4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

文字の大きさ
上 下
24 / 60
第二章 排除装置の破壊と闘気の存在

23話 着いた場所は

しおりを挟む
 謎の機械があった施設も他の区画と同様に正方形の形をしていた。
 俺たちは方向で言うと東側から西に向かってこの区画へやって来たのだが、リリアナは北側からここへ来たようだ。
 この区画はどうやら端になるようで、これより南、西にはいくことが出来ない。

 世界に端があるというのも違和感を感じるが、そもそも区画で分かれている時点でここはおかしな場所か……。

 リリアナと共に北へ二回、東へ一回区画移動した。
 道中はすべて森で代り映えのない場所だった。

 殆どの区画が森なのだろうか。
 
 そんなことを考えながら森を進むと、開けた場所が見えてきた。

「ここよ」

 リリアナがそう指した場所には塀で囲まれている、立派な木造建築の道場があった。
 塀と屋根は瓦が貼られており、しっかりとした作りになっている。

 どうやってこの建物が出来たのか想像すらできない。

 ただ所々に修繕の後が目立つ。
 年期は相当入っているようだ。

「師範がここにいるわ」

 そういってリリアナは道場の扉を叩き、失礼しますと大きな声で言い開けた。

「おお、帰ったかリリアナ。ふむ、そちらの子達は?」

 そう言ったのは髪色が緑でオールバックの初老のおじいさんだった。

「俺はロフル。こっちはフーチェです」

 俺はそのおじいさんに挨拶をした。
 そしてリリアナが補足するように、

「二人は例の施設にいたの。とりあえず連れてきたわ」

 と言った。

「そうか。わしは三代目岩剛斎(がんごうさい)じゃ。ここで師範をしておる」

 そういっておじいさんは俺たちに名乗ってくれた。

「岩剛斎さん。あの施設は何ですか? いつからあるのでしょうか」

 俺は施設について質問をしてみた。

「岩剛斎でよい。その丁寧な話し方もせんでよい」

 そう言って、施設の事について答えてくれた。
 あれはこの前の鐘の音がしたときに突如として現れたそうだ。
 あの場所は元々、ここと同じような森が続いているだけだったという。

 タイミングを考えると、あれが調整システムに関係があると確信した。

「あそこからたまにマシンとついた魔物が迷い込んできた大変なのじゃ」

 岩剛斎がそう言うと、一人の少年が慌てた様子でこちらへ来た。
 そして、

「岩剛斎師範! 大変です! また魔物が現れました。かなり大きい奴です」

 と大声で言った。

「やれやれ。早速か」

 岩剛斎はそう言って立ち上がった。
 その瞬間、岩剛斎の全身から急に得体のしれない力を俺は感じた。

 なんだ、この威圧感は……。
 俺達も岩剛斎と呼びに来た少年と共にその場所へと向かった。

――ジジジ……

 デッドマンティスと同じ鳴き声だが、見た目は通常と異なっていた。
 大きさが倍ほどあり、鎌が付いた手を4本有していた。

 その場所ではすでに二人の見た目20歳程の男女が例の魔物と対峙していた。

「ダメだ……まったくダメージを与えられない! イヴァリース、先に逃げるんだ!」
「弱気にならないでよアリアンドル! それでも私の夫なの?!」

 二人はどうやら夫婦のようだ。
 男性のアリアンドルは緑色の髪で女性のイヴァリースは黄色い髪色だった。

「師範代! 岩剛斎師範を連れてきました!」

 少年は大声でその夫婦に声を掛けた。

「ああ、助かった……」

 夫婦は安堵していた。

「二人ともよく耐えてくれた。あとは任せるんじゃ」

 そういって岩剛斎は魔物の前に立った。
 そしてそのまま右手に力を籠めるように構えた。

 俺はその姿を見て、魔力とは違う別の威圧感を感じており、
 同時にハナの力、そして赤い蒸気の事を思い出していた。

 この、岩剛斎さんが使いこなすこの力が……ハナが使っていた力と関係があるのか……?

「闘爆衝(トウバクショウ)!」

 岩剛斎はそう言って、右腕を真っすぐに突き出した。
 その瞬間、

――バンッ!!

 と拳から大爆発が起こり、魔物は木っ端みじんとなった。
 その技の威力と形状は、まるでバーストのように強力なものだった。

「すげぇ……」

 俺は思わず声が漏れた。

「ロフルさん、あの一連の動きと魔法……? 魔力を一切感じませんでした」

 フーチェは俺にこっそりと言ってきた。
 それに対して俺は
 
「ああ。あれは多分……魔法じゃない何かだ」

 と静かに答えた。

「さぁ、いったん戻ろうかのう。アリアンドル達、ここの後始末は任せたぞ」

 岩剛斎がそう言うと夫婦と少年が元気よく返事をし後始末を始めた。
 そして俺たちは皆で道場へと戻った。

・・・

「岩剛斎……さっきの力の事、教えてほしい」

 俺は最初に呼ばれた場所に戻った瞬間、そうお願いした。
 すると、リリアナが、

「は? 何言ってるのよ。あれは誰でも出来るわけでは無いのよ?」

 と続け、どこの誰かもわからない奴に師範が教えるわけないと拒絶するようにいった。
 しかし、岩剛斎は

「リリアナ、よいじゃないか。わしもこの二人には聞きたいことがある。何せ道場以外の場所で生きてきた子達じゃぞ?」

 とリリアナをなだめながら言ってくれた。

「わしの部屋の案内しよう。そこでゆっくりと話そうぞ」

 俺とフーチェは頷き、岩剛斎についていくことにした。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...