4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

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第一章 妹弟救出

12話 試練の結果

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「う……」

 ゆっくりと意識が戻ってきた。
 視界がぼやける……。
 俺の頭は柔らかい何かを枕にして寝ている状態だ。

「生きてるのか……?」

 そう呟くと、

「やっと起きたか。待ちくたびれたぞ」

 とすぐ近くで声がした。
 その声の主を見て俺は飛び上がった後退した。

「は? フォルチナ……! どういう……ッ!」

 そして、その瞬間自分が全裸だという事にも気がつき、すぐに局部を隠した。

「意味が分からない……全裸だし、生きてるし……!」

 意識を失って、俺はそのまま殺されとばかり思っていた。
 一瞬死後の世界かとも思ったが、相対した敵が目の前にいる事からそれも違うのだろう。

「お主の力を調べさせてもらった。身体の隅々までな」

 フォルチナはにやつきながら言った。

「俺を……どうする気なんだ……?」

 そう言いながら俺は自身の体調をチェックした。
 身体は少しだるいが、魔力も体力も大体回復している。

 もう一度戦うのなら、望むところだ……!

 そうやって身構えていると、予想外の発言がフォルチナから飛び出した。

「我はお主の事が気に入った。力になってやろう」
「え……?」

 あまりに予想外の言葉に俺は少し思考が停止してしまった。

「お主なら我の願いも叶えてくれるかもしれんとおもってのう」
「願い?」

 願いとは一体……
 とにかく、今すぐには殺されない。俺にとっては好都合な状況だ。

「そうじゃ。お主には魔王を倒して欲しいんじゃ」

 魔王……?
 魔王はお前だろ?
 俺はそんな疑問を持つが、フォルチナは構わず話を続ける。

「お主からは今まで食った奴らより遥かに潜在力を感じるのう。魔法輪、魂、肉体、どれをとっても好条件……それは魔王に届きうる可能性を感じるのじゃ」

 フォルチナは俺の身体を指でなぞりながら話す。

「何より、この我に傷をつけた。これは称賛に値する出来事じゃ」

 俺は少し後退し、

「魔王はフォルチナ……君じゃないのか?」

 と当然の疑問を投げかけた。
 すると、フォルチナは少し不機嫌そうな表情になり、どこから出したか分からない玉座のような椅子に腰を掛けた。

「我は太古の魔王……現魔王ではないのじゃ。まぁ座れ。我の身の上話に付き合うのじゃ」

 俺はそう言われ着座した。
 それを見たフォルチナはゆっくりと話し始めた。

・・・
・・

 
 魔王フォルチナは現魔王に敗北し魔王の地位を奪われた。
 通常、敗れた魔王は命を奪われる運命にあるが、
 現魔王はフォルチナの力を奪うために彼女を虚空の檻という場所に閉じ込めていたようだ。
 この虚空の檻にはフォルチナだけでなく、数多くの魔物も幽閉されている。

 しかし、幽閉されている間にある現象が起こり始めたという。

 それは、虚空の檻の床から突然魔法陣が現れ、魔物がどこかへと転送されるという現象だった。

 幽閉された魔物たちにとって、その現象はいつしか希望の光となっていた。
 もちろん、フォルチナ自身も自分の足元に魔法陣が出現することを切望していた。

 そして、その現象は予兆もなくフォルチナの足元にも起こった。

 転送先は、今いるこの場所と同じだった。
 そして、一人の赤髪の少年が立っていたと言う。

 フォルチナは久しぶりの血肉に即座に少年の命を奪い、その肉を喰らった。
 しかし、少年が死んだ後、彼女は強制的に元の場所に戻されてしまった。

 その時、戻ってきたのはフォルチナが初めてで、他の魔物も動揺していたようだ。

 そして、年月が経ち、二度目の転送が発生した。
 場所も当然ながら同じだった。

 今度は青年と呼ぶにふさわしい赤髪の男性が立っていたようだ。
 彼をとりあえず拘束し、周囲を探った。

 しかし、脱出できるような場所はどこにも存在しなかった。

 落胆したフォルチナはそのまま青年を倒した。そして、当然の様に元の場所へと戻った。

 そして、その時期あたりを最後に、その現象は一切発生しなくなった。

・・・
・・


「もうここからは出られないと、完全に諦めていた中、3人目のお主に呼ばれてここに来たのじゃ」

 フォルチナは一通り話し終えた後、一息ついた。

「なるほど……」

「魔王さえ倒せば、檻を開放できるはずじゃ。それで我も自由と言う訳じゃ!」

 多分、断れば殺されるだけ……。
 現魔王に負けた元魔王フォルチナにすら勝てないのに俺は勝てるのか?
 まったく想像できない……。

 そもそも魔物ってのは虫や獣の姿だけと思っていた。
 言葉を話す……ましてや魔王なんてものがいるとは想像もしていなかったな。

「魔王か……どこに居るんだ?」

 俺はとりあえず気になっている事を投げかけた。

「分からぬ」
「え?」

 分からないならどうやって倒せばいいのか?
 そんな質問をフォルチナにいくつも投げかけた。
 そして、状況は少し理解する事が出来た。
 
 昔、魔王城に居た頃は世界の状況を感知する事が出来た。
 しかし、檻とこの空間は世界と断絶している為か全く感知が機能しない。

 だが、俺に力を貸せば、その力を経由して魔王の居場所を探れるかもしれない。

 ……との事らしい。

「なら、ここから一部の力だけでも脱出すれば、魔王の場所はすぐに分かるのか?」

「いや、探るのには時間が掛かるはずじゃ……」

「成程……わかった。とにかく俺に選択肢はない。だが、俺には目的がある! 妹と弟を救うと言う目的が」

 そう言いながら俺はフォルチナに寄り、目を合わせた。

「それだけじゃない。なるべく多くの子供を救いたい。魔王討伐はそれが終わってからだ」

 とは言え……終わりなんてものはないが……。
 
「ふん。好きにせい。我は何百年も待った。今更その程度誤差じゃ」

 少し沈黙が続いた後、フォルチナはそう答えた。

「わかった。なら俺の力になってくれ! フォルチナ!」

「いい選択じゃ……期待しておるぞ」

 すると、フォルチナから霧のような魔力が溢れ出し、俺を包み込んだ。
 その霧は収束しながら俺の左目へとどんどん吸い込まれていく。

「ぐ……!」

 目にピリピリとした痛みが走る。
 目にずっと目薬を差し続けているような感覚だ。

 そして、だんだんと意識が薄くなっていく。
 俺はどうなってしまうんだ……?

「契約完了じゃ。期待しておるぞ……」

 薄れゆく意識の中で魔王の言葉が聞こえた。
 契約……?

・・・
・・
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