき誕生日だそうだ。
その誕生日を越えると闘技場に参加しなければならない。
女性の場合は闘技場に参加するか、闘技場で一番強い者の子を産むかを選ばされるらしい。
闘技場に出られるよう、日々訓練はさせられているが戦いは嫌いだし、知らない人と子供を作るのはもっと嫌だと……。
そりゃ、当たり前だよな。
そしていつしか、この場所で日々ここから連れ出してくれる勇者様がくるようにとお祈りをしていたようだ。
実際にこの子も祈りでここへ飛んできたのかは分からないが……
とにかくここから出るには闘技場の観客出口からじゃないとダメみたいだな。
闘技場の壁をぶっ壊して脱出してもいいが、そんな目立ち方をするとエルミラ討伐に支障が出るかもしれない……。
穏便に脱出するには、セレナスになんとか俺の場所を伝えて脱出を手伝ってもらう他ないな。
そして、出来ればこの子だけでも共に脱出させたい。
「ゼフィア、今から言う事を秘密に出来るか?」
俺がそう言うと、ゼフィアは大きく頷いた。
「俺はこの前来た奴隷? ではない。自分の意思で最下層からリターンで飛んできたんだ」
何故来たのかなどは伏せ、外の仲間に会わないといけない事を話した。
「その時、君も一緒に脱出させられるかもしれない」
そういうと、ゼフィアの表情は明るくなり、
「やはり、貴方は勇者様でしたのね……!」
と言った。
そしてすぐに真剣な表情に戻り、
「勇者様、とにかくその服装では目立ちますわ。こちらに着替えてください」
と薄汚れた麻布の衣服を俺に手渡してくれた。
「あと、右腕のは魔法輪ですか……?」
ゼフィアの質問にそうだと答えると、
手の甲の輪はある人もいますけど魔法輪をそこまで持つ者はいません。
目立ってしまいますわ。
とゼフィアがつけていたアームカバーもくれた。
少し小さいが、これで魔法輪は隠せるな。
だがエンハンスを使用している為、左腕の手の甲は光ってしまっている……。
ここにいる間は解除していた方が良さそうだな。
そうして俺はエンハンスを解除し、闘気装だけの状態になった。
「そろそろ戻らないと消灯時間になりますわ!」
ゼフィアがそう言ったので、俺はすぐに着替え、共にこの場所から出る事にした。
俺とセレナスはいよいよ上層へ向かう。
道場の人達に見送られながら、
セレナスのリターンで転送されていった。
・・・
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「本当に一緒にリターン出来たな……」
周囲を見渡すと薄暗く、岩と土でできた自然洞窟のような場所だった。
「あれ、セレナス……?」
そういえばセレナスの姿が無い。
てっきり真横に転送されてくると思ったんだが……。
そう思っていると、前方から明かりが見えてきた。
誰かがこちらへ向かってきているようだ。
「おいセレナス! 先に行くなよ」
と明かりへ向かうと……
「だ、だれですの!?」
と髪が紫色で肩まで程の長さの少女が驚いた表情を見せた。
まずい。セレナスじゃないし、誰かにバレたら終わりじゃなかったか!?
しかし、紫の髪……? 神徒じゃない。転送は失敗か?
色々な感情が渦巻く中、少女は目を輝かせて俺に向かって、
「もしかして、勇者様ですの!?」
と抱きついてきた。
「え、どういう事だ?」
「ゼフィラはずっと信じていたのです! 勇者様がここから救ってくれると! そしていずれ二人は恋に落ちて……」
何だか不思議な子だな……とにかくのんびりしている場合ではない。
急いでセレナスと合流しなければ。
「ゼフィラさん、すまない。少し急いでいるんだ。ここは何処か教えてくれないか? 早く外へ出ないと行けないんだ」
俺は抱きついてきたゼフィラを引き離しながら質問した。
「ここから出る方法何て、分かるわけありませんわ。貴方もこの前新しく来た奴隷の一人ですか?
変わった服装なのでてっきり勇者様かと思いましたわ……」
ゼフィラは少し涙目になりながら言った。
出る方法が分からない……?
というか奴隷……もしかしてここは……!
「あれ、君は洞窟の外から来たよね?」
「もちろんこの洞窟からは出れますわ。でも、そこから逃げ出す方法は分かりませんわ……」
ゼフィラはそう話始め、この場所について説明してくれた。
どうやら俺の予想は当たっていたらしい。
ここは上層の闘技場だった。
日々紫髪の戦士たちが決闘を行う、神徒の娯楽施設の様だ。
基本的には木の武器を用いて戦うが、定期的に真剣での決闘があると言う。
その試合では毎回多くの死者がでるようだ。
今いる場所は奴隷用の宿舎の裏庭にある隠れた小さな洞窟だそうだ。
ここはゼフィラしか知らない場所らしい。
外への出入り口は闘技場の観客席の所にしかなく、ゼフィラ達奴隷はこの宿舎と闘技場の舞台しか行き来は出来ない。
「ゼフィラも捕まってここへ来たのか?」
そう質問すると、
「ゼフィラはここで生まれ育ちましたわ」
と言った。
ゼフィラは俺の3つ下の年齢でもうじき誕生日だそうだ。
その誕生日を越えると闘技場に参加しなければならない。
女性の場合は闘技場に参加するか、闘技場で一番強い者の子を産むかを選ばされるらしい。
闘技場に出られるよう、日々訓練はさせられているが戦いは嫌いだし、知らない人と子供を作るのはもっと嫌だと……。
そりゃ、当たり前だよな。
そしていつしか、この場所で日々ここから連れ出してくれる勇者様がくるようにとお祈りをしていたようだ。
実際にこの子も祈りでここへ飛んできたのかは分からないが……
とにかくここから出るには闘技場の観客出口からじゃないとダメみたいだな。
闘技場の壁をぶっ壊して脱出してもいいが、そんな目立ち方をするとエルミラ討伐に支障が出るかもしれない……。
穏便に脱出するには、セレナスになんとか俺の場所を伝えて脱出を手伝ってもらう他ないな。
そして、出来ればこの子だけでも共に脱出させたい。
「ゼフィア、今から言う事を秘密に出来るか?」
俺がそう言うと、ゼフィアは大きく頷いた。
「俺はこの前来た奴隷? ではない。自分の意思で最下層からリターンで飛んできたんだ」
何故来たのかなどは伏せ、外の仲間に会わないといけない事を話した。
「その時、君も一緒に脱出させられるかもしれない」
そういうと、ゼフィアの表情は明るくなり、
「やはり、貴方は勇者様でしたのね……!」
と言った。
そしてすぐに真剣な表情に戻り、
「勇者様、とにかくその服装では目立ちますわ。こちらに着替えてください」
と薄汚れた麻布の衣服を俺に手渡してくれた。
「あと、右腕のは魔法輪ですか……?」
ゼフィアの質問にそうだと答えると、
手の甲の輪はある人もいますけど魔法輪をそこまで持つ者はいません。
目立ってしまいますわ。
とゼフィアがつけていたアームカバーもくれた。
少し小さいが、これで魔法輪は隠せるな。
だがエンハンスを使用している為、左腕の手の甲は光ってしまっている……。
ここにいる間は解除していた方が良さそうだな。
そうして俺はエンハンスを解除し、闘気装だけの状態になった。
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