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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
93-1.祝賀会
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「ではー、互いの功労と新たな出会いを祝し、友人の旅路を願ってー」
自分達以外の客人によって他のテーブルも埋まりだし、店内が賑やかになり始めた頃。
数々の料理と人数分の飲み物がテーブル一杯に行き渡ったところでノアはジョッキを掲げる。
「乾杯!」
彼の音頭に従って六人はジョッキを中央へとよせる。
それらは注がれた飲み物を揺らしながら軽快な音を立てた。
「そちらはともかくとして、ノア様は程々でお願いしますよ」
「もー、わかってるよ! 前回のはオーバンさん達のせいだから!」
「あ、女将さん、おかわり!」
ジョッキの中を一気に飲み干すエリアスとノアの様子にリオがすかさず口を挟む。
それに対しノアは口を尖らす。一方で別の方向からは即座に二杯目を注文したエリアスの声が飛んだ。
それに対し少しずつ口を潤していたクリスティーナは、広げられた料理の一つを口へ運ぶレミとふと目が合った。
何となく気まずさを覚えながら何か話すべきだろうかと思案しているとクリスティーナよりも先にレミが動く。
「取り分けようか?」
「……ええ」
彼はどうやら同じ料理が気になっていると勘違いしたらしいが、折角なのでその言葉に甘えることとする。
レミはクリスティーナの返事に頷き、手際よく料理を取り分けていく。他にも欲しいものがないかと聞きながらいくつか料理を盛り付けてから取り皿がクリスティーナへ差し出された。
「レミ、そっちの」
「はいはい」
そこへオリヴィエの声が飛び、空の皿が差し出される。
それを素直に受け取り、同じように盛り付けるレミはどこか機嫌がよさそうに見えた。
「ほら」
「どうも」
短い言葉を交わし、オリヴィエは皿に乗せられた料理を口に運ぶ。
合流当初こそ眉根を寄せて文句を零していたが、意外にも彼はノアの予想した通りクリスティーナ達との同席を承諾したのだ。
以降、口数は多くないものの不機嫌そうな様子も見られない。
どうやら無理矢理付き合わされているとは感じていないらしい。お陰でその場の空気も想像以上に良好で、各々が会話や料理を楽しむ雰囲気が出来上がっている。
「機嫌が良さそうね」
「え? ああ……」
偶然正面の席へ座ることとなったレミへクリスティーナは声を掛ける。
振られた話題が予想外のものだったからか、レミは何度か目を瞬かせた。
「参ったな。わかりやすかったか?」
「そうではないけれど。何となく思っただけよ」
「察しがいいんだな」
またもや空になった皿をオリヴィエから受け取りながらレミは苦笑した。
自分達以外の客人によって他のテーブルも埋まりだし、店内が賑やかになり始めた頃。
数々の料理と人数分の飲み物がテーブル一杯に行き渡ったところでノアはジョッキを掲げる。
「乾杯!」
彼の音頭に従って六人はジョッキを中央へとよせる。
それらは注がれた飲み物を揺らしながら軽快な音を立てた。
「そちらはともかくとして、ノア様は程々でお願いしますよ」
「もー、わかってるよ! 前回のはオーバンさん達のせいだから!」
「あ、女将さん、おかわり!」
ジョッキの中を一気に飲み干すエリアスとノアの様子にリオがすかさず口を挟む。
それに対しノアは口を尖らす。一方で別の方向からは即座に二杯目を注文したエリアスの声が飛んだ。
それに対し少しずつ口を潤していたクリスティーナは、広げられた料理の一つを口へ運ぶレミとふと目が合った。
何となく気まずさを覚えながら何か話すべきだろうかと思案しているとクリスティーナよりも先にレミが動く。
「取り分けようか?」
「……ええ」
彼はどうやら同じ料理が気になっていると勘違いしたらしいが、折角なのでその言葉に甘えることとする。
レミはクリスティーナの返事に頷き、手際よく料理を取り分けていく。他にも欲しいものがないかと聞きながらいくつか料理を盛り付けてから取り皿がクリスティーナへ差し出された。
「レミ、そっちの」
「はいはい」
そこへオリヴィエの声が飛び、空の皿が差し出される。
それを素直に受け取り、同じように盛り付けるレミはどこか機嫌がよさそうに見えた。
「ほら」
「どうも」
短い言葉を交わし、オリヴィエは皿に乗せられた料理を口に運ぶ。
合流当初こそ眉根を寄せて文句を零していたが、意外にも彼はノアの予想した通りクリスティーナ達との同席を承諾したのだ。
以降、口数は多くないものの不機嫌そうな様子も見られない。
どうやら無理矢理付き合わされているとは感じていないらしい。お陰でその場の空気も想像以上に良好で、各々が会話や料理を楽しむ雰囲気が出来上がっている。
「機嫌が良さそうね」
「え? ああ……」
偶然正面の席へ座ることとなったレミへクリスティーナは声を掛ける。
振られた話題が予想外のものだったからか、レミは何度か目を瞬かせた。
「参ったな。わかりやすかったか?」
「そうではないけれど。何となく思っただけよ」
「察しがいいんだな」
またもや空になった皿をオリヴィエから受け取りながらレミは苦笑した。
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