4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

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第二章 排除装置の破壊と闘気の存在

30話 施設に侵入

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「やっと入れるな」

 俺は例の0.0地点施設の見えない壁と対峙していた。

「ここを破壊するには闘爆衝で十分……」

 そして、いつもの構えで闘爆衝を放った。

――バリンッ!

 見えない壁は闘気の技の場合、まるでガラスの様に破壊する事が出来た。

「闘爆衝じゃなくても、闘気を纏った蹴り程度でも割れそうだな……」

 そうして中に侵入した後、闘気装をエンハンスに循環させるイメージで纏い、そのまま進み始めた。

 この循環させる操作はかなり苦労した。
 魔力と闘気はまるで水と油……混ぜられるような力では無かった。
 
 とは言え、両方で吸収をうまく防がなければならない為、
 混ぜるとまでは言わなくとも、お互いを絡め流動させることには何とか成功した。
 その修行のおかげか、特性の制御はより細かく出力や流れを調整できるようになった。

・・・
・・


――岩剛斎道場 にて

 道場内の茶室にて、岩剛斎とリリアナが話をしていた。

「岩剛斎、仮に私が闘気装を使えたとしても、魔力と闘気を絡めるなんてとても出来無さそうなんだけど」

 リリアナが岩剛斎に言った。

「闘気は修行によって流れを操作できるが、魔力……エンハンスの流れは一定で操作出来る力ではないだったな?」

 岩剛斎はリリアナに問いかけた。

「そうなのよ。ロフルの言うエンハンスの流れを調整するって言うのは、さっぱり何を言っているか分からなかったわ」

 リリアナは頭を悩ましながら言った。

「闘気の流れを操作するイメージと言っていたのう。ロフルの話を聞いて、わしは魔力もそのイメージで操作出来ると勘違いしておったわ」

 岩剛斎がそう言うと、リリアナがそれは大きな間違いであり、魔力はオンかオフしかなく消費量は自身の魔力の総量で決まっている。調整は出来ないと反論した。

「エンハンスの魔力消費量も自分が成長すると、その分強さと消費量が増える。ずっと発動できるなんて考えられない!  ロフルの特性がすごいって事かしらね……」

 そういってリリアナは自分で無理やり納得していた。

 ロフルは、無自覚にエンハンスの魔力消費量を回復力を下回る程度に調整していた。
 それでもエンハンスの強さは、習得したての時よりかなり強度が増している。

 魔力の流れを闘気のように操作・調整するのは、練習で誰でも出来るようになると勘違いしているが、
 実際には特性制御と絶え間ない修行によって生み出されたロフルだけの能力だった。

・・・
・・


――0.0地点施設 内部

 床と壁は全て硬い鉄板の通路となっており、天井部には配管工の様なパイプが張り巡らされている、
 床を軽く叩くとカンッという音が響き渡る。
 ちゃんとした靴であればコンコンと足音が響き渡っていた所だろう。
 しかし、俺が履いているのは魔物の皮で作った足袋なので、足音はほとんどしない。

「大きなフロアが見えてきたな……」

 結局、魔力や闘気が吸われる感覚に遭う事は無くここまで来れた。
 闘気装とエンハンスの循環が上手く行っているという事なのだろう。

 そして、目の前のフロアは聞いていた通り、少し薄暗くなっており、
 中央部には大きな魔物……というよりは機械兵器のような物が鎮座している。

 詳細を確認する為に、もう少しだけ近くに寄った。

 その機械兵器は、全長10m程はあるだろうか。脚部と思われる部分が6本あり、その姿は蜘蛛を連想させるものだった。
 そして、頭部には2本の砲台がついている。

「ここからバースト×闘爆衝をすれば起動前に木端微塵に……」

 と、一瞬構えを取ったが、あれだけの威力の技を放つとこの施設自体が崩壊する可能性もあるのでは?
 と思いとどまった。

 とはいえ、ブラスト程度ならいけるだろう。

 そう思ってフロア手前の通路からブラストをその蜘蛛型兵器に向けて放った。

――ズドン!

 ブラストは頭部に命中し、砲台が一つ破壊された。

 その瞬間、フロアのゲートが瞬間的に閉じてしまい、中からはアラートが鳴り響き始めた。

「これ……フロアに入った奴を閉じ込めてあの機械兵器と戦わす罠とかだったのかな……」

 俺は手前からブラストをした為、もちろんそのフロアにはまだ入場していなかった。
 ゲートの向こうではアラート音と何かがガシャガシャと動き回る音がしている。

 しばらくはそれをただ茫然と見つめるしか出来なかった。

 その後アラートが鳴り止み、ゲートは開いた。
 それと同時にフロアと先ほどまで付いていた通路の照明が消えてしまった。

 真っ暗になってしまった為、キーキューブから火岩を二つ取り出し、一つは大きなフロアへ投げ込み、もう一つは照明として松明にセットした。

「蜘蛛の機械が居なくなってる……」

 大きなフロアから先ほど居た機械が姿を消していた。

「とにかく、この先に見えている通路に行くか」

 俺は大きなフロアの壁を慎重に這うように進み、奥の通路へと向かった。
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