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第一章 妹弟救出
8話 祭壇の謎
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――神輪の祭壇
フーチェ
――
現在レベル5.99
レベル5までの魔法輪
特性 炎上 を開放済
次のレベルまで0.01
開放の試練をクリアする必要があります。
試練条件
5.99以上の神徒を含んだ、
異なる種族二名の参加が条件の試練を神輪の祭壇で受ける必要がある。
――
マグノリア
――
現在レベル5.99
レベル5までの魔法輪
特性 磁力 を開放済
次のレベルまで0.01
開放の試練をクリアする必要があります。
試練条件
5.99以上の神徒を含んだ、
異なる種族二名の参加が条件の試練を神輪の祭壇で受ける必要がある。
――
ロフル
――
現在レベル5.5
レベル5までの魔法輪
特性 制御 を開放済
次のレベルまで0.5
――
二人はそれぞれ何かを考えている様子だ。
「祭壇に手を突っ込むなんて一人じゃ絶対思いつかないですね……」
彼女は戸惑いを隠せない声でつぶやいた。
「マグは磁力だったの……磁力?」
マグは驚きを隠せず、頭にははてなのマークが浮かんだ。
「簡単に言うと、鉄を含んだ物体には無敵って事だな」
つまりあの硬いカマキリは鉄でできてるって事か……? 異世界だし、そういう魔物もいるって事なのだろうか。
「でも、特性の名前が分かるだけで効果までは表記してくれないのですね」
フーチェは不満げにつぶやいた。
「そうだな。名前で大体想像がつくが……」
「私のは分かりやすいですが、マグと貴方のは全然想像つきませんでした……」
フーチェは困惑しながら話した。
「俺のは簡単に言うと、打ち出した魔法の操作が可能って特性だな。射出後、曲げたりできる」
俺は説明しながら、自らの特性を見せるためにバインドを射出し、思いっきり曲げた。
「凄いですね……後で曲げられるのであれば、より当てやすくなりますね!」
「だろ? でもフーチェの炎上なんて分かりやすく強くて羨ましいけどな」
俺は微笑みながら言った。
「そうでもありません。炎上はデメリットも多いんです」
フーチェは少し寂しげに語った。
特性:炎上……
全ての魔法輪に炎を付与する。
バインドの鎖は燃え盛り、ブラストは火球となり、エンハンスは炎も纏う。
炎上効果を消す事が出来ない為、拘束が主目的であるバインドも、炎の鎖で対象を死に至らしてしまう事が殆どである。
「成程……バインドとかの使い勝手が悪くなってそうだね」
「何よりも……」
そのままフーチェは立ち上がり、手を広げ声を上げた。
「エンハンスも炎を纏ってしまうから服が着れないんですよ!!」
服が着れない……冷静に考えたらかなり大変な状況だな……。
「私生活に支障が出るのは大変だな……」
俺のデメリットって何だろ……出力をミスったら気絶する事とかか?
そんな事を考えていると、フーチェは身を乗り出し俺に顔を寄せた。
「というより、ロフルさん! 魔法操作という事は分かりましたが、エンハンスの威力が説明されていません!」
そういえばその説明は忘れていた。
「ああ、実はエンハンスも出力と言えばいいのかな? 威力を調整できるんだ」
俺は一瞬右腕の出力を上げ下げした。といっても見た目ではそんなに分からないが……。
「それは凄いです……! 本来なら自身の成長に合わせ効果が高くなるエンハンスを強制的に強くできるのですね」
成長に合わせて効果が高くなる……てことは無理に出力を変える必要も無さそうだな。まずは自分を鍛えるのが大事っぽいな
「デメリットは出力を考え無しに上げてしまうと魔力が一気に消費されて気絶する事だな。無理やり強い力を使ってる弊害かな……自身の魔力の残量が分かればいいんだけどな……」
そういう俺に、フーチェは疑問に満ちた表情を浮かべた。
「魔力の残量……感覚で分かりますよね? 視界が赤くなってきますし」
フーチェは真剣な表情で問いかけた。
「え……? いや、何度も気絶しているけど視界が赤くなんてなったこと無いな……」
俺は首をかしげながら答えた。
「気絶するほど魔力が減ったら、むしろ視界が赤に染まって何も見えなくなりますけどね……」
彼女は微笑みながら補足した。
「そう……なのか」
あまりにも乖離している事象……神徒だけの特権なのだろうか?
とにかく事実として俺はそう言った事にはならない……残量が分かるなんて羨ましいな。
「二人とも! マグ……レベル6になりたい!」
「そうですね。私も5の先があるのであれば是非目指したいです」
二人の言葉には意気込みを感じた。
「二人とも、立派だな」
俺は二人を褒めた。
「な・の・で!」
フーチェを俺の腕を取り見つめてきた。
エンハンスの炎は移動出来るのだろうか。温かさはは程よい感じだ。
「ロフルのレベルを5.99まで上げないとですね!」
「ロフル。頑張れ」
二人は期待の眼差しでこちらをじっと見た。
「問答無用で俺が一緒に行く感じなのね……まぁ俺も6になりたいし、頑張るよ!」
「では早速向かいましょう! 良い場所を知っているのです!」
フーチェは興奮気味に言った。
そうして俺達3人は、旅立つ準備を整え、早速出発した。
・・・
・・
・
ひたすらに真っ直ぐと進む。方角的には西方向になる。
相変わらず森が続いており、時折出現する魔物はデッドマンティス、スライムボール、レッドアントなど見慣れた魔物達である。
良い場所ってどこなのだろうか。
経験値が多い魔物みたいなのがいるのか……?
「ここから入る場所を探します!」
「入る……?」
彼女の言葉に、俺は疑問に思った。
すると、突然フーチェは足を止めた。
入ると言うが洞窟みたいなものはないし、目の前はひたすら森が続いているだけだ。
何処に入ると言うのだろうか。
「ロフル、手を伸ばしてみて」
マグはそういって俺の手を取った。
「え? ……おお?!」
なんと目の前には、気がつかない程にクリアな透明な壁があったのだ。
「壁だ……ずっと続いているのか」
「この最下層は区画毎にこの壁で仕切られているのです」
フーチェが説明した。
「区画……?」
俺は疑問を抱いた。
「そうです。最下層は区画で分かれており、それぞれの区画は基本的に行き来できません」
「そうなのか。まずいな……助けたい人が別の区画になったら助けられない……!」
俺はつい苦悶の表情を浮かべた。
兄妹を助けるためにレベルを上げているのに、区画が異なると助けに行けなくなる可能性がある。
さらに、1区画の規模も相当なものであり、別の区画に転送されると捜索は困難だ。
すると、マグは俺の肩をぽんと叩いて質問をしてきた。
「助けたい人は同じ村の人?」
「マグ……そうだ。いずれここに来てしまう妹と弟を助けたい……!」
そう言うと、マグは自分の胸を叩き、
「大丈夫。同じ村なら同じような場所に落ちてくる。区画が変わる事は無い」
と力強く言った。
「そうなのか……!」
「多少の誤差はあるけど自分が転送された場所付近を探せば見つかるはず」
「そうか、よかった……!」
俺は安堵した。とは言え、すぐに見つけて助けなければ魔物に喰われてしまうのは同じだ。
しっかりしないとな。
・・・
透明の壁についてから、そこを沿ってずっと移動している。
一体何があると言うのだろうか。
そんな事を思っていると、フーチェがピタッと止まった。
「ありました。ここです」
そう言いながらフーチェは透明の壁を軽く叩いた。
「あれ……? 鏡?」
フーチェの場所に立つと、3人の姿が映し出された。
「実はこの壁、全部鏡なんです」
「え? でもここ以外は俺達の姿は……」
「不思議ですよね。私も、なんでこうなっているのかは分かりません」
フーチェの言葉に従い、俺は周囲の鏡の配置を注意深く観察した。すると、自分の後ろと全く同じ木が目の前に映っていることに気づいた。
「不思議だ……どういう原理だろう」
「とにかく、私に近づいてください」
俺は言われるがままにフーチェの隣に立った。
「ロフルさん、私の目は見ないで下さいね。下位掌握をします」
「え? 分かった……」
そう言われ俺は足元に目線をやった。
「では行きます。下位掌握」
すると自分たちが写っていた鏡部分はすーっと消え去り、通路が現れた。
「30秒ほどで元の鏡に戻ります。急いでください」
「お、おう!」
そうして急いで3人で通路を移動した。
・・・
「なんだここ……?」
「ロフルさん、ここでは絶対にエンハンスは解除してはいけません」
フーチェは俺に警告し、そのまま話続けた。
「ここは[廃棄された区画、熱波の森]……エンハンスを解除した瞬間、身体中が火傷になるほど熱い場所」
「まじか……むしろエンハンスに温熱遮断効果があったとは……」
「寒すぎる場所にも効果がありますよ!」
「必須だな……エンハンス」
雰囲気は先ほど居た森とは大きく異なっていた。
真っ赤な木々が広がり、遠くを見ると蜃気楼が見える。
基本的には黄土色の岩と砂ばかりの場所だ。
「ここに出現する、フレイムロックという炎を纏ったゴーレムが経験値稼ぎに良いのです」
「ほー。強そうな名前だな」
今まで昆虫系ばかりだったが遂に、ゴーレムとか出現し始めたか。
区画を回れば色々な魔物に出会えるのかもしれないな。
「多分、攻撃に当たってしまえば本当にやばいです。とてつもなく硬いですから……」
「ただ、動きは鈍い。ブラスト当て放題」
「なるほど、じゃぁブラストメインで戦えばいいんだな」
「その通りです。じゃぁ早速探しましょう。すぐに見つかると思いますが……」
フーチェの言った通り、フレイムロックはすぐに見つかった。
――ゴォン……ゴォン……
「想像よりかなりでかい……」
フレイムロックは火だるまのように燃えており8メートルほどの巨大な大きさである。
どのくらいの硬さだろうか。
ブラストでは無く、一度肌で経験しておきたいな。
「よし、手伝うから行くよ」
マグがそう言って戦闘態勢になったが、俺はそれを抑止した。
「ありがとう! でも一回、俺一人で行かせてくれ!」
「危ないですよ! 動きが遅いと言っても、攻撃の範囲、威力はとてつもないです!」
「大丈夫! 見ていてくれ!」
そう言って俺は8メートルの巨体に向かって走り飛び上がった。
脚部からトントンとジャンプし、すんなりと頭部と思われる場所には登る事が出来た。
「全力で行く!」
俺は右足の出力を2にし、くるっと回転しながら踵落としをした。
――ダン!
すると、頭部は粉砕さればらばらに砕け散った。
――ズゥン……
そのままフレイムロックは瓦礫と化した。
「何とか破壊できるな……!」
「凄い! ロフルさん!」
「む、マグと同じ動き!」
「ああ、参考にさせてもらったんだ。出力2で蹴ってみたぜ!」
「羨ましい威力ですね……」
「この調子でドンドン倒そう」
「おう!」
そうして、順調にフレイムロックを探しては討伐を行い、
気がつけば辺りは暗くなっていた。
「暗くなってしまったな……どうする?」
「ええ、私達が来た時に使った祭壇で休みましょう」
「ここにも祭壇があるのか!」
「ありますよ! 構造的には神輪の祭壇と同じ感じですよ」
「よし、じゃぁ早速そこで休憩しよう。いっぱい倒したからへとへとだ……」
そうして俺達は祭壇を目指し走り始めた。
15分程走ると、祭壇が見えた。
フーチェの言った通り、神輪の祭壇と同じように、大きな切り株があり中央部はは入れるようになっている。
ただ、切り株は焼け焦げており黒くなっていた。
中に入ると、青い岩に囲まれた空間、中央には台座などが設置されており、俺がいつもいる祭壇と全く同じ形をしている。
「ここまで全く一緒になるか……?」
周囲を見渡しながら観察していると、
「ロフル! 今レベルいくつか見よう」
と、マグが後ろから話しかけて来た。
「あ、そうだな。ここでも見れるなんて便利だな」
そうして俺は祭壇へと向かい、早速手を突っ込んでみた。
「いっぱい上がっていればいいんだが……」
「あれだけ倒したんですし、もう5.99かも知れませんね!」
そう言いながら3人で石板を注視する。
――
・・・
・・・
・・・
・・・・・・err
――
「え……?」
エラーと表示された石板を見て俺の頭はぐるぐると思考した。
あの表記をみて思ったのは、これは人工物なのか? という事……
何よりも……"err"という文字……
何故この世界に英語があるんだ……?
これが何よりも疑問だった。
だが、それよりも驚いた事がすぐに起こった。
「イー、アール、アール……どういう意味でしょうね?」
何とフーチェが英語を普通に解読できているのだ。
「え!? フーチェ、この文字読めるの?」
「え? 授業で習いますからね。英語ですよ」
「英語……」
言語の名称まで同じ……どういう事だ?
ここは異世界……だろ?
「神徒は3つの言語を習いますよ。"英語"と"日本語"、そして普段使う"外来新語"です!」
「に、日本語もかよ……」
普段話しているこの言語の名前……外来新語って言うのか。
だが……言語名に少し違和感がある。
自分の国の名前に外来って単語を付けるか……?
外から来た言葉とかに普通使うよな?
一体……誰がこの言語の名前を考えたのだろうか。
「んー。考えても仕方がないか……とにかくこの祭壇は壊れてるみたいだから、明日しっかり狩りをして帰ってから確認しよう」
「何を考えてたんですか?」
フーチェは顔を寄せて聞いてきた。
言っても分からない様な事なので、とりあえずはぐらかす事にした……。
「いや、よく考えたら何も考えてなかったよ」
「いやそれどういう事ですか!」
「あはは、とにかくもう寝よう。明日も宜しくな」
そういって俺は祭壇内で就寝した。
・・・
・・
・
フーチェ
――
現在レベル5.99
レベル5までの魔法輪
特性 炎上 を開放済
次のレベルまで0.01
開放の試練をクリアする必要があります。
試練条件
5.99以上の神徒を含んだ、
異なる種族二名の参加が条件の試練を神輪の祭壇で受ける必要がある。
――
マグノリア
――
現在レベル5.99
レベル5までの魔法輪
特性 磁力 を開放済
次のレベルまで0.01
開放の試練をクリアする必要があります。
試練条件
5.99以上の神徒を含んだ、
異なる種族二名の参加が条件の試練を神輪の祭壇で受ける必要がある。
――
ロフル
――
現在レベル5.5
レベル5までの魔法輪
特性 制御 を開放済
次のレベルまで0.5
――
二人はそれぞれ何かを考えている様子だ。
「祭壇に手を突っ込むなんて一人じゃ絶対思いつかないですね……」
彼女は戸惑いを隠せない声でつぶやいた。
「マグは磁力だったの……磁力?」
マグは驚きを隠せず、頭にははてなのマークが浮かんだ。
「簡単に言うと、鉄を含んだ物体には無敵って事だな」
つまりあの硬いカマキリは鉄でできてるって事か……? 異世界だし、そういう魔物もいるって事なのだろうか。
「でも、特性の名前が分かるだけで効果までは表記してくれないのですね」
フーチェは不満げにつぶやいた。
「そうだな。名前で大体想像がつくが……」
「私のは分かりやすいですが、マグと貴方のは全然想像つきませんでした……」
フーチェは困惑しながら話した。
「俺のは簡単に言うと、打ち出した魔法の操作が可能って特性だな。射出後、曲げたりできる」
俺は説明しながら、自らの特性を見せるためにバインドを射出し、思いっきり曲げた。
「凄いですね……後で曲げられるのであれば、より当てやすくなりますね!」
「だろ? でもフーチェの炎上なんて分かりやすく強くて羨ましいけどな」
俺は微笑みながら言った。
「そうでもありません。炎上はデメリットも多いんです」
フーチェは少し寂しげに語った。
特性:炎上……
全ての魔法輪に炎を付与する。
バインドの鎖は燃え盛り、ブラストは火球となり、エンハンスは炎も纏う。
炎上効果を消す事が出来ない為、拘束が主目的であるバインドも、炎の鎖で対象を死に至らしてしまう事が殆どである。
「成程……バインドとかの使い勝手が悪くなってそうだね」
「何よりも……」
そのままフーチェは立ち上がり、手を広げ声を上げた。
「エンハンスも炎を纏ってしまうから服が着れないんですよ!!」
服が着れない……冷静に考えたらかなり大変な状況だな……。
「私生活に支障が出るのは大変だな……」
俺のデメリットって何だろ……出力をミスったら気絶する事とかか?
そんな事を考えていると、フーチェは身を乗り出し俺に顔を寄せた。
「というより、ロフルさん! 魔法操作という事は分かりましたが、エンハンスの威力が説明されていません!」
そういえばその説明は忘れていた。
「ああ、実はエンハンスも出力と言えばいいのかな? 威力を調整できるんだ」
俺は一瞬右腕の出力を上げ下げした。といっても見た目ではそんなに分からないが……。
「それは凄いです……! 本来なら自身の成長に合わせ効果が高くなるエンハンスを強制的に強くできるのですね」
成長に合わせて効果が高くなる……てことは無理に出力を変える必要も無さそうだな。まずは自分を鍛えるのが大事っぽいな
「デメリットは出力を考え無しに上げてしまうと魔力が一気に消費されて気絶する事だな。無理やり強い力を使ってる弊害かな……自身の魔力の残量が分かればいいんだけどな……」
そういう俺に、フーチェは疑問に満ちた表情を浮かべた。
「魔力の残量……感覚で分かりますよね? 視界が赤くなってきますし」
フーチェは真剣な表情で問いかけた。
「え……? いや、何度も気絶しているけど視界が赤くなんてなったこと無いな……」
俺は首をかしげながら答えた。
「気絶するほど魔力が減ったら、むしろ視界が赤に染まって何も見えなくなりますけどね……」
彼女は微笑みながら補足した。
「そう……なのか」
あまりにも乖離している事象……神徒だけの特権なのだろうか?
とにかく事実として俺はそう言った事にはならない……残量が分かるなんて羨ましいな。
「二人とも! マグ……レベル6になりたい!」
「そうですね。私も5の先があるのであれば是非目指したいです」
二人の言葉には意気込みを感じた。
「二人とも、立派だな」
俺は二人を褒めた。
「な・の・で!」
フーチェを俺の腕を取り見つめてきた。
エンハンスの炎は移動出来るのだろうか。温かさはは程よい感じだ。
「ロフルのレベルを5.99まで上げないとですね!」
「ロフル。頑張れ」
二人は期待の眼差しでこちらをじっと見た。
「問答無用で俺が一緒に行く感じなのね……まぁ俺も6になりたいし、頑張るよ!」
「では早速向かいましょう! 良い場所を知っているのです!」
フーチェは興奮気味に言った。
そうして俺達3人は、旅立つ準備を整え、早速出発した。
・・・
・・
・
ひたすらに真っ直ぐと進む。方角的には西方向になる。
相変わらず森が続いており、時折出現する魔物はデッドマンティス、スライムボール、レッドアントなど見慣れた魔物達である。
良い場所ってどこなのだろうか。
経験値が多い魔物みたいなのがいるのか……?
「ここから入る場所を探します!」
「入る……?」
彼女の言葉に、俺は疑問に思った。
すると、突然フーチェは足を止めた。
入ると言うが洞窟みたいなものはないし、目の前はひたすら森が続いているだけだ。
何処に入ると言うのだろうか。
「ロフル、手を伸ばしてみて」
マグはそういって俺の手を取った。
「え? ……おお?!」
なんと目の前には、気がつかない程にクリアな透明な壁があったのだ。
「壁だ……ずっと続いているのか」
「この最下層は区画毎にこの壁で仕切られているのです」
フーチェが説明した。
「区画……?」
俺は疑問を抱いた。
「そうです。最下層は区画で分かれており、それぞれの区画は基本的に行き来できません」
「そうなのか。まずいな……助けたい人が別の区画になったら助けられない……!」
俺はつい苦悶の表情を浮かべた。
兄妹を助けるためにレベルを上げているのに、区画が異なると助けに行けなくなる可能性がある。
さらに、1区画の規模も相当なものであり、別の区画に転送されると捜索は困難だ。
すると、マグは俺の肩をぽんと叩いて質問をしてきた。
「助けたい人は同じ村の人?」
「マグ……そうだ。いずれここに来てしまう妹と弟を助けたい……!」
そう言うと、マグは自分の胸を叩き、
「大丈夫。同じ村なら同じような場所に落ちてくる。区画が変わる事は無い」
と力強く言った。
「そうなのか……!」
「多少の誤差はあるけど自分が転送された場所付近を探せば見つかるはず」
「そうか、よかった……!」
俺は安堵した。とは言え、すぐに見つけて助けなければ魔物に喰われてしまうのは同じだ。
しっかりしないとな。
・・・
透明の壁についてから、そこを沿ってずっと移動している。
一体何があると言うのだろうか。
そんな事を思っていると、フーチェがピタッと止まった。
「ありました。ここです」
そう言いながらフーチェは透明の壁を軽く叩いた。
「あれ……? 鏡?」
フーチェの場所に立つと、3人の姿が映し出された。
「実はこの壁、全部鏡なんです」
「え? でもここ以外は俺達の姿は……」
「不思議ですよね。私も、なんでこうなっているのかは分かりません」
フーチェの言葉に従い、俺は周囲の鏡の配置を注意深く観察した。すると、自分の後ろと全く同じ木が目の前に映っていることに気づいた。
「不思議だ……どういう原理だろう」
「とにかく、私に近づいてください」
俺は言われるがままにフーチェの隣に立った。
「ロフルさん、私の目は見ないで下さいね。下位掌握をします」
「え? 分かった……」
そう言われ俺は足元に目線をやった。
「では行きます。下位掌握」
すると自分たちが写っていた鏡部分はすーっと消え去り、通路が現れた。
「30秒ほどで元の鏡に戻ります。急いでください」
「お、おう!」
そうして急いで3人で通路を移動した。
・・・
「なんだここ……?」
「ロフルさん、ここでは絶対にエンハンスは解除してはいけません」
フーチェは俺に警告し、そのまま話続けた。
「ここは[廃棄された区画、熱波の森]……エンハンスを解除した瞬間、身体中が火傷になるほど熱い場所」
「まじか……むしろエンハンスに温熱遮断効果があったとは……」
「寒すぎる場所にも効果がありますよ!」
「必須だな……エンハンス」
雰囲気は先ほど居た森とは大きく異なっていた。
真っ赤な木々が広がり、遠くを見ると蜃気楼が見える。
基本的には黄土色の岩と砂ばかりの場所だ。
「ここに出現する、フレイムロックという炎を纏ったゴーレムが経験値稼ぎに良いのです」
「ほー。強そうな名前だな」
今まで昆虫系ばかりだったが遂に、ゴーレムとか出現し始めたか。
区画を回れば色々な魔物に出会えるのかもしれないな。
「多分、攻撃に当たってしまえば本当にやばいです。とてつもなく硬いですから……」
「ただ、動きは鈍い。ブラスト当て放題」
「なるほど、じゃぁブラストメインで戦えばいいんだな」
「その通りです。じゃぁ早速探しましょう。すぐに見つかると思いますが……」
フーチェの言った通り、フレイムロックはすぐに見つかった。
――ゴォン……ゴォン……
「想像よりかなりでかい……」
フレイムロックは火だるまのように燃えており8メートルほどの巨大な大きさである。
どのくらいの硬さだろうか。
ブラストでは無く、一度肌で経験しておきたいな。
「よし、手伝うから行くよ」
マグがそう言って戦闘態勢になったが、俺はそれを抑止した。
「ありがとう! でも一回、俺一人で行かせてくれ!」
「危ないですよ! 動きが遅いと言っても、攻撃の範囲、威力はとてつもないです!」
「大丈夫! 見ていてくれ!」
そう言って俺は8メートルの巨体に向かって走り飛び上がった。
脚部からトントンとジャンプし、すんなりと頭部と思われる場所には登る事が出来た。
「全力で行く!」
俺は右足の出力を2にし、くるっと回転しながら踵落としをした。
――ダン!
すると、頭部は粉砕さればらばらに砕け散った。
――ズゥン……
そのままフレイムロックは瓦礫と化した。
「何とか破壊できるな……!」
「凄い! ロフルさん!」
「む、マグと同じ動き!」
「ああ、参考にさせてもらったんだ。出力2で蹴ってみたぜ!」
「羨ましい威力ですね……」
「この調子でドンドン倒そう」
「おう!」
そうして、順調にフレイムロックを探しては討伐を行い、
気がつけば辺りは暗くなっていた。
「暗くなってしまったな……どうする?」
「ええ、私達が来た時に使った祭壇で休みましょう」
「ここにも祭壇があるのか!」
「ありますよ! 構造的には神輪の祭壇と同じ感じですよ」
「よし、じゃぁ早速そこで休憩しよう。いっぱい倒したからへとへとだ……」
そうして俺達は祭壇を目指し走り始めた。
15分程走ると、祭壇が見えた。
フーチェの言った通り、神輪の祭壇と同じように、大きな切り株があり中央部はは入れるようになっている。
ただ、切り株は焼け焦げており黒くなっていた。
中に入ると、青い岩に囲まれた空間、中央には台座などが設置されており、俺がいつもいる祭壇と全く同じ形をしている。
「ここまで全く一緒になるか……?」
周囲を見渡しながら観察していると、
「ロフル! 今レベルいくつか見よう」
と、マグが後ろから話しかけて来た。
「あ、そうだな。ここでも見れるなんて便利だな」
そうして俺は祭壇へと向かい、早速手を突っ込んでみた。
「いっぱい上がっていればいいんだが……」
「あれだけ倒したんですし、もう5.99かも知れませんね!」
そう言いながら3人で石板を注視する。
――
・・・
・・・
・・・
・・・・・・err
――
「え……?」
エラーと表示された石板を見て俺の頭はぐるぐると思考した。
あの表記をみて思ったのは、これは人工物なのか? という事……
何よりも……"err"という文字……
何故この世界に英語があるんだ……?
これが何よりも疑問だった。
だが、それよりも驚いた事がすぐに起こった。
「イー、アール、アール……どういう意味でしょうね?」
何とフーチェが英語を普通に解読できているのだ。
「え!? フーチェ、この文字読めるの?」
「え? 授業で習いますからね。英語ですよ」
「英語……」
言語の名称まで同じ……どういう事だ?
ここは異世界……だろ?
「神徒は3つの言語を習いますよ。"英語"と"日本語"、そして普段使う"外来新語"です!」
「に、日本語もかよ……」
普段話しているこの言語の名前……外来新語って言うのか。
だが……言語名に少し違和感がある。
自分の国の名前に外来って単語を付けるか……?
外から来た言葉とかに普通使うよな?
一体……誰がこの言語の名前を考えたのだろうか。
「んー。考えても仕方がないか……とにかくこの祭壇は壊れてるみたいだから、明日しっかり狩りをして帰ってから確認しよう」
「何を考えてたんですか?」
フーチェは顔を寄せて聞いてきた。
言っても分からない様な事なので、とりあえずはぐらかす事にした……。
「いや、よく考えたら何も考えてなかったよ」
「いやそれどういう事ですか!」
「あはは、とにかくもう寝よう。明日も宜しくな」
そういって俺は祭壇内で就寝した。
・・・
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異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
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異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
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欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
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