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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
131-1.優しい嘘
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シャルロットが倒れた翌日、クリスティーナ達は再び彼女の館まで訪れた。
シャルロットの容態によっては追い返される可能性もクリスティーナ達は考慮していたが、館の者達は客人として三人を丁重に迎え入れた。
衛兵の一人に玄関まで案内されると客人の訪問の知らせを受け、待機していたジルベールがクリスティーナ達へと頭を下げた。
「ようこそいらっしゃいました」
「連日ごめんなさい。彼女の容態が気掛かりだったものだから」
「いいえ。知らせを受け、お嬢様もお喜びになっていました」
案内を衛兵から引き継いだジルベールは三人の先頭に立って歩き出した。
その背に続くようにクリスティーナ達も移動を再開し、暫くは言葉もないまま真っ直ぐと廊下を突き進む。
廊下に四つの足音が響く中、クリスティーナは辺りへ視線を巡らせながら小さな疑問を浮かべる。
(人が少ないわね)
遠目で見ても住む者の威厳を知らしめされるかのような立派な館。
庭もさることながら、建物の中は更に広々としている。
広い空間を清潔に保つには相応の人手が必要であるのが普通だ。
だが、クリスティーナ達がすれ違う使用人の数はこの館の大きさに反して明らかに少なかった。
(そう言えば、昨日も庭を管理しているはずの使用人達は見られなかったわね)
シャルロットが倒れた時、迅速に対処するだけの人手が明らかに足りていない状況であった。シャルロット本人が下がるよう指示を出していたことも理由の一つではあるだろうが、出会ったとしても主に屋外で働く使用人――例えば庭師などの姿くらいはあってもおかしくはない。むしろ本来はそれが正しい光景だろう。
もし屋外にジルベール以外の使用人がいたのであれば彼はその者に他の使用人を呼び出すことを任せ、シャルロットの処置や移動の為に動いたはずである。
しかし実際は違った。
(……恐らく人手が足りていないのね)
体を壊している主がいる館であれば人手不足の問題も深刻になりやすい。
突発的に容体が悪化した際、即座に気付ける存在が近くにいるとは限らない状況が出来上がってしまっているからだ。
そして辺りを見回すクリスティーナの気に掛る要因は他にもあった。
視界の端を漂う黒い闇。それを視認しながら彼女はため息を吐く。
(やっぱり、どこかに繋がっているようだわ)
それはクリスティーナ達の進行方向と、その反対方向を結ぶ糸の様に真っ直ぐと繋がっている。
進行方向の先、闇が向かっているのはシャルロットの寝室だろう。
では、後方へ伸びる闇の目的地はどこなのだろうか。
募り続ける不快感に息を詰めながらクリスティーナは疑問を抱いた。
「こちらです」
やがてジルベールが一枚の扉の前で足を止める。
ずっと真っ直ぐに続いていた黒い煙も、進路を変えるように不自然に曲がり、扉の先へと伸びていた。
シャルロットの容態によっては追い返される可能性もクリスティーナ達は考慮していたが、館の者達は客人として三人を丁重に迎え入れた。
衛兵の一人に玄関まで案内されると客人の訪問の知らせを受け、待機していたジルベールがクリスティーナ達へと頭を下げた。
「ようこそいらっしゃいました」
「連日ごめんなさい。彼女の容態が気掛かりだったものだから」
「いいえ。知らせを受け、お嬢様もお喜びになっていました」
案内を衛兵から引き継いだジルベールは三人の先頭に立って歩き出した。
その背に続くようにクリスティーナ達も移動を再開し、暫くは言葉もないまま真っ直ぐと廊下を突き進む。
廊下に四つの足音が響く中、クリスティーナは辺りへ視線を巡らせながら小さな疑問を浮かべる。
(人が少ないわね)
遠目で見ても住む者の威厳を知らしめされるかのような立派な館。
庭もさることながら、建物の中は更に広々としている。
広い空間を清潔に保つには相応の人手が必要であるのが普通だ。
だが、クリスティーナ達がすれ違う使用人の数はこの館の大きさに反して明らかに少なかった。
(そう言えば、昨日も庭を管理しているはずの使用人達は見られなかったわね)
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もし屋外にジルベール以外の使用人がいたのであれば彼はその者に他の使用人を呼び出すことを任せ、シャルロットの処置や移動の為に動いたはずである。
しかし実際は違った。
(……恐らく人手が足りていないのね)
体を壊している主がいる館であれば人手不足の問題も深刻になりやすい。
突発的に容体が悪化した際、即座に気付ける存在が近くにいるとは限らない状況が出来上がってしまっているからだ。
そして辺りを見回すクリスティーナの気に掛る要因は他にもあった。
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(やっぱり、どこかに繋がっているようだわ)
それはクリスティーナ達の進行方向と、その反対方向を結ぶ糸の様に真っ直ぐと繋がっている。
進行方向の先、闇が向かっているのはシャルロットの寝室だろう。
では、後方へ伸びる闇の目的地はどこなのだろうか。
募り続ける不快感に息を詰めながらクリスティーナは疑問を抱いた。
「こちらです」
やがてジルベールが一枚の扉の前で足を止める。
ずっと真っ直ぐに続いていた黒い煙も、進路を変えるように不自然に曲がり、扉の先へと伸びていた。
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