4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

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第二章 排除装置の破壊と闘気の存在

26話 道場での生活

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 昨日は血の比率が分かった所で一日が終わった。
 今日から岩剛斎が直々に闘気の指導をしてくれるらしい。

 フーチェは残念ながら素質が無い為指導には参加しない。
 だが、同じ神徒であるリリアナに神輪の祭壇の事を教えると行きたいと言った為、
 一旦二人で周辺に神輪の祭壇が無いか調査するようだ。

 闘気についてはなるべく早く習得したいが、通常闘気を感じるようになるのに半年はかかるそうだ。
 更に自在に操るとなると、何年もかかると言う。

 気が遠くなる話だが、一歩一歩進めて行くしかない。

 施設がどうなるか分からない以上あまり悠長にはしてられないが……。

「お、ぴったりだな」

 そんな事を考えながら、俺は岩剛斎から支給された道着に着替えた。
 この灰色の道着は比較的薄い生地で出来ており、柔道などの道着というよりは、剣道の道着に近い。
 色から察するにグリムホーフの皮で出来ているのだろう。

 こんなしっかりとした道着、製作者はリリアナだそうだ。
 区画移動が可能でエンハンスを纏える為
 外部での食糧調達や服、道具の作成はほぼ一任されていると言う。

「ふう……日課終了。さて、岩剛斎の所へ行こう」

 俺は朝起きたら毎日行っている筋トレをした後、寝室として案内された長屋から外へ出た。
 この長屋は道場の離れに二軒建っており、部屋は畳3畳ほどの広さだ。
 一軒につき10部屋ある為、合計20部屋ある。

 道場の方へ向かうと、

「いち! に! さん!」

 と大きな声が聞こえてきた。
 その場所を見ると、20名程の子供と大人が混ざって道場の前の大広場で修行をしている。

 その様子を見て俺は少林寺拳法の修行みたいだな……と思っていた。
 
 この岩剛斎の道場では総勢30名程の人が生活をしている。
 リリアナ以外の人達は魔法輪を持たない。

 30名の中にはここで生まれた者や洗礼の試練で道場に飛ばされた者が混在している。

 洗礼の試練でここへ転送されても手の甲の輪発現しない子が稀に居る。
 それは話で聞いた、獣人の血が流れていない子の事だ。

 その子たちは上に戻る術を持たない。
 そのまま道場で闘気の修行をしながらここで生活をするのだろう。

 もちろん魔法輪がある子もここへ転送されてくる事もある。
 道場ではその子達もしっかりと保護し、リターンを覚えるまでは面倒を見てあげるそうだ。

 修行の邪魔にならない様に俺はわき道を通って道場へと入った。

「失礼します」

 そう言って道場内に入ると、岩剛斎と師範代であるアリアンドル、そして一人の少年が待っていた。

「押忍! ロフルさん、僕はターゴと言います」

 少年はそう名乗った。ターゴは俺より少し歳が下に見える。
 そう思ってみていると、岩剛斎がこの子は14歳じゃと教えてくれた。
 俺より二つ年下だな。

 そして俺も自分はロフルだと自己紹介した。

「この子は俺の子供だ。筋が良いから個別修行に入っているんだ」

 アリアンドルはターゴの肩をぽんと叩きながら言った。
 ターゴが子供……!?

 アリアンドルの見た目はどう見たって20代……いつ生んだんだよ……!
 俺はそれが気になって修行どころでは無いので、

「アリアンドルさんは何歳なんでしょうか」

 と質問した。
 すると、

「私はもうすぐ45歳だ。皆からは50歳以上に見えると言われたまにへこむぞ」

 と言った。

 いやいや、どう見ても20代なんだけど!
 50歳以上に見えるのはむしろ岩剛斎だろう!
 と思いつつもよく考えたらフーチェは20代なのに俺と変わらない姿だし、
 この世界は全体的に老けるのが遅いのか?

「いや、50歳以上には見えないよ……岩剛斎は何歳なの?」

 と質問を続けた。
 すると岩剛斎は少し悩むそぶりを見せ……

「うーむ……すまんな150歳位から数えてなくてのう。200歳は気持ち的にはまだ行っておらんな!」

 と言った。

「すごい……」

 俺はそう呟くしか出来なかった。

 俺は人の姿をしているし、寿命なんてものは俺が生きてきた世界の人と同じ程度だと思っていた。
 いや、実際元々はそうだったのかもしれない。
 世代を経て魔族の血が混ざった事によって、寿命も大きく変わったのかもしれないな。

 俺は何歳まで生きられるのだろう。
 血の比率で言えば俺は結構長く生きられそうだな!

「さ、無駄話は終わりじゃ。早速闘気の修行を始めよう」

 岩剛斎がそう言うと、アリアンドルとターゴは扉と窓を閉めた。

「まずは瞑想じゃ。ロフル君やってみなさい」

 そう言われたので俺はいつもの通り座って瞑想をしようとしたが……

「すまん。説明不足じゃった。闘気の瞑想は立ってやるんじゃ」

 岩剛斎はそう補足した。
 俺が立ちあがると、

「前方から風が吹いている事を想像するんじゃ。その風を全身で受けられる、楽な姿勢で瞑想をしなさい」

 と言われた為、その通りの姿勢をとった。
 そして、

「半年はこの瞑想、そして基礎トレーニングを行うぞ。そうすれば風を全身で感じるようになるはずじゃ」

 と言いながら岩剛斎も瞑想の構えを取った。

 これから俺の修行がスタートだ。
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