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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
66-2.戦況悪化
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「動くの、やっぱり疲れる……」
持ち主の体躯以上の大きさを誇る大槌。
それを彼女は涼しい顔で持ち直した。
咄嗟に避けたものの、その攻撃のすさまじさにエリアスは息を呑む。
だが怯めばその一瞬が命取りになることは重々承知していた。
彼は一歩踏み込んで剣を振り上げる。
だが、それはリオの時と同様に空を切った。
ベルフェゴールは前衛の三人と均等に距離を置ける場所へ立つとため息を吐いた。
「こうすれば……楽になるかも」
彼女は大槌を肩に担ぐと片手を前へ翳す。
次の瞬間、翳された手から真っ黒な何かが溢れ出す様をクリスティーナは目撃する。
それは黒い煙――『闇』としか形容しようのない何かだ。
同時に襲い掛かるのは途轍もない嫌悪感。あれは触れてはいけないものであると本能が告げた。
『闇』はベルフェゴールの目の前で大きな集合を作ったかと思えば、三つに分散して前衛へ襲い掛かった。
「駄目……っ!」
「クリス!?」
思わず叫び、手を伸ばすクリスティーナ。
だがそれに反し、前衛の三人は警戒こそしているものの、『闇』を避けようとする動き一つ見えない。
見るからに怪しい現象であるのにも誰も反応を示さない。
クリスティーナの反応を間近で見ていたノアもまた、何故彼女が急に焦っているのかがわからないと言った様子で驚いている。
(まさか、見えていないの?)
四人の反応からクリスティーナが導いたのはそんな結論だった。
目の前で起きていることが見えていないかのような四人の様子。五人の中で自分だけが気付いた良からぬものの存在。
彼らの目に『あれ』が見えてないのであれば何とか出来るのは自分だけだと思いつつも、対処の方法がわからない。
その上距離も開いており、今から駆け寄ったとて『闇』が彼らへ触れる方が先であることは明らかであった。
「その場から離れて! 今すぐ!」
遠くから飛ぶクリスティーナの声に何事かと困惑の色を見せる三人。
しかしその声に含まれた必死さを感じ取ったからか、一斉に後退を開始する。
だが目に見えない、気配すらないものを避けるというのは至難の業だ。
それに加えて、黒い煙には追尾性があるようで、距離を置いた彼らを追いかけ続ける。
『闇』は容赦なく彼らへと距離を詰めた。
だがそれが三人へ覆いかぶさり、飲み込もうとした瞬間。
不自然な動きでそれは彼らから距離を取った。
自らそうすることを望んだというよりは何かに弾かれたかのような動き。
クリスティーナが何か手を下したわけではない。何が『闇』を弾く要因となったのか定かではない。
だがそれはベルフェゴールにとっても予想外のことであったようだ。
彼女は目を丸くし、その現象に驚いて見せる。
持ち主の体躯以上の大きさを誇る大槌。
それを彼女は涼しい顔で持ち直した。
咄嗟に避けたものの、その攻撃のすさまじさにエリアスは息を呑む。
だが怯めばその一瞬が命取りになることは重々承知していた。
彼は一歩踏み込んで剣を振り上げる。
だが、それはリオの時と同様に空を切った。
ベルフェゴールは前衛の三人と均等に距離を置ける場所へ立つとため息を吐いた。
「こうすれば……楽になるかも」
彼女は大槌を肩に担ぐと片手を前へ翳す。
次の瞬間、翳された手から真っ黒な何かが溢れ出す様をクリスティーナは目撃する。
それは黒い煙――『闇』としか形容しようのない何かだ。
同時に襲い掛かるのは途轍もない嫌悪感。あれは触れてはいけないものであると本能が告げた。
『闇』はベルフェゴールの目の前で大きな集合を作ったかと思えば、三つに分散して前衛へ襲い掛かった。
「駄目……っ!」
「クリス!?」
思わず叫び、手を伸ばすクリスティーナ。
だがそれに反し、前衛の三人は警戒こそしているものの、『闇』を避けようとする動き一つ見えない。
見るからに怪しい現象であるのにも誰も反応を示さない。
クリスティーナの反応を間近で見ていたノアもまた、何故彼女が急に焦っているのかがわからないと言った様子で驚いている。
(まさか、見えていないの?)
四人の反応からクリスティーナが導いたのはそんな結論だった。
目の前で起きていることが見えていないかのような四人の様子。五人の中で自分だけが気付いた良からぬものの存在。
彼らの目に『あれ』が見えてないのであれば何とか出来るのは自分だけだと思いつつも、対処の方法がわからない。
その上距離も開いており、今から駆け寄ったとて『闇』が彼らへ触れる方が先であることは明らかであった。
「その場から離れて! 今すぐ!」
遠くから飛ぶクリスティーナの声に何事かと困惑の色を見せる三人。
しかしその声に含まれた必死さを感じ取ったからか、一斉に後退を開始する。
だが目に見えない、気配すらないものを避けるというのは至難の業だ。
それに加えて、黒い煙には追尾性があるようで、距離を置いた彼らを追いかけ続ける。
『闇』は容赦なく彼らへと距離を詰めた。
だがそれが三人へ覆いかぶさり、飲み込もうとした瞬間。
不自然な動きでそれは彼らから距離を取った。
自らそうすることを望んだというよりは何かに弾かれたかのような動き。
クリスティーナが何か手を下したわけではない。何が『闇』を弾く要因となったのか定かではない。
だがそれはベルフェゴールにとっても予想外のことであったようだ。
彼女は目を丸くし、その現象に驚いて見せる。
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