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第一章 青き誓い
10、十戒、その身に帯びて(5)
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グレイズの言葉は、いつもよりもくっきりとして聞こえた。
「きっとマルーは恐ろしく、心細い思いをしているに違いない。だから!」
グレイズの力強い声に、騎士たちの漕ぐ手が一瞬止まる。
「一刻も早く、助けてやりたいんだ! そのためならば、私はなんでもする!」
決然とした王子の言葉にセルゲイは息を飲んだ。
そして、心ごと腕が震えて、なぜだか急に目頭が熱くなった。
その時、小舟の推進力が上がった。
仲間たちも同じだったのだろう。振り向き、顔を見合わせずともわかる。
グレイズの心から溢れ出した純朴で優しく清い決意が、騎士たちの心を奮い立たせたのだ。
***
「舟だ!」
「誰でもいいから、助けて!」
サフィーラ島の西岸に乗り付けると、甲冑姿のセルゲイたちは思わぬ歓迎を受けた。
島民が着の身着のままで一斉に波止場へと押し寄せて、各々の船に乗り込んでいったのだ。
セルゲイたちが乗ってきた小舟も、ある一家にたちまち奪われてしまった。
「敵ではないようだが、これは……?」
大将であるグレイズが神経質そうに訪ねてくるが、セルゲイはすぐ答えを用意できない。
島唯一の村ラ・ウィーマに煙が上がっているのも見えた。
これも演技、筋書なのか? 村人を巻き込む話など聞いていない。ましてや追い詰めるなど。
打ち合わせを遥かに超えた予想外の展開に頭が真っ白になる。
「ドーガスさん!」
「状況は!」
ドーガス――もっとも経験ある指揮官が吠えた。セルゲイに遅れてやってきた副将の顔も青ざめている。つまり、本当に不測の事態である。
「ラ・ウィーマ村が燃えて、住民が自主避難しているようです! 聞くと、ルジアダズ海賊団に襲われたとのこと。出会う者から救助を要請されています」
騎士の一人が答えると、ドーガスは頷いた。
「わかった。まずはペデスタル城へ! 王太子妃殿下の救出を優先!」
「ドーガス卿! 島民の命も救うべきだ!」
その時、声と敬礼を揃えた騎士の中から、異論を唱える声があった。
同時に騎士たちが手にしていた松明が一際赤く燃え上がり、その男の顔を照らし出した。
なんとグレイズだった。珍しく背筋をぴんと伸ばした彼は果敢に噛みついている。
「我々は正義成す騎士だ。乞われたのなら救おう。それが騎士道ではないか」
反対に、副将の顔は青ざめていた。それでもなおドーガスは落ち着き払っていた。
「仰る通りです。しかし殿下、それではマルティータ様が――」
「マルーがいるというその城には私が向かう」
と、きっぱり言い放ち、王子は集まった全員を見回した。
「元よりこの島を占拠していた海賊の討伐が私たちの任務だろう。ここは二手に別れて一気に討とう」
「きっとマルーは恐ろしく、心細い思いをしているに違いない。だから!」
グレイズの力強い声に、騎士たちの漕ぐ手が一瞬止まる。
「一刻も早く、助けてやりたいんだ! そのためならば、私はなんでもする!」
決然とした王子の言葉にセルゲイは息を飲んだ。
そして、心ごと腕が震えて、なぜだか急に目頭が熱くなった。
その時、小舟の推進力が上がった。
仲間たちも同じだったのだろう。振り向き、顔を見合わせずともわかる。
グレイズの心から溢れ出した純朴で優しく清い決意が、騎士たちの心を奮い立たせたのだ。
***
「舟だ!」
「誰でもいいから、助けて!」
サフィーラ島の西岸に乗り付けると、甲冑姿のセルゲイたちは思わぬ歓迎を受けた。
島民が着の身着のままで一斉に波止場へと押し寄せて、各々の船に乗り込んでいったのだ。
セルゲイたちが乗ってきた小舟も、ある一家にたちまち奪われてしまった。
「敵ではないようだが、これは……?」
大将であるグレイズが神経質そうに訪ねてくるが、セルゲイはすぐ答えを用意できない。
島唯一の村ラ・ウィーマに煙が上がっているのも見えた。
これも演技、筋書なのか? 村人を巻き込む話など聞いていない。ましてや追い詰めるなど。
打ち合わせを遥かに超えた予想外の展開に頭が真っ白になる。
「ドーガスさん!」
「状況は!」
ドーガス――もっとも経験ある指揮官が吠えた。セルゲイに遅れてやってきた副将の顔も青ざめている。つまり、本当に不測の事態である。
「ラ・ウィーマ村が燃えて、住民が自主避難しているようです! 聞くと、ルジアダズ海賊団に襲われたとのこと。出会う者から救助を要請されています」
騎士の一人が答えると、ドーガスは頷いた。
「わかった。まずはペデスタル城へ! 王太子妃殿下の救出を優先!」
「ドーガス卿! 島民の命も救うべきだ!」
その時、声と敬礼を揃えた騎士の中から、異論を唱える声があった。
同時に騎士たちが手にしていた松明が一際赤く燃え上がり、その男の顔を照らし出した。
なんとグレイズだった。珍しく背筋をぴんと伸ばした彼は果敢に噛みついている。
「我々は正義成す騎士だ。乞われたのなら救おう。それが騎士道ではないか」
反対に、副将の顔は青ざめていた。それでもなおドーガスは落ち着き払っていた。
「仰る通りです。しかし殿下、それではマルティータ様が――」
「マルーがいるというその城には私が向かう」
と、きっぱり言い放ち、王子は集まった全員を見回した。
「元よりこの島を占拠していた海賊の討伐が私たちの任務だろう。ここは二手に別れて一気に討とう」
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