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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

196-2.馬鹿と天才

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 現在取締局が最も警戒しているのがジョゼフの所有する古代魔導具だ。
 それに関わるクリスティーナ達との連絡手段を断つことは好ましくない。本来であればこの場で地図でも描いて拠点の場所を共有したいところではあったが、そうすることが出来ない理由がヘマにはあった。

「しかし情報漏洩を避ける為、詳細な場所を紙に残して教えることも出来ない。代わりにニコラに至急新しい拠点を案内するよう伝えておく。緊急時、アタシ達に連絡をしたい時に拠点の場所がわからないと不便だろうからな」
「わかったわ」
「それと、ジルベールに会うことがあればこの事を伝えておいて欲しい。近い内に会う約束をしていたはずだから、早い所この事を伝えなければ入れ違いになってしまうかもしれない」
「……確かにそうね。わかったわ」

 ジルベールもジョゼフの古代魔導具の捜査に協力している上、オリオール邸の関係者という情報を得やすい重要な立場にある。
 更にジョゼフから目を付けられた可能性の高い彼は出来る限り早くオリオール邸を離れなければならない。彼が拠点についての共有をされる前にオリオール邸を離れてしまえば拠点の位置を知らない彼も、彼の居場所を把握できない取締局側も連絡が困難となってしまうだろう。

 彼がオリオール邸にいる内にこの事実だけでも伝えておく必要があるとクリスティーナ達は感じていた。

「こちらもニコラが数日のうちに伝えに行くつもりではあるが、報告は早いに越したこともないだろうからな」
「そうね」

 クリスティーナ達はあくまでシャルロットの友人という立場でしかオリオール邸の敷地を跨ぐことが出来ない。その為、例え連絡なしの訪問を許されている身だとしても夜間に訪問する事は無礼であり、不自然さを与えやすい。
 また、クリスティーナ達は一度ジョゼフが最も警戒する部屋へ接近した所を目撃されている。ジョゼフの在宅とクリスティーナ達の訪問時間が被った場合、彼が何かしてこないとも限らない。

(彼が向かうというのならそれが一番安全且つ手っ取り早い気はするのだけれど……)

 入口を無視して侵入できるオリヴィエであればシャルロットを通じてジルベールに会うことも出来るだろう。彼ならば時間帯を気にせず、ジョゼフの目を盗んで接触をすることが出来る。
 ならばそれが一番良い選択だとは思う一方で、もし見舞い等で近々オリオール邸へ向かう事があれば覚えておこうとクリスティーナは考えた。

 兎にも角にも、今の時間帯を考えればオリオール邸へ行きたくとも行けないというのが現実だ。これ以上難しく考えても行動に移せるのは明日以降。
 ならば一度置いておこうとクリスティーナは明日以降の身の振り方を一旦保留とすることにした。
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