異世界に転生したら俺が二人になってた。[新生版]

TOYA

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第一章 幼少〜少年編

7話 ゼブ達のダンジョン攻略

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――森のダンジョン前 ゼブパーティ

「よし、しっかりとついてくるんだぞ!」

 モトゥルはそう言って先陣を切り、洞窟のダンジョン内へと進んでいった。

「瘴気が濃いな……村の人達は近づく事すらできないだろうな」

 ゼブ達の住む村があるのは瘴気の森と言われる場所で、常に瘴気が漂っている森である。
 近年その濃度が非常に濃くなっており、生活に大きな支障をきたす程になってしまっていた。
 その原因の多くは近くでダンジョンが発生した場合であり、今回もその可能性を考えここへきている。

 瘴気が濃い場合、練度の高い[魔装魂]を纏っていなければ体調が悪くなるどころか死に至らしめる可能性がある。
 村人は殆ど訓練などしていない一般人であり、ゼブの貼った[浄化の光]の線より外には出る事が難しい状況である。

「四人でダンジョン攻略なんて本当に久しぶりね!」

 ティタは嬉しそうにそう話す。

「ティタ達が試練を合格してからは一度も会えなかったもんね……」
「ごめんよカレナ。ちょっと色々あってね……天上要塞から帰れなかったんだ」
「ま、結局こうやって降りてきたけどね!」

 ティタはカレナを撫でながら言った。

「お前さんたち、シャドウの気配がするぞ。武器を構えてくれい」

 モトゥルの一言で全員はさっと臨戦態勢となった。

「この大きさ……ハイシャドウじゃ」

 前方に5m程のサイズのシャドウが出現した。
 サイズ5mを越えるとハイシャドウと呼ばれ、通常のシャドウより上位の種類に分類される。

「よし、わしが削るぞ」
「わかった」

 モトゥルがハイシャドウの方へ飛び出し、コア付近を斧で切りつけた。
 すると、コア周辺の黒い瘴気が剥がれ、むき出し状態となった。

「ゼブ!」
「ああ、任せて」

(ゼブ)――触媒紙:アイススピア

 ゼブはそう言って触媒紙を取り出し、コアに向かって[アイススピア]を放った。

――バリンッ!

 コアは大きな音を出して砕け、ハイシャドウは消滅した。

「まだまだ入り口なのに、ハイシャドウが出るなんて……」
「中々厳しそうなダンジョンね」

 ティタとカレナはそう言って気を引き締めた。

「周囲の瘴気が少し薄くなったね。[浄化の光]をしておこう」

 ゼブはそう言って[浄化の光]の触媒紙を取り出しその場に設置した。
 瘴気が濃すぎる場合、浄化の光が負けて発動しない。(魔法の練度にもよるが)
 だが、ある程度薄くなっている場合は大体発動する事が可能で、一定の範囲の瘴気を払う事が出来る。
 周囲の瘴気の濃度にもよるが、大体5日間程は効果は持続する。

 ダンジョン攻略時には、こういった形で浄化エリアを作りながら進んでいくのが定石である。
 ゼブ達はその要領で、順調に奥へと進んでいく。

「迷路みたいな構造だと思ったけど、ずっと一本道だのう」
「迷わなくて済む。良い事なのです」

 このダンジョンはまるでトンネルの様に一本道である。
 だが、幅が20m以上あるので周囲の警戒は怠れない。

「前方からくるぞ」

 モトゥルがそう言った瞬間、コアとその周囲の瘴気が薄灰色で人型に近いシャドウが出現した。

「シャドウウォーカーの薄灰色……ランク[B-]ってとこかのう」
「モトゥル! 少し耐えてくれ!」

 ゼブの声にモトゥルは任せろと大声で言った。
 そして、ゼブは直ちに触媒紙を取り出し、魔法陣に前方へ移動させる命令と3秒後に発動する命令を描き加え発動させた。

 すると、魔法陣はその場で生成された後、ウォーカーに真っ直ぐ向かっていった。
 そしてウォーカーの足元あたりで、[アイススパイク]が丁度発動した。

 氷上級魔法[アイススパイク]
 無数の氷の刃を魔法陣から出現させる。

 魔法陣から出現した無数の氷の刃がシャドウウォーカーに突き刺さった。
 しかし、まだウォーカーは消滅していない。

「任せて!」

 そう言ってティタが飛び出した。
 そして、柔型上級剣術[魔装・剣舞六連]を放った。

 柔型上級剣術[魔装・剣舞六連]
 閃光脚とブーストスラッシュを組み合わせた剣術で
 閃光脚で敵の周りを高速移動しながら体を回転し6回全方位から斬りつける。

 回転による速度は切りつけるごとに加速し、非常に強力な攻撃である。
 その攻撃はまるでダンスを踊っているように美しく、ゼブがティタに惚れた要因の一つである……。

 ウォーカーはその攻撃で切り刻まれ、見事に粉砕された。

「よし、倒したわね!」

 そういうティタの腕には少し切り傷が出来ていた。
 カレナはすぐにそれに気がつき、

「ティタ、怪我をしてる」

 と言いながら[ヒーリングライト]を唱えた。
 すると、ティタの傷はするに完治した。

「ありがとうカレナ! さて、一瞬休憩ね……」

ティタがそう言って戦闘態勢を解いた瞬間、
天井部の濃い瘴気から2体のシャドウウォーカーが現れ奇襲を仕掛けてきた。

「危ねぇ!」

 モトゥルがすぐさま察知し前に出て、攻撃を受けた。

「ぐっ!!」

 1体の攻撃はシールドで防ぐことに成功したが、もう1体のウォーカーの攻撃は被弾してしまった。

(カレナ)――ヒーリングライト!

 カレナはすぐにモトゥルの被弾箇所への治癒を行った。
 その間、ゼブは既に二枚の触媒紙を取り出し、[アイススパイク]に発動条件を描いていた。

(ゼブ)――触媒紙:アイススパイク×2

 魔法陣は2体の元へ上手く移動し、[アイススパイク]を発動させた。
 しかし、1体に少し掠った程度で、ほぼ回避されてしまった。

「まずいぞ。濃い黄色と青色のウォーカーじゃ!」

 ティタは瞬時に濃い黄色のウォーカーの前に立ちはだかり、
 モトゥルは直ちに盾に闘気を込め、青色ウォーカーに
 守型見習い級剣術[シールドバッシュ]を繰り出した。
 その強打で怯んでいる内に、ゼブはもう一度2枚の触媒紙で[アイススパイク]を発動させた。

「ティタ、モトゥルとスイッチ! 青色を頼む!」

 ティタは分かったと言い、目の前の濃い黄色のウォーカーに[魔装・一閃]を放った。
 そして、その攻撃に怯んだ隙にモトゥルと場所を交代した。
 それと同時にカレナは火中級魔法[エンチャントファイヤ]でティタの剣に炎を付与させた。
 
「カレナありがとうッ!」

 ティタは閃光脚で一気に青色ウォーカーに詰め寄り、
 [魔装・一閃]を繰り出した。

――ズシャァッ! ボンッ!

 炎の音と蒸発する様な音が鳴り響き、ウォーカーは爆発するように消滅した。

「よし、まずは1体よ!」

 ティタは態勢を整えながらそう言った。

「後は弱い方だけじゃ!」

 それを見たモトゥルは濃い黄色ウォーカーと対峙しながら声を上げた。

「モトゥル少し下がってくれ!」

 ゼブがそう言うと、モトゥルは一気に後退、そのタイミングでウォーカーに[アイススパイク]を着弾させた。

「良い精度ね! ゼブ!」

 ティタはそう言って後方から詰め寄り、ウォーカーに[魔装・一閃]を放った。

「ティタも美しい戦士のままだよ」

 ゼブは呟くように言った。
 そして、ウォーカーは見事に消滅し、2体の討伐に成功した。

「浄化の光、設置できたよ」

 ゼブがそういうと、全員はその場で腰を下ろした。

「ふいー! 中々の激戦じゃったな!」
「前衛お疲れ。濃い黄色ランク[B]と青色ランク[A-]のシャドウ相手にうまく立ち回れたと思うよ」

 モトゥルとゼブは拳でタッチした。

「まだ序盤です……もうこんなランクのシャドウが出るなんて……」

 カレナは各自に[ヒーリングライト]をしながら言った。

「そうね。どっちにしても今日はここまでね」

 ティタは自身の刃がボロボロになった剣を見ながらそう言った。

「そうじゃな。わしの盾もほれ。この通りじゃ」

 モトゥルも欠けてしまった盾をゼブに見せた。

「そうだね。今日は一旦引き上げよう」

 そう言ってゼブは立ち上がった。

「予想より強いシャドウが居そうね。次入る時は装備と道具をもっと揃えなきゃ」
「そうだね。今回かなり魂片が手に入った。ここから装備を整えるで良いかな?」

 ゼブがそういうと、皆は同意するように頷いた。
 そして今回の探索は終了し、一旦帰還する事となった、

 魂片とはシャドウを倒す際に出てくる欠片の事である。
 これはそのまま通貨として利用されている価値のある物なのだが、
 現時点ではフィアンとネビアはその事実を知らない……。

・・・
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