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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
150-1.焦りと苛立ち
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ヴィートに先導され、その後ろへジルベールが続く。
更にその後方で護衛の二人がクリスティーナを前後に挟み込むように主人の身を最大限に守れる姿勢で移動した。
階段を下りた先に続くのは一本の長い廊下。
その左右には何枚もの扉が並び、地下の広さは入口の外観から予測するよりも遥かに大きいらしいことがわかる。
その最奥には通り過ぎてきた戸よりも一際頑丈で大きな両開きの扉がクリスティーナ達を待ち構えていた。
扉の前まで辿り着くとヴィートが扉を押し開ける。
廊下よりも幾分か明るい空間はクリスティーナ達の視界を白く遮ったが、それも一瞬のこと。明るさに慣れた目は扉の先に広がる景色の輪郭を徐々に明瞭にさせていった。
そこはいくつもの部屋の壁を抜いたかのような広大な空間だ。
素朴な出来の大きな食卓やいくつもの椅子、部屋の脇へ寄せられた用途不明の無数のガラクタや大きな木箱、散らかっている印象を受けるものの生活に必要な家具は揃っている、そんな印象を受ける一室だ。
また、揃えられている家具が大人数で使うことの出来るものばかりであることから、この場で生活をしている人間が少なくとも十人はいるのだろうことが察せられる。
雑多に、不規則に物が集められた倉庫の様な一面とリビングの様な一面を兼ね備えた空間はどこかちぐはぐさを抱かされ、その物珍しさからクリスティーナ達が辺りを見回していると、前方で机が叩かれる大きな音がした。
「ふざけるな!」
壁の代わりにいくつかのパーテーションで仕切られた空間。
その一つから聞こえた音に対しやれやれと肩を竦めてからヴィートはそちらへ向かって歩き出す。
案内役が移動したことでジルベールやクリスティーナ達も彼の後に続くことを余儀なくされる。
大きな音と叫び声のした方へと彼女達が静かに近づけば、居室と応接室が兼ねられたような空間が顕わとなる。
パーテーションに囲まれた空間の奥には書斎机、その手前にはローテーブルと古ぼけて矢や埃っぽい印象を齎すソファが二つ。
そのうち一つに腰掛けていたらしい人物が腰を浮かせ、ローテーブルに両手を乗せていることから声を荒げたのは彼であることが自ずとわかる。
また、書斎机にはディオンが肘をつきながら叫び声の主を見やっていた。
「まあまあ、そうカッカとしなさんな」
「僕を焚きつけておきながら落ち着けとはよく言ったもんだ」
「お前を急かしたのは何も無茶をさせるつもりでじゃあない。優先順位をはっきりとさせたかった、それだけだ」
ヴィートやジルベールの背後から様子を窺うクリスティーナはディオンと言い争っている人物の姿を目に留めると目を丸くする。
縁の黒い眼鏡に黄橡色の髪が特徴の小柄な青年。見覚えのある横顔は紛れもなくオリヴィエのものだ。
更にその後方で護衛の二人がクリスティーナを前後に挟み込むように主人の身を最大限に守れる姿勢で移動した。
階段を下りた先に続くのは一本の長い廊下。
その左右には何枚もの扉が並び、地下の広さは入口の外観から予測するよりも遥かに大きいらしいことがわかる。
その最奥には通り過ぎてきた戸よりも一際頑丈で大きな両開きの扉がクリスティーナ達を待ち構えていた。
扉の前まで辿り着くとヴィートが扉を押し開ける。
廊下よりも幾分か明るい空間はクリスティーナ達の視界を白く遮ったが、それも一瞬のこと。明るさに慣れた目は扉の先に広がる景色の輪郭を徐々に明瞭にさせていった。
そこはいくつもの部屋の壁を抜いたかのような広大な空間だ。
素朴な出来の大きな食卓やいくつもの椅子、部屋の脇へ寄せられた用途不明の無数のガラクタや大きな木箱、散らかっている印象を受けるものの生活に必要な家具は揃っている、そんな印象を受ける一室だ。
また、揃えられている家具が大人数で使うことの出来るものばかりであることから、この場で生活をしている人間が少なくとも十人はいるのだろうことが察せられる。
雑多に、不規則に物が集められた倉庫の様な一面とリビングの様な一面を兼ね備えた空間はどこかちぐはぐさを抱かされ、その物珍しさからクリスティーナ達が辺りを見回していると、前方で机が叩かれる大きな音がした。
「ふざけるな!」
壁の代わりにいくつかのパーテーションで仕切られた空間。
その一つから聞こえた音に対しやれやれと肩を竦めてからヴィートはそちらへ向かって歩き出す。
案内役が移動したことでジルベールやクリスティーナ達も彼の後に続くことを余儀なくされる。
大きな音と叫び声のした方へと彼女達が静かに近づけば、居室と応接室が兼ねられたような空間が顕わとなる。
パーテーションに囲まれた空間の奥には書斎机、その手前にはローテーブルと古ぼけて矢や埃っぽい印象を齎すソファが二つ。
そのうち一つに腰掛けていたらしい人物が腰を浮かせ、ローテーブルに両手を乗せていることから声を荒げたのは彼であることが自ずとわかる。
また、書斎机にはディオンが肘をつきながら叫び声の主を見やっていた。
「まあまあ、そうカッカとしなさんな」
「僕を焚きつけておきながら落ち着けとはよく言ったもんだ」
「お前を急かしたのは何も無茶をさせるつもりでじゃあない。優先順位をはっきりとさせたかった、それだけだ」
ヴィートやジルベールの背後から様子を窺うクリスティーナはディオンと言い争っている人物の姿を目に留めると目を丸くする。
縁の黒い眼鏡に黄橡色の髪が特徴の小柄な青年。見覚えのある横顔は紛れもなくオリヴィエのものだ。
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