454 / 579
第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
157-3.別行動
しおりを挟む
そこにあるのは一種の信頼と慈愛だ。
彼の見せる意外な一面にクリスティーナは目を見張る。だが、その柔らかな表情はすぐに鳴りを潜め、彼は冗談っぽく意地の悪い笑みを見せた。
「ま、あいつにはお望み通り仕置きが必要だとして。一時的な関係だとしても今はお嬢ちゃん達もオレ達の仲間な訳だ。それに参加する必要がお嬢ちゃん達の中にあるってなら、仕事のついでってことで参加を許可しよう」
エドワール宛ての招待状を受け取った時、クリスティーナ達はオークションへの参加を渋っていた。
だが現在、ジョゼフを逮捕することがシャルロットの容態を安定させることに繋がるのであれば、その為のきっかけを彼が主催するオークションで掴むことが出来るのであれば首を突っ込んでも良いのかもしれないとクリスティーナは考えていた。
「その招待状を使って熟すつもりだった仕事というのは勿論ある。だがその仕事を代わりに引き受けてくれるのであればオレにとってもお嬢ちゃん達にとっても損はないだろ?」
当初の目的の達成とシャルロットの体を蝕む古代魔導具の解決。この二つを同時に達成できるのであれば多少のリスクには目を瞑るべきだ。
故に、クリスティーナは自分達がジョゼフ・ド・オリオール主催のオークションに参加することを前提に進む話の流れに身を委ねることにした。
「仕事以外の時間は自由にしてくれて構わんしな。……あ、ただしオレ達の世話になる様な事だけはするなよ。お前達を捕まえるのは骨が折れそうだ」
「勿論よ」
クリスティーナは小さく頷く。
ディオンの言う『オレ達の世話になるような事』というのは違法である古代魔導具の売買を指すのだろう。
クリスティーナ達の目的はリオの魔力を制御する魔導具の補強。それを可能とする魔導具の入手だが、それがもし違法な形で取り扱われているのであればわざわざ手を伸ばすつもりは毛頭ない。
法を犯して悪目立ちするリスクを背負うことは避けたいし、何より古代魔導具の恐ろしさを知った今、いくつもの危険性を背負ってまでそれを使いたいとは思えない。
自分達が目的としている魔導具をが古代魔導具であった場合、クリスティーナ達は潔く諦める事だろう。
当たり前だと言いたげに返された反応。それを見たディオンは満足そうに笑みを深めた。
「とにかく、ニコラからエドワールの情報が洩れたという事はなさそうか。なら別の方向から尻尾を掴まれた説が濃厚だ。こちらのミスがきっかけではないとわかったところは安心したが……依然として、エドワールの身に何が起きたのかを知る必要はある。上手くいけばこちらから失踪した使用人の足取りが掴める可能性もあるしな」
彼の見せる意外な一面にクリスティーナは目を見張る。だが、その柔らかな表情はすぐに鳴りを潜め、彼は冗談っぽく意地の悪い笑みを見せた。
「ま、あいつにはお望み通り仕置きが必要だとして。一時的な関係だとしても今はお嬢ちゃん達もオレ達の仲間な訳だ。それに参加する必要がお嬢ちゃん達の中にあるってなら、仕事のついでってことで参加を許可しよう」
エドワール宛ての招待状を受け取った時、クリスティーナ達はオークションへの参加を渋っていた。
だが現在、ジョゼフを逮捕することがシャルロットの容態を安定させることに繋がるのであれば、その為のきっかけを彼が主催するオークションで掴むことが出来るのであれば首を突っ込んでも良いのかもしれないとクリスティーナは考えていた。
「その招待状を使って熟すつもりだった仕事というのは勿論ある。だがその仕事を代わりに引き受けてくれるのであればオレにとってもお嬢ちゃん達にとっても損はないだろ?」
当初の目的の達成とシャルロットの体を蝕む古代魔導具の解決。この二つを同時に達成できるのであれば多少のリスクには目を瞑るべきだ。
故に、クリスティーナは自分達がジョゼフ・ド・オリオール主催のオークションに参加することを前提に進む話の流れに身を委ねることにした。
「仕事以外の時間は自由にしてくれて構わんしな。……あ、ただしオレ達の世話になる様な事だけはするなよ。お前達を捕まえるのは骨が折れそうだ」
「勿論よ」
クリスティーナは小さく頷く。
ディオンの言う『オレ達の世話になるような事』というのは違法である古代魔導具の売買を指すのだろう。
クリスティーナ達の目的はリオの魔力を制御する魔導具の補強。それを可能とする魔導具の入手だが、それがもし違法な形で取り扱われているのであればわざわざ手を伸ばすつもりは毛頭ない。
法を犯して悪目立ちするリスクを背負うことは避けたいし、何より古代魔導具の恐ろしさを知った今、いくつもの危険性を背負ってまでそれを使いたいとは思えない。
自分達が目的としている魔導具をが古代魔導具であった場合、クリスティーナ達は潔く諦める事だろう。
当たり前だと言いたげに返された反応。それを見たディオンは満足そうに笑みを深めた。
「とにかく、ニコラからエドワールの情報が洩れたという事はなさそうか。なら別の方向から尻尾を掴まれた説が濃厚だ。こちらのミスがきっかけではないとわかったところは安心したが……依然として、エドワールの身に何が起きたのかを知る必要はある。上手くいけばこちらから失踪した使用人の足取りが掴める可能性もあるしな」
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました
ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。
会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。
タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる