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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

157-4.別行動

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 そこへディオンが手を一つ打つ。
 長々と続けた話を一度切り上げるべく間を作ってから彼はここまでの話を要約した。

「……ま、そういう事だから、お嬢ちゃん達がオリオール邸について調べてくれている間、オレ達は失踪前のエドワールの動きと失踪した先を特定しなければならないって訳だ。手を貸してやれなくてすまないな」
「貴方の話は理解したし、問題もないわ」
「ならよかった。改めてよろしく頼むぜ」

 立場を鑑みても、館の関係者であるジルベールとシャルロットの友人という立場で館を訪問できるクリスティーナ達がオリオール邸の調査に向いていることは明らかだ。
 更にクリスティーナには古代魔導具の脅威を見抜く力も備わっている。ディオン達が下手に手を出すよりも穏便に、そして迅速に調査を終えることが出来るはずだ。

 その事情はクリスティーナにも察しが付いたし、それに加えて並行させなければならない仕事が積まれていることを知れば不満を抱けるわけもない。

 その旨を伝えればディオンは安心したと頷いて見せた。

「調査の具体的な日時はそちらで決めてくれて構わない。出来るだけ早い方が助かりはするが、焦るあまり館の奴らに警戒されれば意味がないから――」
「……いえ。明日にしましょう」

 ディオンが自身の見解を語るが、それはジルベールによって遮られた。
 クリスティーナ達、そしてディオンの視線が彼へと集中する。
 どこか重苦しい雰囲気を表情に乗せたジルベールは数秒程険しい顔で思い悩んでいたが、周囲が自身に注目していることに気付くと我に返った様に肩を揺らした。

「あ……! 申し訳ありません。クリス様方のご都合も考慮すべきでした」
「それは別に構わないわ。予定的にも問題はないし……。ただ、貴方の考えが聞きたいの」

 シャルロットの容態を考えれば早く事を進展させ、解決へ向かいたいという気持ちは理解できる。
 シャルロットの友人という立場であるとはいえ、クリスティーナ達は迷子を装って館を歩き回った直後だ。そのことに対しジョゼフが不審に思っている可能性があることを考えると、連日歩き回っている所を発見されれば、クリスティーナ達の思惑に感づいた彼から出入り禁止を言い渡される恐れもある。

 それはジルベールもわかっているはずである。
 にも拘らず最短の時間で行動へ出ることに固執する理由は何か。その考えをクリスティーナは知りたかった。

 ジルベールは困った様に眉を下げ、返答に悩むように視線を泳がせてから口を開いた。

「……今後私は旦那様の警戒対象に当たると判断した為です」
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