4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA

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第一章 妹弟救出

9話 レベル開放の試練

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――翌日 正午 

 俺達はフレイムロックの残骸をいいサイズに砕いて、鉄のデッドマンティスで作った器に移している。
 フレイムロックの岩、通称[火岩]は水に触れている時以外ずっと燃え盛るそうだ。
 どんな時でも火が出せる……あれば非常に便利な道具となりそうだ。

「さて、ある程度集められたかな?」
「そうですね。そろそろ帰りましょうか」

 結構な量の火岩を器に移し終えた俺達は、帰路についた。

・・・
・・


「途中にある川で器に水を入れましょう」
「そうだな。燃え移りそうで怖いしな……」

 そんな会話を挟みつつ川に到着、水をざばっとかけると火岩の火は瞬く間に消えていった。

「こんな勢い良く掛けて後でまた燃えるのか?」

 俺がそう質問すると、フーチェは水に浸されていた火岩を一つ取り出した。

 すると、火岩はすぐにまた燃え始めた。

「乾く間もなくすぐに燃えた……」

 俺の驚いた表情をみて、フーチェは微笑んだ。

「凄いでしょう? 少しでも水に触れていれば全く火はつかないのですが、少しでも離れたらすぐに燃えてくれます」
「凄い便利だけど、扱いが難しそうだな……誤って水から出たら大惨事になるな」
「そうなの、それで一度大変だった」

 マグはフーチェを見ながら言った。

「あれは寝ている時の私がやりました! あれからもう寝る場所には置かない様にしたでしょ?」

 フーチェは少し照れながらマグに言った。
 火岩を寝相で蹴っ飛ばしたりしたのかな……?

・・・
・・


――神輪の祭壇

 俺達は祭壇に直行した。
 俺のレベルがどうなっているか……全員気になっていたからだ。

ロフル
――
現在レベル5.99

レベル5までの魔法輪
特性 磁力 を開放済

次のレベルまで0.01
開放の試練をクリアする必要があります。

試練条件
5.99以上の神徒を含んだ、
異なる種族二名の参加が条件の試練を神輪の祭壇で受ける必要がある。
対象者は一般人なので、その後開眼の試練を達成する。

試練を開始しますか?
はい / いいえ
――

「なんか、俺だけ試練二つあるんだけど……」

 俺は条件の違いに少し落胆した。

「本当ですね。一般人は色々大変ですね」

 フーチェは同情の目で俺を見ながら言った。

「というより、試練開始するか聞かれているんだがどうする? 俺は大丈夫だが」

「マグも大丈夫」
「私も大丈夫ですよ!」

 二人は元気よく返事をした。

「よし、じゃぁはいを押すぞ」

 俺はそう言って、はいに触れた。
 すると台座の前の地面に、丸く光る円が出現した。

「ここに俺ともう一人が乗る感じみたいだな。どっちから行く?」

 俺の問いかけにマグが手を上げた。

「マグが先に行く」
「そうですね。マグの方が戦闘面では優れていますし、先にお願いします」

 フーチェはそう言って一歩後退した。

「どんな試練か分からないが……頑張ろうな。マグ」
「頑張る」

 そう言って俺達はそれぞれ円の中に入った。
 すると円は眩しい光を放ち、筒状に光が広がった。

・・・
・・


「転送されたみたいだな」

 次に目を開けると、違う場所に俺とマグは立っていた。
 壁、床、天井全てが同じ白い材質で出来た空間……。
 広さで言うと一般的な体育館ほどだろうか。

「……」

 俺は地面に触れてみた。
 感触は硬いマットの様な感触……
 この空間全てその素材で出来ているようだ。

「人工的に作られた物としか思えないな……自然の物ではないよな。この床の素材も……」

「ロフル。見て。前」

 マグがそう言って指差した先を見ると、
 そこには文字が空中に浮かんでいた。

――レベル6開放の試練を開始します。
――No6 戦闘準備

「何か来るぞ。構えろ!」
「わかった」

 俺達は直ちに戦闘態勢に入った。
 すると、文字が浮かんでいる場所の地面に魔法陣が現れ、何かが出現した。

「これを倒せって事か……?」

 現れたのは魔物というよりは、機械で出来た二足歩行のロボットのような姿をしている。
 身長は3メートル程で両手には何も持っておらず素手である。

「こいつ、鉄で出来てそうだな……」
「マグも思った」

 そう言いながら、マグは磁力を増幅させて一瞬のうちにNo6に迫り、その速さのまま容赦ない蹴りを放った。

――ギャリン!!

 重低音が響き渡り、No6は壁まで吹き飛ばされた。

「あいつ、かなり硬い」

 No6は迅速に反撃に転じた。
 ボクシングのようなスタイルで猛攻を仕掛けるが、その全てがマグに対して効果を及ぼしていない。
 攻撃の方がマグを避けている。

「本当に鉄に対しては無敵だな……」

 とはいえ、フーチェの時にはこの戦法は使えない。
 出力2が通るだろうか……

 そう思って俺はマグを必死に攻撃するNo6の背面に回り、出力2で思いっきりけりを放った。

――ガンッ!

 No6は先ほどと同じように勢いよく吹き飛んだ。

「重いな……」
「ダメみたい。平然と立って来る」

 No6は何事も無かったかのように、機械的に立ち上がりまた臨戦態勢を取った。

「出し惜しみは出来ないな。出力2でブラストを放つ。また引きつけてくれ!」
「わかった」

 マグはそう言ってNo6に飛び出した。

「さて、気絶するなよ……俺!」

 そういって掌の出力を2に上げた。

「行けるぞ!」
「わかった」

 俺の合図でマグはまたNo6を蹴って吹き飛ばした。
 その瞬間、態勢を立て直す前にすかさずブラストを撃ち込んだ。

「ふう……気絶せずにすん……だッ!!」

 爆風から真っ直ぐにNo6の拳が飛んできた。
 辛うじて手で受ける事が出来たが、俺はかなり後方まで吹き飛ばされてしまった。

「ぐ……腕だけのパンチでこれか……体重が乗ってたらエンハンスを完全にぶち破るかもな……」
「大丈夫か?」

 手が少しビリビリする……No6の攻撃は、エンハンスを纏っているにもかかわらず、
 衝撃を貫通し俺にダメージを与えた。掌をみると真っ赤になって少し腫れていた。

「大丈夫だ。見ろマグ。俺のブラストが当たった所」

 そういって俺はNo6の胸部に指を指した。

「少し穴が空いている……」
「ああ。もう一度ブラストをあそこに撃てば倒せるはずだ」

 ブラストはまだインターバルはまだ終わっていない。15秒がこんなに長く感じるなんて、どうなってんだ時間感覚……
 
「魔力の残量大丈夫なの?」

 マグは心配そうに言った。

「大丈夫だ。気絶してないしな。ただ、体感的にあと一発だ」

 俺は背中と左腕のエンハンスを限りなく薄くした状態にしている。
 魔力を少しでも節約する為である。

「さぁマグ、もう一回頼むぜ……!」

 その問いにマグは静かに頷き、敵に突撃した。
 やり方は同じだ。俺の準備が終わったらマグがNo6を吹き飛ばし俺があの壊れかけの部分にブラストを放つ。

「よし、使える! マグ! 頼む!」
「まかせて」

 マグはそう言って再度No6を吹き飛ばした。
 危なげなくやって欲しい事を遂行する……。
 凄い奴だ……。

「さて、後は俺が失敗しなければいい」

 そう言って吹き飛んだNo6の前に飛び出した。

「これで壊れてくれよ……! 五輪ブラスト!」

 俺の放ったブラストは見事に同じ個所に命中した。
 そのブラストは貫通し、No6には風穴があいた。

――ガシャン……ギギ……ボンッ!

「よし!」
「やった」

――コンプリート
――帰還します。

 その文字が空中に現れた瞬間、俺は気を失ってしまった。

・・・
・・

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