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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
196-3.馬鹿と天才
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「それじゃあ、アタシは戻る。この後の仕事もあるからな」
「ええ」
彼女の言う仕事は今晩行われる民間オークションの潜入の事だろう。
この先も予定があるヘマをあまり引き留める訳にもいかない為、クリスティーナは一つ頷いて彼女を見送る事とした。
「それじゃあまた」
「おう」
「お気をつけて」
リオとエリアスの声に頷きを返してからヘマはその場を立ち去る。
遠ざかる背中を見送りながら、クリスティーナは考える事の多い現状に深く息を吐いた。
***
縄が解かれ、地面へと落ちる音が路地裏に響く。
「助かった」
「いいえ」
そう呟いたのはエリアス達に叩きのめされた魔導師の一人だった。
その拘束を解きながら兵は首を横に振る。
「しかし、事は思い通りに運んでいない様ですね」
「ああ。ここが街中であり、あくまで相手の保護が目的である以上、考えなしに魔法を使うことは出来ない。……かと言って加減したまま通用する相手でもないことはこの最近の出来事で痛感した。協力者も実力者揃いとなれば……」
拘束されていた他の者達の縄も次々と解かれていく中、魔導師は深く息を吐く。
「――他の手段を考えなければ」
あまりこの手は使いたくなかったが、と重々しく呟かれる。
暗く重い面持ちの魔導師を見ながら兵の一人が真剣な面持ちで口を挟む。
「彼が街中を騒がせ、領主様の手を煩わせているのは事実です。皆場の収拾を望んでいますから、国家魔導師様方のお力を得られたのはとても喜ばしく思っているんですよ」
「私達は彼を保護しろという国の命を受け、その協力を閣下へ申し出ただけだが……。結果として双方の利益になる事であった様で何よりだ。これ以上騒動が広がらない為にも一刻も早く彼を連れ帰らなければな」
「ええ」
多少手荒な真似を用いているとは言えあくまで保護が目的。そう呟く魔導師の姿を視界に捉えながら、兵は目を細めて微笑む。
「きっと領主様もお喜びになるはずです。よろしくお願いしますよ」
街の治安を守る為配備された兵。その大本を辿れば領主へ辿り着くのは必然だ。
ニュイの領主、ジョゼフ・ド・オリオールの息が掛かった兵。彼らが浮かべる微笑の裏には『遊翼の怪盗』へと向けられた仄暗い思想が見え隠れしていた。
「ええ」
彼女の言う仕事は今晩行われる民間オークションの潜入の事だろう。
この先も予定があるヘマをあまり引き留める訳にもいかない為、クリスティーナは一つ頷いて彼女を見送る事とした。
「それじゃあまた」
「おう」
「お気をつけて」
リオとエリアスの声に頷きを返してからヘマはその場を立ち去る。
遠ざかる背中を見送りながら、クリスティーナは考える事の多い現状に深く息を吐いた。
***
縄が解かれ、地面へと落ちる音が路地裏に響く。
「助かった」
「いいえ」
そう呟いたのはエリアス達に叩きのめされた魔導師の一人だった。
その拘束を解きながら兵は首を横に振る。
「しかし、事は思い通りに運んでいない様ですね」
「ああ。ここが街中であり、あくまで相手の保護が目的である以上、考えなしに魔法を使うことは出来ない。……かと言って加減したまま通用する相手でもないことはこの最近の出来事で痛感した。協力者も実力者揃いとなれば……」
拘束されていた他の者達の縄も次々と解かれていく中、魔導師は深く息を吐く。
「――他の手段を考えなければ」
あまりこの手は使いたくなかったが、と重々しく呟かれる。
暗く重い面持ちの魔導師を見ながら兵の一人が真剣な面持ちで口を挟む。
「彼が街中を騒がせ、領主様の手を煩わせているのは事実です。皆場の収拾を望んでいますから、国家魔導師様方のお力を得られたのはとても喜ばしく思っているんですよ」
「私達は彼を保護しろという国の命を受け、その協力を閣下へ申し出ただけだが……。結果として双方の利益になる事であった様で何よりだ。これ以上騒動が広がらない為にも一刻も早く彼を連れ帰らなければな」
「ええ」
多少手荒な真似を用いているとは言えあくまで保護が目的。そう呟く魔導師の姿を視界に捉えながら、兵は目を細めて微笑む。
「きっと領主様もお喜びになるはずです。よろしくお願いしますよ」
街の治安を守る為配備された兵。その大本を辿れば領主へ辿り着くのは必然だ。
ニュイの領主、ジョゼフ・ド・オリオールの息が掛かった兵。彼らが浮かべる微笑の裏には『遊翼の怪盗』へと向けられた仄暗い思想が見え隠れしていた。
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