悪女と名高い聖女には従者の生首が良く似合う

千秋颯

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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

157-3.別行動

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 そこにあるのは一種の信頼と慈愛だ。
 彼の見せる意外な一面にクリスティーナは目を見張る。だが、その柔らかな表情はすぐに鳴りを潜め、彼は冗談っぽく意地の悪い笑みを見せた。

「ま、あいつにはお望み通り仕置きが必要だとして。一時的な関係だとしても今はお嬢ちゃん達もオレ達の仲間な訳だ。それに参加する必要がお嬢ちゃん達の中にあるってなら、仕事のついでってことで参加を許可しよう」

 エドワール宛ての招待状を受け取った時、クリスティーナ達はオークションへの参加を渋っていた。
 だが現在、ジョゼフを逮捕することがシャルロットの容態を安定させることに繋がるのであれば、その為のきっかけを彼が主催するオークションで掴むことが出来るのであれば首を突っ込んでも良いのかもしれないとクリスティーナは考えていた。

「その招待状を使って熟すつもりだった仕事というのは勿論ある。だがその仕事を代わりに引き受けてくれるのであればオレにとってもお嬢ちゃん達にとっても損はないだろ?」

 当初の目的の達成とシャルロットの体を蝕む古代魔導具の解決。この二つを同時に達成できるのであれば多少のリスクには目を瞑るべきだ。
 故に、クリスティーナは自分達がジョゼフ・ド・オリオール主催のオークションに参加することを前提に進む話の流れに身を委ねることにした。

「仕事以外の時間は自由にしてくれて構わんしな。……あ、ただしオレ達の世話になる様な事だけはするなよ。お前達を捕まえるのは骨が折れそうだ」
「勿論よ」

 クリスティーナは小さく頷く。

 ディオンの言う『オレ達の世話になるような事』というのは違法である古代魔導具の売買を指すのだろう。
 クリスティーナ達の目的はリオの魔力を制御する魔導具の補強。それを可能とする魔導具の入手だが、それがもし違法な形で取り扱われているのであればわざわざ手を伸ばすつもりは毛頭ない。
 法を犯して悪目立ちするリスクを背負うことは避けたいし、何より古代魔導具の恐ろしさを知った今、いくつもの危険性を背負ってまでそれを使いたいとは思えない。

 自分達が目的としている魔導具をが古代魔導具であった場合、クリスティーナ達は潔く諦める事だろう。

 当たり前だと言いたげに返された反応。それを見たディオンは満足そうに笑みを深めた。

「とにかく、ニコラからエドワールの情報が洩れたという事はなさそうか。なら別の方向から尻尾を掴まれた説が濃厚だ。こちらのミスがきっかけではないとわかったところは安心したが……依然として、エドワールの身に何が起きたのかを知る必要はある。上手くいけばこちらから失踪した使用人の足取りが掴める可能性もあるしな」
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