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第二章 旅立ち準備編

19話 最後の試練

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――場所 ???

「大天使様、既に結論は出ていますよね? フィアンとネビア、十分に覚醒できる素質があります」

 女神は大きな書籍を読む大天使にそう言った。

「そうじゃな。天族では無いにも関わらず、並の天族以上の能力は備えておる」
「なら今すぐにでも覚醒の儀を!」

 そう言う女神を大天使は抑止した。

「いや、彼らには最後してもらわねばならぬことがある。最後の試練じゃ」
「最後の試練……?」
「詳細は彼らの前で話そう。さて、呼ぶ準備をしてくれ」
「分かりました……」

 女神は不信感のような気持ちをぬぐい切れぬまま、フィアンとネビアを呼ぶ準備をし始めた。

・・・
・・


――アルネと別れてから約6年後……
――フィアン、ネビア共に13歳

 6年を超える年月は俺達にとって長く、充実したものだった。
 光纏も完全に習得し、それを活用した剣術もいくつか編み出す事が出来た。

 ネビアも同様に成長し、闇の魔法をいくつも習得している。

 俺が持っているこのシャドウノヴァも、最初は身体のサイズに合っていなかったが、今は身長が伸びたおかげでしっくりと来るサイズになっている。

「なぁネビア……もうじき試練の内容来るかな?」
「昨日13歳になったばかりですよ? まだ少し掛かるんじゃないですか」
「早く教えて欲しいもんだな」

 ネビアとそんな会話をしていると、突然視界が暗転した。

「お二人とも大きくなりましたね」

 目を開けると、6年ぶりの女神様の場所だった。

「最後に会った時よりさらに成長しておるのう。闘気と魔力に磨きがかかっておる」

 女神の横には大天使もいた。

「よかった。このまま呼ばれないかと思って心配してたんだ」

 俺は安堵しながらそう言った。

「では、早速じゃが、最後の試練を伝えよう。これを達成すればお主たちも天族になれるぞ!」

 大天使にそう言われ、俺とネビアは顔を見合わせ喜んだ。

「最後の試練は……堕天使レッドを倒せ……じゃ」

 すると、女神の表情が一気に青ざめ、

「大天使様!? それは無茶です。天族が返り討ちにあってるんですよ!」

 と大天使に言った。

「その人はどこに居るんですか?」

 ネビアは冷静な表情でそう質問した。

「だめよ! 堕天使レッド……数多くの天族を殺し、大罪の堕天使と呼ばれるA級犯罪者よ! せめて天族に覚醒してから……」

 女神様はキャラを忘れ、大天使に必死に抗議していた。

「サクエル! それ以上は機密事項じゃ」

 大天使は大きめの声で女神様ことサクエルに言った。
 すると、サクエルは小さな声で返事をして押し黙った。

 正直、俺達は天族に覚醒してからという言葉に引っかかっていた。
 試練をクリアしないと覚醒は出来ないんだよな……?

「さて、軽く説明しよう」

 大天使は何事も無かったかのように大天使レッドについて話始めた。

 堕天使レッド
 彼は剣と魔の学園で5年程前に亡くなった前理事長に代わり、理事長をしている。
 天族内で指名手配をされていた為、討伐の為直ちに発見後は天族を送った。
 しかし討伐は失敗に終わり、それ以降は天族を警戒し姿を現さなくなってしまった。
 
「レッドは優秀な人材を引き抜き、仲間にしている情報もある。天族の場合警戒するが……ヒト族である君達であれば懐に潜り込めるやもしれぬ」

 話は進んでいくが……学園も気になるし堕天使ってゼブと同じ状態の天族って事か……。
 気になる事が多いな。アルネさんが帰ってきた時に聞いてみようか。

「さて、詳しくは女神様から説明がある。後は任せたぞ?」

 大天使はそう言ってその場から消えた。
 そして、女神様ことサクエルは頷き俺達の前へ出た。

「二人とも、真っ向から勝負をすれば勝ち目はありません。大天使様が仰ったように、仲間のふりをして近づくのです」
「わかりました……しかし、レッドは殺す程の罪を犯しているのですか?」

 サクエルにそう聞くと頷き、レッドのして来たことを語った。

 天族を沢山殺し、一度は捕まり堕天使にされたが他の堕天使と共に脱走し、行方をくらましていた。
 どういった経緯かわからないが学園の理事長になっており、学園の資金を自身に横流ししている可能性もある。

 また、レッドが理事長になってから副理事長に貴族の者が選出されたが、それ以来貴族優遇が露骨にされるようになってしまった。

 本来の学園は種族や階級は関係なく、魔法と剣術の強さでお互いを高めあう場所である。
 だが、それもレッドのせいで歪みつつある。

「学園……そんなものがあるなんて知らなかったけど、とにかく学園で目立ってレッドに勧誘されて倒せって事だな!」
「簡単に言うとそういう事です。方法は任せますが、やはり学園に入るのが一番かと思います」

 サクエルはずっと心配そうな表情をしている。

「女神様、大丈夫だよ。シャドウナイトの時みたいにしっかり倒して見せるよ」
「そんな簡単じゃないのよ! 本当に危険人物なんだから……! 十分に気を付けて」
「てか、女神様今日話し方が違うね……!」

 サクエルにそういうと少しだけ顔を赤らめ、小さな声で

「レッドの名前が出てびっくりして忘れてたのよ。もう今日はあの感じで話す気になれないわ……」

 と言い、コホンと咳払いをした後、

「とにかく! 一応試練だから、学園の場所や入り方は自分で調べる事! 健闘を祈ります」

 そうして俺達は光に包まれ、意識が遠のいた……。

・・・
・・


――翌朝

 俺とネビアは今後の動きについて相談していた。
 アルネがいつ帰ってくるか分からないが、それまでにやっておきたい事がいくつかある。

 学園はどうやら中央都市という場所にあり、ここから馬で8カ月から1年程かかる場所にあるらしい。

 でも、行かないと言う選択肢はない。
 俺達は学園に入学する為に、アルネと共に旅に出たい。
 それを両親に伝えようと思う。

 そして、アルネの小屋があるダンジョンをもう少し探索して魂片を集め、路銀をある程度稼いでおこうと思う。
 シャドウナイトを倒した後でもシャドウは少量であるが出現するらしい。

 どちらにしてもまずは両親の許可が必要だ……。
 流石に勝手に行く訳にはいかない。

 俺とネビアは二人で頑張ろうと拳を合わせた。

 そして、朝食がテーブルに並び、ある程度落ち着いた時を見計らって俺は意を決して口を開いた。

「父さん、母さん、試練の内容が分かったんだ。それを達成するために中央都市の学園に行かないといけない」

 俺がそう話始めると、両親は真剣な表情でこちらを見ていた。

「だから、今度帰ってくるアルネさんと共に中央都市へ行きたい!」

 そう言うと、ティタが身を乗り出し、

「何を言っているの、13歳なんてまだまだ子供でしょ! 中央都市は遠いしそこで生活しなきゃならなくなるわ……」

 と声を上げた。
 ゼブはそれをなだめつつ、

「父さん達ではもう教えられることがない。いつかは学園へは行くべきだとは思っていたよ」
「ゼブ! 何を言ってるの!」

 それから俺とネビアで懇願するもティタがなかなか折れてくれない。
 ゼブはそれを見かねて、

「ティタ、二人に卒業試験をやってあげよう。僕たちと勝負して勝てる実力があれば道中も大丈夫なはずさ」

 ティアは少し頭を悩ませた後、

「……わかったわ。全力で戦うわよ!」

 と元気よく言った。

「よし、二人ともさっそく裏庭へ行こう」

 言われるがままに俺とネビアはゼブの後を追った。
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